東方家執霊   作:紅い霧を吐く蟻

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第5話

 

夜、蒲団の中。

いつもは私を抱いて寝る影狼さんだけど、今日は違った。

 

「......」

 

確かに寝ているのを確認して、こっそりと蒲団から抜け出す。できるだけ音を立てないように。

 

「...影狼さん、お世話になりました」

 

最後に小さな声でそう言い残して、家を出た。

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

夜の竹林は、私を簡単には逃がさなかった。

どこを見ても同じ景色が目に入ってる気がする。

 

「ひゃあ」

 

がさり、と竹が揺れた。もしかしたら妖怪かもしれない。

びくびくしながら影を待っていると、出てきたのは小さな兎だった。

 

「...なんだぁ」

 

ほっ、と胸をなでおろす。

だが、気を抜いてはいられない。次に出てくるのは本当に妖怪かもしれないのだ。

気合いを入れなおし、歩きだす。

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

「ここ、どこ?」

 

もう大分歩いたはずなのに、まったく竹林から抜け出せずにいる。

竹林というのは、真っ直ぐに歩いたら抜け出せるのではなかったか?

 

「だれかー...」

 

当然、誰の返事もない。

今、私は絶対的な孤独の中にあることを知った。

 

「ううぅ」

 

途端に、寒さが私を包んだ。歯の根が合わなくなり、体がガクガクと震える。

その場に縮こまったまま、動けなくなった。

 

「だれか、いないの?」

 

縋るように這い出た言葉も、冷たい闇に溶けるだけだ。

涙が後から後からでてきて、止められない。

 

「おーい」

 

「...え?」

 

声が、した。

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

「言ったでしょ?すぐ迷っちゃうって」

 

「ごめんなさい」

 

影狼さんに力いっぱい抱きついて、泣きながら謝る。

助けに来てくれた影狼さんの体は、前より温かかった。

 

「このままだと苦しいよ?明日にしよう?」

 

「...うん」

 

疲れがどっ、と襲ってきた。

また、影狼さんに甘えちゃうなぁ。でも、目蓋が重すぎて耐えれないや。

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

目を覚ましたら、蒲団の中だった。

影狼さんが抱きしめてくれてる。

 

「温かい」

 

ぎゅっ、と抱きついてしまった。

 

「起きた?」

 

「はい」

 

朝ごはんを食べさせてもらった。

普通の人間と変わらないような食事だった。

その後、竹林の出口まで案内された。

 

「もう、お別れだね」

 

「...はい」

 

「辛くなったら、いつでも来てね」

 

抱きしめてくれた影狼さんが、耳元で囁いた。

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

人里の近く、壁のすぐ側。

私はかなり真剣に悩んでいた。

 

「私って、人里に入っていいの?」

 

いや、間違いなくダメだろう。だって妖怪になってるし。

でも此処が一番安全だから、どうしてもこの中には入りたい。

 

「一体、何をしてるので?」

 

背後から声をかけられた。

私は人里の方を見てたから、声の主は人里とは逆の方向にいる。

つまり、人里から出てきた者ではない。

 

「あら、貴女は怨霊...いや、たたりもっけかしら」

 

「!」

 

早くも正体を看破されてしまった。

意を決して振り返ると、万年筆を持った人が─今までの記憶からすると新聞記者に近い人がいた。

 

「まさか、人里への侵入をお考えですか?」

 

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