東方家執霊   作:紅い霧を吐く蟻

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第3話

 

「よく寝たねー」

 

確かによく寝た。寝過ぎるほどに。

適当なところで目を覚ましていれば、こんな攻め苦を受けなかっただろうに。いやまぁ、決して苦しくはないのだけど。

 

「んふふ、くすぐったいよー」

 

気づかぬ間に息を荒くしていた。仕方ないことだ。

解放してくれよ。

 

「あの、ちょっと」

 

「ん?あ、苦しかったかな?」

 

「少しだけ」

 

「どうせだし、もう少し抱かせて。ね?」

 

そんな顔でお願いしないで欲しい。断れないじゃん。

というか、このままだと心地好すぎて二度寝してしまう。

 

「最後に、ぎゅ」

 

ひときわ強く、ぎゅってされた。

それなりに力強く抱かれたはずなのに、柔らかさだけ感じる。

母親の愛情はきっと、こんな感じなんだろうなぁ。

 

「もうご飯食べる?」

 

「いや、私は」

 

どうなんだろう。食べた方がいいのかな。でも、人間は食べたくないなぁ。

それにお腹空いてないし。

 

「後で食べるのね。じゃあ、朝の散歩しよっか」

 

「えっ」

 

蒲団から女性が立ち上がる。そこでようやく、女性がスカートを履いてないことに気づいた。

 

「どうしたの?」

 

「いや、その」

 

だって、上は着てるのに下はパンツって。恥ずかしくて直視できないし、指摘もできない。

 

「あ、ごめんね。今取ってくるわ」

 

「お願いします」

 

よかった、ちゃんと履いてくれるんだ。散歩って言ってたしね。

でもスカートを四つん這いになって探すのは止めて。

 

「...そういえば、お名前は?」

 

「あ、そうだったそうだった。今泉影狼っていうの。貴女は?」

 

「え、と...たたりもっけです、多分」

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

「じゃあ、行こっか」

 

「...はい」

 

今、私は赤ちゃんのように抱かれている。

これは仕方ない。私が寒いって言ってしまったのが悪い。

でもこの体勢は、恥ずかしい。いっそ精神も子供だったらよかったのに。

 

「この竹林は静かでいい雰囲気よね。私、大好きなの」

 

「なるほど」

 

羞恥心のせいであまり景色を観てなかったけど、確かにいい雰囲気だ。

風が葉を揺らすさわさわ、という音以外何も聴こえない。

 

「あの、もう寒くないので」

 

「そう?」

 

ほんとはまだ寒かったけど、これくらいなら我慢できる。

それよりも、抱かれっぱなしの方が私にとっては不味い。

 

「じゃあ手を繋がないと」

 

「だ、大丈夫です」

 

「ダメ。この竹林はすぐに迷っちゃうんだから」

 

私の小さな手を、影狼さんの綺麗で柔らかな手が包む。

なんで女性の体って、こんなに柔らかいんだろう。

 

「あ、兎がいる」

 

「どこ?」

 

「彼処です、彼処」

 

指を差した方角には、かなり小さな兎が一匹いた。気づかれて逃げられてしまったが。

 

「あ」

 

影狼さんは逃げていく小兎と握った手を交互に見て、残念そうに溜め息を吐いた。

もしかして狙ってたのかな。狼だし。

 

「ねぇ、帰ったらすぐご飯にしない?」

 

「オーケーです」

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

さて。いい加減、此所を出ることを視野に入れないと。

影狼さんはかなりいい人...妖怪だけど、頼りっぱなしになるのは申し訳ない。

 

「お茶、おかわりは?」

 

「お願いします」

 

 




ストーリーの進行は、かなり遅くなるかなぁ
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