東方家執霊 作:紅い霧を吐く蟻
私は、どうしたらいい?
たたりもっけは妖怪であり、幽霊のように成仏というものが無い。
だからこそ、家にとり憑く。そして、末代に至るまで呪い尽くして、やっと存在が消える。
ならば、祟るという選択をしなかったたたりもっけはどうなるのか?
「誰か、助けて」
不意に口から零れた求助の声。だが、こんな山奥で、真っ暗闇の中で誰が聴くだろう。
そもそも、私自身助かる方法が解らないのだ。
「誰か、助けてよぉ」
でも、私の口は勝手に動いて言葉を吐き出す。誰も聴いていないのに。
「ねぇ、さっきから誰が言ってるの?」
草陰から、声が聴こえた。
ガサリガサリと草が揺れ、現れたのは女性だった。耳と尻尾を持っているが。
「あぁ、貴女が言ってたのね。迷子にでもなったの?」
「......」
私はしばらく女性の顔を見つめて、そして。
「うぇぇぇん...」
誰かに会えたことが嬉しくて、泣いてしまった。
▽▽▽
「大丈夫?もう泣かない?」
「大丈夫...と思う」
いきなり泣き出した私を前に、女性はあたふたしながらも抱きしめて慰めてくれた。
今もまだ女性の腕の中にいる。やっぱり私の身長は子供のソレと大差ないらしい。
「で、なんで泣いちゃったの?お姉さんに話せる?」
「うん...」
私は今に至るまでの話を出来るだけ細かく話した。先祖の記憶やらは話さなかったけど。
記憶の中にしか存在しなかった温もりは、こんなに安らぐものだった。
「辛かったねー...よしよし...」
頭が撫ぜられる。優しい手つきで、なでなでと。
ちょっと情けない感じもするけど、とっても安心する。思わず抱きしめかえした。
「おっとっと、甘えんぼさんねー」
柔らかい。
温かい。
...眠い。
▽▽▽
「あらら、寝ちゃったかー」
胸の中ですやすや眠る子供。いや、妖怪。
最初出会った時に泣かれたのにはびっくりしたが、こうして眠っている姿は幼く愛くるしい。
「まだ自己紹介もしてないのになー」
取り敢えず、目を覚ますまで抱いておくことにした。
可愛いし。
▽▽▽
「...ん」
目を覚ましたら、布団の中だった。
隣にあの女性がいる。
「......」
思わず布団から逃げ出そうとしたが、なぜか女性に抱きしめられていて脱出できそうになかった。
諦めて元の体勢に戻ると、女性も体勢を変えながらよりぎゅっと抱き締めてきた。具体的には大きな胸が顔を挟みこんだ。
これは、まずい。
確かに今は女の体だが、前まで男だったせいで意識してしまう。もっと言うなら、長い長い記憶を持っている今ではそういう事も知ってるわけで。
「...あ、起きた?」
最悪なタイミングで女性が目を覚ました。
たたりもっけが主人公だけど、あんまり重い雰囲気はないようにするよ。
その方が書きやすいし。