カゲロウ・ソードワールド外伝 ~ HEATHAZE TALE 作:壱ノ瀬 葉月
穴から落ちてくる人間を見ながら呟く。当然、答える声は無い。何回こうして過ごしてきたか分からないが、何度も見ているとだんだんと飽きてきてしまっている。実際、ある程度の予想はできてしまっている。その途中で多少予想外の動きをしても、結局は3つのエンディングの一つにたどり着く。何度それを見てきたことか。
だがそこに、今までに無い動きがあった。さらにもう一人、人間が落ちてきたのだ。先ほどのが子どもなら、今度のは青年だ。明らかに男だと分かり、さらには剣を提げている。
「……ふふっ。どうやら、これまでより少しは面白くなりそうだ」
どうなってるんだ、これは。
直前までの記憶が正しければ、俺は彼女達――マリカやレイナ、黒影剣士団の皆――を守ろうと障壁を張って、爆発を受けたはず。普通なら死ぬはずだ。だが、今の俺は知らない場所が下に見える空中から、少しゆっくりと落下している。しかも真下には山があり、そこには大きな穴があいている。どこまでいくのかはわからないが、とりあえず言えるのは、この速度でも落ちたら死ぬだろう、ということだ。
魔力で翼を形成しようとするが、うまくいかない。そうしている間に俺は、山に開いた大きな穴に飲まれる。その瞬間に翼を作り出せ、落下感が打ち消される。安心したのも束の間、下のほうに落ちていく子どもが見えた。先ほどとは逆に翼で加速し、子どもを捕まえる。そのまま黄色い花の生えた場所に降り立つ。すぐに子どもを降ろし、尋ねる。
「君、大丈夫か?」
その子は頷く。一見しただけでは男の子なのか女の子なのか分からない。とりあえず姿勢を戻し、見上げながら自分の顎に手をやる。
あの穴に入った瞬間に翼をつくれた。逆に外ではつくれなかった。ということは外側では魔法的な力は作用しないのだろうか。魔法がつかえない空間なんて聞いたことが無い。一体どういうことなのだろうか……と考えていると、裾を引っ張られる。そちらを見ると、先ほどの子どもがある方向を指している。目で追ってみると、そこには意味ありげな門が。
「……行ってみるか。お前も行くか?」
頷く。喋れないのか、喋ろうとしないだけか。まあ今はどうでもいいか、とそちらへ向かってみる。
ここは地下であるはずなのだが、なぜか明るい。光源があるわけでもなければ上から光が入ってきているわけでもない。では一体どうやって――と思ってからふと気付く。ここの魔力は、光源の代わりになるほど濃度が高い。だが、魔力というには、少し純粋すぎる気がする。
と、気付かないうちに門をくぐり、その先には――
喋る黄色い花が咲いていた。
「やあ!僕はフラウィー。お花のフラウィーさ!……ふむふむ。きみ達、この地下世界の新入りだね?」
「ん、まあ新入りって言うか……落ちて入ってきたっていうか……」
「ここの入り口はアレしかないからねぇ。なんにせよ、きみ達はすごく困ってるみたいだね。ここでの過ごし方をだれかに教わらなきゃ!ここでは僕が先輩だから教えてあげるよ」
「あ、いや、そこまでは……」
と断ろうとしたが既に遅く。
「準備はいい?いくよ!」
周囲が<黒く>変化し、自分の心臓辺りに橙色をしたものが現れる。子どものほうには赤。それは体の内側に吸い込まれるように入っていく。
「それはソウル。きみの心や体の表れさ。きみのソウルは、ここでの意味じゃまだ弱いけど、LVをあげるとどんどん強くなっていくよ。ちなみに、LVはLOVE、愛情の略さ」
嘘だ。何を根拠に、といわれると説明できないが、LVが愛のことではないと自信を持って言える。一気に警戒心を高める俺。しかしそんなものを意に介さないように、その一輪は説明を――或いは、初心者を目標とした洗脳を続ける。
「心配しないで、LOVEを少しだけきみ達に分けてあげるよ」
と、小さくて白い弾を呼び出す。
「ここからLOVEを落としてあげるからね。小さくて白い、友情の欠片としてね。さあ、動いて、できるだけたくさん集めて!」
ゆっくりと着実にこちらへ向かってくる。脇に目をやると、何も疑わずに取ろうとする。一気に駆け寄り、自分の身を挺して守る。予想通り、ソウルに当たった分の激痛が走る。目の下に移る黄色い棒が減る。恐らく体力ということなんだろう。
「へぇ。知ってたんだ。それとも、直感で分かったのかな?」
背後を振り向くと、これまでの愛らしいほうだった顔から一転して、凶悪そうな笑顔を見せる。
「きみならなんとなく分かったんじゃないかな?この世界は、殺るか殺されるかなんだよ。見破ったらしいけど、遅かったね」
周囲を先ほどの弾が隙間無く囲う。逃げることは叶いそうにない。
「 死 ね 。 」
ゆっくりと近づいてくる。後ろの剣に手を添え、抜きかけるがそこで留まる。果たしてアレは斬ることができるのか。斬れたところで逃げることができるのか――。
一瞬、魔法が働いて弾を消し去る。フラフィーのほうへ火の玉が飛来し、吹き飛ばされる。
「なんて恐ろしい魔物なんでしょう。罪のない、か弱い子どもを傷つけようとするなんて……」
そういって、山羊のような見た目をした、女性の声を出す人……でいいのかは分からないが、魔物が歩いてくる。腕の中にいる子どもが身を固くする。それを感じてか、しゃがみこんで手を差し伸べる。邪魔をしないように、しかし何かあればすぐ干渉できる距離を取る。彼女は優しい眼差しで子どもを見つめながら、俺と子どもに名乗った。
「怖がらなくていいのよ、ぼうや。私はトリエル。この遺跡の管理をしているの。毎日こうやって誰か落ちてきてないか確認しにきているのよ」
次回<RULE>
不思議な世界であろうと、郷に入っては郷に従え。
今後の軸となるルートは、以下の内どれがよいですか?
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Gルート(ジェノサイドルート)
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Nルート(ニュートラルルート)
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Pルート(トゥルーパシフィスト)