IF:仮面ライダーゼロワン DARKEST DAYBREAK 作:TAC/108
零の方舟とネオZAIA、二つを同時に相手取る必要が生じた結果、ピースメーカーという組織は三大勢力の中でも特に『兵士の質』が向上した。総司令官たるヒューマギアの無銘は、特に優秀な六人の兵士による『アルファ・バレット』という特殊部隊を編成し、彼らにそれぞれ指揮権を授けている。
彼らは共通して、バトルマギアと呼称される姿をしているが、強敵との戦いにおいては更なる変身を遂げる。そんなバトルマギアの一体が、戦地にて指令を受けていた。
躯体の内側から聞こえるのは小さな入力音のみだが、彼らにとっては軽い音声通話のようなものであった。
『フラタニティの偵察だ』
『またハウの野郎じゃねえんスか』
『
ピースメーカーはフラタニティの分派であるため、フラタニティの用いるジャミング装置についても詳しい。彼らはフラタニティのジャミングを『そこにあるはずだが、存在しないもの』として認識できるのだ。ハウのようにジャミング装置を装備して移動する対象を、ピースメーカーでは『移動するジャミング者』や『移動する空白領域』という風に呼んでいる。
とはいえ、フラタニティのテリトリーを抜け出した結果として今度は戻ることができなくなったので、他の勢力と比してもフラタニティに対して特別有利というわけではないのだが。
『対処は一任するぜ。コッチはコッチで忙しくなる』
『了解。んで、俺の代役は? ネオZAIAの本社を墜とすのが元々の作戦だったのと違うんスか』
『いや、プラン変更だ。オレが大将を引きつける間に、ブルータルとデトネイターが雑魚共を叩く。フラタニティの様子がキナ臭くなってきたからな……ヘタに戦況を動かせば疲弊したところを突かれるかもしれん。ネオZAIAを撃ち落とすのは、後日に回すさ』
電脳に届く声はどこまでも落ち着いている。アルファ・バレットの二人に敵兵を任せ、自らは総大将とやり合う。バトルマギア……アルファ・バレットのNo.3であるクルーエルは、無銘の発言に違和感を覚えた。
『随分と作戦が大雑把ッスね』
『多少は遊びが無いとな。臨機応変にやるコツだぜ?』
声が笑い、通信が途絶えた。クルーエルの知る無銘は、苛烈で責任感の強い男だ。しかし今の通信から聞こえたのは、戦場の狂乱と退廃を愉しむような情動だった。
人が変わったのではない。気が狂って妙な方向に舵を切ったわけではないのは、無銘の冷徹な指揮官としての側面が表している。となると……。
「案外、あんなヒトなのかもなァ……ウチのリーダーは」
クルーエルは短機関銃を背部装甲に付け、勢い良く飛び上がった。
◆◆◆◆◆◆
フラタニティの偵察部隊が、未だ乱戦の続く市街地を駆け抜ける。そこかしこで銃声や爆発音が聞こえ、マギアの残骸が飛散する。
先頭は不破諌。エイムズショットライザーを片手に、敵襲を警戒しながら他の四人を導く。彼らはなるべく戦闘を避けつつ、この市街地を脱出してフラタニティ管轄区へと帰還しなければならなかった。
「あの三体からの追撃はないな」
最後尾にいた滅が言った。先程まで使っていたアタッシュアローの代わりに、普段から携行している飾りのない日本刀を片手に持っている。
「大将同士の戦いでそれどころではないのでしょう。ですが、貴方達の存在が知られた以上、追撃部隊を寄越してくる可能性もあります」
「……そのようだな。用心しろ、向かってくるぞ」
高層ビルを足場に、連続跳躍で追跡してくるマギアがいる。バイザー型のカメラアイを妖しく光らせるバトルマギアであった。
「
「不破諌様、お気を付けを。あれはクルーエル、ABのナンバー3です!」
言うが早いか、空中でバトルマギアの姿が変わった。重装甲を脱ぎ捨て、白と黒の軽装に切り替えながら、ABの一人が高層ビルの屋上に降り立つ。
「クルーエル? いや……そもそもあの姿、レイダーじゃねえか!」
「いいえ、レイダーは人間が変身するもの。マギアが変身したのならつまりマギアでは?」
諌の指摘に垓が反論した。偵察に適した特殊なカメラアイを装着し、長大な狙撃銃を肩に載せた黒白の
「見ての通り、あれがABです。バトルマギアから更に戦闘に優れる形態への変身によって、強大な戦闘能力を発揮します。彼らはネオZAIAの兵器工廠から旧世代のプログライズキーのデータを強奪し、それによって強化変身を可能としたのです」
「プログライズキーのデータが入ったマギアか……上等だ!」
諌がショットライザーを構え、パンダマギアを狙う。A.I.M.S.の隊長であった頃の感覚は、今も失われていない。即座に脳内で作戦を組み立て、全員に伝えた。
「ZAIAの社長はフーを連れて出来るだけ敵の少ない場所に逃げろ! 滅とハウは別々に散れ! ヤツの狙いを狂わせてやる……!」
ショットライザーの銃口が火を噴き、ヒューマギアの駆体をも貫く徹甲弾がパンダマギアの顔面スレスレを掠めた。
銃声が合図となり、各員が散開する。
「野郎……随分と大胆にやってくれるなァ」
ビル屋上から狙撃銃で諌を狙うパンダマギア・クルーエル。『
「ブッ殺す……誰だか知らねえが、フラタニティに手ェ貸すばかりかリーダーの手も煩わせようとした狼藉者……ブッ殺してやるからな」
銃口が赤く光った。エネルギー光が収束し、大出力のレーザーが発射される。空中で炸裂した赤い光線が無数に枝分かれし、諌の周囲に雨の如く降り注がんとしていた。
対する諌は為す術無しかと思われたが、彼の両手には既にショットライザーと青い鍵型のデバイス……シューティングウルフプログライズキーが握られていた。
『バレット!』
『オーソライズ!』
片手で認証前のキーをこじ開け、着弾より早くショットライザーに装填すると、諌は無数の光条に向かって引き金を引いた。
「変身!」
『ショットライズ!』
銃口から放たれるは煌めく銀の弾丸。複雑な軌道を描いて光線に激突し、諌の周囲を回遊しながらそれらを跳ね返す。
右拳を構えた諌が正面に来た弾丸に向けて腕を振りかぶった。殴られた弾丸が粉砕され、破片が諌の全身を頭から爪先まで覆い隠す。
地面に直撃した光線が爆発を起こした。コンクリートが灰色の土煙と化したが、それを腕の一振りで払う者がいる。
現れたのは、オオカミを彷彿とさせる異形の超人であった。右半身を青、左半身を白の装甲に包み、オオカミの頭部を模したたてがみのような各種センサーを顔面に搭載している。右手にはショットライザーが握られ、怒りの形相を思わせる仮面と共に、強烈な威圧感を放っていた。
全身各部からスチームが吹き出し、空色の複眼が明滅する。仮面ライダーへの『変身』が完了した瞬間であった。
『シューティングウルフ!』
超人の名は、仮面ライダーバルカン。
形態名・シューティングウルフ。
銃撃の如く猛る仮面の人狼が、戦場にて銃声の雄叫びを上げる。
諌——バルカンが動いた。人間を遥かに上回る脚力で廃ビルを垂直に駆け上がり、右手に持ったショットライザーを敵に向かって連射する。
パンダマギアは背にバックパックを形成した。背中から取り出した緑色の筒をバルカンに向かって投擲しつつ、狙撃銃の冷却を急ぐ。大出力のレーザー射撃は強力だが、連続して使えはしない。冷却用カートリッジを装填すると、空薬莢めいてカートリッジが排出される。
「鬱陶しいッ!」
バルカンは狙いをクルーエルから緑色の筒に変更した。誘導性は無いが、何発撃っても傷がつかない強度を持っている。側面を撃って軌道を逸らし、一直線にひた走る。
「この位置からじゃ上手く狙えないな……場所を移すか」
クルーエルは地面に銃口を向けてレーザーを発射した。射撃の反動が驚異的な跳躍力を生み出し、今よりも更に高いビルへと飛び移る。
「逃がすか!」
パンダマギアより一足遅く、バルカンがビル屋上に到着した。パンダマギアを撃墜すべくショットライザーを乱射するが、パンダマギアは連続射撃による巧みな方向転換によって回避し、難なく着地するついでにバルカンの顔面に光弾を当てた。威力は低かったものの、衝撃と光でバルカンの頭部センサーに僅かな異常が発生する。
「あの野郎……」
イタチごっこの始まる予感があった。このままビルを伝っていけば、バルカンは延々と後手に回ることとなろう。その間に散開した味方が攻撃されては元も子もない。
バルカンが黒いプログライズキーを装填した。ビルから飛び降りつつ新たな弾丸を撃ち放ち、パンダマギアが飛び移ったビルの柱に向かって体当たりを敢行した。
銀弾が砕け散り、形態が組み変わる。上半身を覆う太く逞しい強化装甲が、廃墟と化したビルを更に破壊していく。
『ショットライズ! パンチングコング!』
山をも吹き飛ばす怪力、ゴリラの力を纏う超人。
仮面ライダーバルカン・パンチングコングへの変身が完了し、バルカンはドラミングじみたリズムで床を乱打し始めた。
ビートを刻む衝撃が建物全体に伝わり、そびえ立つ廃ビルが大きく揺れる。地面をならし、瓦礫に隠れていた柱を発見したバルカンが、重装甲による強烈なタックルを仕掛けた。老朽化していた柱が一瞬にして折れ、高層ビルが凄まじい音を立てて倒壊する。向かいにあった廃ビルを支えに、高層ビルは前衛芸術めいた斜塔と化した。
パンダマギアは予想外の挙動に反応が遅れ、足を滑らせてビルから滑落する。幸いにも落下によるダメージは無かったが、バルカンの姿を見失ったため、索敵を開始した、が——。
「捕まえたぞッ!」
「なん、だとォー!?」
瓦礫の下から飛び出してきたバルカンの上半身に、右足を掴まれる。左足で顔面を蹴るが、バルカンは微動だにしない。この至近距離ではレーザー銃も使えず、立ち上がったバルカンにパンダマギアが全身を引きずられる。
「やめ、やめろオマエ!」
クルーエルはじたばたと暴れるが、パンチングコングはバルカンの形態としては極めて腕力・膂力に特化している。無駄な抵抗であった。
バルカンがクルーエルの右足を掴んだままその場で回転し始めた。回転の速度が上がっていき、頂点に達した瞬間……その時が訪れる。
「吹き飛べェ!」
バルカンが回転の向きを縦に変え、クルーエルを倒壊したビルに叩きつけた。衝撃がクルーエルを通してビル全体に広がり、天文学的な確率で成立していた斜塔が一瞬にして崩れ去った。ビルの崩壊に紛れてクルーエルはバルカンの拘束から抜け出し、地面を這いながら逃走を図る。
「どこに行きやがった……!」
瓦礫を弾き飛ばしながら、バルカンはクルーエルを探す。建造物の崩壊によって発生した粉塵によって、彼はクルーエルの姿を見失っていた。
「畜生、何だってんだあのゴリラ野郎は!」
……クルーエルは光学迷彩機能によって駆体を透明化させ、ダメージの修復を行っていた。バックパックから取り出したアンプルには、この時代におけるヒューマギアの構造材である『飛電メタル02』が入っている。右肘関節部から注入すると流体金属がすぐさま全身に行き渡り、損傷箇所がたちどころに修復されていく。
「アレがフラタニティの新戦力? 冗談じゃねえッスよ……」
強靭なマギアの駆体とて、あれだけの攻撃を受けてはただでは済まない。市街地の有象無象とはワケが違いすぎる。運が悪ければスクラップになっていたかもしれないと思うと、クルーエルは身震いした。
「……そうなると、他二人のデータも必要だな。ハウとフーはともかく、見慣れねえヒューマギアにネオZAIAの社長モドキ。アイツらもやっぱり『仮面ライダー』なのか?」
人類のいた旧世代における伝説の戦士。記録上にのみその名が語られていた謎の存在。時に人類が、あるいはヒューマギアが変身した超人。それがクルーエルの……否、この時代における『仮面ライダー』という存在への一般的な認識である。
「だとしたら尚更、データは取らねえとな……白兵戦は好みじゃねえが、仕掛けてみるのも一手かな?」
迷彩機能をカットし、処置を済ませたクルーエルが立ち上がる。戦闘データを採取するべく、彼は再びバルカンを狙った。
◆◆◆◆◆◆
一方、その頃。
「あまつさま」
「分かっています。まずいことになったな……」
天津垓とフーは、謎めいたマギア達に包囲されていた。逃走していた最中に偶然にもマギアの戦闘に巻き込まれ、身動きが取れなくなってしまったのだ。
戦えないフーを護衛するための最良の手段は、戦闘を避けることだった。ましてこちらは一人、敵の数は二十以上。下手に戦えばフーを巻き込むか、敵に利用される危険性がある。
遮蔽物もないため、フーを隠れさせることもできない。難しい局面に立たされている。
「もうしわけありません、あまりやくにたてていないようで」
「適材適所、戦えるだけがヒューマギアではないということですが……さて、どう切り返す?」
状況が動いた際に即座に対応できるよう、垓の腰にはベルトが巻かれていた。黄金と紫の二色が鮮やかなその装置には、左右にキーを装填する機構が備わっていた。名をザイアサウザンドライバーという。
「あ」
思い出したようにフーが手を叩いた。二人を取り囲むマギアが一斉に身構えた。
「何ですか」
「たたかってもかまいません。わたしのなかにあるでーたをおつかいください」
「……どういうことだ……?」
垓は困惑した。急に戦えと言われたことではなく、明らかに彼が変身する仮面ライダーの能力を承知しているかのような、違和感に。
ともすればその言葉は、ネオZAIAと縁があるという彼女の話と関わりがあるのかもしれないが……垓はそこで思考を打ち切り、左手に琥珀めいた色のキーを持った。
「後で事情を話してもらいましょう。そのためにもまずは、ここを切り抜けねばなりませんね」
『
サウザンドライバーの左側スロットにキーを差し込むと、ベルトが変身待機状態に移行する。『絶滅』の名の通り、左側に装填するのは『アウェイキングアルシノ』というゼツメライズキーである。哺乳類の絶滅動物、アルシノイテリウムのデータを搭載した専用のキーだ。展開機構が無いため、そのままベルトに入る。
『
そして、右手に持ったもう一つのプログライズキーを起動させる。コーカサスオオカブトの力を持つアメイジングコーカサスキー。天津垓の生体認証により、彼が使うことで自動展開する。
「変身」
垓が静かに言うと、右側のスロットにキーが装填された。
『
サウザンドライバーの中央部が展開し、そこから巨大な二体のロボットが現れる。キーに収められたデータを実体化させた存在であり、プログライズキーに由来するものは『ライダモデル』、ゼツメライズキー由来のものを『ロストモデル』と呼ぶ。
コーカサスオオカブトとアルシノイテリウム、二種のモデルが飛び出し、周囲のマギアを吹き飛ばす。
二体が垓の頭上で互いの頭部——角を突き合わせ、猛烈な勢いで回転する。同時に垓の身体が黄金のインナースーツに包まれ、超人の素体を形成する。
猛烈な光を放った二体のモデルが、圧縮と分解によって無数の金属片と化した。垓の全身に装着された金属片は、二種のモデルを融合させた超常の装甲であり、即ちは神の如き力を宿す仮面ライダーが纏う至高の装備であった。
『When the Five Horns cross, the Golden Soldier THOUSER is born!』
全身が一際強く輝き、垓の変身が完了した。ライダモデルとロストモデルを組み合わせた五本の角を備え、槍じみて先端の尖った武器を右手に持った戦士が、全身から光と衝撃波を放ちながら降臨する。
紫色に煌めく複眼で敵を見定め、自らと同じ黄金色の兵装——サウザンドジャッカーを構えた。
『Presented by ZAIA.』
至高を目指して創出された、一騎当千のライダーシステム。
二つの力、五本の角が交差する時、黄金の戦士・仮面ライダーサウザーが誕生する。逆光を背負った男の背後で、金と銀のスモークを伴う謎の爆発が発生した。
——この爆破演出は。
ZAIAエンタープライズの提供でお送りします——。
変身用データイメージの出現で包囲網を破られたマギア達に向かって、サウザーが次々と斬りつける。軽快なステップを踏みながらトリロバイトマギアを両断する様は、さながら殺戮の舞踏である。サウザンドジャッカーの柄頭を引っ張ると内部機構が伸長し、黄金の光が収束する。
『
振り下ろす勢いを乗せて、光の刃が敵対者に向かって飛んだ。所属不明のマギアが真っ二つに斬られて爆散する。
敵の数が減ってきたところで、フーがサウザーに駆け寄る。
「危険です、下がっていなさい!」
「かせいいたします」
「何を頓狂なッ!」
「てきえいがひとつ、ねおざいあのじょうきゅうまぎあです」
言うが早いか、黄金のマギアが上空から襲いかかった。少し前に目撃した黄金のドードーマギアである。輝く二刀を豪快に振り回し、ドードーマギアはサウザー達を威圧する。
「強化されていようとも、マギア相手に苦戦する私ではない!」
右腕を引き、サウザーが強烈な刺突を放った。ドードーマギアが一瞬早く反応し、交差させた二振りの大剣で弾く。弾かれた隙を見て、サウザーの胴にドードーが回転しながら飛び込んだ。竜巻じみた横回転の斬撃が何度もサウザーを斬りつけ、装甲に甚大なダメージを与えていく。
「バカなーッ!?」
「いわんこっちゃないですね」
吹き飛ぶサウザーの横でフーが呆れたように言った。ドードーは胸を反らして怪鳥の鳴き声を思わせる笑い声を上げ、サウザーを挑発する。
「貴様ァ!」
「わたしのでばんですね」
「……業腹ですがやむを得ません。何が入っているかはさておき、そのデータを頂戴します!」
立ち上がったサウザーが、サウザンドジャッカーの先端をフーの首元に優しく触れさせる。再び柄頭のレバーを引くと、フーに内蔵された何らかのデータがサウザンドジャッカーへと吸い出された。
『JACK-RISE!』
サウザンドジャッカーの機能とは、敵からデータやエネルギーを抽出し、我が物として攻撃を強化するというものである。使い切りというわけでもなく、一度吸い出せば何度でも引き出せるという恐ろしい機構だが、現在は弱体化の最中であった。この時代に来る以前に、ある出来事でジャッカー内のデータを全て奪われたからだった。
『JACKING BREAK!』
フーから引き出したデータを活用すべく、サウザーがジャッカーを振るった。垓の想定よりも腕の振りが速く、幾つも重なった光波の斬撃がドードーマギアに殺到する。
「もしやコレは……ラッシングチーターのデータか! これならば!」
異様に軽くなったジャッカーの感触を確かめ、サウザーが攻勢に出る。ドードーの大振りな斬撃を避け、胸元に九回もの高速刺突を叩き込んだ。高速化した動きにドードーが動揺している隙に、サウザーが右側のキーを押し込む。
『
ジャッカーを地に突き立て、サウザーの両足が黄金と紫の光を帯びる。
サウザーは向かってくるドードーマギアの腹に強烈な横蹴りを決めた。二刀を取り落として腹を抱えるドードーの頭を蹴り上げ、五連続の回し蹴りを胴体に浴びせる。トドメに槍の如く鋭い上段蹴りを頭部に叩き込むと、ドードーが凄まじい勢いで吹き飛んでいき、そのまま姿が見えなくなった。
「仮面ライダーサウザー、私の強さは……桁外れだ。まあ、既に聞こえてはいるまいが」
恐るべき連続攻撃を完了したサウザーの後ろで、フーがその活躍を讃えるように拍手を送った。
「おみごとです」
「……聞きたいことは山ほどありますが。出てきなさい! 隠れていようと、私は既にお前の気配を捉えている!」
「バカな、ステルス装備だぞコッチは!?」
光学迷彩を解除しながら転がり出てきたのは、クルーエルと呼ばれていたパンダマギアだ。サウザーがジャッカーから衝撃波を飛ばし、パンダマギアを牽制する。
「狙いが見え見えなのですよ、貴方は。ただ倒すだけなら、私も気付けないほどの遠距離から撃てば良いものを!」
「勘ってヤツかよ。確かにオレらには無い概念だな!」
まだ息のあるマギアを次々に撃ち抜きつつ、パンダマギアはサウザーに狙いを定めた。
垓とて失策は上等である。狙いはこちらにあるとはいえ、またしてもフーを戦闘に巻き込んでしまっている。
「フー、貴方は隠れていなさい。ここは私が相手をします」
「……そうですね。おまかせします、あまつさま」
フーが地面を滑るように後退する間、サウザーは片時もクルーエルから目を離さなかった。警戒が功を奏し、クルーエルは完全にサウザーのみに注目している。
「来るなら来い! お前如きに敗れるサウザーではない!」
サウザンドジャッカーを手に取り、サウザーがパンダマギアに斬りかかった。パンダマギアは背中から取り出した竹槍で斬撃を受け止める。
斬り結ぶ二人は周囲に破壊をもたらしながら、徐々に市街地から離れていった。
つづく。