Fate/Grand Nap   作:湯瀬 煉

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 なんで皆さん、このカップリング書かないんですかね?


第二話 見知らぬ、料理

 カルデアの食堂。私、藤丸立香十七歳は机に突っ伏していた。

「あう~……エミヤぁ…お腹…お腹が空いて死ねそうだよ…」

「………死ねそうとは…。君は自殺志願者だったか?」

私の会話相手は、調理場に立つ褐色に黒いスーツの男の人──エミヤだ。

「そんなこと無いよ? 死にそうって程緊迫はしてないけど体内緊急事態宣言は発令されてるってだけ」 

彼はれっきとした私のサーヴァントの一人なんだけど、料理が上手いのでここでカルデアの全職員(私含め)、全サーヴァントの食事を作って貰っている。………というか、エミヤが召喚されてすぐに「ここの食環境は悪すぎる! ええい、私がやるッ!」って言いだしたんだけどね。

「はぁ……まあ、いいが。何が食べたい?」

 

 

 

 

 

 昼食のリクエストをして、上機嫌に食堂を立ち去ったマスターの事を思い出しながら、下ごしらえを進めていく。材料と道具。まずは道具があるかを確認し、次に道具がちゃんと扱える環境にあるかを調べる。

 ……………。

………………………無かった。

 

「……はぁ……。 投影開始(トレース・オン)

脳内にあるイメージを形となし、包丁を作り出す。普通の包丁で捌いても良いが、やはりこの料理にふさわしいのはこちらの包丁だろう。

 他のサーヴァントが怒らなければ良いが。と小さく呟きながら他の道具を揃えていく。

 

 

何を作っているんだい?

 

 優しい、木漏れ日のような声がした。ふと前を向くと、緑の髪の女……いや男……どちらとも取れるし、どちらとも取れない、不思議な魅力を持った英霊がいた。

「君は……エルキドゥ、だったかな?」

こくり、と頷く英霊────エルキドゥ。その動きはどこか幼く、可愛らしい。

「それで、何を作っているんだい?」

「………そうだな、君達の時代には無かった料理だろうしね。………えっと、寿司

「………スシ? それは、どういうものなの?」

ぐいっと身を乗り出して前のめりになったエルキドゥから、ふぃっと目をそらす。見た目は女の方に近いため、身を乗り出されると恥ずかしいし、なにより服がダボダボのために、()()()()であった。

「なんというか……この生身の魚をごはんの上に載せて、食べる感じかな。生で食べる人も居れし、魚の部分…刺身を炙っても良い物もあるが……基本的には醤油を付けて食べる」

「なん………だって………!?」

西洋では魚を生で食べる文化は無かった気がする。もっとも、今では日本のスシは全世界に和食の代名詞として名を轟かせているが、過去に死んだ英霊には馴染みがなかろう。というか、江戸時代以降の日本人くらいしか寿司には馴染みがない気もする。つまりまあ、マスターからのリクエストはちょっとした冒険なのだ。

「ねえ、エミヤとかいったかな? 君は、僕たちを毒殺しようとしているのかい? それとも生身の魚って食べられないって知らないのかな? いや、そうなんだろう? 実はね、生魚って凄く危ないんd……もぐ……もぐもぐ…」

とりあえず、毒殺だの何だのといわれては硝子の心が傷つく。捌いていたマグロの赤身の部分をすばやく醤油に浸け、エルキドゥの口の中にねじ込む。百聞は一見にしかず、だ。

「────美味しいッ!? すごいよエミヤ! これすごく美味しいよ!」

 エルキドゥの興奮っぷりに自然と頬を緩ませると、二枚目も食べさせてやる。

「もう少しで昼食だよ。皆を、呼んできてもらえるかな」

「勿論だとも!」

お使いを頼まれた子供のように食堂を飛び出たエルキドゥに再び笑うと、調理に戻った。二品目は、夏だし、そばにでもしようか──────。

 

 

 

 

 

 次の日、アーチャーのギルガメッシュと、エルキドゥが真横に並ぶ構図で、私の調理場は覗かれていた。

「………………どうしたのかね」

「君の作る料理が美味しいと言ったらね、ギルが見たいっていうから連れてきちゃった」

「そういうわけだ。見せてみよ、貴様の腕を……!」

なるほど、分からん。

「…………………なんでも作ってはやれるが、なにか要望は?」

とりあえず、頼まれたならば作ろう。それが料理人だ。……いや、私は料理人ではないのだが。

「君の料理ならなんでも……」

(オレ)はステーキが食いたい。作ることを許そう!」

「…………ステーキ、だね」

ため息をつきながら、肉は無かったかな…と冷蔵庫の扉を開けた途端に、ボトン、と背後で音が鳴った。

「………これを使え」

まさかの材料指定だった。

 

 とりあえず、鉄板を熱し始め適温になるまでに塩コショウ、皿、等を用意していく。ソースも作りたいところだが、上品の肉に下手に味付けをするのは勿体ない。あえての塩こしょうだけ。もちろん、かけるかかけないかもセルフサービスだが。

「焼き加減は、レアか? それともミディアム?」

「「ミディアムレアで」」

仲が良いな……と呆れるべきか、二人の声がピッタリと重なるのを聞き届け、熱した鉄板の上に二つの肉塊を載せる。ジュウウウっと肉の美味しそうな音が鼓膜を襲い、鼻腔を香ばしい匂いが蹂躙するが、まだダメだ。じっくりと焼き上げなければならない。

「……! まだ…まだか、雑種!」

「すでにかなり美味しそうだねっ……!」

もう少し…もう少し……。今だっ。

 

 火を止めて余熱で肉を仕上げながら、皿に一枚ずつ載せて、二人にはナイフとフォークを渡す。ついで、焼き肉屋にあるような小皿を二枚、レモン汁と塩コショウをそれぞれ入れて渡すと、ちょうど良い感じになった肉を、コトン、と二人の前に指し出す。

「───ステーキ、完成したよ。どうぞ、召し上がれ」

 

 ………以降、なにかと英雄王とエルキドゥ、特にエルキドゥからは気に入られたらしく、度々話すようになった。




 エルキドゥ×エミヤは絶対良いコンビになるんだ……。
多分、これからもちょくちょく二人のカップリングをここでやる…はず。
抑止力コンビだし、大丈夫だよねっ!

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