IF:仮面ライダーゼロワン DARKEST DAYBREAK   作:TAC/108

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Part-3 無明行路

ヒューマギア中立勢力、フラタニティのリーダーである謎のAI・Dr.コトブキ。引き入れた不破諌ら三人に、彼は「我々を助けてほしい」と頼み込んできた。わけもわからぬまま協力を要請されているために、諌らは一様に疑いの目を向けている。そんな彼らに対し、コトブキの隣に立っていたハウが説明役を買って出た。

「ここから先は私達が説明いたします。フラタニティとは何か? そしてフラタニティを狙う三大勢力とは何なのか? それらについては……実のところこの場で最も詳しいのは私ですので」

「そこはドクターじゃないのか?」

「見ての通り、コトブキ様はこの場から離れるのが難しい状態です。フーの主な仕事はコトブキ様を補佐することであるのに対し、私の仕事は外部の情報収集と有事の戦闘ですので。ホラ、この通り」

ハウが軽く右腕を振ると、スーツごと右腕が異形の金属装甲に変化し、攻撃的な鉤爪を持つ五指をチラつかせる。右手を握り込むと、元のスーツ姿に戻った。

 

「フラタニティが『中立勢力』という形を取り始めたのは、実はつい最近のことです。元々はヒューマギアによる局地的な集まりの一つに過ぎませんでしたが、今からお話しする三大勢力の一つが日本に現れたのを境に、コトは大きく動きました。フー、ロゴは出せますか?」

無言で応じたフーが、立体映像を出す。それは企業のロゴマークであったが、社名を表示された瞬間に二人が身を乗り出した。

不破諌と天津垓である。特に衝撃を受けていたのは垓だった。

 

「『NEO(ネオ) ZAIA(ザイア) ENTERPRISE(エンタープライズ)』……!?」

 

「今から七年前のことですね。かつて存在したグローバル企業・ZAIAエンタープライズに由来する極めて高い技術力を持った、ヒューマギアの軍隊がこの国に突如現れました。一応はヒューマギアを対象とする企業ですが、実態は軍事力と強制ハッキングにモノを言わせた支配でして、反抗する者も現れました。それが現在のフラタニティの始まりです」

「ヒューマギアがヒューマギアを相手に商売をするのか?」

「我々の文明はかつて存在した人類文明をベースとしていますので。機体の修繕費は電子決済ですし、ヒューマギアの銀行も存在します」

諌の質問に対してハウは微笑みを返した。親しみやすさが感じられる自然な笑顔であった。

「NEO ZAIA ENTERPRISE、通称ネオZAIAが日本にやってきた理由は二つ。飛電インテリジェンスに関連する旧時代の技術を手に入れることと、自らの勢力拡大です。ネオ・ザイアは日本に来る以前にも世界各地を軍事力によって支配しており、その巨大さから『ZAIA帝国(エンパイア)』と称されています。『NZN』という独自のネットワークを持ち、これに接続させることで、ヒューマギアを支配下に置いているようです」

「頭が痛くなってくる話だな。ZAIAの帝国なんざ笑い話にもならん」

「……それで、フラタニティとネオZAIAの関連性とは?」

垓は諸々の感情を呑み込んで質問する。本心では頭を抱える事態だったが、今はとにかく考える材料が欲しかった。

「ネオZAIAが狙うテクノロジーは、我々……というより、Dr.コトブキが個人で保管しているものです。具体的には飛電インテリジェンスの極秘プロジェクトや衛星ゼアに関連するデータですね」

「というと……もしや、ゼロワンの?」

飛電インテリジェンスの社長にのみ使用が許可された仮面ライダーシステム。それが『仮面ライダーゼロワン』である。元々は滅亡迅雷.netおよびアークへの対抗策として開発されたものだが、アークが衛星ゼアを掌握した際に使用を封じられた。

「『01(ゼロワン)計画』というプロジェクトについての情報をどこかから嗅ぎつけた彼らは、各地のヒューマギアを独自のネットワークに強制接続させて支配下に置くことで、コトブキ様から安全にそのデータを取り出そうと考えていました。しかし、二つの理由でこれは叶いません。コトブキ様がレジスタンス組織を設立したことに加え、新たな勢力が闇の中から這い出てきたからです」

「そのレジスタンス組織がフラタニティの原型ってワケか」

諌の答えをハウは肯定したが、疑問は更に増えた。

元々ネオZAIAへの反抗勢力だったフラタニティが、なぜ今は中立を宣言しているのか。その点が諌には解せぬ。

「ネオZAIAとフラタニティの兵力差は圧倒的でした。しかし、フラタニティは飛電インテリジェンス由来のテクノロジーで彼らの支配を免れ、かろうじて不服従を貫いています」

「飛電由来というと、ハッキングを無効化する技術か?」

半ば直感的に、諌の頭を過ぎるものがあった。アークのハッキングを無効化する技術は、仮面ライダーゼロワンの装備を元としてこの時代より遥か昔に完成している。

Dr.コトブキが飛電インテリジェンス由来の技術を保有しているなら、ハッキングによる支配を防ぐ術があってもおかしくはない。

「ご存知なのですね、不破様」

「まあな。こう見えて飛電の社長とは縁がある」

諌にとっての『飛電の社長』……飛電或人/仮面ライダーゼロワンは戦友のようなものであった。この時代においては志半ばに倒れた彼の思いが受け継がれたように思われ、諌は何とも言えない感慨を覚えた。

 

「もう一つの勢力は『(ゼロ)方舟(はこぶね)』。デイブレイクタウンを拠点とする、武装ヒューマギアの集団です。彼らはネオZAIAの日本上陸から程なくして、行動を開始しました」

ハウの解説に合わせるように、立体映像が切り替わる。真っ黒な菱形の中心に『零』の一文字が赤く描かれた、シンプルながら不気味なマークが浮かび上がる。

「『ゼロ』と名乗るヒューマギアをリーダー格に据えていまして、敵対者を見つけると容赦なく殲滅する危険性が特徴です。ネオZAIAほどの勢いはありませんが、フラタニティの管轄区域を除けばどこにでも現れる神出鬼没のテロ組織ですね」

「待て。つまり俺がいた場所は『零の方舟』の拠点だったということになるぞ。どうやって入った?」

突然質問を投げかけたのは滅であった。デイブレイクタウンで目覚めた滅は、ハウに導かれてフラタニティの管轄区域に来た。武装ヒューマギアに気づかれずに往復する方法があるのなら、まず『零の方舟』が黙っているはずがない。

「実は……私自身、元々は『零の方舟』所属のヒューマギアでした。リーダーのゼロも含めて、彼らの起源は衛星アークにあります。私は既に彼らのネットワークを脱していますが、再接続自体は可能です。彼らが用いているのは人類が健在だった頃の、アークに由来する古いネットワークですからね」

「……なるほど。ハッキング対策を利用しつつ、『零の方舟』の一員として他のヒューマギアの()()()()()()()()ということか。随分と大胆な方法を取る」

ハッキング対策に関してはやや憎らしげだったが、滅はハウの手際に感心していた。そして、滅は自らが道中で攻撃されなかった理由にもある程度の見当をつけていた。

元来、滅亡迅雷.netとしてアークに接続していた滅は、どうやら同じくアークに起源を持つ『零の方舟』に近い存在と見られていたらしい。

 

「まあ私の話は後ほどということで、いよいよ最後の勢力ですね。彼らの名は『ピースメーカー』。()()()()()()()()()()()()、ヒューマギアの武装組織です」

次に表示されたマークは、かなり攻撃的なデザインだった。

威圧的な髑髏の下に交差した一対の拳銃を据えており、銃身にそれぞれ『PEACE』『MAKER』の文字が刻まれている。

「……方針転換で意見が割れた。大方そんなところか?」

フラタニティがネオZAIAに対抗するための組織だったことを思えば、諌の推測は考えうる帰結の一つだった。

「そうですね。フラタニティが中立勢力を名乗り始めた頃に、一部のヒューマギアが徹底抗戦を訴え、最終的にはフラタニティを離れて戦い始めました。彼らの目的はネオZAIAと零の方舟、双方を壊滅させることです。規模は最小、しかしながらフットワークが極めて軽いのが特徴です。最近ではネオZAIAの兵器工廠を占拠したことで、徐々に戦力を増強しています」

端的に言えば武断派である。フラタニティもピースメーカーも、ヒューマギアの平和を願うものだったが、その方針が食い違ったことで決定的な分裂を生んでしまったらしい。

 

「フラタニティが中立を宣言したのは、彼らの力あってこそという側面もありまして、故に我々は窮状に立たされていると言っても良いでしょう……ご理解、いただけましたかな」

ハウはやや険しい表情で締めくくった。

諌は首を捻っていたが、何かを決心したようにコトブキへと問いかける。疑念の混じった眼差しが、箱型の機械へと向けられた。

 

「色々聞いてきたが、結局俺が知りたいのは一つだけだ。なぜ俺達に頼る? アンタら自身で解決すべき問題じゃないのか? この世界の俺達はもう二百年前に死んでるんだろう。それなのにわざわざ招いた理由はどこにある?」

 

諌は難しいことを考えるのは得意ではない。だが、コトブキやハウの言い分を聞けば聞くほど、その裏に何か別の意図が含まれているように思われ、彼の心中に疑念が募っていく。

無論、単なる当てずっぽうではない。諌自身が、かつてそういった策謀に踊らされた一人だからである。コトブキこそ倒すべき邪悪であると判断したならば、諌はすぐにでも銃を抜くつもりであった。

 

「この管轄区に住むヒューマギア達は皆、戦いに疲れています。しかし、我々は中立と言いながらその実、いつ壊れるとも知れぬ偽りの平和の中で暮らしているに過ぎないのです。ネオZAIAや零の方舟がここに来ないのは、到達する術を知らないからであって、それさえ分かれば一時間後にでも攻め込むかもしれません。その時に、誰もがハウやピースメーカーのように戦えるわけではないのです」

「だから俺達に戦いの責を背負わせるのか? ネオZAIAも零の方舟も、元は身内だったピースメーカーをもブッ潰した先に何がある?」

語調を強める諌に対し、コトブキは躊躇いなく言い放つ。

「フラタニティの解散ですよ」

「はァ?」

「私がフラタニティを作ったのは、一体でも多くのヒューマギアをネオZAIAや零の方舟の支配から遠ざけ、以前と同じ平穏をもたらすためです。彼らを打ち倒すことで、フラタニティはその存在意義を消失しますし、残り続ければ彼らの二の舞となるでしょう」

ネオZAIAや零の方舟のように、強制的な支配体制を敷く存在になっては意味がない。しかし、三大勢力を倒すために誰もが戦えるわけではない。だからこそ——と、コトブキが続ける。

 

「我々は最終手段として、過去に存在した『仮面ライダー』の協力を仰ぐことにしました。ゼアのネットワークに残されていた理論を用い、並行世界すら飛び越える時空間跳躍装置を作ったのです。かつて人類とヒューマギアを繋ぐために戦った方々の力を借りるために。勝ち目のない戦いに勝つために。この闇夜の如き時代を乗り越えるために」

 

突如、箱型の筐体が展開し、扉が左右に開いた。大きな台が前方に迫り出し、内蔵されていたアームが光線によって何かを形作る。やがて激しい光が止むと、台の上には一本の剣があった。

黒と黄色に塗られた片刃の剣。諌達はそれを知っている。鞄の形に変形する『アタッシュウェポン』と呼ばれる仮面ライダー用の可変式兵装の一種。

その名を、アタッシュカリバー。

「私もまた戦乱の元凶です。ネオZAIAに反抗を誓った七年前のあの日から、この戦いは始まりました。どうか力をお貸し願いたいのです。ただ守られるだけの者ではなく、共に戦う者として」

「俺達には協力する動機なんざ——」

「おっと、私まで一緒にされては困りますね」

諌の発言を垓が遮る。協力する動機が無いという諌の言を、垓は真っ向から否定した。

「ネオZAIAとやらは実に許し難い存在です。ZAIAの名を騙るヒューマギアの侵略者、聞くだけでその醜悪さは理解できましょう。かつての私を見ているようだ」

垓に続くように、滅が立ち上がる。

「この世界で如何にしてアークが滅んだのか。結果は認め難いが、過程に一考の余地はある。アークに起源を持つという零の方舟も含めて、確かめる必要はあるだろうな」

「お前ら……こんな時に限って息合わせやがって……!」

二人がニヤリと挑戦的に笑ったのを見て、諌の顔に青筋が立つ。

実のところ、諌とてフラタニティに力を貸すのはやぶさかではない。コトブキの覚悟を知り、諌はこれ以上の追及をするつもりはない。『人間とヒューマギアが笑い合える世界』を夢見ていた、飛電或人に対する義理立てもある。

ただ、恐らくはこれから同行することになる相手はかなりの曲者である。今でこそ味方だがつい先日まで敵同士だった天津垓と、目下最大の敵であるアークの使徒たる滅。諌からしてみればどちらも仇敵のような間柄で、何とも言い難い感情が渦巻いていた。その横で、垓は奇妙なものを見たといった風な表情をしている。

「珍しいですね。飛電或人に近い立場の君が、こうも渋るとは」

「くッ……ぐぬぬ……! だいたい、お前はどうなんだ、滅! 不意を打つつもりじゃあないだろうな!?」

「案ずるな。少なくとも今回に関して言えば、俺はお前達と敵対するつもりはない。こちらとて元の時代に戻り、アークとの接続を取り戻さねばならんからな。フラタニティとの協力は必要不可欠だ」

整然と理屈を述べる滅に、諌は奥歯を砕かんばかりに噛み締める。苛立ち混じりに髪を掻き回し、遂に言った。

「あーッ! わかったよ、仕方ねえ……Dr.コトブキ、俺はアンタを信用する。絶対に、裏切ってくれるなよ」

「もちろん、承知しましたよ」

「はァ……先が思いやられるな……」

コトブキは穏やかに返答するのに対し、諌は疲れ切った様子でため息をついた。

 

◆◆◆◆◆◆

 

夜風に当たりながら、諌は空を見上げていた。

フラタニティ管轄区の中心にある電波塔の一階・二階部分は、諌達の居住区として貸し出されることになった。諌と垓は二階、滅は一階を選んだ。諌は円形の床から足をぶらつかせ、白い満月を眺めている。

そこに向かって、無機質な足音が寄ってくる。何事かと目を向けると、素体ヒューマギアの姿があった。

……右目が破損した、素体ヒューマギアの姿が。

「ぬぉあ!? って、なんだコトブキか。またその姿か」

「まあ、私もこう見えて昔はヒューマギアでしたので」

諌をフラタニティの本部まで導いた、素体ヒューマギア。その正体はコトブキによって遠隔操作された、名もなきヒューマギアの一体である。

「どういう理屈なんだソレは。まさかアークみたいに乗っ取ってるのか?」

「貴方が思っているほどの自由度はありません。メモリーが初期化されたヒューマギアか、バックアップを失って再起動が望めなくなった……俗に言う『死んだ』ヒューマギアでなければ、遠隔操作はできないのですよ」

諌は肩をすくめた。人類のいなくなった世界でも、彼らには『死』の概念がある。当たり前のように思っていたが、深く考えてみれば恐ろしい話でもあった。

「殺し合いの自覚があるってコトかよ」

「まあ、そうなりますね。人間がいない中で、人間を学んだ結果でもあるのでしょう」

合成音声がノイズ混じりに言った。語る言葉にはどことなく虚無的な響きがある。素体ヒューマギアはおもむろに腹部のカバーを取り外すと、内蔵されていた小さな缶を諌に手渡した。緑色の缶は、ほんのりと温かい。

「何だコレ」

「緑茶缶です。飲食は我々にとって、メジャーな補給手段ではありませんが、貴方は人間ですので。お口に合えば良いのですが」

「そうか……ありがたく頂こう」

プルタブを引き、諌は緑茶缶を勢い良く呷った。苦味の中に微かな甘味がある。後味も爽やかだった。

「元はヒューマギアだというが、何をやってたんだ?」

「人類史のデータを編纂し、ネットワークを通じて発信する。それだけですよ。ゼアやアークが記録していた、今は亡き人々の歴史。それを文明発展に役立てたいと思いまして、先代からデータを引き継ぎました」

「ほう……俺には難しい話だが、面白そうな仕事だな」

「仕事や義務の類ではありません。先代と同じように、ただ好きでやっているだけです。変ですかね?」

変、と言うならば、確かに諌にとっては変わった話である。

コトブキとの対談を終えてから、諌はフラタニティやこの時代について更に多くのことを知った。

 

技術的特異点(シンギュラリティ)という概念がある。ヒューマギアの場合は『人間に近い自我や感情の獲得』を指す場合が多いが、この時代におけるヒューマギアをはじめとする人工知能はほぼ全てが人間的な自我や思考を持っているのだ。フラタニティのヒューマギアはほとんどが穏やかな気質で、彼らの言動には明らかに機械的でない情動が見てとれた。突如現れた諌達に対する、怯えや期待が垣間見える。

加えて、ヒューマギアに用いられている構造材も諌の知るものとは異なる。『飛電メタル02(ゼロツー)』なる金属素材がこの時代のヒューマギアに用いられているようで、服装など容姿の変化も自在にこなすという。実際、諌が出会ったフラタニティのヒューマギアには変装を得意とする者や、ファッションに独特のこだわりを持つ者もいた。

ちなみに、諌の知るヒューマギアは識別などに用いるヘッドギアを着けているが、2220年のものはそれが無い。諌とて言われなければ人間と区別がつかないほど、彼らの姿は人間そのものだった。

 

「どいつもこいつも姿どころか振る舞いまでほとんど人間だ。俺からすりゃ確かに変かもな」

「彼らは自ら望んでそのようにしている者達ですからね。中には、ヒューマギアの身体が不便だと言って、別の機械にメモリーを移す変わり者もいますが」

「でも、良いんじゃねえか? アンタにはアンタの夢や志があって、そのために色んなデータを集めてたんだろ。フラタニティを解散しても、もう一度始めたいと思うか?」

コトブキが沈黙した。考えたこともなかった、というような反応だった。諌はその様子に、コトブキには何事か気負うものがあるということを漠然と察する。

「全部終わってこの世界が平和になるかはわからん。だが、もしもフラタニティが解散して、ヒューマギアの一人として自由を手に入れた時のことくらいは、考えてもいいんじゃねえか?」

「……ありがとうございます、不破諌さん。まさかそのような言葉を、貴方から聞けるとは」

「礼はコトが片付いてからに取っておけ。俺も昔は前しか見えてなかったってだけだ」

ヒューマギアの大規模暴走事件、デイブレイクに巻き込まれたという()()()()()。それに衝き動かされるように、かつての諌はヒューマギアを激しく憎悪していた。しかし、その記憶を振り切った先に、彼は己を形作っていた怒りを投げ捨て、『夢』を探すことを決意したのだ。

そんな彼だからこそ、夢を追う者を助けたいという気持ちは強い。たとえそれが人工知能であっても、彼に明確な区別などなかった。

「私、泣いてもよろしいでしょうか」

「泣けるのか? そもそもヒューマギアが泣くのか?」

「頭部の冷却液をですね、目からタラーッと……」

「……せめて人間の姿でやってくれ」

どうやら諌が出会ったヒューマギアは、随分と話し好きだったようだ。

話が長引くことを察して、諌は温くなった緑茶缶の残りを一気に飲み干した。

 

つづく。

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