普通の魔法使いのヒーローアカデミア   作:酒虫

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第1話

 小さいころ、ヴィランに人質に取られた私をヒーロー(オールマイト)が助けてくれた。

 振り抜いた拳が天気を変え、垂れ込んでいた雲を一掃した。

 そこから現れたのは空を割く大彗星、降り注ぐ流星雨。

 それを見て目を丸くする私に彼は言ったのだ

 ──私が来た、と。

 

 

 

「んあ?…夢か。…景気付けにいいもん見たぜ」

 

 入試会場(戦場)へ向かうバスの中で私、霧雨魔理沙は目を覚ました。 

 倍率が300倍を超える雄英高校の入試会場という戦場、そこへ向かうバスの中に私はいる。

 あくびを手で押さえ、チラリと隣の受験生を見ると彼は血走った目で参考書を見ている。私は問題ない。努力と言うのは日ごろの積み重ねであって、一朝一夕でやるものではないのだ。

 余裕のない彼へ心の中でエールを送っているとバスは会場へ到着した。

 

 

 

『今日は俺のライヴにようこそー!!エヴィバディセイヘイ!』

 

 コールアンドレスポンスが返ってこない会場にシヴィー!と言っているプレゼントマイク。

 筆記が終わり、実技試験の説明が始まった。

 入試要項通りこの後、模擬市街地演習が行われるようだ。

 持ち込みは自由。このためにミニ八卦炉と箒を持ってきたのだ。

 カイロ替わりに懐へ仕込んだ相棒を弄っていると、説明が終わったプレゼントマイクが不敵な笑みを浮かべ雄英高校の校訓を語る。

 

『かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った! 真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者と!

Plus Ultra(更に 向こうへ)!!  ──それでは皆良い受難を‼』

 

 

 

「アホみたいに広いな。やりがいがあるぜ」

 

 実際に移動してみると本物の市街地が私たちを出迎えた。こんな訓練場がいくつもあるというのだから驚きだ。

 感心しているとプレゼントマイクから「ハイスタート」と気の抜けた試験開始の合図が送られた。

 その声を聞いた瞬間、ポカンとしているほかの受験者を尻目に、箒へまたがり一気に市街地上空へ向かう。

 

『どうしたあ?実戦じゃカウントなんざねーぞ!走れ走れ!』

 

 まったくもってその通りだ。みんなが油断したその一瞬で、1ポイントでも多くのポイントを稼がせてもらおう。

 指定された演習場が一望できる高度へたどり着いたら魔力を練り、ミニ八卦炉で増殖させ、一気に放出する。

 

「そら、私お手製の”お手玉”だ。存分に味わってくれ」

 

 そして会場に万遍なくお手玉を行き渡らせる。

 この”お手玉”は空中を浮遊し、それぞれがその位置の様子を映し出す。

 まず、これで索敵をする。

 

「…そことそこか」

 

 そして見つけた仮想ヴィランへ、魔力レーザーを照射する。

 魔力レーザーはお手玉を跳弾して目標をぶち抜く。

 これで私はこの場を動かずとも市街地を俯瞰し、全土を射程に収めることになった。

 

「んじゃあまあ、狩りの時間と行くか」

 

 

 市街地中の仮想ヴィランを掃討してしまい、上空で待機しているとお手玉から地面が割れた様子が目に入ってきた。

 

「なんだ?」

 

 訝しんでいると出てきたのは今までとは比べ物にならないほどの巨大な仮想ヴィランが出てきた。

 あれがおジャマギミックというやつか。

 

「…ちょうど暇してたんだ!遊んでもらうぜ!」

 

 この会場では恐らく私がぶっちぎりでポイントを稼いだはずだ。もう索敵もいらないだろう。

 すべてのお手玉を魔力へと還し、箒を全力で巨大ヴィランへと向ける。

 

ーー魔符 スターダストレヴァリエ

 

 全力でぶつかってみたが装甲が少しへこむ程度のダメージしか出てないようだ。

 そのことに舌打ちをし、とりあえずヴィランの周囲を飛行して様子を見る。

 うろちょろしてみたが街へ攻撃をする一方で、どうやら受験者へ直接攻撃はしないようだ。そりゃそうか。

 そのことに少し落胆するが、残り一分というプレゼントマイクの声に頭を切り替える。

 

「…じゃあそろそろフィナーレだ!」

 

 まずは下準備。あの巨大ヴィランを上空へトスだ。

 巨大ヴィランの足元へ潜り込み、ミニ八卦炉の魔力を噴射して思いっきり上空へぶち上げる。

 

ーー星符 エスケープベロシティ

 

 私だけの力じゃ当然無理だが、それを思いきり引き上げてくれるミニ八卦炉(相棒)があるなら大丈夫だ。

 

「うおおあああああああああ!!!!!!!」

 

 私の全力の込めた一撃で、星をまき散らしながら巨大ヴィランが吹き飛んでいく。

 

『うおおお!?なんだなんだ!?』

 

 さすがに巨大ヴィランが上空へ飛ばされるなんてことは想定していなかったのだろう。

 プレゼントマイクの困惑の声が聴こえるが、それを無視してミニ八卦炉にすべての魔力を込める。

 

「よっしゃあ!雄英高校、覚えとけ!この霧雨魔理沙様の名前をな!

ーー弾幕は、パワーだ!!!!」

 

 

 恋符 マスタースパーク!!!!

 

 私の全力の魔力放射はほかの会場からでも見えただろう。

 凄まじい轟音と閃光を放ちながら進んだその攻撃は巨大ヴィランを塵も残さず消し飛ばし、そこで私の受験は終了した。

 

 

 

 

 数日後、雄英高校から合否通知が届いた。

 母親の手からかっさらい、結果は後で教えるとだけ言って自分の部屋に引っ込む。

 慎重に封筒を破ると中から出てきたのは…ディスク?

 首をかしげると同時にそれは始まった。

 

『私が投影された!!』

 

 そこから出てきたのはオールマイトのホログラフ。

 さすが雄英高校。合否通知にナンバーワンヒーロを使うのかと思っていると、オールマイトが口を開く。

 

『霧雨少女!まずは受験お疲れ様!』

『気になっている合否だが…筆記は上位5番以内に入っていて問題ない!そしてヴィランを倒して獲得したヴィランPは105!文句なしの合格だ!』

 

「よっしゃあ!」

 

 オールマイトの言葉にガッツポーズを決めているとオールマイトの言葉はまだ続く。

 

『…そうだろう、そうだろう!きっと喜んでいるだろう!そんな君にさらなるうれしいお知らせだ!}

 

「なんだなんだ?もったいぶらんでくれ」

 

 ワクワクしながら続きを聞く。

 

『今回の受験で見ていたのはヴィランPだけにあらず!審査制のレスキューPと言うのもあったんだ!霧雨少女は上空からずっと攻撃していたためそれほど稼ぐことはできなかったが…それでも不意打ちを防いだり、ヴィランの攻撃によるビルの崩落などから他の受験者を守ったとしてレスキューP15点!主席合格だ』

 

「マジかよ!」

 

 あの倍率300倍の雄英高校ヒーロー科主席合格!その事実にニマニマしていると『最後に』とオールマイトが言うので慌てて耳を傾ける。

 

『今回私が投影されたのを不思議に思ったかもしれないね。実は!今年から私は雄英高校に勤めることになったんだ!』

 

「うそだろ…」

 

 最後の最後に一番の衝撃ニュースだ。

 呆然としている私にオールマイトが笑って言う。

 

「さあ、霧雨少女!ここがきみのヒーローアカデミアだ!」

 

 ーーこれは私が普通の魔法使いから、英雄の魔法使いになる物語。

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