東方家執霊   作:紅い霧を吐く蟻

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第6話

 

私は暫く口をつぐみ、その人を見ていた。

普通の人間だと思っていたのだが、だとしたら何故こんな場所で逢うことがあるだろうか。つまり、妖怪である可能性がある。

 

「困るんですよねぇ、貴女のような出来損ないの妖怪は」

 

やれやれ、といった風情で溜め息を吐く女性。

もしかしたら馬鹿にされているのかもしれないが、そんな事はどうでもよかった。気になったのは、出来損ないという点だ。正体がバレているかも?

 

「とっとと消えた方がいいですよ。どうせ何も出来ないのですから」

 

「...貴女は、何ですか?」

 

「はい?」

 

「妖怪、ですよね?」

 

風が、強くなる。

どうやら女性は妖怪のようだ。

 

「消えなさい」

 

 それだけ言って、女性の姿は消えてしまった。

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

どうにかバレないように、人里に忍び込んだ。

多分、あの女性も人里にいる。出来るだけ逢わないようにしなければ。

 

「地図...欲しい」

 

ただ、何処を探しても地図は見つからない。

地図が要らないくらい狭いのか、もしくは単純な区画なのか。

 

「おっと...?」

 

思わず隠れる。とある店の先に、あの女性がいた。

多分、取材中。やはり新聞記者だったのだろうか。

 

─もしかして、妖怪だという事を隠してる?

 

だとしたら、私に妖怪だと言われてあんな風になったのも納得出来る。

それは、活用出来るかも?

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

「ちょっと、すみません」

 

「はいはい、何でしょう...」

 

振り返った姿勢のまま、女性は固まってしまった。

しかしそれも一瞬だけで、すぐに平静を取り戻した。

 

「何かご用でしょうか?」

 

「はい。少し話したい事があるんです」

 

私達は近くの団子屋に入った。注文したのはお茶だけだったけど。

 

「...まず、私の方から質問しても?」

 

「どうぞ」

 

「確かに消えろと言いましたよね。お覚えですか?」

 

「覚えています」

 

女性はお茶を飲み、口を湿らせた。

 

「そうですか。そして、入ったと」

 

「そういう事になりますかね。次は私から話をしても?」

 

出来るだけ下に見られないように、虚勢を張って話す。

効果があるかは知らないけど。

 

「どうぞ」

 

「ありがとう御座います」

 

私もお茶を飲んで、話す準備を整えた。苦味は濃いけど、決して飲めないことはない。

 

「貴女は、妖怪である事を隠していますよね?」

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

ごとん、と重気な音がした。

視界は完全に逆転したままで、みるみる内に掠れていく。

金切り声が聴こえた。誰かが叫んだのかもしれない。

喉の断面から、血が流れ出ていくのが判る。だから目が映らなくなってきたのだろう。

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

そこで、現実に戻った。

殺意とは、こうも在然とした幻覚を見せるものなのか。

 

「殺しますよ?」

 

「......脅すつもりはなかったのですが」

 

ここらが引き際だろうか。恐らく、これ以上踏み込めば本当に死ぬ。再度。

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