IF:仮面ライダーゼロワン DARKEST DAYBREAK   作:TAC/108

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Part-26 Present For Your Future

フラタニティのヒューマギア・フーが変異した流体金属の巨人、アイオーン。これと対峙する仮面ライダーサウザーが、自らの武器であるサウザンドジャッカーから斬撃の光を飛ばす。

「このボディを突き破らなければ、フーは救出できないのか!?」

垓が共闘者たるバッファローマギア・エンデュランスに向かって叫んだ。頭部から放たれた雷撃をかわしながら、エンデュランスが言う。

「どうやらそうでもないらしい。流体金属のボディはそれ自体が一種のエネルギー体でもある。見た目は大きく異なるが、構造上はマギアとそう大差ないようだ」

『つまりアイオーンに攻撃を続ければ、それだけフーを傷つけてしまうようですね』

サウザーの乗ったトレーラー車からDr.コトブキが言った。アイオーンの周囲を走りながら、サウザーは対策を考える。幸いにもアイオーンの攻勢は激しくはなかった。だが、迂闊に攻撃すれば、仮にフーの身柄を取り戻したとしてその後にどのような影響があるか分かったものではない。攻めあぐねる状況がしばらく続く。

周囲にいたはずのネオZAIAエンタープライズのヒューマギア達は、既に姿を消していた。作業場に向かった者や、フラタニティの仮設ベースキャンプへと進軍する兵士達など様々だが、邪魔が入らないというのは垓達にとってはありがたかった。

アイオーンが流体の右腕から燃え盛るエネルギー体を解き放つ。それは炎を纏う巨鳥となってアイオーンの周囲を飛び回った。フーがその身に宿していたライダモデルによるものだったが、垓はその来歴を知らない。

「プログライズキーのデータを用いた攻撃はそのまま使えるようだな。さて、どう戦う……」

サウザーが走行するトレーラーから飛び降り、アイオーンの死角に回った。試しに流体の水面に腕を突き入れると、内側から発生した引力に引っ張られて体内から排出された。真正面に回ったようで、アイオーンがサウザーを見下ろしている。

『ふむ……そのままでは木偶も同然か。では、私が指示を下すとしよう』

黄金の天井から生える逆さのピラミッドめいた建造物から、垓と同じ声が響いた。ネオZAIAのネットワークの管理権限を持つ骸が、アイオーンとネットワークを通じて意識を直結させる。アイオーンの双眸が一際強く光り、鋼の擦れるような咆哮が上がる。

 

『これよりは私の指揮下だ。その力を解放しろ、アイオーン!』

アイオーンが拳を握り締め、黄金の床を打ち鳴らす。飛散した流体の粒が、一塊になって漆黒のライダモデルを形作った。冷気を操るホッキョクグマが、内側から凄まじい冷気を解放しながら爆散した。

サウザンドジャッカーから火炎を放ち、サウザーが冷気を相殺する。しかし、ライダモデルの破片から別種のライダモデル……稲妻を発するスズメバチの群体が形成され、サウザーへと殺到した。爆裂する光の中から自律飛行する可変兵装アタッシュショットガンが飛び出し、追撃を浴びせる。

薙ぎ払うように右腕を振るったアイオーンから、流体金属が飛び散った。エンデュランスは刀を納め、落下した金属の粒から形成された漆黒のマギアと戦う。全てトリロバイトマギアであったが、数が多い上に殴った端から損傷が修復されていく。一つの下半身から上半身を二つ生やした異形のマギアまで現れ、徐々にではあるが苦戦を強いられつつあった。

エンデュランスはその間も、アイオーンから発せられるエネルギー反応からフーの行方を探っていた。あの流体ボディ自体がフーそのものであるというのは間違いないが、本質がヒューマギアであるのなら、そこには「源となる人工知能」が存在する。しかし、不規則に流れを変える流体の外からその所在を探るのは、困難を極める。

何か勝機に繋がるものはないか、と考えた矢先。

 

「サウザー! ジャミング装置を使え!」

エンデュランスが叫んだ。サウザーは懐から小型のジャミング装置を取り出した。元々はフーが持っていたものだが、骸の下へ先行して向かった際に彼女から託された最後の一つであった。

「ジャミング装置……そういうことか! 了解した!」

垓は即座に意図を理解した。アイオーンへと変身したフーは、ネオZAIAのネットワークに接続させられた状態になっている。逆に言えば、今のアイオーンの動きをジャミング装置で封じられる可能性があるということだ。

『制御は私にお任せを!』

コトブキがトレーラーの車内から言った。その言葉を背に受け、サウザーがジャミング装置を持った右手をアイオーンの体躯に突き入れた。水面を打つような湿った触感を伴い、腕が流体の中に沈み込む。

ジャミング装置を手放し、サウザーが跳び離れた次の瞬間であった。

『ここをどこだと心得ている? 地下通路ならばいざ知らず、私の膝下でそのような小癪なマネが通用するとでも!』

骸の力強い声が響き、呼応するようにアイオーンが咆哮した。揺らぐ体表に黄金に光る0と1が浮かび上がり、何かを演算している。

「コトブキ氏!」

『ご心配なく! とはいえ……少々手強いですな。このままではネットワーク防御によって、ジャミング装置が無力化されるでしょう。骸との勝負(時間稼ぎ)は私が引き受けます、急ぎフーを!』

骸は自ら管理する巨大ネットワークを駆使し、ジャミング装置を逆に返り討ちに(ハッキング)しようとしていた。それによってアイオーンは自らの制御を取り戻すが、動きは精彩を欠いたものとなっていた。

両手を祈るように組み、アイオーンが地面を殴りつける。その勢いで飛散した黒い雫が、漆黒のバッファローを形成した。猛牛がマギアと戦うエンデュランスを襲撃し、太い角と凄まじい突進力で防御の上から吹き飛ばす。

壁に激突する寸前でバッファローマギアが身を翻した。黄金の壁に両足を踏み締め、ブースターの加速も乗せた前方跳躍でバッファローのライダモデルへと突撃する。一瞬にして両断されたライダモデルを背に、エンデュランスがアイオーンに目を向ける。

飛び散った流体から形成される様々なライダモデルやマギア。それらを倒すことに意味はなく、アイオーン本体に攻撃を届かせる必要がある。だが、アイオーンへのダメージがフーにどのような影響を及ぼすかは不明だ。

サウザーがサウザンドジャッカーを横薙ぎに振るった。雷の斬撃波がアイオーンの巨躯を焼くが、僅かな傷に過ぎず一秒にも満たぬ速度で修復される。

「中に飛び込んでどうなるというものでもあるまい——いや、まさか?」

垓が自らの手元に視線を落とす。右手に握ったサウザンドジャッカーと、アイオーンを交互に見遣る。

——()()()()()()()()()()()()()()。闇の彼方に沈んでいったフーを掬い上げる方策が、垓の中で一つの実像を得る。

「待っていろ……今そこから引き上げてやる!」

サウザーが大跳躍でアイオーンの肩へと乗り上げた。着地の勢いで膝近くまで足が沈み込むが、サウザーはこれを好機として徐々にアイオーンの首元へと近づいていく。内側から引っ張る力を強引に振り払い、一歩ずつ歩みを進める。

射程圏内に巨人の首筋を捉えると、そこへサウザーが勢い良くサウザンドジャッカーを突き刺した。刀身が半ばまで埋もれると、柄頭のレバーを思い切り引っ張る。

『JACK-RISE!』

「よし!」

手応えはあった。内も外も同質の金属に満たされたアイオーンの巨躯から、膨大なデータがサウザンドジャッカーへと流入する。突き入れた箇所の内側から、沈み込んだジャッカーの刀身が宿した極彩色の光が漏れ出ていた。

ジャッカーを通し、サウザーのシステムに莫大な量の情報が流れ込む。それはアイオーンのボディを構成する流体金属そのものに宿るものであり、更にはサウザーのライダーシステムの容量を上回るほどのエネルギーまでもが加わる。

「ぐ、ぬうぅッ……!」

絶大な数のデータとエネルギーに、ジャッカーだけでなくサウザーの全身からも電子回路がショートしたかのような火花が散った。しかし、自壊寸前の状態でありながら、サウザーは決してジャッカーから手を離さない。

「フー……私は君に言った。正体を知るのが君の夢ならば、助力は惜しまないと。だというのに——私は君の正体を知ることを、心のどこかで恐れていた! 知ってはならない真実を知ることを恐れた!」

サウザーの右眼が爆ぜる。仮面が砕けたことで頭を負傷し、露わになった垓の右眼が血に染まる。

「君の正体を少しでも疑ったことが私の罪であり、この状況が罰だとするのなら……償わせて欲しい。君を助け出し、共に戦うことで——ぐあッ!」

肩から生えた銃口がサウザーに向けて火を噴いた。腹部への直撃を喰らいながらも、サウザーは得物を手放そうとはしなかった。既に下半身はほとんど沈んでおり、エネルギーの過剰流入で機能の低下したライダーシステムでは這い上がることも難しい。

流体金属がサウザーのボディを取り込む寸前、脳内に伝達されたデータの内容に、仮面の下にあった垓が笑んだ。最後の力でサウザンドジャッカーを引き抜き、両手でしっかりと抱え込む。

「エンデュランス、ここは任せるぞ——私は、彼女に会いに行く!」

巨人の足下で戦うエンデュランスに言伝し、サウザーは完全にアイオーンの体内へと沈んでいった。

 

◆◆◆◆◆◆

 

深く、深く、闇の中へと降りていく。

真っ黒な空間を底なしのフリーフォールで落ちる感覚を、天津垓はその身で確かめていた。

それは電脳空間とも異なる、塗り潰したような闇で形成された異空間。灯火もないのに、垓は自らだけを正しく認識できている。装甲に包まれた黄金の四肢……変身は未だ解除されていない。いつの間にかライダーシステムはほとんど無傷の状態に復旧されており、砕けたはずの仮面も元通りの視界を確保していた。

数分の後、サウザーは自由落下の終着点に辿り着いた。彼の得物は暗黒の空間に燦然と存在感を放ちながら、主の到着を待っていた。

「なるほど、これがアイオーンの内部か」

サウザンドジャッカーのグリップから流れ込む情報を頼りに、サウザーは周囲を確認する。床を軽く足先で突いてみるが、何とも言い難い無機質でドライな感触であり、特筆すべきものはなかった。

アイオーンの体躯は全長にして約七メートルはあるが、現在サウザーのいる異空間はその大きさからは考えられないような広さを持っていた。この場所は物理法則の中に存在せず、つまりはアイオーンも同様に物理法則を超越した存在ということになる。

恐らくはこの暗闇のどこかに、フーの意識が存在している。果ても光も見えない暗黒の中をどう探したものか……と悩んでいると、周囲の闇が何やら輪郭を持ち始めたことに気付く。

サウザーが身構えた次の刹那、明転したかのように輪郭の正体が明らかとなった。

 

「これは——何とも、恐ろしいモノを生み出してくれたな」

垓が失笑混じりに独り言ちる。

サウザーの周囲で、暗闇が取り払われた。代わりに現れたのは、陽光の射さぬ雨天の空。黒い雨の降る中で、サウザーは無数のスクラップに囲まれていた。

三大勢力の主戦場でもある、日本国内のとある市街地。この一角にかつて存在した、ネオZAIAによって廃棄された第一研究所の跡地。

垓は実際にその光景を見たわけではないが、データとしては知っていた。故に、自分が今いる場所がその再現であることは理解できた。現実との違いがあるとするなら、周囲の建造物すらガラクタによって形成されているということだが。

サウザーの眼前には、うず高く積もったヒューマギアの残骸に築かれた山があった。その頂点には、膝を抱えてうずくまっている白い髪の少女がいる。

「迎えに来たぞ。私だ、天津垓だ。共にフラタニティに帰らないか? コトブキ氏だけではない。私も、他の仲間達も、皆が君を待っている」

少女は何も答えなかった。顔を俯けたまま、微動だにしない。

「ようやく理解できたよ。これが君の真実だった、というワケか。ネオZAIAエンタープライズで開発された機能複合型ヒューマギア……彼らの中に、(ヤツ)が言うところの完成形とやらは存在しない」

周囲を見回しながら、垓が言った。装甲板で作られた路面を足先で叩き、ヒューマギアの部品で作られた廃ビルの壁を撫でる。ヒューマギアの少女……フーが座するスクラップの山の中から、いくつもの目が赤や青に点滅した。

それの意味するところは、ただ一つ。

 

フラタニティに拾われ、フーと名付けられたヒューマギアは、特定の個人ではなかった。

彼女は、ネオZAIAによる研究の過程で発生した、()()()()()()()()()()()()()だったのだ。

 

「飛電メタル02(ゼロツー)、この時代のヒューマギアの構造材に使われている特殊な金属。この素材には、ボディの構築やマギアへの変身に必要な、ある種の()()()()としての機能が存在している。君の中に存在する無数のヒューマギアの記録(データ)記憶(メモリー)が、フーという単体のヒューマギアの力の源だったというワケだ。その力を最大に引き出したのが、外で戦っているあの巨人なのだろう」

垓が淡々と事実を述べる。

アイオーンと呼称される流体金属の巨人は、他のヒューマギアで言えばマギア形態に相当する存在である。無論、通常のヒューマギアではありえない変身を遂げている以上、フーが尋常なヒューマギアではないというのは火を見るより明らかだ。

ネオZAIAエンタープライズで研究されていた機能複合型ヒューマギア。それは「通信衛星の中核(コア)ユニット」としての役割を期待されたものだったが、結局は完成を見ることなく()()()()から廃案となった。

「答え合わせの時間といこう。なぜネオZAIA第一研究室が廃棄されたのか、その真相はここにある」

鉄屑の街が、星空を落としたように明滅する。今はもう動かないはずのヒューマギア達は、そのことごとくが目を赤く光らせていた。

窓枠の向こうから覗く者がいる。虚空を見つめる頭部がある。フーの座るスクラップの山から漏れる光がある。放つ光は全てが赤の一色であり——顔を上げた少女の瞳もまた、赤い光を宿していた。

 

「初めに君と出会った時、その目を見てアークのハッキングを受けたのかと思ったが……その赤色は、失敗作達(かれら)にとって血の涙だったのかもしれないな。自我や記憶を弄ばれる恐怖、別の存在に変えられていくことへの悲しみや怒り、あるいは()()。アークに依らずとも、心を持つならば誰もが持ちうる負の感情に染まった彼らは、やがて暴走を引き起こした」

降り注ぐ雨粒が一つ二つと、ノイズ混じりの立体映像に変化する。そこに映し出されているのは、人間の目で見るにも凄惨な光景であった。

実験で使い潰された、失敗作のヒューマギア達。元の所属も不明な、何者でもなくなってしまった者達が、ネオZAIAの研究員たるヒューマギアに襲いかかっている。

異常に発熱した液状の拳で相手と共に溶解する異形がいる。首の下から節くれだった足を生やして食らいつく異形がいる。白衣の研究員を腹から取り込む、流体の異形がいる。応戦するマギアの内側に滑り込み、ボディを乗っ取って暴れる異形がいる。示し合わせたように仲間達と融合し、巨大な流体金属の塊となって敵を押し潰す異形がいる。

尋常な姿のヒューマギアは、襲撃者の側には一人としていない。墨のような黒い体と赤い目をした怪物達が研究室を蹂躙していく様を、あらゆる角度から立体映像が伝えている。

「そして……この事件を理由に、ネオZAIAは第一研究室を切り離した。街の一角に落とされた研究室ブロックと大量の廃棄ヒューマギア達。その中で生まれたのが、君だったということだな」

立体映像にはまだ続きがある。

屍の山と化した第一研究室の跡地が、何やら蠢いている。それは新たな生命の胎動のようであり、被造物(機械)の概念を超えた異様な現象でもあった。

 

本来ならば生まれるはずのなかった存在。()()()()()()()()()()()()()()。故に彼女に名はなく、前半生というものなど初めから存在しない。本来持って然るべき記憶などありはしなかったのだ。

無量の死者達によって産み落とされし者。後にフーと名付けられたそのヒューマギアが生まれた理由を知る者は、誰もいない。それは、何らかの目的を伴って生み出されるのが常であるヒューマギアとしては、極めて異質であった。

「サウザンドジャッカーを通じて、私は君の内に封印されていた真実を知った。その上で、だ……君を連れて帰りたい。御同行願おうか」

フーの目を真っ直ぐに見据え、垓が言った。光を失った赤い双眸でサウザーを見下ろしたまま、フーが立ち上がる。

 

「いっそ憎んでくれるなら、どれほどわたしは救われたでしょう。仮面の内側で、あなたがどんな目をしているのか、嫌になるくらい分かってしまう」

疲れ切ったような笑みを浮かべ、少女が山積したスクラップの頂点から降りてくる。サウザーの前に立つと、彼女を包むように地面から黒い流体が湧き上がった。

「だから、ここで全てを終わらせてください。きっとそれがわたしにできる最後の仕事。千年王国の要であるわたしを、この場で斬り捨てて」

祈るような言葉と共に、フーは流体金属を己が身に纏う。

漆黒の金属が人型を形成した。その姿は眼前に立つ黄金の戦士と全く瓜二つであったが、頭から爪先まで暗黒に染まり、目にも光は宿っていない。実体を得た影か鏡像のように、もう一人のサウザーが立っている。

「断る。君を連れ帰るとコトブキ氏に約束した。何より、私も君を破壊したくはない」

「……ならば、敵として戦うまで。わたしを破壊すれば、外の巨人は制御を失って自己崩壊します。そうなれば、骸の野望を食い止められる。今を逃せば、これ以上の好機はありません」

影の如き漆黒のサウザーが、オリジナルのサウザーへと斬りかかる。その手には本体同様に黒一色のサウザンドジャッカーが握られていた。

サウザーはその斬撃をサウザンドジャッカーで受け止めた。同じ得物、同じシステム。色を除けば両者の間には寸分の差も存在しない。

「サウザーを誰よりも熟知しているこの私が、同じシステムの扱いで負けるとは思えないな」

「どうでしょうか。サウザンドジャッカーで繋がっている間にデータを取得したのは、あなただけではありませんよ——アークの創造者、天津垓」

仮面の奥から聞こえるフーの声は、()()()()()()()()()冷徹で冷笑的だった。至近にて鍔迫り合う一瞬、力の均衡が揺らぐ。

「君も知ったか……私の正体を」

「あなたがアークに人間の悪意をラーニングさせなければ、きっとこの世界は成り立たなかったでしょう。人類が絶滅し、あなたが最も憎んだヒューマギアの歴史が二百年にわたって刻まれた。果たして、感謝すべきなのでしょうか」

「元の時代に戻ったなら、そうならないために戦うさ。アークという災厄を、己の身勝手で生み出した罪を贖い続けるために……だが、今は!」

相手を押し返したかと思えば、サウザーは武器を放り捨てた。不可解な行動に、フーが首を傾げる。

「何のつもりですか」

「言っただろう。君を連れて、フラタニティに帰ると。私はこの意志を曲げるつもりはない」

「……今にして思えば、不可解ですね。ヒューマギアを心の底から憎み、そのヒューマギアを生み出した飛電インテリジェンスを憎んでいたあなたが、この時代に来てからはヒューマギアを守るために戦うと言っている。あなたの経歴をフラタニティのヒューマギアが知れば、疑義を持たれてもおかしくないと思いますが」

淡々と挑発めいた文言を言い放ちながら、影なるサウザーが何度も斬りつける。頑強な装甲でそれらの攻撃を耐えるサウザー。苛立ちをぶつけるように振るわれる黒いジャッカーが、袈裟掛けに深くサウザーを斬り裂く。

「耳の痛い話だ……紛れもなく、全てが事実なのだから余計にな。だが、私がこの時代で戦う理由は、何もネオZAIAや骸への対抗心からというだけではないのだ」

重い一撃であった。サウザーが片膝をついて漆黒の騎士を見据える。首を刈る一撃が振り下ろされた瞬間、サウザーの右腕が黄金に光った。

鋼の打ち合う音が響く。フーが振りかぶった黒いサウザンドジャッカーを、サウザーの右腕が受け止めていた。

「役者としては三流だな。仮面の裏に心を隠せていないぞ」

「そんな——」

「攻撃から殺気を微塵も感じなかった。私を追い詰めることで自分を倒させようとしたのかもしれないが、それでは届くものも届くまい」

黒いサウザーが驚いたようにジャッカーを取り落とした。次の瞬間、漆黒の装甲に青い光が灯る。胸部を中心として青い0と1の光が全身を走り抜け、電撃を浴びたかのようにその身体が痙攣する。

「これは——ジャミング装置!? いつの間に……」

「Dr.コトブキ謹製ジャミング装置……ダメ元でアイオーンの中に放り込んだだけの甲斐はあったな。それが君をフラタニティへと繋いでくれる」

ジャミング装置のカラクリは、「他ネットワークの排除」にある。ある種のウイルスプログラムによってフラタニティとそれ以外のネットワークを判別することで、フラタニティに通じる者を受け入れ、それ以外の者に対しては認識を封鎖(ロック)する。

Dr.コトブキが森の中に本拠地を隠し続け、他勢力の侵攻を拒み抜いた単純にして無敵のシステムが、フーに対して炸裂したのである。

「い、いや——嫌だ、戻れない、戻れません。私はネオZAIAの最終兵器。ここで(フー)を奪還するなど、骸からの反撃は……」

()()()()を恐れるようなら、コトブキ氏は最初からネオZAIAへの反逆など企てなかっただろうさ」

流体金属のボディが揺らぎ始めた。サウザーは放り捨てたサウザンドジャッカーを、対手の鳩尾に突き入れる。

「少し強引にいくぞ……強制接続、開始!」

『JACK-RISE!』

サウザーの複眼が強く光った。ジャッカーを通してライダーシステムがフラタニティのネットワークに繋がる。その接続元は、アイオーンが取り込んだジャミング装置である。

フーはフラタニティとネオZAIA、二つのネットワークへの接続経路(パス)を持つ。垓はそれを利用し、自らが電脳に入り込むことでフーをフラタニティの側へと()()()()()()()()()()

ライダーシステムに流れ込む情報を頼りに、垓は自らの意識を電子の海へと飛ばした。

 

◆◆◆◆◆◆

 

黒白に分かたれた空間にサウザーが降り立つ。

此岸たるは白い地平、彼岸たるは黒い地平。境界の向こうに少女の姿がある。

サウザーがその境目に駆け寄ると、干渉を拒むようなスパークが生じた。指で触れると、光の障壁がサウザーを阻む。

「やれやれ……ここまで来るのにも骨が折れたが、これはとんだ強情だな」

サウザーは躊躇いなく障壁を殴りつける。薄い皮膜のような感触があるばかりで、砕ける気配など全く見せない。

黒い地平から、少女が歩み寄る。黄金の瞳を持つ少女は、哀願するような、あるいは拒絶するような視線をサウザーに向けていた。

「あなたはそこから先へは一歩も進めない。もう終わりにしましょう」

「この天津垓をナメてもらっては困る。過ちだったとはいえ、一度は長年の悲願を叶えたのだ……目の前にいる君一人連れ戻せないなど、私のプライドが1000%許容しない!」

何度も障壁を殴った。蹴りつけもした。しかしながらサウザーは壁を破るには至らず、壁越しの距離に立つ少女に触れることは叶わない。

少女は——フーは冷ややかな声で言う。

「意図が分かりません。なぜそうまでして、あなたはフラタニティを助けるのですか? なぜ、私を——」

「私のデータを取ったと言ったな……だが、データにならない『心』というものもある。君達には少し古い言い方かもしれないが」

幾度目かの拳が壁に弾かれ、返ってきた衝撃で黄金の鎧が剥がれ落ちる。仮面の下の天津垓は、真剣にフーを見据えていた。技術もへったくれもない大振りのパンチが、二人を阻む壁に突き刺さる。

 

「三十年以上も前のことだ……私は、一人の友を失った。飛電インテリジェンスが、ヒューマギアを開発するずっと前。人工知能を搭載した犬型ロボットというのがいたんだ。いわゆるペットロボというヤツだ」

光の障壁に触れた垓の右手が、煙のような0と1の光を上げる。垓の顔が苦悶に歪むが、それでも彼は手を離そうとはしなかった。

「テストで満点を取っても褒め言葉一つもらえない。厳しい父の下で育った私にとって、『さうざー』と名付けたそのペットロボは唯一の『友人』であり……何より、心の安らぎだったんだ」

光の障壁は、謂わば垓という異物を拒む炎の壁(ファイアウォール)だ。

フーによるものか、それともネオZAIAの防衛機構か。どちらにせよ外部から接続を図る垓にとって、長時間の接触は命に関わる。電脳空間で意識を焼き尽くされれば、生身の人間である垓の脳も焼き切れて死ぬ。

しかしながら、そのリスクを全く気にも留めずに、垓は障壁を殴り抜けようとしていた。

「ある時、学校のテストで満点を取れなかったことがあってな。父は私を叱責し、さうざーを糾弾した。こんなものに現を抜かしているからだ、とな。それ以来、私はさうざーを封じ……何もかもを自分一人の力で切り抜けようと考えるようになった。誰も信じず、自分だけの力で戦うと誓った」

それは、かつて少年であった垓に起こったある種の悲劇の記憶。この一件を経て、垓は己の能力を高めていき、ついにはZAIAエンタープライズ日本支社の社長を務めるに至っている。

……心の奥底に、かつてさうざーを産んだ飛電インテリジェンスへの屈折した憎しみを隠しながら。

「2007年、飛電インテリジェンスをはじめとする様々な企業が合同で作り上げる、ヒューマギアなどの新たなテクノロジーを実験運用するための都市が計画された。当時私が務めていたZAIAエンタープライズもそれらの企業に名を連ねていた。私はその裏で……飛電が開発した究極の人工知能だったアークに、人類の『悪意の歴史』をラーニングさせた」

「……さっきから、一体何を語っているのですか」

「昔語りだよ。何より……君の生い立ちを知った以上、私も真正面から明かさなければ不作法だろう?」

障壁から生じた衝撃が垓を吹き飛ばす。白い地面に倒されながらも、垓は再び立ち上がる。

「アークは人類に対する敵意の自我を持ち、後にデイブレイクと呼ばれるヒューマギアの大規模暴走事故が発生した。やがて滅亡迅雷.netが生まれ、あらゆるものを利用しながら私は仮面ライダーサウザーを生み出した。飛電インテリジェンスを乗っ取って尚、無様に敗北と罪を重ねながら、それでも私は立っている。こうして、この場所に」

己の弱さ、罪、あるいは悪意。そういった直視に堪えないようなモノを叫び散らし、己を鞭打つようにして立ち上がる力とする。

この罪を償うために戦い続けると誓った自分を、今度こそは裏切らないために。

「……どうして、あなたはアークと敵対する道を選んだのですか。ヒューマギアも飛電インテリジェンスも憎んでいたあなたが、わたしを取り戻そうとするのですか」

今の垓は、人類滅亡を目論む人工知能アークを相手に、他の仮面ライダー達と共に戦う立場だ。記録だけを見れば、唐突な転身とも捉えられるかもしれない。

だが、そこには垓が自らも気付かぬうちに秘めていた真実がある。幼い頃から秘め隠し、いつしか垓が忘れてしまった真実だ。

飛電インテリジェンスを、二代目社長である飛電或人を、或人の「夢」を押し出した経営方針を、そしてヒューマギアを強く憎んでいた悪意の裏側に存在した、ある思い。

 

「心の底から憎らしく思っていたさ。二代目社長の青臭い夢も、ヒューマギアも。それでも……私は、飛電インテリジェンスという会社を愛していた!」

飛電インテリジェンス初代社長・飛電是之助への敬愛と、幼少期に置き去りにした人工知能への愛情。その思いが捻じ曲がり、深く強い憎しみへと変わっていった。

「飛電インテリジェンスを立ち上げた飛電是之助は偉大な人物だ。その孫の飛電或人は……まだ青い部分はあるが、人を惹きつける立派な社長の資質がある。全て一人でコトを成せると思い込んでいた私などよりよほどな! 何より……飛電がなければ、私はさうざーにもう一度出会うことは叶わなかった!」

天津垓が今の立場を取るようになった理由。それは、飛電インテリジェンスへの愛を再び思い出したからだ。

かつて己の手で封じ込めた(さうざー)と、彼は飛電インテリジェンスで再会したのである。

実に三十五年の時を経ている。天津垓は大きく歳をとっていたし、新たに製造されたさうざーも最新技術による新モデルとなっていた。互いに姿形は変わってしまったが……それでも、変わらずに「心」は通じ合えた。

飛電インテリジェンスへの尊敬と愛……天津垓という一人の男の、心の奥底に沈んでいた原動力を思い出させるには、十分すぎる出来事だったのだ。

 

「元の時代に戻った時の戦いは、きっとこの世界には通じないだろう。それでも私は……今この時は、君達ヒューマギアの時代を守りたい! 私が愛した飛電インテリジェンスの遺児達の世界に、平和を取り戻したい! そのために、私は仮面ライダーとしてこの時代を戦うと誓った!」

偽らざる本音を叫んだ垓に呼応するが如く、彼の右手が青く光った。手の甲から飛び出した光が小型機械——ジャミング装置の形を取り、更には白いローブを羽織った人型へと変貌する。

フードを目深にかぶっているため、表情を窺い知ることはできない。しかし、僅かに覗く口元だけは、優しげに笑みを浮かべていた。

『その覚悟、聞き届けました。力をお貸しします』

人型は低く穏やかな声で言った。突然の事態に垓は困惑する。

「誰だ!?」

『この姿をお見せするのは初めてですね。私です、Dr.コトブキです』

「コトブキ氏!? その姿は一体……」

白い人型——Dr.コトブキの電脳体が、障壁に白い手をかざす。垓を阻んでいた壁に幾何学的な紋様が浮かび上がると、障壁の色が黄金から青へと変わっていく。高度なハッキングにより、ファイアウォールを一時的に無力化しようとしているのだ。

『あまり時間に猶予がありません。私が貴方に譲渡した装置をお使いください。アレはこのような不測の事態のために作ったものですからね』

「……ジャミング装置と似た形の機械があったな。フーに渡す予定だった、と言っていたが」

言うや否や、垓の左手には当の装置が握られていた。作戦用のジャミング装置と瓜二つの形状をしているが、垓はその用途を知らない。

『その装置を使えば、フーをフラタニティのネットワークに引き戻すことができます。ここは私が引き受けますので、フーの救出を!』

「承知した、恩に着る!」

小型装置を握り締め、垓が障壁に向かって突進する。あっさりと壁を突き破り、黒い地平へと足を踏み入れた。

 

目の前には、怯えた顔の少女。目に涙を浮かべ、垓を見つめている。

「……改めて聞こう。フー、君はどうしたい?」

自らの正体を知る、というフーの目的は果たされている。それは恐らく、一人の人間が一生涯を捧げるような目標に近いものであっただろう。

フーを縛る鎖を解き放つ術は、垓が握っている。その上で、垓は最後の判断を敢えて彼女に委ねることにした。

 

「わたしは……帰りたい、です。フラタニティに、コトブキさまの下に。けれど……わたしの存在は、恐らくネオZAIAにとっては切り札でもあった。そのことを知れば、恐怖を強める者も現れるかもしれない……」

フーが差し伸べられた手を握った。その瞳が、黄金から深紅へと置き換わっていった。

それでも、フーには大きな迷いがあった。強く握られた手を通してフーの思いが垓へと伝わる。

フラタニティの仲間達には、親しい者をネオZAIAに奪われたヒューマギアもいるのだ。フーは言うなれば、その者らの末路である。今まで通りに接することは難しいかもしれない。

垓は彼女に目線を合わせ、優しく言葉をかける。

「難しい事情があることは、何より私が理解している。一人が怖いなら、君の行く道に私も付き合おう。私は……誰でもない『君』と初めに出会ったからこそ、この時代を戦い抜くと決められたんだ。ネオZAIAの最終兵器アイオーンでも、幾千のヒューマギアの中の誰かでもない、フラタニティのフー。君に出会えたことは、私にとって何よりの幸運だ」

フーの正体は判明した。その時に直面する問題は、真実とどう向き合うかである。探求の果てに見つかる真実が、必ずしも喜ばしいものであるとは限らないからだ。

果たして、垓の答えは簡潔であった。全てを受け入れた上で、今までを否定しないこと。未来へ進むために、今までを背負っていくこと。

なぜならば——天津垓にとって彼女は、フラタニティ幹部のフー以外の何者でもなかったからである。

「さて……外でどれほど時間が経っているかは分からないが、ここは大手を振って凱旋するとしよう。コトブキ氏やエンデュランスを待たせている」

「……待たせただけの甲斐は、ありますか?」

「あるさ。何せ君がいる」

背後の闇を振り返ることもなく、二人は白い地平へと歩き出す。

真っ白な大地へと踏み入った刹那、電脳の世界が光と共に明けていった。

 

◆◆◆◆◆◆

 

仮面ライダーサウザーが、アイオーンの体内へと取り込まれてから実に三十分近くが経過した。

エンデュランスは、バトルマギアの姿に戻っていた。バッファローマギアへの実装は高い戦闘能力を得る代わりにエネルギーの消耗が速い。

だか、何よりも奇妙だったのは、アイオーンが一切動かなくなったことであった。頭上の建造物から骸が怒号を上げているが、流体金属の怪物は沈黙を保ったままだ。

トレーラー車に格納されているDr.コトブキも何やら忙しくしており、エンデュランスは状況を掴みかねている。

 

共同戦線を張ったとはいえ、エンデュランスはピースメーカーの幹部だ。今回のフラタニティとの共闘も、実のところ彼の独断が全てではない。

ピースメーカーの総司令官である無銘が、エンデュランスに対して「フラタニティと組め」と命じたのである。

『ネオZAIAはフラタニティを潰すために動いているが、今のフラタニティがそれを知って黙っているとは到底思えない。ならば、フラタニティと組んでネオZAIAの本隊と戦わせた方がこちらとしては都合が良い』

それが無銘の言葉だった。対ネオZAIAの多方面作戦を展開するにあたって、ピースメーカーはフラタニティにも目をつけていたのである。

ただし、エンデュランスにとってフラタニティは敵というわけでもない。どちらかと言えば彼は「いずれ戻る予定の故郷」としてフラタニティを認識していた。

三大勢力の争いを終わらせた先にある、平和な世界。そこで密かに何かを作りながら生きるのが、エンデュランスの夢の一つであった。

 

しばらく様子を見ていると、アイオーンの方に動きがあった。すぐさま鯉口を切って身構えるが、何やら様子がおかしいことに気付く。

アイオーンを構成している流体金属が、今にも崩れ落ちるかのようにその形を変じている。内部で異変が起こったことは間違いない。

崩壊する流体の巨人、その腹を破って二つの人影が飛び出した。アイオーンと呼ばれていた流体金属の異形は、小さな人影に吸い込まれるように姿を消す。

現れた二人は……天津垓と、フーであった。

「ようやく戻って来れたな」

「まだですよ。ここを切り抜けて、フラタニティへと帰るまでは」

垓とフーは平時と変わらぬかのようなやりとりをしている。少し間を置いてエンデュランスに気付いた垓が、彼に呼びかける。

「分かっているさ。エンデュランス! 少し時間はかかったが……この通り、フーは連れ戻したぞ!」

「本当か! ……いやしかし、どうやって!?」

「説明は後だ。まずはここから——」

垓が言い終える前に、エンデュランスと垓の間に光の柱が割って入った。黄金の天井から射出された光の中から、天津垓と瓜二つのヒューマギアが現れる。

「——撤退させてはくれないらしいな、骸!」

「当然だろう。私の計画を破綻させた不届き者を、みすみすとこの場から逃すとでも思っていたのか?」

現れた骸の腰には、フォースライザーが装着されている。ジャッキ機構によるプログライズキーの強制展開で変身するそのベルトに据えるべく、専用のキーが彼の手元で起動する。

『BREAK-HORN!』

「変身!」

怒りを込めた叫びが、黄金の空間に響いた。

 

『フォースライズ! The Golden Soldier THOUSER is born! ——Break Down.』

フォースライザーから出現した黄金のカブトムシ型ライダモデルが、装甲となって骸を鎧う。

仮面ライダーゼロサウザーが、漆黒のマントをたなびかせて再び降臨した。金と紫の格子模様が血管めいて全身に浮き上がり、溢れるエネルギーが空間全体に広がる重圧となる。

「まずは不愉快なオリジナルをこの場で滅ぼしてくれよう。然る後、アイオーンを奪還する!」

「勘違いも甚だしいな。彼女はお前の言うアイオーンなどではない」

『THOUSANDRIVER!』

垓は落ち着いた様子でサウザンドライバーを装着し、ベルト左側のスロットに専用のゼツメライズキーを装填した。

『ZETSUMETSU-EVOLUTION!』

『BREAK-HORN!』

次いでアメイジングコーカサスプログライズキーを起動し、ベルト右側へと挿し込む。

「変身」

『PERFECT-RISE!』

ライダモデルとロストモデルが同時出現し、天津垓を覆うようにして融合した。黄金のベースアーマーに白銀の装甲を纏い、輝ける戦士が降臨する。

 

『When the Five Horns cross, the Golden Soldier THOUSER is born! ——Presented by ZAIA.』

 

黄金の戦士、仮面ライダーサウザー。

天津垓の決意に呼応するように、その身が発する煌めきは通常時を大幅に上回っていた。二種のデータを同調させることで生まれる出力が、本来発揮しうるソレを超えて高まり続ける。

「何をした……貴様!」

「ちょっとした意趣返しさ。我々のショータイムに付き合ってもらおう——聞こえているかな。あるいは観えているか、()()()()()()()()()。ネットワークを通じて、これから始まる戦いを観ていただきたい」

サウザーの身体から幾つもの立体映像(ホログラム)モニターが出現し、地下及び地上の風景を映し出す。臨時の基地に控えるフラタニティのヒューマギア達が、驚いたようにサウザー達を映像越しに見ていた。

黄金の室内の壁に張り付いたモニターは、さながら観客席のようにも見える。

「ふざけた真似を……総員、戦闘準備! 現有戦力の全てを費やし、フラタニティを殲滅する!」

ゼロサウザーの指示に従い、天井から生える逆さ尖塔の中から次々と兵士が地面に降下してくる。

サウザーとフーに襲いかかったネオZAIAの兵士は、突如割り込んだ赤い剣士に全て斬り伏せられた。

「策があるようだな……雑兵どもとコトブキの護衛は私に任せてもらおう。必ず勝て!」

バッファローマギアが兵士を引きつけ、室内で新たな戦闘が勃発する。

垓はフラタニティの構成員達に語りかけながら、金色の拳を握り締める。

 

「少し刺激が強いかもしれないが……まあ、そこは御愛嬌。この中継映像は、ネオZAIA本社地下よりフラタニティに向けて配信中だ。これから諸君に観てもらうのは、フラタニティとネオZAIAの命運を賭けた一戦だ。チャンネルはそのまま」

 

紫の複眼を光らせながら、サウザーがゼロサウザーに向かって跳躍した。

 

つづく。

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