黒翼の魔王   作:リョウ77

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最悪の相手

 解放軍(リベリオン)を制圧した真たちは、手際よく解放軍を拘束して一輝とステラ、エレンが見張り、珠雫、凪、愛華が人質となっていた客を誘導、真が外に展開している警察に連絡をいれた。

 人質と解放軍の受け渡したあと、後で警察署で事情聴取を受けることになった7人は、それまでの僅かな休憩時間で改めて自己紹介をした。

 

「それじゃあ、改めて。珠雫のルームメイトの有栖院凪よ。アリスって呼んでくれると嬉しいわ」

「黒鉄珠雫です。呼び方はお任せします」

「如月真だ。俺も好きに呼んでくれ」

「エレン・アンリネットです。エレンと呼んでください」

「どうも、如月愛華です!これからも・・・」

「てめぇはこれからもよろしくするな」

 

 愛華が頭を下げようとしたところで、真が背後から愛華の後頭部を鷲掴みにしてギリギリと力を込めた。

 

「ちょっ、待ってお兄!痛いっ、痛いからっ!!」

「てめぇはいい加減、自分がやってることが違法行為だってことの自覚を持て。そんでもって懲りろ。なんど繰り返せば気がすむんだよ」

「私だってお兄のように自由にふるまいたい!」

「俺のことを不法行為をいとわない人間みたいに言うんじゃねぇよバカ野郎!」

「え、えっと、どういうことなのかしら?」

「実は・・・」

 

 困惑を隠せない凪に、エレンが丁寧に説明した。

 愛華が優れた転移能力者(テレポーター)であること。その能力を用いて、よく遠出をしていること。基本的にそれらは能力使用許可をもらっていないこと。そのため、停学をくらったこともあるが、優れた伐刀者(ブレイザー)であることと移動先で問題を起こしたことはないことから基本的に軽い罰則で済まされていること。その中で、真と兄である仁はよく愛華を叱っていること。

 説明を聞くにつれて、愛華を知らなかった4人の目が問題児を見るものになっていった。

 なお、似たような視線は真にも向けられているのだが、幸か不幸か、愛華の説教に意識を割いている真は気づいていない。

 

「・・・とりあえず、今日はこれくらいにしといてやる。今後は、マジで同じことをするなよ」

「は~い」

 

 真が本気で声音で忠告するが、愛華に反省の色はない。

 ビキリッと真の額に青筋が浮かぶが、これ以上は時間の無駄にしかならないと経験則で知っている真はため息をつくにとどめた。

 そんなことは気にも留めず、愛華は凪に話しかけた。

 

「それにしても、アリスさんっていわゆるオカマってやつなの?初めて会ったよ」

「堅苦しいのは嫌いだから、さん付けはしなくていいわよ。それと、あたしは男の身体に生まれた乙女なの」

「・・・お兄、何が違うの?」

「知るか、んなもん」

 

 愛華の疑問に真は投げやりに答えるが、エレンはあることが気になった。

 

「それにしても、真は少しも狼狽えないんだね」

「あ~、まぁ、癖の強い奴はもう慣れたからなぁ。これくらいは許容範囲だ」

「そ、そうなんだ・・・お兄ったら、私の知らない間にどんな経験を・・・」

 

 基本的に実力者には、良くも悪くも大なり小なり癖があることが多い。それが真が渡り歩いてきた裏の世界ではなおさらだ。

 修行旅の過程で、そういった人物とも接したことがある真は、人のいいオカマ程度なら特に動揺することもなかった。

 

「それに、三席の珠雫のルームメイトになるくらいなんだ。それなり以上の実力があるのは間違いないだろう」

「たしかに、シンの言う通りですね」

「そうだね。選抜試合が楽しみに・・・」

 

 

 

 

「やれやれ、君は本気で選抜にでるつもりなのかい?」

 

 声をかけられたのは唐突のことだった。

 声をした方を振り向けば、線の細い少年が立っていた。

 そして、不幸にもその男は真と一輝の知り合いだった。

 

「どういうこと?あたしが気配すら感じ取ることができないなんて・・・」

「・・・まぁ、こいつならそうだろうな」

「お兄、この人知り合い?」

「俺は顔見知り程度だが・・・桐原静矢(きりはらしずや)。一応、去年の首席入学だ。ついでに言えば、去年の七星剣武祭の代表の1人でもある」

 

 そして何より、彼は一輝の元クラスメイトだった。

 それも、()()()()()()意味で。

 

「久しぶりだね、桐原くん」

「ああ。ひさしぶりだね、黒鉄一輝くん。君、まだ学校にいたんだ」

「「「っ」」」

 

 あからさまな侮蔑の言葉と、細めた瞳から漏れる嘲りの視線。

 これにステラと珠雫の2人は目に見えて不快な表情になり、エレンも桐原が()()()()()()()()()()理解した。

 

「ねぇ~、桐原く~ん!いきなりどうしたのぉ~?」

 

 すると、桐原の後ろから7人ほどの少女が駆け寄ってきた。

 どうやら、今日桐原と共にショッピングモールに訪れていたガールフレンドのようだった。

 

「あぁ、実は去年のクラスメイトを見かけてね。顔を見せようと思ったんだ」

「そうなんですか~?落第生と不良も気に掛けるなんて、桐原さまは優しいですぅ~」

「まぁね。元クラスメイトとして当然だよ」

「・・・で?だからなんだ?用がないなら帰っていいか?あと、俺もクラスメイトのくくりに入れるな。俺とは別だっただろうが。」

 

 複数の少女をはべらせて気をよくしている桐原に、真が投げやりに声をかける。

 ぞんざいな扱いをする真に少女たちは敵意を向けるが、そんなものはどこ吹く風と真はさっさとこの場を離れようとする。

 だが、次の桐原の言葉にステラが我慢できなかった。

 

「それにしても、黒鉄君。君はいつまで、その()()()()()()()()で騎士道を歩み続ける気かい?」

「アンタ・・・いい加減にしなさいよっ!」

「ステラ、いいから」

「よくないわよ!こんなに好き放題言われて黙ってることないわ!」

 

 一輝はステラをなだめようとするが、完全にヒートアップしたステラは聞く耳を持たない。

 

「さっきから散々好き放題言ってるけど、アンタよりイッキの方がずっと強いわ!イッキの強さはアタシが証人よ!アンタなんて、イッキの足下にも及ぶもんですか!」

「ちっ」

 

 このステラの言葉に、真は小さく、周囲に聞こえない程度に舌打ちした。

 なぜなら、真はこの2人の隔たりを知っていたからだ。

 そして、真は直感で面倒なことになると察知した。

 

「・・・はは、あはははっはははっはははは!」

 

 案の定、桐原は大笑いし、ステラはさらに食ってかかるが、桐原は一輝のことを「自分と戦うのが怖くて逃げだした臆病者」と言った。

 一輝はこれを否定せずに、ただ桐原を見つめていたが、ステラの熱はまったく収まらず、最終的にある賭けを成立させてしまった。

 それは、『一輝が最初の選抜戦の相手である桐原に負けたら、ステラは桐原のガールフレンドの1人になる』こと。(ちなみに、一輝の初戦の相手が桐原であることは、このとき生徒手帳を確認して知った)

 一輝とエレンは引かせようとするが、ステラはまったく引き下がらず、この賭けは成立してしまった。

 桐原は最後まで自分の勝利を疑わずに高笑いしながらその場を去っていった。

 そこでようやく、真たちは一息ついた。

 

「ふぅ。顔はいいけど、あそこまで性格が歪んでいるとダメねー」

「・・・やな感じです」

「ていうか、あんなのに侍る女も女だよね」

「ふん。あんなのイッキなら楽勝よ。なんたって、アタシにすら勝ったんだから」

「・・・それはねぇよ」

 

 言ってやったと言わんばかりのステラに、真が盛大にため息をつきながら否定した。

 

「なんでなのよ?」

「少なくとも、あいつは一輝にとって、考えうるかぎり相性が最悪な相手だってことだ」

「それってどういう・・・」

「君たち!そろそろいいかな?」

 

 ステラが真に問いかけようとしたところで、警察官から呼ばれた。

 どうやら、移動の準備が整ったらしい。

 

「・・・詳しいことは後だ。まずは事情聴取を済ませるぞ」

 

 ステラはもやもやしたまま、それでも警察の指示に背くわけにもいかず、大人しくパトカーに乗って署に向かった。

 

 

* * *

 

 

 事情聴取が一段落し、愛華を帰らせた(泊まろうと駄々を捏ねようとした愛華を、自校の生徒が巻き込まれたということでやってきた仁が無理やり送った)後、真たちはようやく寮の自室に戻った。

 

「それで、キリハラのことについて教えてもらってもいいですか?」

「さっそくか・・・まぁ、いいけど」

 

 本音を言えば少しゆっくりしたかったが、夕飯までまだ少し時間があることから、真は話すことにした。

 

「まず、あいつが一輝のことを臆病だとか言ってた件だが・・・エレンには一輝と俺がどういう扱いを受けてきたかは話しただろ?」

「はい」

「あいつも、前理事長側についていた輩だったんだが、簡単に言ってしまえば、あいつは寮の中庭で一輝に対して()()()()()()()()()()()

「なっ、どういうことですか!」

「要は、一輝から手を出させて退学の口実を作ろうとしたんだ。だから一輝は、攻撃はもちろん、防御も回避も行わなかった。その甲斐あって、一輝はこうして在学しているが・・・一方的にハチの巣にした桐原が厳重注意止まりだったあたり、前理事長と密約してたのは言うまでもないな」

 

 その時、真はマジ切れして前理事長と桐原を締め上げようかと考えたが、自分が処分を受けるのはともかく、その行動をそそのかしたとこじつけて一輝を処罰する可能性もあったため、実行には移さなかった。

 

「・・・今さら怒るのも無駄だとは思いますが、どうして教師がそこまでできるんですかね」

「たしかに理事長は教師でもあるが、それ以前に国の認可を受けた魔導騎士でもある。だから、教師としての立場よりも黒鉄家とのつながりを優先したんだろうな。たかがFランク1人を切り捨てるくらい、罪悪感の欠片もわかなかったんだろう。少なくとも、前の理事長の派閥は」

 

 別に真とて、教師としての誇りとかそういうのを説くつもりは毛頭なく、むしろ「教師も人間、中にはどうしようもない屑もいる」とある程度割り切っていた。

 

「そして、桐原と一輝の相性が最悪っていうのは、桐原の能力にある。あいつの能力は『透明』。姿はもちろん、気配や音、匂いすら完全に感知できなくする完全ステルス迷彩だ。加えて、あいつの霊装は弓、長距離武装だ」

「それは・・・」

 

 それを聞いて、エレンは真が相性最悪だと言い切った理由がわかった。

 一輝の探知は五感に頼っており、なおかつ武装は刀。相手の気配を捉えることができず、間合いも制されてしまう。

 そうして、相手を一方的に仕留める戦い方から、彼は“狩人”という異名をつけられた。

 

「一応、実体はあるから広範囲攻撃なら捉えることができるが、一輝にはそれがない」

「なるほど・・・たしかに、最悪の相手ですね」

「そういうことだ・・・って、そう言えば俺の相手を確認してなかったな」

 

 解放軍(リベリオン)の殲滅と捕縛、警察の事情聴取で完全に忘れていた真は、生徒手帳を開いてメールを確認した。

 そして、メールの内容を確認した真は・・・思い切り表情をゆがめた。

 

「シン?」

「・・・どうやら、俺の方も面倒なやつの相手をすることになったらしい」

 

 そう言って、真は画面を見せた。

 

『如月真様の選抜戦第一試合の相手は、三年一組・栗生誠也(くりゅうせいや)様に決定しました』

 

「クリュウ・・・誰ですか?」

「“鏡の騎士”の異名をもつBランク騎士。上から数えた方が早い実力者だ」

 

 そういう真だったが、エレンの目にはそれ以外の感情が含まれているように見えた。




ようやくいいところまで来たところで、さらにオリキャラをぶっこむ。
とりあえず、一発屋にならないようにしたいところ。
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