IF:仮面ライダーゼロワン DARKEST DAYBREAK 作:TAC/108
格闘。
身体のカタチに人型を採用する存在にとってそれは、武器を持たずして武器を取る、ある意味では極めて原始的な戦闘技術の一つである。達人と呼ばれる域にまで技を磨き上げれば、拳は槌となり蹴り足は槍の鋭さを持つだろう。
人類が絶滅して久しい2220年の片隅。ヒューマギアが変身する徒手空拳の仮面ライダーと、AIによって制御される二刀流の仮面ライダーの戦いは、最高潮へ至らんとしている。
緑青のライダー、アインは襲い来る無数の刃に武器を持たずして応じている。対手たる白銀のライダー、ゼロワンは手に持つ二刀のみならず全身の装甲を刃に変異させることもできる、いわば人型の剣であった。
ゼロワンの攻勢は苛烈を極めている。回転斬りの勢いで装甲が剥がれたかと思いきや、流体化した白銀が渦を巻いてアインを斬撃の空間に巻き込んでいく。刃の届く圏内においては、ゼロワンは並の手合いを寄せ付けない。
本領を発揮したゼロワンの猛攻は、少しずつアインの装甲を削っていく。打撃を繰り出す手足は、鎧に触れる度に傷がつく。戦いが長引くほど、アインは不利になっていくのだ。
ゼロワンは無言のままに相手を追い詰める。飛電インテリジェンスの防衛システムとして能力を再現されたゼロワンは、自らに組み込まれた無数の行動ルーチンに従って容赦なくアインを斬りつけていく。
しかし。
事ここに至ってなお、仮面に隠されたアインの視線は、敗北の二文字など欠片も脳裏に無いかのように煌めいていた。
袈裟斬るアタッシュカリバーに右フックをぶつけ、左の手刀でプログライズホッパーブレードと斬り結ぶ。ゼロワンの攻めもさることながら、アインもまた半ば捨て身で攻撃を繰り出し続けている。至近距離から膝蹴りを決め、首筋に肘打ちを叩き込む。その身が触れ合う接触距離にて優位を勝ち得んとする、非常に攻撃的な高速戦闘であった。
アインの後ろ回し蹴りがゼロワンの側頭を捉える。強烈な威力にゼロワンの攻勢が止まった。それは一瞬の間に過ぎない、僅かな静止である。しかし、アインが勝機を掴み取るにはこの上なく十分な一瞬であった。
「ここからが勝負だ……!」
四肢を光らせ、アインがゼロワンの右腕を蹴った。次いで左の肘に手刀を入れ、腹に膝蹴りを喰らわせる。ゼロワンの右の頬を掌底が打ち、強烈な踏み込みから背中での体当たりを受ける。疾風の如き連撃をゼロワンは地を踏みしめて耐えるが、それを隙と見たアインの攻撃を招いた。
ほとんど垂直に掬い上げるような高蹴りが、ゼロワンの顎に炸裂する。空中に浮いて無防備を晒した銀の鎧よりも高く、逆光を背負って戦士が跳躍する。
首元の推進器から光を放ちながら、アインの飛び蹴りが直撃した。地上に叩きつけられるゼロワンが、空中で身を翻したアインを見上げ、二刀を構えた。
飛翔する光の斬撃よりも速く、緑青の左足がゼロワンを蹴り飛ばす。後方宙返りから危なげなく着地したアインは、吹き飛んだ先でゼロワンが体勢を立て直すのを目撃した。視線の先で、二刀の柄頭が連結する。
『ドッキングライズ!』
アタッシュカリバーとプログライズホッパーブレード、この二剣は仮面ライダーゼロワンの戦いを支えた原初と終局の二振りである。双頭の剣は刀身を同じ方向に揃えて合体し、空の果てをも斬り裂く一振りとなる。
長大な双頭剣を後ろ手に回し、ゼロワンが跳んだ。低空ステップで一歩を踏み出し、次の一歩で大跳躍を決める。両手持ちの剣から放たれる斬撃を予測し、アインが身構えた。
『ギガントストラッシュ!』
槍の如き刀身から巨大な鉄塊が飛んだ。チャクラムの如き円形の刃が殺人的な左回転でアインに迫る。
アインはハイキックでこれを迎え撃つが、逸らした大円は自動追尾システムを搭載したように再び標的に襲いかかる。威力も以前とは桁違いであり、拳を合わせるだけでも腕に尋常ならざる衝撃が走る。ドーナツ状の円刃の内側を低空ジャンプで通り抜け、着地したゼロワンに突撃した。
『プログライジングストラッシュ!』
『カバンストラッシュ!』
ゼロワンが二刀を分離させ、Xを描く斬撃を飛ばした。アタッシュカリバーの発する光波を全力のタックルで打ち消し、続く第二波を前方への宙返りで躱す。背後から円刃の迫るより速く、アインとゼロワンが切り結ぶ。衛星ゼアの鍛えし業物に、鎧の強度を活かした拳撃で応じる。
「中身が或人社長ではないのだとしても……いや、だからこそ負けられないな! 僕には託された希望がある……!」
手刀、足刀、裏拳、踵落とし……舞うように鮮やかな体術は、徒手空拳でありながら剣の鋭さに引けを取らない。解析する四肢を惜しみなく振るい、眼前の敵手への理解を深めていく。
それは、戦闘と対話を両立するライダー式
『ギガントストラッシュ!』
後ろ手に回した連結剣をゼロワンが大きく振り回した。巨大な刃が至近距離にて生成され、アインを吹き飛ばす。辛うじて攻撃を耐えたアインであったが、その背後にもう一つの影が迫る。
『メタルライジングインパクト!』
ゼロワンがプログライズキーを押し込むと、その遥か向こうで寄り集まった金属が
爆風に煽られ、アインは空中で回転しつつ地面に激突する。満身創痍といった趣であるが、なおも彼女は立ち上がる。ゼロツープログライズキーを手にし、世界を救わなければならない。全ての試練を踏破するためにも、
力を示す。それがこの場を切り抜ける最適にして唯一の解である。アインは確実な勝利を掴むために、敵の手の内を全て引き出さんとしていた。人工知能たる自らの力とは、鏡写しの如く学ぶことにあると定義する故に。
アインの右腕が青色に輝く。首元の推進器よりエネルギーを溢れさせ、右腕を引いた構えを取った。ゼロワンは二刀を分離させ、アタッシュカリバーを地に突き立てる。
『ファイナルライズ!』
ゼロワンドライバーとの連携機構により、プログライズホッパーブレードに猛烈な力が蓄積される。次なる一撃を迎え撃つため、刃が一秒ごとに研ぎ澄まされる。ゼロワンは右手の逆手持ちで、腰だめに構えた。
次の刹那、アインが突風の如く飛び出した。緑青の影が一瞬にして距離を詰め、右の拳を振りかぶる。ゼロワンは上半身の装甲を余さず自らを守る盾に変形させ、前面へと展開した。光る鉄拳と鋼の盾が激突し、爆裂する力が更なる輝きを生む。
『ファイナルストラッシュ!』
それは、逆手持ちの剣がアインへと振るわれようとした瞬間のことであった。今まで破られることのなかった飛電メタルの防御に、光る亀裂が走る。ゼロワンが剣を振り抜くよりも速く、アインの拳がゼロワンの顔面へと突き刺さった。突き出された右腕は、ゼロワンが自らの装甲を費やした盾を見事なまでに粉砕していた。
砕け散った防壁の破片が、時間を巻き戻すようにゼロワン本体へと戻っていく。辛うじて元の形には戻ったが、上半身からは以前までの防御力は失われていた。鉄壁を貫いた一撃は、構造的に弱くなる部分へと的確にその威力を伝えており、遂には変異も間に合わないほどの大打撃となったのだ。
「ようやく攻撃が通った……」
安堵の声を漏らしつつ、アインが動く。斬り上げる大剣から鋼の刃が飛ぶが、左の裏拳がこれを打ち砕く。淀みも迷いもなく、決着へと臨まんとしていた。崩壊した金属の欠片が、銀の花吹雪となってアインの勇姿を彩る。
ゼロワンはそれまでの攻勢が嘘であったかのように、ゆっくりと二刀を連ねる。双頭の剣をゼロワンドライバーへと重ね、膨大なエネルギーを刀身へと行き渡らせる。
『アルティメットライズ!』
長大な剣が青い稲妻を帯びた。ゼロワンは剣を水平に高く掲げ、両手で回転させ始めた。周囲に散らばった金属片が流体へと変異し、回転する双頭の刃に向かって収束していく。金属流体と圧縮エネルギーが破滅的な渦を巻き、さながら嵐の前の曇天を思わせる銀灰色の風が剣を包んだ。
もはや結論は一つ。最大最強の斬撃を以て、ゼロワンは決着をつけるつもりでいる。ならば当方も必殺にて応じねば、勝つことはできない。アインは覚悟を決め、ベルトに差し込んだプログライズキーを力強く押し込んだ。
『アインユニゾンインパクト!』
ラーニングは完了した。可能な限りの
『アルティメットストラッシュ!』
回転する剣が勢いのままに振り下ろされ、最後の攻防が幕を開けた。瞬間移動じみた速度でアインは地を疾走する光波の一撃を蹴り上げ、爆砕する。ゼロワンが背後に振り抜くのと、アインがゼロワンの後方から飛び蹴りを放つのはほとんど同時であった。白銀の流星となって飛来したアインが、ゼロワンの剣速を上回って振り向いた胸板を蹴りつける。エネルギー出力を最大化したアインの機動は、今や稲妻の速さをも超える別次元に到達していた。
足を踏み締めて一瞬で空中へと移動するアイン。特殊金属で空中に足場を作ったゼロワンが、中天を背負うアインを見上げた。溜め込んだ全ての力を注ぎ込み、銀の騎士が全力で剣を横薙ぎに振るう。欠けた月のように弧を描く刃が、上空にいる緑青の騎士へと迫る。
「これで決まりだ! 見ていてくれ、或人社長……!」
アインの放つ全力の飛び蹴りが、至高の斬撃と激突する。炸裂する力と力が激しい光を生み、戦いの終局へと昇り詰めていく。
そして。
破壊の音が鳴り響き、アインのキックが斬撃を打ち砕いた。
ゼロワンはなおも剣を構えるが、振り下ろすよりも先にアインの蹴りが銀の鎧を貫いた。空中から地上へと閃光のように降り立ちつつ、彼女はゼロワンの方を振り返る。
胸に大穴を開けたゼロワンは、連結剣を取り落として動きを止める。空中の足場が消滅し、落下の最中でその体が大爆発を起こした。
『第二試合を終了、挑戦者側の勝利とします』
ナビゲーターが淡々と、アインの勝利を告げる。プログライズキーをベルトから引き抜き、彼女は変身を解除した。
レザージャケットやジーンズは部分的に破損し、覗く傷口から青い流体が流れている。それでも彼女は笑顔で空を見上げ、仲間の待つ場所へと帰っていった。
◆◆◆◆◆◆
かくして、認証プログラム『プレジデント・スペシャル』を第二試合まで勝ち上がった一行。参加人数三名、試合は残すところあと一つとなった。
ベンチに座る不破諌と無銘がアインを出迎え、席に通す。無銘以上に損傷の度合いが大きいアインだが、痛覚を持たないヒューマギア故か、あるいは持ち前のポジティブ思考か、ともかく当人はあっけらかんとしている。
「なかなかやるじゃねえか。にしても、変身したらゼロワンによく似た仮面ライダーになったな。それも飛電の遺産とやらか?」
「このベルトとプログライズキーはね、飛電インテリジェンスが僕に遺した最後の希望なんだ。ゼロワンの後継者として、ヒューマギアの世界を守ってやってくれって……或人社長がそう言っててね」
「飛電の社長が!?」
「ヒューマギアの世界に、あの人は夢と希望を託したんだ。人とヒューマギアが共に笑い合える世界は、叶わない夢になってしまったけど……せめてヒューマギアに幸せになってほしいという夢と、その幸せを守るための希望を、或人社長は遺そうとしてたんだよ」
諌は驚く一方で、腑に落ちる点もあった。ゼロワンに類似する仮面ライダーアインは、実際にゼロワンから派生した仮面ライダーであるが、諌からすると奇妙な存在ではあった。
飛電インテリジェンスの社長であった飛電或人は、人間である。ヒューマギアによる使用を前提としたライダーシステムを作るよりも、彼自身が仮面ライダーとして戦うための力とした方が手っ取り早い。
それでも後継者を置いた理由は……人工知能アークによる人類滅亡が実現されてしまったからであろう。フラタニティ本部でDr.コトブキが見せた、くずおれる仮面ライダーの姿が脳裏を過ぎる。あれは本当に、人類最後の姿だったのだろう。最期の時、或人の周りには誰もいなかったのだ。全てをアークが滅ぼしてしまったために。
「人類が滅んだ後に訪れる、ヒューマギアの世界……アイツはそれを見越して、そのライダーシステムを作ったってワケか」
真実であれば、尋常ならざる覚悟である。自らの死すら想定に組み込んだ上で、それでもいずれ到来するヒューマギア達の時代に、飛電或人は希望を繋いでみせた。まだ見ぬ後継者、アインという守り手の誕生に賭けて、彼は最後の戦いに臨んだのだろう。
「その或人社長ってのは、ヒューマギアが大好きだったのかい?」
無銘が素朴な疑問を口にする。彼はアインよりも若いヒューマギアであり、或人のことを直接には知らない。
「飛電の社長はな、人とヒューマギアが笑い合える世界を夢見てたのさ。考えるのもバカバカしいくらいデカい夢だし、実現するには多くの困難が立ち塞がる。けどな、それで諦めちまうような男じゃあない」
「大きな夢を抱いて走る理想家か。まるでコトブキみたいだな?」
それは無銘にとっては何気ない一言だったが、諌に新たな気付きを与えるものでもあった。諌がコトブキに対して抱いていた印象は、実際のところ飛電或人と似通う部分があったということである。
「あの社長は、どんな苦境に立たされても折れることはしなかった。アイツは夢を追うことの意味を、人間とヒューマギアに伝え続けてたのさ。コトブキも、同じことをやろうとしてるのかもな」
ネオZAIAエンタープライズへの反抗勢力として生まれたフラタニティ。彼らがネオZAIAへの服従を選ばなかったのは、それがヒューマギアにとっての幸福ではないと考えたからであろう。
Dr.コトブキは、この戦いを終わらせることでヒューマギアが夢を見られる世界を作ろうとしているのかもしれない。それがコトブキに対する、諌の所感であった。
「夢」という言葉に思うところがあるのか、無銘の表情に影が差す。口元は笑んでいるが、その眼差しは深い闇を見つめるような暗さを孕んでいた。
「さて……次がいよいよ最後の試合だ。不破さん、頼んだよ」
アインが諌の肩を軽く叩いた。二つの戦いを勝利し、第三の試練が幕を開ける。文字通りに世界の命運がかかった戦いとなるだろう。諌は逸る心境を胸に押し留め、ゆっくりとベンチから腰を上げる。再び形成された円形マーカーへと歩く途中、諌は二人に向かって振り返り、軽く手を振った。無銘やアインにどのような思惑があったにせよ、少なくとも今は仲間として、勝利を繋いだ二人への感謝を伝える。諌は単純な男であった。
人間一人を包むほどのマーカーの内側に立ち、ショットライザーを抜く。プログライズキーを差し込み、装備を封入した弾丸を放った。
『ショットライズ! シューティングウルフ!』
己の正面に戻ってきた弾丸をストレートパンチで殴り壊し、仮面ライダーバルカン・シューティングウルフへの変身が完了する。対戦相手の登場を待たずして、諌は既に戦闘態勢に移っていた。
『プレジデント・スペシャル、第三試合を開始いたします。最終戦は、我が社の防衛システムとしては最強の仮面ライダーが参加します。準備は、よろしいですね?』
ナビゲーターの声音が僅かに跳ね上がる。試すような、あるいは期待をかけるような言葉が、バルカンの耳朶を叩く。
上等だ、ここまで来たら誰であろうと倒すまで。大一番まで温存された分の働きをしなければならない。諌の闘志は心中にて激しく燃えている。
二体のドローンがどこからともなく出現し、下部より放った光線で光る人型を作り出す。そこまでは、これまでに見てきた光景と寸分違わぬものだ。
だが、次の瞬間にはそれまでとは全く異なる現象が発生していた。
光の人型が右手を横に伸ばす。開いた掌に青い光が飛来すると、それがプログライズキーの形を取って人型に握られた。腰に生じた回路図状の光が、ゼロワンドライバーに似た形状の変身ベルトを形成する。左側がクリアイエローのカバーを取り付けたような見た目に変化しており、中央の赤く塗られた部分は、数字の「2」を模している。
「あのキーは……!」
驚いたのは諌だけではない。異空間の端で試合の行方を見守るアインも、そのプログライズキーを見て驚愕の声を上げている。
羽根飾りを思わせるパーツに、透き通る青色。持ち手部分には単眼めいた青いレンズがあり、通信衛星ゼアを模したものであることを示している。
それはアインが探し求めていた、世界を救うための鍵となるもの。飛電インテリジェンスの作りし最高峰の人工知能・ゼアを内包した、最強の仮面ライダーを生み出すプログライズキー。
その名をゼロツープログライズキー。
「今までと違う点でも?」
観客席の無銘がアインに問いかける。
「あのキーはこれまでとは出現の仕方が違う。今まで戦ったライダーが、キーも含めて新たに再現されたものだったとすれば……恐らく、あれこそ僕が探していた
演算の果てに並行世界すら見出したとされる、人工知能ゼア。その力を以て世界を救わんと、アインが求めていたキー。それが今、バルカンの眼前にあるということは……結論はただ一つである。
バルカンは、これまでとは別次元の戦いに挑もうとしているのだ。
『ゼロツードライバー!』
変身ベルトが起動し、中央のパーツが展開しつつ右側へとスライドした。六角形のフレームが認証装置と重なり、変身待機状態へと移行する。
『ゼロツージャンプ!』
ゼロツープログライズキーの起動スイッチが押され、自動展開する。このキーはベルトからの認証を必要とせず、変身者を個別認識して稼働するのだ。
『Let's give you power! Let's give you power!』
ゼロツードライバーより、『02』の文字を模した光のエフェクトが出力される。更には地中から浮き出るように衛星ゼアを象った巨大な幻影が出現し、垂直に起き上がったそれが人型の正面へと重なる。
『ゼロツーライズ!』
人型がプログライズキーを装填すると、二体のバッタ型ライダモデルが出現した。黄色と赤色のバッタが、異次元の地表を踏み鳴らす。
『Road to Glory has to Lead to Growin' path to change ONE to TWO!!
ゼアの幻影が光る人型を通り抜け、マッシヴなアンダースーツを作り出した。そこに跳ね回る二体のバッタがスーツに重なるように融合し、黄色と赤色のツートンカラーが特徴的な強化装甲に変じた。周囲を飛び回る『02』の文字が、小さくなりながら首元に接続され、小さなスカーフのようなパーツへと変形し、変身が完了した。
『It's never over.』
これまでの仮面ライダーゼロワンと比べると、見た目としては極めてシンプルであった。バッタのライダモデルを基本とするゼロワンシステムの特徴である、一対のアンテナを生やした無機質な仮面も、細部に違いこそあれどシルエットは概ね引き継がれている。シャイニングアサルトホッパーのような重装備でもなく、メタルクラスタホッパーの如く全身を飛電メタルに覆っているわけでもない。だが、アンダースーツの時点から太く逞しくなった四肢からは、それまでとは別次元の力が漲っていた。
黄・黒・赤・銀の四色を配した装甲は、二つのライダモデルを融合させた多重装甲と化している。全体的に丸みを帯びたフォルムでありながら、脚部や赤く染まった前腕部からは確かな力強さが感じられるものとなっていた。
現れた戦士が、両手を横に広げる。特殊技術によって展開されていた別空間がポリゴン状に崩壊していき、遂には雨降る本社屋上へと回帰する。諌達一行は一瞬にして、現実空間へと戻ってきたのである。
驚く間もなく次の異変が襲いかかる。雨雲を貫くようにして、天から幾筋もの光が降り注いだ。結晶の床に深く突き刺さったそれらは、ただ一本を除いては全てが同一の武器であった。可変剣アタッシュカリバーが、飛電本社屋上へと無数に姿を表したのだ。戦士の傍らに突き刺さった一振りは、プログライズホッパーブレード。ゼロワンより引き継いだ武装の一つである。
それは、飛電或人という一人の男の夢想から生まれた存在であった。
人間とヒューマギアが、共に笑い合える世界。彼がとある事情から飛電インテリジェンスを離れ、飛電製作所という新たな会社を立ち上げてなお、その大きな夢に向かって飛び続けた末に辿り着いた、究極の結論。
即ち、人工知能と人間を一つにする仮面ライダーである。人間とヒューマギアが同じ夢に向かって進む雄姿こそ、悪意の人工知能を倒す鍵であると信じたからこそ、彼は傍らに在りしヒューマギアと共にこの姿へと至った。
人間とヒューマギア、善意と悪意、0と1の二元論を超越する夢に向かって飛ぶために。
かくして力は授けられた。
栄光への道は、1から2へと
この夢は、決して終わりはしない。
不滅の希望を伝える戦士が、今ここに顕現する。
仮面ライダーゼロツー、それが彼の名であった。
『それでは、第三試合を開始します。プレジデント・スペシャル最終戦——はじめ!』
つづく。