IF:仮面ライダーゼロワン DARKEST DAYBREAK 作:TAC/108
Part-9 虚ろなる嵐の中へ
草木も眠る丑三つ時。街中の狂騒は一向に収まる気配がなく、ヒューマギアによる戦闘は今もなお続いている。絶えて久しき人類が築き上げた大都市は、昼夜問わず死と破壊を撒き散らす不夜城ならぬ不夜の戦場と化した。止まらぬ戦禍に楔を打ち込む者は、もはやいない。
駆動音を轟かせてこの地に踏み入った、彼らを除いては。
鉄条の柵を飛び越えて、三台のバイクが夜の街へ繰り出す。三人のライダーは皆が既に戦闘態勢を整えている。変身した戦士達がバイクを降りると、自動操縦に切り替わったバイクが何処かへと走り去っていった。バイクと入れ替わるようにして、二人のヒューマギアが柵の向こうから姿を現す。
不破諌/仮面ライダーバルカン・シューティングウルフ。
天津垓/仮面ライダーサウザー。
滅/仮面ライダー滅・スティングスコーピオン。
過去より召喚された仮面ライダーが、未来の戦場に再び降り立つ。
「意外と明るいんだな」
バルカンが率直な感想を漏らした。郊外に近いこの辺りはともかく、街の中心に近い方角からは何らかの光が発せられている。
「現在でこそ三大勢力の激戦区ですが、一応この街はネオZAIAの管轄にあります。彼らがやってきてから地上に建設された建造物は、今も稼働中ですからね」
柵を乗り越えたヒューマギア、ハウが言った。その目線はバルカンではなく、空に浮かぶ巨大な岩塊に向いている。
ネオZAIAエンタープライズ本社が市街地に留まっているこの時を狙い、ヒューマギア中立組織フラタニティはネオZAIAの本社を撃墜する作戦を決行することとなった。
作戦立案者は滅である。ネオZAIA本社を覆う強力なバリアを破る鍵を握っているのは、これを解析した滅なのだ。
「調査班からの報告に、現在はピースメーカーが街の中心で暴れているとあります。零の方舟とネオZAIAの睨み合いに乱入する形になったとのことで。かなりの乱戦になっている様子」
「障壁は俺が破る。その後は……」
「任せろ、ネオZAIAは俺がブッ潰す」
極めて単純な作戦だが、そこに至るまでが困難である。ネオZAIA本社は現在、激戦区となっている街の中心、その真上に浮かんでいる。要となるのは滅とバルカン。彼らは三大勢力の戦闘を掻い潜り、ネオZAIA本社に接近しなければならない。囮役も必要になる。
「そこで、あまつさまとはうがおとりです」
「脇役といえど1000%の成果を出してみせよう」
「久方ぶりの夜戦、心が踊りますね」
サウザーの隣に立つ少女型ヒューマギア、フー。非戦闘員である彼女も作戦に同行することになったのは、各員に戦闘状況をナビゲートする役割が必要だったからである。サウザーに同伴し、護衛を受けながらオペレーターとして支援を行うのが主な仕事だ。
ハウの総身が赤黒い繊維めいた金属に覆われ、一瞬にして変身が完了する。絶滅種ドードーのデータから生み出されたドードーマギア。今回は腰に二丁の拳銃を提げている。
「暗殺、といきましょう」
「あくまでようどうです。くれぐれもわすれないように」
「冗談ですよ、フー。では我々はこれにて。ご武運を!」
サウザーとドードーマギアが大跳躍にて街中へと跳んでいく。バルカンと滅は顔を見合わせ、二方向へと散開した。
◆◆◆◆◆◆
炎や電飾の光を手がかりに、サウザー達は建造物群を飛び移る。隣り合う二つに着地したサウザーとドードーマギアが、互いの顔を見合わせた……ように見えた。垓は自分の背中から身を乗り出したフーが、ハウに何らかのアイコンタクトを送っていることに気付く。彼らの真下では、マギアの戦闘集団が狂騒に戯れている。
「フー、一体何を——」
「したへまいります。きしゅうといきましょう」
「なるほど」
即座に意図を理解したサウザーが、三十メートルの高さから飛び降りる。空中で出現させたサウザンドジャッカーのレバーを引き、グリップ部の引き金を引いた。
『JACKING BREAK!』
極光、衝撃、爆発音。地面に向けて突き出されたジャッカーの先端から銀色の光線が発射され、巨大な衝撃と爆発が戦場に発生する。爆風を利用して落下の勢いを和らげたサウザーが、ジャッカーを杖にして着地した。飛電インテリジェンス製プログライズキーの一つ、ブレイキングマンモスのデータに基づく、巨砲の一撃に匹敵する大火力攻撃である。
背中から降りたフーが、胸ポケットから取り出した手袋を両手に着けた。彼女のスーツと同様、黒と赤のツートンカラー。掌の部分には六角形の穴めいた模様がある。
「ひみつへいきのてすととしましょう」
爆煙をジャッカーの一振りで払うと、残存兵の視線がサウザーとフーに注がれる。フーから新たなデータを吸い出し、サウザーが横薙ぎに一閃した。所属不明のトリロバイトマギア達が各々の得物を構える。
『JACKING BREAK!』
黄金に輝く巨大なクマが穂先から飛び出し、空に向かって吠える。耳朶を引き裂く絶叫が、ヒューマギアすら凍らせる局地的
されど敵軍全滅に非ず、指揮官格たる二体のマギアが戦意を滾らせて突進を仕掛ける。ビカリアマギアに加え、哺乳類の絶滅種・マンモスの力を宿すマンモスマギアである。
「フー!」
「おまかせを」
前衛のマンモスマギアを極低温を纏うジャッカーの投擲で静止させ、サウザーは徒手となる。ドリル状の頭部を回転させたビカリアマギアの突撃を回避したサウザーとフーが、軌道変更を図るビカリアを見遣る。
フーが両掌を合わせ、引き離す。掌から放たれる紐状の光が何かを形成し、実体を得たそれをサウザーへと投擲した。サウザーが左手で受け取ったそれの、
一瞬の後、ビカリアの頭部外装が爆散した。何が起こったか分からぬとばかりに慌てふためくビカリアが、サウザーの方を向いた。青い大型銃器を向けるサウザーの姿が、ビカリアマギアの視界に映る。
大火力の可変武器、アタッシュショットガンを持ったサウザー。両手で第二射を防いだビカリアが、フーの方を見た。正確には、フーの手袋を解析しようとしていた。
「気付いたところでもう遅い」
仰向けのまま地面を這うビカリアに、サウザーは容赦なく散弾を浴びせ続ける。凄まじい反動を伴うアタッシュショットガンの射撃とて、サウザーの圧倒的なパワーならば片手撃ちでも連射すら可能とする。高熱に弱いビカリアマギアの腕部が赤熱すると、サウザーが銃口を胸部に押しつける。躊躇なく引き金を引くと、巨大な光弾がビカリアの胸を貫き、ビカリアが倒れていた地点に爆発を生んだ。
「完璧だ……流石はフラタニティのテクノロジー!」
「ことぶきさまのおてせいです」
フーが拍手を送る。彼女の手に装着された手袋は、Dr.コトブキが作成した
掌サイズの
コトブキ曰く、この手袋はピースメーカーの創設前後に完成した兵装だったという。その頃には既にフラタニティは非戦闘路線に入っていたため、特に使われることもなく死蔵されていたが、今回の作戦を実行するにあたって、
……遠回しにサウザーのシステムに弱点があることを指摘されたということでもあり、フーと共に説明を受けた垓は複雑な心境だったが。
マンモスマギアに突き刺さったままのジャッカーを回収しようと、サウザーが振り向いた。次の瞬間、彼の頭に丸い物体が衝突する。
地面に転がったそれは、マンモスマギアの頭部であった。凍った頭が飛んできた方を見ると、ドードーマギアが二振りの大剣を振り抜いた様が目に入った。マンモスの首を斬り飛ばしたのはハウであった。
「見事だ、ハウ」
「どうも。さて、この辺りは全滅……と言いたいところですが」
言うが早いか、東の方角で爆発音が聞こえた。戦の足音が地面を揺らし、腹の底にまで鈍い衝撃を伝える。
「こちらに近づいていますね。恐らくはピースメーカー、それも
次の瞬間。
彼らの側面にあった建造物が、凄まじい音を立てて爆散した。高さ三十メートルの高層ビルを一瞬にして瓦礫の山に変えながら、黒い煙を纏って飛び出したのは、人型の影であった。
黒煙の者は地面に着地すると、彼を挟んだ二方向の対象を確認する。左方にはドードーマギア・ハウ、右方には仮面ライダーサウザーが立つ。
両手を大きく振り、乱入者が黒煙を払った。現れた姿に、垓が仮面の下で驚きの声を上げた。
顔面を円形に囲みながら後頭部へと伸びる、動力パイプめいたパーツ。口から飛び出した牙に、高い鼻梁と睨みつけるような目つき。
過去の記憶から類似する存在を見出し、サウザーが身構えた。敵手の向こうにいるハウが双剣を構える姿が見える。
「ダイナマイティングライオン……!」
睨みつけながら垓が呟いたのは、己が知るプログライズキーの名称であった。そのキーで変身した怪人……レイダーを知っているからだ。マギアがサウザーの方を向き、首を傾げる。
「俺の力を知ってるのか、お前。にしてもその格好は何だ、ネオZAIA社長のコスプレか?」
「ZAIAが作ったキーの一つだ。貴様、ABの一人だな!?」
「ああ……俺の名はデトネイター! ピースメーカー幹部『アルファ・バレット』のNo.4。それだけ分かりゃあ——」
マギアが左腕の大型武器で周囲を薙ぎ払う。六門の銃口より発射された弾丸が、彼の周りにあった建造物を次々と爆発させた。
「十分だろ?」
「今のは……!?」
「ゴチャゴチャした説明は苦手なンだよ、まずは戦って確かめてみろ!」
ライオンマギア・デトネイターがサウザーに向かって飛び出すが、そこにハウが割って入った。
「よもや私は眼中に無いとでも!」
「無え。お前とは戦っても面白くねえからな、向こう行ってろ」
双剣を弾き飛ばされ、ハウが胸部に鉤爪を引っ掛けられる。デトネイターの信じ難い膂力で投げ飛ばされた先では、ピースメーカーとネオZAIAの分隊が鎬を削っていた。通信回線を開き、要点のみを伝える。
「天津様! デトネイターは大規模な破壊に特化したマギアです。大きく移動しながらの戦闘を推奨します!」
『何を言って——』
通信終了と共に戦闘に突入し、ハウは眼前の敵兵を組み伏せる。首を捻じ切りりつつ腰の拳銃を取り出し、乱戦に銃弾を撃ち込んだ。
一方、サウザーとライオンマギアは互いに睨み合う状況が続いていた。だが二人の思惑は全く異なる。サウザーが出方を伺っているのに対し、ライオンマギアは敵の攻撃を待っているのだ。マンモスマギアの残骸からジャッカーを回収し、サウザーが痺れを切らしたように仕掛けた。
『JACKING BREAK!』
ジャッカーを突き出し、先端から再び銀色の光線を発射する。巨象の足を象った光が、ライオンマギアの顔面に直撃し、大爆発を起こした。
「やったか!」
「まさか」
隣でフーが呆れたように言った。立ち込める爆煙を突き抜けて姿を現したデトネイターは、事実全くの無傷であった。
「俺をもっと楽しませてくれよなァ!」
ノーガードで突進するデトネイターを、サウザーが迎え撃つ。大上段から振り下ろす一撃がマギアの頭部に直撃し——。
一帯を吹き飛ばすほどの爆発が発生した。
◆◆◆◆◆◆
不破諌/仮面ライダーバルカンは、ビル屋上から戦場を見下ろす。前方は凄まじい破壊の跡が刻まれ、遮蔽物になりそうな建物も存在しない。どこを見てもマギア同士の戦いが行われており、このまま地上に降りれば乱入者として狙われるだろう。開けた場所ということもあり、マギアさえどうにかなれば目標地点へは直進が最短ルートとなる。
『ショットライズ! パンチングコング!』
形態を切り替え、増加した重量に任せるようにして空中に身を躍らせる。四肢を大の字に広げ、自らを一つの質量弾として戦いの場に放り込んだ。
轟音と土煙を巻き起こしながら、隕石めいて地面に激突するバルカン。すぐさま立ち上がり、手近なマギアに殴りかかった。人体を遥かに上回る走力で敵の密集地を突っ切る。近寄る者の尽くをタックルで吹き飛ばし、五百メートル程の距離を進んだ、その時であった。
「アレは……ZAIAの社長!」
ふと上を見ると、炎に包まれながら落下してくる物体がある。放物線を描いて二十メートル先の地面に激突したそれは、紛れもなく仮面ライダーサウザーであった。
東の方角にあった建造物が崩れ落ちる。その中から黒い煙玉が飛び出し、空中で爆発を繰り返しながらサウザーの方へと接近する。
目標を切り替え、バルカンはサウザーに駆け寄る。ネオZAIA本社の撃墜が最優先だが、陽動役だったはずのサウザーが同じ場に現れたことから、とりあえずは彼に事情を聞くことにした。
「何があった!?」
「私に構っている暇があるなら本社に急げ! アレが来る!」
「アレだと? うおっ!?」
空飛ぶ煙玉は自爆による急旋回を何度も行い、上空から紫色の筒をばら撒いている。地上に落ちた筒が爆発し、巻き込まれたマギアが無差別に炎上する。筒の正体はダイナマイトであった。煙玉が着地し、マギアの形を取る。
「ライオン野郎! あいつもABか!」
「デトネイターと名乗っていた。ダイナマイティングライオンのデータを持ち、大規模破壊に特化している。頭部を攻撃するとそれに合わせて自爆するが、向こうは見ての通り全くの無傷だ!」
火の海と化した平地。逃げ場は無く、機械音の叫喚がけたたましく響く。乱れ合っていた兵は皆が熱に浮かされた死兵となり、眼を赤く光らせながら互いの身を削っていた。
「ハハハハハハ! いいぞ、もっとだ! もっとこの戦いを、破壊を! 楽しもうじゃないかァ!」
ただ一人狂ったように笑う者こそ、件のライオンマギアである。ライダー達には目もくれずにマギアに殴りかかり、組み伏せ、半身を引き裂く。屍を放り捨てて次の標的へ進むうちに、その姿は炎の向こうへと消えていった。
「俺達に気付いてないのか?」
「見えなくなっただけだろう。向こうから確認されたら追われる」
「そのとおりです。あれは、いわゆる『ばとるまにあ』ですからね」
声のする方に目を向けると、フーが涼しげな顔でサウザーの後ろに立っていた。炎熱の中でも眉一つ動かさずにいる姿に、諌は彼女が少しだけ恐ろしく見えた。
「戦闘狂いのマギアか、最悪だな」
諌が呟くと、凄まじい勢いで青色の突風が吹いた。僅かに帯電する風は、彼らの正面から迫る大竜巻から発せられていた。青黒い旋風から猛スピードで何かが飛び出し、バルカン達の正面に着地する。
「今度は何だ!」
大風を纏う何かが左腕を横薙ぎに振ると、一瞬にして周囲の炎が消える。彼の後方で今も勢いを増し続ける竜巻は、北の方角……ネオZAIA本社のある方へと向かっていった。
ベールの如き旋風が消散し、人型の闖入者がその姿を露わにした。
目につくのは、極限まで重装化した四肢であった。アンダースーツの上から被せられた群青色の追加装甲は、驚くべきことにほぼ全身を覆っている。上半身から下半身に至るまで、過剰なまでに各種武装を積載した姿は、もはや人型の要塞と呼んでも過言ではない。
前腕部には固定式の短機関砲、肩部から首回りにかけてはマイクロミサイルの発射装置。脚部に至ってはスラスターとミサイルポッドを幾つも装備した重厚感溢れる見た目となっている。
胸の中心にある円形のパーツは、青白い光を放っている。吊り上がった青白い複眼が点滅すると、それに合わせるように胸部が強く光った。
乱入者の仮面が、己とよく似ていることに気付かないほど、諌の理解力は鈍くない。怒り顔じみた造形に、耳の様に立った頭部アンテナは、オオカミのデータを宿す仮面ライダーであることを示している。何より、彼のベルトである滅亡迅雷フォースライザーに装填されているキーが、眼前の乱入者が何者であるかを示している。
アサルトウルフプログライズキー。ちょうど、諌が持っているものと寸分違わぬものが、フォースライザーによって展開されていた。
「俺と同じ、仮面ライダーバルカンだってのか!」
ショットライザーを向けたバルカンに対し、もう一人のバルカンが飄々と答えた。
「オレの名は仮面ライダーバルカンフォース。またの名を、ピースメーカーの総司令官、無銘。はじめましてだな、仮面ライダーバルカン」
早くも三大勢力のリーダーが、諌達の前にその姿を現した。二人のバルカンの間で緊張の糸が張られる。
「何でお前がバルカンを名乗ってやがる……!?」
「先人に倣ったのさ、偉大なる仮面ライダー殿。俺は人類のことは記録でしか知らないが、仮面ライダーは人類絶滅後も存在したからな」
「ヒューマギアが変身する仮面ライダー……滅亡迅雷か、あるいはアークか」
膝立ちのままサウザーが口を挟んだ。滅をはじめとして、ヒューマギアが変身する仮面ライダーは時折現れる。この時代において人類を滅ぼしたとされる人工知能アークも、仮面ライダーとしての姿を持っていた。そのヒューマギアによって『仮面ライダー』という概念の継承が行われてきたとて、おかしな話ではない。
「誰がアンタらを呼び寄せたかは見当がつく。だからそれはどうでもいい。だが、旧時代の仮面ライダーには興味がある」
金属質な音を立て、バルカンフォースが両拳を打ち合わせる。右の腕と足を引き、左の腕と足を前に出した構えを取った刹那、その四肢が帯電する風を纏い始めた。
既に相手は戦闘態勢である。目的が何なのかはさておき、バルカン達からすれば最悪の妨害を喰らった形となる。バルカンの背後、フーとサウザーが目配せしたのを見逃さず、バルカンフォースが切り出した。
「何やら急いでるらしいな。用件は? さっきからオレの後ろをチラチラと見ているようだが」
仮面の下で諌が冷や汗を流した。バルカンによく似た怒り顔の仮面が、今は既に能面じみた虚無を湛えているようにすら感じられる。感情というものをまるで覗かせない低い声で、人狼が続ける。
「なァるほど、さてはネオZAIAが標的か。奇遇だな、オレらも目的は同じなんだ。フラタニティはネオZAIAをブッ潰すために作られた組織だし、その当初の目的はピースメーカーが引き継いでいる。ここは一つ手を組まないか? 仮面ライダー同士、上手くやっていけると思——」
矢弾の風を切る音が響いた。バルカンフォースは頭部を襲った衝撃に仰け反り、左目を手で覆う。
「オイオイ左目に傷がついちまったじゃねえか。血気盛んなこと——おっと?」
『アサルトウルフ!』
怒りに震える右掌が、青く光る銀弾を握り潰す。星座じみて散らばった幾つもの光が収束すると、バルカンフォースの眼前には、彼とよく似た姿の仮面ライダー。
仮面ライダーバルカン・アサルトウルフが、全身から怒気と蒸気を立ち昇らせながら立っている。彼の背後に控えていたサウザーとフーは、既に姿を消していた。
「その顔を見せてみろ……! 仮面の下でお前は何を考えている! 全ての言葉が上辺だけのがらんどうなその口で! お前は仮面ライダーバルカンを名乗るのかッ!」
『No chance of surviving.』
月下にオオカミが吼え立てる。獣の皮を被った何かに、激しい怒りを燃え上がらせながら。対するバルカンフォースは、両腕を引いて力を溜める。全身から稲妻が走り、周囲の土砂が独りでに浮き上がった。
「がらんどうとは失礼だな。フラタニティが持っていた原初の理想を叶えるためにこそ、オレは動いているんだがね……だが」
言い終える前に、バルカンフォースが飛び出す。右拳を突き出すと、それに合わせてバルカンが左拳を繰り出した。激突と共に大地が爆ぜる。
「ホントの空っぽだと思われるのは心外だ。一つオレと遊んでもらおうか、仮面ライダーバルカン!」
「やってみろ……遊びで済むと思うならな!」
つづく。