ゼロとマギカ(ゼロの使い魔×レンタルマギカ)   作:宇宙間管理職

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第01話

その日、魔法使い派遣会社「アストラル」ルーン魔術課正社員オルトヴィーン・グラウツは社内の宝物庫で帳簿をつける作業に没頭していた。

「ったく」

その困難さに思わず悪態を()く。

普通の魔術結社と異なりこの「アストラル」には種々多様な魔術系統の魔術師が在籍している。

当然、彼らが使う呪物(フェティッシュ)や魔道具もその種類だけあり、

「ん?なんだこれ?」

オルトヴィーンが手にしたのは一冊の算数ドリル。

裏には「葛城みかん」と記されている。

「あの馬鹿(Dummkopf)!」

という風に魔術とは関係ない物まで入れてある。

隅で謎の存在感を示すトーテムポールはおそらく世界の霊脈(レイライン)を柏原、黒羽と共に行脚(あんぎゃ)している伊庭(つかさ)前社長からの贈り物だろう。

一息ついて後ろを振り向くと鏡があった。

人ひとりを写せる位の大きさの鏡。

しかしオルトヴィーンの目には違うものが映る

(なんだこの意味不明な呪力の塊は)

オルトヴィーンは息を呑む。

この鏡から発せられる呪力は一歩間違えれば辺り一体を第一級呪波汚染に陥れるほど。

(この呪力の大きさはまるで「第三団(サード・オーダー)」)

オルトヴィーンは思い出す。

魔術結社〈螺旋なる蛇(オピオン)〉、〈王冠(ケテル)〉の(セフィラー)である白い女教皇(ハイ・プリエステス)タブラ・マサラ。

「協会」代表であった、タブラ・マサラと(つい)を為す黒い「第三団(サード・オーダー)」ニグレド。

そしてこの布留部市(ふるべし)霊脈(レイライン)をつかさどりタブラ・マサラによってニグレドを(にえ)とすることで「第三団(サード・オーダー)」へと昇格しかけた〈(レイライン)〉のアストラル。

これらに準ずる呪力をこの鏡は放っていた。

そしてその刹那の追想がミスに繋がる。

(不味い!!)

オルトヴィーンは咄嗟の判断で鏡から距離をとったがそれから放たれる眩いばかりの光からは逃れられなかった。

そして〈(アストラル)〉が泣いた。

 

その異変に真っ先に気が付いたのはこの魔法使い派遣会社「アストラル」の社長、伊庭いつき。

「オルト君!」

バンッと宝物庫の扉を開け放つ。

しかしそこにはオルトヴィーンの姿はなく、あるのは今にも霧散しそうな大きな鏡だけだった。

「オルト君!!」もう一度いつきは叫んだがその声は届かなかった。

 

[第01話:召喚]

 

「先生!私、やりました!サモンサーヴァントを成功させました!」

桃色の髪の少女ルイズは土煙で服を汚しながらも嬉しそうにはしゃぐ。

「おめでとうございます。ミス・ヴァリエールは何を召喚したのでしょう」

周囲の生徒達も気になるようで未だ立ち込める煙の中を確認しようと目を凝らす。

そして中から現れたのは、

 

人間だった。

 

誰がどう見ても人間。

寒い地域からき来たのだろうか、耳当て付きの帽子に分厚いコートを着込み、帽子の下には長い亜麻色の髪が見える。その端正な顔立ちにエメラルドグリーンの瞳が鋭い眼光を放っているがそれすらも彼の魅力を引き立てている。

一瞬その美しさに誰もが息を呑んだがそのうちの一人がハッと気が付き口を開く。

「おい!ルイズ!いくら魔法が成功しないからってその辺の平民を連れてくるなよ!」

その声に皆も反応し、辺りは罵詈雑言で溢れかえった。

「シャラッッッッッッップ!!!!!!」

そこに教師コルベールの怒声が轟く。

「いいですか?皆さん。皆さんも見ていたでしょう?ミス・ヴァリエールが彼を召喚するところを。確かに人間が召喚されるのは今までに類を見ませんがこれも事実です。皆さんも貴族なのですから同級生の成功を一緒に祝福しましょう。」

貴族なのですから、と言われて皆は口を(つぐ)む。

そんな中、抗議の声を挙げたのはルイズ。

「ちょっと待ってください!私が彼とコントラクトサーヴァントをしろと仰るのですか?考えられません!ありえません!」

ルイズは召喚された彼を指差す。

「しかしだね、ミス・ヴァリエール。これは決まりなのだよ」

「そ、そんな……」

と少しの間俯いていたが意を決して彼に近づく。

「感謝しなさいよ。貴族にこんなことされるなんて、普通一生無いんだから」

といったルイズは、彼に近づく。

(意外と背が低い……。これなら大丈夫そうね……)

そして彼の左手を掴み詠唱する。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」

詠唱を終え、顔を引き寄せその唇に自らの唇を押し当てる。

 

その刹那、

「アアアアアアァァァ──────ッッッッ!!!!!!」

獣の如き咆哮が広場に響き渡った。

 

 

薄暗い宝物庫の中からいきなり広場の真ん中に移動させられたオルトヴィーンは冷静に分析していた。

(これは恐らく転移魔術)

転移魔術とは文字通り空間を転移し別の場所へ移動する魔術。

そして魔術の中でも最高難易度を誇る魔術の一つ。

入念に高位の魔術師達が準備に準備を重ねたとしても運べるのはせいぜい二、三人。距離も1キロを超えるのがやっと。そしてこの魔術は例外なく魔法使いの精魂を奪い取る大魔術。

オルトヴィーンも何度かそれを経験している。

一つは布留部市(ふるべし)でアディリシア先輩が竜穴(ノード)を利用し、霊脈(レイライン)の力を借りて別の竜穴(ノード)へ移動した。それでも彼女は昏睡状態になるほどの代償を払った。

もう一つは大魔術決闘(グラン・フェーデ)最中(さなか)に「魔法使いを罰する魔法使い」の一人、

ギョームが妻を守るために使った鏡魔術(リートウス・スペクルム)。不完全な状態で行使されたその秘術によってギョームは血液と共に体内の精気(オド)を垂れ流し、仮に命が助かっても二度と魔術は使えなくなる状態になった。

そして上記とは別にオルトヴィーンが経験したのがロンドン塔から大英博物館への瞬間移動。それは魔術結社〈螺旋なる蛇(オピオン)〉の〈慈悲(ヘセド)〉の(セフィラー)、道師サタジットが行った魔術。とはいえそれも地仙(ちせん)である彼だから為し得た。

そしてオルトヴィーンは彼を召喚した術者であろう目の前の桃色の髪の少女を観察する。

(それにしてもここはどこだ?こんな霊脈(レイライン)の流れはどこにもなかったはずだが)

(そして奴らの格好。杖にマントなんて典型的な魔法使い(ウィッチ)の姿だ。恐らくこいつ等は学生。あのハゲたおっさんが教師ってところか)

もしや「学院」か?と彼は考えたがすぐにそれを否定する。

まず言葉が通じない。魔法使いとして最低6ヶ国語は修得するのは常だがそのいずれにも当てはまらない。目の前の少女が教師と思われる男性に何かを必死に伝えようとし、教師がそれをなだめている。

(文法にラテン系の名残があるがこんな言語は聴いたことがない。というかさっきからなんだ?コイツが責められてるのはわかるが……)

と考えていると(くだん)の少女がこちらに近づいてくる。

(コイツは何をしようと……)

まさかッ、オルトヴィーンが気付いたときには遅かった。おそらく魔術の詠唱とともに腕を掴まれる。

(拘束魔術!?)

すぐに逃れようとするが全くのノーガード状態だったため間に合わない。

(何を……ッ)

そして少女は顔を近づけオルトヴィーンに口付けした。

その瞬間、オルトヴィーンの中を魔術が駆け巡る。

魔術は左手に集まり、オルトヴィーンは思い出す。

(これは、この痛みは、まさか、まさかまさかまさかまさか────ッ)

気付いたときには叫んでいた。

 

コントラクトサーヴァントは一回で成功しましたね、と口にしようとした教師コルベールはいきなり叫び出した彼の様子が普通でないことに気づく。

左手を抑え地面をのたうち回り吐瀉物を撒き散らす。

その姿を見た生徒たちが彼に何をしたのかとミス・ ヴァリエールを弾劾(だんがい)する中で彼は吐くのを止めない。

そして胃液も吐ききった彼の口からは大量の血を吹き出す。この姿に一同は騒然。温室栽培の貴族には刺激が強すぎるのか中には気絶する女生徒までいる。

そして彼は左手首を右手で掴みながら中腰の体勢で天を仰ぐ。教師コルベールは彼に近づく。

(目の焦点が定まっていない……。これはパニックで自分を失っているのでしょうか)

一応、コルベールは彼に声をかける。

「君!大丈夫かね!?君!」

しかし声は届かない。

そして彼は懐から短剣を取り出す。

思わずコルベールは一歩下がるが彼はこちらを見ていない。

そして彼は自分の左手を刺し始めた。

何度も何度も、何度も何度も何度も、

際限なく血が溢れかえるのを気にせず彼は自分の手を刺し続ける。

コルベールは彼の右腕を掴んで止めさせようとするが凄まじい力で振り払われた。

そして彼は血を流し過ぎたのか地面に突っ伏して気を失った。

コルベールは叫ぶ。

「これは一大事ですぞ!!水系統のメイジは集まってください!!今すぐ手当てが必要です!!」

広場の中、その光景に圧倒され、止まっていた時が再び動きだす。

 

ルイズは他の生徒が右へ左へと動き回る中ポツンと取り残されたように立っていた。彼が叫びだしてからの一連の騒動。ルイズはただ見てるだけしかできなかった。

「私が、私がやったの……?」

教師コルベールが見守る中、体格の良い男子生徒数人が応急処置を済ませた彼を『フライ』で校舎に丁寧に運んでいく。

静けさを取り戻した広場の中、ルイズはただ一人立っていた。

教師コルベールがルイズを連れ戻すまで立っていた。

 

オルトヴィーンは思い出す。忘れていた、心の奥に閉まっていたはずのあの日々を。あの女吸血鬼(ツェツィーリエ)玩具(オモチャ)にされていた日々を。皮を無理やり剥がれ、他人の皮膚を移植され、ルーンを刻み込まれる、寝ることも気絶することも許されなかった数々の仕打ち(調教)を。

(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛─────────)

 

そしてオルトヴィーンの意識は途切れた。




誰得かと言われれば俺得

読んでもらえるなんてありがとうございます。
初めての方ははじめまして
前作の大幅な原作改変に筆者も戸惑いが隠せず今回はキチンと原作を尊重しつつ蹂躙(じゅうりん)しようとレンタルマギカのオルト君を召喚してみました。

また、前作の反省点(肥大化する文章量)を踏まえ今作は平均4千字程度の非常に薄っぺらい作品を目指していこうと思っています。

まだまだ若輩(じゃくはい)ゆえ、皆様の辛辣なご意見ご感想を募集しています。

P.S.筆者はルビ(るび)を覚えて調子に乗ってます。
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