IF:仮面ライダーゼロワン DARKEST DAYBREAK   作:TAC/108

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Part-13 魔弾の射手

東の空から太陽が昇り始めると共に、ランペイジバルカンがショットライザーを手にした。狙うは一点、空中に浮かぶネオZAIAエンタープライズ本社。距離にして地上からは四百メートル前後。

外すわけがない。バルカンはマゼンタカラーの翼を背中から広げると、その先端を床に突き刺した。左半身からのみ発生する一枚の翼は、それでいて非常に高い飛行能力を持つだけでなく、姿勢制御用の(アンカー)としても機能する。

『パワー・ランペイジ! スピード・ランペイジ! エレメント・ランペイジ!』

回転弾倉の機構を手動で回すごとに、ランペイジバルカンのリミッターが一つずつ解除されていく。(パワー)を以て山を抜き、速度(スピード)において他に優る者は無く、超常の属性(エレメント)をも掌握する。

『オール・ランペイジ!』

そして、四度目の回転が全てを解放する。両足に床が砕けるほどの力を込め、狙い定めし目標へとショットライザーを向けた。威力増幅用のエネルギーサークルが直線軌道上に並ぶ。それらはランペイジバルカンが内包するライダモデルを示しており、十種類のデータを多重増幅するために今回は更に数を増やしていた。

その数何と五十。実に八メートル間隔で着弾直前の距離まで威力を増し続ける、必殺の一撃が放たれようとしている。

無論、これだけの攻撃に変身者である諌に何ら負担が生じないということはない。どれだけランペイジバルカンが強力であったとて、諌はれっきとした人間であり、故にライダーシステムの限界は()()()であるからこそ生じる。巨大構造物の破壊という目標を達成するには、諌にもライダーシステムにも多大な負担を強いる代わりに()()()()()を放つ必要があったのだ。

作戦実行にあたり、諌が滅から受けた説明は『バリアを破った後に最大の一撃で本社を撃墜せよ』のみである。事もあろうに諌は、この言葉を()鹿()()()()()()()()、文字通り一撃でネオZAIA本社を粉砕しようとしていた。不可能という可能性を、彼は一切考慮していなかった。

 

そして、この攻撃には一つだけ明確な弱点がある。射撃準備中は姿勢が固定されるため、バルカンは動くことができないという点だった。

戦場を地上に移しながら戦いを繰り広げていた、二大勢力の首魁。ゼロサウザーと零式が、偶然にもバルカンの姿を認めてしまった。見慣れない仮面ライダーが、本社に向かって何か仕掛けようとしている。零式を放置し、ゼロサウザーが一直線にバルカンに向かって飛翔する。

気付いたところで動けず、また射撃を中止することもできない。よもやここまで来て絶体絶命かと思われた矢先、ゼロサウザーの背後に衝撃が発生する。バランスを崩したゼロサウザーは、バルカンのいる高層ビルを壁伝いにずり落ち、砂埃を巻き起こして地面に激突した。

「おのれ! よくも私の邪魔を……何者——だァ!?」

ゼロサウザーは己の視覚機能を疑った。衝撃を発した主は、空中を飛び舞う紫色の結晶体であった。それらが無数に寄り集まって武器を手に持つ人型を形作ると、黄金の輝きを放ちながら明確な(ビジョン)を組み上げていく。

 

銀と黒の角に、紫の複眼。煌めく黄金のベースアーマーと、全身に装着された銀色の装甲。そして、槍と剣を合わせたような武器。

ゼロサウザーによって撃破されたはずの、オリジナルの声で話す者。誰あろう仮面ライダーサウザーが、普段以上に黄金に輝きながら空中を浮遊していた。

 

「バカな! そんなことは1%だろうとありえない!! 私の一撃を受けて尚、生存するなど……よもや偽物、まやかしか!」

「1000%、正真正銘の本物だとも。そして、ここからは私のターンだ」

天に掲げた金色の武器・サウザンドジャッカーが、虚空から何かを吸い上げる。紫と金の光がジャッカーの先端から吸収されていき、サウザーの全身にまで膨大なエネルギーが行き渡る。溢れんばかりの巨大な力は光のオーラとなり、サウザーの周囲に満ち満ちていた。

 

ネオZAIA本社を覆っていたバリアに使われていた膨大なエネルギーが、滅の撃ち込んだ猛毒と入り混じってサウザンドジャッカーに吸収されたのである。六つの結晶体がサウザーの周りを飛行し、サウザーが空中に浮かぶための力場を発生させていた。

「種明かしをするとしよう。実際のところ、私はあの攻撃を喰らう直前に、自らの身体をこの結晶体に変換していたのさ」

結晶の一つを手に取り、サウザーが見せつける。ゼロサウザーは意味が分からぬとばかりに、呆気に取られるのみであった。

「ならば、オリジナルが爆発したように見えたのは……?」

「本当に爆散した。何より本当に砕け散った。とはいえ、この結晶体のお陰で私はどうにか死を免れた。何せ一度()()()()()()()()戦法だったからね。記憶にある以上、使えるものは使うが……本当に私にも可能だというのは実際のところ、予想外でもあった」

紫の結晶体は、サウザーが本来持っていた能力ではない。彼がかつて敵対していた仮面ライダーゼロワンが持つ形態の一つであり、当時としては最強だったシャイニングアサルトホッパーという姿でのみ発動した『シャインシステム』のデータをコピーしたものである。

自由自在に遠隔操作可能な、結晶型波動弾……その名をシャインクリスタ。これを操るゼロワンは、時に自らの身体をこのシャインクリスタに変換することで敵の攻撃を回避することもあった。その時に戦っていた相手こそ、この仮面ライダーサウザーである。

一度このデータは奪われていたが、今回の作戦に際してフラタニティから譲渡された『衛星ゼアに由来するデータ』にはこれも含まれていたのだ。

「さて……今の私は通常よりも遥かに強い。1000%の1000%、即ち1000000%(百万パーセント)のサウザーと言っても過言ではない。それでも私に()()かな?」

自らのオリジナルたる天津垓の言葉に、骸は仮面の下で激昂していた。頭上から己を見下ろすあの憎きオリジナルが許せない。その一心が彼の電脳を満たしていく。

——挑むだと? 否である。お前が私に挑むのだ。

 

「付け焼き刃の力でこの私を愚弄するかッ! 貴様の存在は1%たりとも許しはしない、完膚なきまでに叩き潰してくれる! 本社に告ぐ、私の『(サード)』を出すぞ!」

 

次の瞬間、ゼロサウザーの頭部が爆発した。誰も攻撃を加えてはいない。何が起こったか戸惑うゼロサウザーに、光の矢が上空から襲いかかった。

「何が起こった!?」

「お前に使った(ウイルス)が作用したのだ」

影の如く静かに降り立つは、仮面ライダー滅。アタッシュアローを片手に、ゼロサウザーに狙いをつけている。

「よもやあの時の……!」

「本社は今頃阿鼻叫喚だろうな。ネオZAIAのネットワークは早急に復旧作業に入る必要があるだろう。無論、お前も無事では済まん。今の爆発で通信機能を封じた」

「ネットワークの修復はするとも。お前達を始末してからな!」

本社の底部から巨大な鉄塊じみた物体が射出されてくる。ゼロサウザーが飛び上がり、展開された前面部へと収納される。鋭く尖った衝角を持つ戦闘機じみた黄金の巨大機械が、人型に変形しながら地上に着地した。

 

「アレは……ギーガーか!」

『ネオZAIAの秘密兵器、(サード)ギーガーだッ! お前の知るギーガーとは文字通りに二回りも違う!』

骸が本社に送った最後の命令は受諾されていた。ネオZAIAエンタープライズにて製作された、対ヒューマギア用巨大決戦兵装『Ⅲギーガー』。骸が乗り込んだのは、ゼロサウザーとの連携を前提とした専用機であった。

八メートル近い巨大な人型ロボットであり、五指には光線(レーザー)砲を搭載している。両腕にはコーカサスオオカブトムシの角を彷彿とさせる三本の鉤爪を備え、それ以外にも全身に火器を内蔵した重装備のロボット兵器だ。V字のアンテナを持つ頭部の一つ目(モノアイ)が、妖しく紫色に光った。

『見るがいい、この爪! この巨躯! そしてビーム砲! お前達には決して止められん! 今日こそがネオZAIA勝利の日、新世界秩序の夜明けであると知るが良い!』

黄金のⅢギーガーから拡声器を通したような声が響き渡る。地上には僅かに二人、サウザーと滅のみである。零式はいつの間にか姿を消していた。

「さて……とはいえ我々の仕事は、ウルフ君がコトを成すまでの時間稼ぎ」

「手を抜くなよ、サウザー」

「まさか。1000%、我が方の勝利で終えるとしよう」

垓が通信回線を開き、諌に繋いだ。

「時にウルフ君。何やら射撃準備中のようだが、発射までにはどれだけ時間を要する?」

『ZAIAの社長、やっぱり生きてやがったのか!』

「復帰に多少時間を要したが、ここからは私が援護しよう。それで、必要時間は?」

『チャージ完了まであと三分ってところだな。確実に一発で落とすためにも、ここで邪魔されるわけにはいかねえ』

予想以上に長い。確実を期するためとはいえ、相手は広範囲に攻撃できる巨大ロボットである。実に困難なミッションだ。

しかし、垓の返答には微塵も曇りなど無かった。

「よろしい。三分間、指一本とてアレには触れさせないと誓おう」

サウザーの周囲で結晶波動弾が強く発光すると、それが加速装置となって一瞬にしてⅢギーガーとの距離が詰められた。凄まじい速度でサウザーが脚部に激突し、衝撃にギーガーが足を滑らせて倒れた。Ⅲギーガーの後方に回ったサウザーであったが、結晶波動弾を用いての瞬間移動によって滅の隣に移動する。

「私に考えがある。可能な限り、ギーガーの足を止めて貰いたい」

「相手が相手だ。二人がかりでも難しかろうな」

「では、二人でなければ?」

サウザー達の背後に着地する足音。振り向けば、重装甲のドードーマギアと少女のヒューマギアが立っている。

「フー! 無事だったか」

「そちらもごぶじでなによりです」

「お二方、我々も加勢します。今こそが好機なれば」

立ち上がったⅢギーガーに向けて、ドードーマギア・ハウがグレネードを射出した。直撃を受けてもⅢギーガーは無傷であったが、爆発の衝撃でよろめいている。危険を察知したハウが、背後にいたフーの小さな体を背負った。

Ⅲギーガーが両手の指からレーザーを放つと、四人は一斉に前方に向かって突撃した。

 

◆◆◆◆◆◆

 

同じ頃。

仮面ライダー零式によって暴走マシンに仕立て上げられた、ペンギンマギア・フォーチュンと、同じくピースメーカー幹部であるライオンマギア・デトネイターとホエールマギア・ブルータルの戦いは、本人達も予想だにしなかった展開を迎えていた。

「やけに強くねえか、フォーチュンの野郎!」

「暴走状態なのかもなァ。ゼロの野郎に細工されて、出力が限界以上に上がってるのさ。それに……これだけ長く重装化してりゃあ、ブッ壊れるに決まってんだろ」

ピースメーカー幹部たる六体のヒューマギア、アルファ・バレット。彼らには共通して『重装化』という強化システムが存在する。

その名の通り追加装備を身に纏い、戦闘能力を向上させる機構であるが、欠点もある。出力が上がる分、ヒューマギアの躯体を以てしても強烈な負担がかかるのだ。その負荷が内部機関にまで及んだ場合、彼らの自我を保たせるAIに異常が発生し、ただ周囲に破壊を撒き散らすだけの殺戮機械と化すこともある。

故に、AB(アルファ・バレット)では重装化に五分の時間制限を設けている。リミッターをプログラムとして組み込んでいるため、とうに制限を超過したフォーチュンの重装化は、自動的に解除されているはずだった。

 

だが、眼前のフォーチュンは依然として重装化状態のまま、二人のABを相手に暴走を続けている。範囲攻撃に優れた特性を持つペンギンマギアの能力により、率いていた部下は壊滅状態。立っているのは僅かにブルータルとデトネイターのみという状況であった。加えてこの二人は、攻防一体の強風を操るペンギンマギアとは能力的な相性が悪いのである。

「良く言えば膠着、悪く言えばジリ貧……まさかフォーチュンにこんなポテンシャルが秘められていたとはな」

悪態混じりに、ブルータルが冷静に分析した。荒海の如く猛る理性と、凪いだ本能(電脳)を併せ持つ。それがブルータルの自我が持つ個性であった。

「理屈が分かっても対処のしようがねえんじゃなあ……」

「随分と弱気だな。それでもNo.2かよ?」

「これ以上無茶はできねえし——って、えぇ!?」

風のようにブルータルの傍らを通り過ぎる者がいた。過剰とも言える程の重装備に身を包んだ、オオカミの力を宿す仮面ライダー。

ピースメーカーのリーダー・無銘が変身する仮面ライダーバルカンフォースが、唐突にその姿を現したのだ。察知すらできなかった静かな接近に、ブルータルもデトネイターも驚愕している。

「無銘さん、アンタ今までどこで何してたンだよ!?」

「ちょっと別方面に顔出して、方舟のヤツらと遊んでた。で、フォーチュンがやられたらしいな」

重臣が一人殺されたも同然の状況を、抑揚の無い声で処理する無銘。感情の動きなど微塵も見えない、冷淡にも聞こえる低い声だった。

「えらく淡白だな……まァそういうこった、助太刀感謝しま……すぜ?」

ブルータルの言葉に、軽く右手を振って返すバルカンフォース。意図を量りかねているうちに、彼が言葉を次いだ。

「オレ一人で十分だよ。何、心配するな。すぐに終わる」

黒い竜巻の中で、ペンギンマギアの目が赤く光った。それを合図に、バルカンフォースが飛び出す。

直進すれば竜巻に呑み込まれ、身動きも取れぬうちに風圧に潰されるだろう。しかしながらバルカンフォースは、躊躇いなしに黒く渦を巻く風の中へ入っていった。

数秒のうちに、竜巻の勢いが変動する。砂塵や鉄屑を巻き上げていた右回転の風が、真逆の方向に回り始めた。やがて黒い風が左回転の帯電する竜巻に変わり果てると、その中から重装化したペンギンマギアが弾き出された。動きの鈍った両腕を鳥のように必死に羽ばたかせ、窮地より逃れようとしていた。

「いくら敵に細工されたとはいえ、上官に楯突くとは良い度胸してるな……()()()()()()。自我が潰されてるのは残念だが、及第点はくれてやる」

竜巻が小さくなり、中心にいたバルカンフォースの胸へ、胸部に青く光る円形の装置へと吸い込まれていく。フォースライザーに装填されたアサルトウルフキーが再展開され、青い双眸が淡く光った。

『マグネティックストームディストピア!』

竜巻が完全に吸収されると同時に、バルカンフォースが着地する。前方にかざした右手から強烈な力場が発せられ、ペンギンマギアの内部から火花が散った。磁力、重力、引力、斥力……そういった力を操るバルカンフォースの放つ不可視の波動が、ペンギンマギアを内側から破壊し尽くしてしまった。

ペンギンマギアの割れたカメラアイが消灯すると、その体が高く浮き上がる。バルカンフォースはダーツでも投げるかのような軽い動作で、右手から青い光波を撃ち出した。

 

マグネティックストーム

ディストピア

 

稲妻を纏う光波がマギアの胴を貫通した。胸に大穴を開けたペンギンマギアが、空中で爆散する。部下であったものの残骸が、バルカンフォースの周囲に落下した。それらを顧みることもなく、バルカンフォースは息のある二人へと歩み寄る。

「な? すぐに終わるって言ったろ」

「流石だな司令官、まさかあんなに早く済むとは」

デトネイターが称賛の拍手を送る。一方、ブルータルはその光景の異質さに戸惑っていた。自分が信頼していたリーダーが、全く別の何かに変わってしまったような恐ろしさを感じていた。

……あるいは、初めからそうだったのかもしれない。ピースメーカーを設立した時から、ブルータルは幹部として無銘を支えてきた。フラタニティの過激派ヒューマギア達を煽動した時も、彼は真剣にヒューマギアの未来を思ってこそ無銘に賛同したのである。

「さて、そろそろフラタニティの新入り共はネオZAIAの社長とコトを構えてる頃だろう。こちらにも増援を寄越してくるかもな……たとえば、アレとか」

バルカンフォースが上空を、ネオZAIA本社の浮かぶ方を指差した。早朝の空を銀色の飛行艇らしきものが飛び、各方面へと散らばっていく。ネオZAIAの秘密兵器・Ⅲギーガーだった。

「ギーガー!? 随分デカいな、まさか『(セカンド)』に替わる新型か?」

「かもな。よく見てみろ、尾部にコンテナが付いてる。恐らくはヒューマギア輸送用のものだな……連中も後が無いらしい」

四機のⅢギーガーが、市街地上空で散開する。現有戦力のほぼ全てを放出し、一時的にでも延命を図る作戦であるというのが、無銘の読みだった。

「オレ達を退けられれば、向こうも一目散に退却するだろう。だが……興味は無いか? あの新型ギーガー」

「マジで言ってんスか」

僅かに声を弾ませた無銘に対し、ブルータルが冷徹に返した。

「運良く鹵獲できれば、オレ達の戦力になるだろ? ……そら、いよいよやってきたぞ」

バルカンフォースら三人が、同じ方向を見た。空中で人型に変形したⅢギーガーが、コンテナを切り離しつつ着地した。ネオZAIAの尖兵を満載したコンテナを突き破り、トリロバイトマギアが市街地に溢れ出す。五十体を超える戦闘員と、それを束ねるギーガーが無銘達の前に立ち塞がった。

「雑魚は任せた。オレはギーガーを」

「仕方ねえな……やるぞ、デトネイター」

「歯応えは無さそうだが、この数だ。退屈せずに済みそうだなァ!」

鉤爪を振るったギーガーの腕に、バルカンフォースが飛び乗る。それを合図として、新たなる戦端が開かれた。

 

◆◆◆◆◆◆

 

ゼロサウザーが操縦するⅢギーガーとの戦いは、フラタニティ側の劣勢で進んでいた。Ⅲギーガーの金色は見掛け倒しなどではなく、防御力を高める特殊コーティングの色であった。これが仮面ライダーの攻撃すら通さない程の代物で、誰もが攻め手に事欠く状況に陥っている。強いて言えば、強い衝撃を与えて転ばせる程度のことしかできない。

『止められると思っていたか? そのような可能性は0.1%もあり得ないがな』

Ⅲギーガーの頭部から放たれたレーザーが直線軌道で地面をなぞると、着弾箇所から爆発が連鎖し、砂や瓦礫の埃を巻き上げる。

『刮目するが良い! Ⅲギーガーを以てすれば、仮面ライダーだろうと羽虫も同然! 叩き潰してくれる!』

巨大な両腕を振るう度、鉤爪から斬撃が飛ぶ。戦場に文字通りの大きな爪痕を刻むギーガーに、しかしながら仮面ライダー達は一歩も退くことはない。

「ならば教えてやろう。その羽虫が致命の毒を媒介するということをな」

『戯言を抜かすな! 古きヒューマギア風情が!』

空中から降り注ぐ光の矢も、黄金の巨人を傷つけるには至らない。滅を捉えたゼロサウザーが、右腕を振り下ろした。

『スティングディストピア!』

鉤爪が触れる瞬間、滅の身体が毒々しい紫色に輝く。斬り刻まれるはずだった滅の全身が、物理法則を超越した異様な液状化を果たした。

『何だと!?』

「忠告は聞いておくべきだったな」

毒の流体と化した滅がギーガーの右腕を滑り、背中へと回っていった。薄く広がり四肢の隙間に入り込んだ流体が、複雑に分岐した管へと変じてギーガーを縛る。ギーガーの背中に生まれた毒溜まりの中から、滅が上半身のみを出して言った。

「大火力の火器を使われては面倒だ。任せるぞ、サウザー」

「そういうことか! 良いだろう、1000%承知した!」

結晶波動弾を用いた跳躍で、サウザーが身動きを封じられたギーガーの肩に乗り上げる。首元にサウザンドジャッカーを突き刺し、データを吸い出すために柄頭のレバーを引いた。

『JACK-RISE!』

「Ⅲギーガーのエネルギーをいただいた! 滅、そこから離れろッ!」

「潮時か、承知した」

サウザーが空中に飛び上がると同時に、滅が液状化を解除して飛び降りる。拘束を解除されたギーガーの動きが大きく鈍っていた。

『忌々しいオリジナル如きが! 後継たる私の方が性能は上のはず、こんなことは断じて認められん!!』

「ハウ! 一瞬で構わない、ヤツの気を引くのだ!」

「何かお考えがあるようですね……では、ご随意に!」

ギーガーの巨体に飛びついたドードーマギアが、胸部に密着してグレネードを連続発射した。爆発が強烈な衝撃を生み、Ⅲギーガーが仰向けに転倒する。

Ⅲギーガーのコックピットから、ゼロサウザーは外の様子がハッキリと見えていた。ギーガーからエネルギーを奪ったサウザーが、どこに向かったのか。

ビルの屋上で射撃準備を行う、ランペイジバルカンの傍らに、黄金の仮面ライダーが立っていた。

 

「何やってんだ!?」

その場から動けずにいるバルカンが、唐突なサウザーの来訪に驚愕する。

「前言は撤回しよう。三分も待っていられないのでな!」

『JACKING BREAK!』

サウザーは有無を言わせず、ジャッカーをバルカンの背中に突き刺した。

裏切ったのではない。エネルギーの充填に使用する時間を、大幅に短縮するための方法であった。Ⅲギーガー、更にはネオZAIAの防御障壁からサウザーが奪った膨大なエネルギーが、ランペイジバルカンを通してショットライザーへと流れ込んでいく。

「これで撃てるか?」

1()0()0()0()%()問題ねえ。ネオZAIAに一発ブチかましてやる」

自信に満ちた返答に、垓が笑い声を漏らした。サウザーが屋上から飛び降りるのを見た瞬間、バルカンがトリガーを引いた。

 

銃口から虹色の弾丸が発射され、増幅用エネルギーサークルを通過する度、弾が徐々に大きさを増していく。空中のネオZAIA本社へと一直線に、空を切り裂いて突き進む。

アンカーとして突き刺していた、ランペイジバルカンの翼でも殺し切れない反動が生じ、足場に亀裂が走った。鉄筋が折れたのを皮切りに、高層ビルが凄まじい音を立てて崩落する。

崩れるビルの中に沈むように高度を落としていくバルカン。解き放った最強の魔弾が、巨岩に突き刺さる瞬間を、彼は確かに目撃していた。

重機じみた大きさの弾丸が、ネオZAIA本社の下部たる巨大な岩を掘り進む。優れた技術を生み出す研究開発部。人類が存在していた頃から継承されてきたテクノロジーに由来する兵器生産プラント。その他諸々、ネオZAIAという企業を支えてきた本社が、たった一発の弾丸に粉砕されていく。無論、そんなことは諌の知ったことではなかった。

 

巨大化した弾丸は貫通せず、本社に深く突き刺さった。存在するだけで破壊を生む虹色の弾が、身を埋めた巨岩の中で眩い光を放ち始める。激突によって生まれた亀裂から、光が漏れ出していた。

そして、数秒後。

 

オールブラスト

 

ネオZAIAエンタープライズ本社ビルの大部分を構成する巨大な岩石は、夜明けの空に散る花火の如く、盛大に爆散した。

 

つづく。

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