怪獣娘(絶) 〜ウルトラマンZ参戦計画〜   作:ただのファンだよ。

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本日一話目とか書いて読者の方々を期待させた癖に次話の投稿が次の日になったド阿呆がいるらしい。はい、申し訳ありません(ウルトラ土下座)
大変お待たせしました。それではどうぞ。

【磁力怪獣】アントラー登場!?


アントラーは宇宙怪獣。イイネ?
え?後編?
オ、オマチクダサイ…。



バラージの矢(中編)

 人間態に変身した私はゼツト様と並んで歩きながら、超兵器の事を考えています。

 ゼツト様も申されましたが、いくら調べても唯の石としかわからない『バラージの矢』。これが怪獣を殲滅した神秘の巨人──別の宇宙のウルトラマン。それも凄い力を持つ──が遺した超兵器。戦争の勝敗を左右すると言われた武器。

 

「お決まりの展開なら、武器が使い手を選ぶ……的な感じなんだろうか?」

「武器が使い手を選ぶ…」

 

 なるほど、その考えは浮かびませんでした。目から鱗、です!もしかしたらそれが答えなのかもしれません。ある条件を満たした者のみが扱える。或いは、武器を遺したウルトラマンが認める者じゃないといけないのかもしれません。

 

「むむむ。一体何が足りないのでしょうか?」

「なっんも、わかんねぇや!」

 

 悩んでも答えはわかりません。

 その時でした、全身を貫く様な悪寒が走ったのは。

 

「!?……これは、まさか!」

「どうしました?」

 

 空を見上げる私の変化を察したのかゼツト様が真剣な様子で私に尋ねてきます。

 

「怪獣が、来ます…!」

「!!」

 

 私と同じ様に空を見上げるゼツト様。瞬間、空の雲を裂いて巨大な隕石の様な、炎の様な赤い塊が落ちてきて地面にぶつかる。光が爆ぜて、大地が強く揺れる。

 

「ああ、もう!またかよ!今度は…クワガタ?」

「あの怪獣、あれはまさか()()()()()!?」

 

 二足歩行、そして三本指の両腕。頭部にはハサミの様な巨大なアゴを持った人型の虫の様な怪獣、それがアントラー。

 ですがあのアントラーは私の知っているものより一回り大きく、身体中に細かな傷が刻まれている。特に胸に大きな×字の傷が。けれどその姿からはボロボロな様子は無く、寧ろ歴戦の強者の風格が感じ取れる。

 

「アントラー?」

「はい。あれはバラージで大暴れしていた怪獣で磁力光線とあのアゴが強力な武器の、地球の生き物でいうとアリジゴクの様な怪獣です!」

(アリジゴク、だったのか)

 

 …?ゼツト様がなんだか少し恥ずかしそうにしているのは何故でしょう?

 

「兎に角、俺はあの怪獣と戦いますのでティアさんは何処か安全な所で隠れていてください!」

「!?待ってください、あの怪獣の狙いは私です!私も戦います!」

 

 ゼットライザーを取り出したゼツト様が私一人を遠ざけて一人で戦おうし、私は反抗してしまった。

 

「いや、でも貴女は戦いに向いてはいません。なので」

「確かに私は戦闘タイプではありません。ですが私にだって回復光線やバリア、他にも強化光線だって使えます。支援するぐらいは出来ます!」

「ギィュアァァ!」

 

 私達が言い争っていた。その時、甲殻が擦れる音と甲高い咆哮が聞こえました。私達が慌てて振り返ると、アントラーがこちらを向いていました。見つかってしまったというのですか!?

 アントラーが巨大なアゴを開くと口元から空間が歪んで見える異質な光線を放ってきました。アレは磁力光線!マズい、直撃したら私たちの身体が圧力に潰れてしまう。

 

「危ない!」

「うわっ!?」

 

 私はゼツト様の前に出て両腕を突き出しバリアを展開する。

 

「くっ、重いィ……ッキャァ!?」

「ティアさん!っぐあっ!?」

 

 今は人の姿をしてはいますが私もウルトラマンの一人。なんとしても彼を守ろうとしましたが、アントラーの磁力光線は私の想定よりも強力で、私は耐え切れずバリアを破られてしまった。

 

「ゴホッ…ゴホッ…!だ、大丈夫、ですかティアさん?」

「ぅ、うぅ……ッ、はぁはぁ…な、なんとか」

 

 私達は身体の中が無茶苦茶にされた様な痛みに悶えながらもなんとか起き上がる。

 

「くそっ!…あれ?」

「……?どう、なされましたか?」

「………!ない!()()()()()()()()()()!!」

「!?………!あそこを!!」

「!」

 

 私が指した場所をゼツト様が目を向ける。

 私が指した先は()()()()()()()()()()。そこにゼットライザーが張り付いていた。

 

「な、なんであんな所に」

「恐らく、アントラーの磁力光線に引っ張られてたのかと」

「くそ、あんなのどうすれば」

「………私が取ります」

「!?」

 

 私の言葉にゼツト様は驚愕した様子で振り向く。

 

「何を言ってるんですか!無茶です!」

「でしたら他に方法がありますか?」

「……っ」

「私が、やるしかないんです!」

「ティアさん!!」

 

 私の身体が光に包まれ、そのまま宙に浮かびアントラーの前へ向かう。光は大きさは増して私、涙を語り継ぐ者(ウルトラセイントティア)本来の姿へと変身する。

 ゼツト様が戦えない今、私がこの街を、この星の命を護ります!

 

 

 

「ギィュアァ……!」

『させません。この街は私が守るんです!!』

 

 巨大化したティアさんに襲い掛かる甲虫怪獣アントラー。ギチギチと甲殻同士が擦れ合う音を鳴らしながら、アゴを開いてティアさんを挟み込もうとする。

 

『ヤァ!』

 

 ティアさんは空へ飛んでアントラーのアゴから逃れる。そしてアントラーの頭上を位置取ると両腕を胸の前で交差して独楽(コマ)の様に高速回転しだした。

 

『ハァーッ、キャッチリング!』

 

 回転するティアさんから金色のまるで鎖で作った輪っかの様な光線が三つ放たれ、アントラーの胴体を締め付けて拘束する。

 

「ギュィ、ギィュァア」

 

 アントラーもティアさんが放った拘束を解こうと身を捩っている。どうやらあの技は締め付けるだけでなく、その場に固定してしまう技の様だ。

 

『これで!後はゼットライザーを取るだけ…』

 

 ティアさんはアントラーの前に降り立つと近寄り右のアゴに張り付いたゼットライザーへ手を伸ばす。

 だが、その時!

 

「ギィュアァァ!!!」

『え?キャッ!』

 

 アントラーの渾身の怪力がティアさんの拘束光線を破り、アゴをティアさんに向ける。完全に不意を打たれる形になったが、幸いティアさんが驚きの余り後ろにバランスを崩して尻餅をついた事で避ける事が出来た。

 

 

 

「はぁ、良かった」

 

 ティアさんはアントラーのアゴの距離から離れると仕切り直す。

 俺はティアさんが無事な事に安堵しつつも同時に焦りも感じていた。あの怪獣は拘束光線を受けた後、敢えて拘束され続け、更に身を捩ったりと抗っている様な仕草を見せる事で、拘束が解けなくて暴れてる様に見せ掛け、油断を誘った。事実、もう少しでティアさんはあのハサミの様なアゴに捕らえられていただろう。知能の高い、狡猾な怪獣。今迄に無かったタイプの怪獣だった。

 

「……くそ」

 

 見ている事しか出来ない悔しさに拳に自然と力が入り、強く握り締める。何か、出来る事はないかと考えるが。変身しなきゃ唯のちっぽけな人間でしかない俺に出来る事なんかある訳がなく、結局、ティアさんがゼットライザーを取り戻してくれる事を祈るぐらいしかなかった。

 

 

 

『くっ、はぁー!』

 

 両腕を広げてバリアを展開し、アントラーのアゴを受け止める。ギャリギャリとアントラーの鋭いアゴがバリアを穿とう突き立てられる。

 ティアの展開したバリアはとても強固でアントラーは破るのは不可能と判断すると次の手に移った。

 アゴを広げて口から虹の様な彩の磁力光線を放つ。ティアは続けて同じバリアで磁力光線を遮るが、バリアにぶつかり霧散してティアの視界を塞ぐ。

 

『!!くっ』

 

 アントラーの狙いを悟ったティアはバリアを解いてアントラーが見える位置に移動するが、

 

『い、居ない!?一体何処へ?!』

 

 アントラーが姿を隠し、ティアは完全にアントラーを見失った。冷静ないつものティアなら地面に開いた穴から地下に潜ったのだと至る筈だが、いかんせん今のティアは焦っていた。

 結果、ティアは穴を見逃した。そして、

 

「ギュゥアァァ!!」

『なっ!あぐぅ!?』

 

 地面に潜ったアントラーがティアの背後に頭部だけを飛び出させてティアの右脚をアゴで挟んだ。アゴの内側の鋭利な部分がティアの脚に深く食い込む。

 アントラーはティアの右脚を挟みながら地中から抜けて現れる。当然アゴの位置が高くなり、ティアは脚を引っ張られて前へ倒れる。

 

「ギュゥァア!!」

『あがっ、ぐぅぅ、ああぁぁあぁああ!!』

 

 アントラーはアゴを広げてティアの脚を離すと、次はティアの胴体を挟んで持ち上げた。ぎちぎちぎちとアントラーのアゴがティアの胴体を切断する勢いで挟み込む。

 

あぁ…あ、ぅごっ、づっ……』

 

 ティアは自分の身体が引き裂かれる様な激痛に喘ぐ。なんとかアゴを離そうとするが唯でさえ力で負けているのに、痛みを感じながらの状態でどうにか出来る訳が無く、まだ1分しか経っていないというのに彼女のカラータイマーが鳴りだした。

 

 

 

 なんとか脱出しようと抗っていたティアさんだが、段々と抵抗が弱まり、やがて力を失い腕がぶらんと垂れる。

 

「ティア、さん…ッ!!」

 

 俺には、何も、出来ない!見ているしかない。

 ティアさんの目から光が失われ、首が項垂れる。マズい、ティアさんは限界だ。このままじゃ、ティアさんが殺される!?

 

「くそっ、くそぉ…!」

 

 ウルトラマンじゃ(たたかうちからの)ない俺は無力だ。ティアさんを救える人は。もう、怪獣と戦える人が居な───()()。居るじゃないか!怪獣と戦える、()()()()()()()()()()()!!

 俺はスマホを取り出すと慌てて電話を掛ける。

 

「頼むッ、頼む頼む頼む!出てくれ!!」

 

 暫しのコール音の後。プツッ、と繋がる音がした。

 

『どうしたのゼツ』

「アキ!!今すぐGIRLSに、()()()()()()にあのウルトラマンを助ける様に言ってくれ!!」

『え?ど、どういう事。説明してゼツト』

 

 電話の相手はアキ。

 きっと怪獣騒動で所属しているGIRLSから呼び出されている筈だ。そして、彼女と同じくGIRLSに所属している最強の怪獣娘『ゼットン』。ゲネガーグ、バルタン星人、シルバゴンと戦ったあの人ならあのアントラーとも戦える筈!!

 

「頼むアキ!早くしないとあのウルトラマンが殺される!』

『落ち着いてよ!そんな事、急に言われたって。一応、連絡先は知ってるけど出てくれるかどうかわからないし』

 

 くそっ、やっぱりそう簡単にはいかない。

 ………。だったら!

 俺はとある情報を開示した。

 

「あのウルトラマンは()()()()()()()()!!」

『え?シズクさんって、あの転校生の?』

「そうだ!俺は見たんだ、彼女がウルトラマンに変身した所を!!」

『………』

 

 どうだ?!ウルトラマンの正体がわかり、尚且つそれが身近な意思疎通の可能な存在(じんぶつ)だ。これならみすみす死なせる訳にはいかないだろう!!早計かもしれない、でもこれしかティアさんを救う方法が思い付かない。

 

『ねぇ、ゼツト。今の話は()()()()()()()?』

「ああ!間違いない!!」

『わかったよ。本部に掛け合ってみる』

「!!頼む!」

 

 電話が切れる。頼む。上手くいってくれ!!

 俺に出来るのはもう、祈る事だけだった。

 

 

 

 

 

「それは信用出来る筋からの情報なの?」

 

 場所はGIRLS本部の司令室。アギラからの連絡に応えた司令塔の怪獣娘ピグモン。そしてピグモンの隣に居るサポート役のエレキングがアギラに尋ねた。

 

『少なくとも、ボクが誰よりも信じられる人からの情報です』

「……はぁ、話にならないわね。そんな不確定な情報を信用出来る訳が」

「今すぐゼットンに連絡してください!」

「ピグモン?」

 

 エレキングの言葉を遮って職員に指示を出すのピグモン。

 

「大丈夫ですよエレエレ」

「……今の話、信用できるの?」

「いいえ」

 

 エレキングの質問をピグモンを何食わぬ顔で答える。エレキングが“だったら何故?”と言いたげな表情をピグモンに向け、ピグモンはそれに笑顔を浮かべて答える。

 

「だって、アギアギが『誰よりも信じられる』と言ったんです。いつも一緒に居るあの二人や───()()()()()()()って」

「…………」

 

 アギラがゼットンに憧憬を向けているのはGIRLS東京本部の中では周知の事実だ。アギラ自身も隠す気が無く、ゼットンに憧れているのか?と尋ねると「うん」と肯定している。

 そしてアギラは、こんな状況で冗談を言う様な性格はしていない。そのアギラが憧れのゼットンを差し置いて一番信頼出来る人物からの情報だと言う。

 ピグモンが“アギラが信じる人”ではなく、その人を信じる“アギラ”を信じたのだ。

 

「ふふ」

「…………はぁ」

 

 微笑むピグモンにエレキングが嘆息し根を上げる。「どうぞお好きに」とだけ言葉を放つと腕を組んで沈黙する。二人の様子を伺っていた職員達はホッと一息つき、すると次に腕を組んだ事で主張されるエレキングの豊かな双峰に圧倒される。

 因みに職員は全員女性です。御安心ください(にっこり)

 

「………何しているの?はやくしなさい!」

『っ!?』

 

 エレキングがひと睨みすると職員達が慌ててモニターに向き合う。

 ピグモンはその様子を見て苦笑を浮かべ、次に自分の胸に視線を落とし両手で触る。ぺたぺた、ぺたぺた、すとーん。無い、圧倒的に無い!!

 

「………はは」

 

 実はエレキングよりも年上で成人した大人であるピグモンの口から、乾いた笑みが溢れ落ちた。

 

 

 

 

 

 ギチギチ、ブチブチ、とエモノから音がする。最初は非力なエモノが無意味な抵抗をしていたが、今ではされるがまま。少し力を加えればその度に苦しげ声を上げて面白い。

 先程居た空間の時もそうだった。我と争っていた怪獣も最後は我のアゴに捕まり、悲鳴を上げながら死していった。火も、光線も、刃も、尻尾も、ツノも、我の甲殻(からだ)は受け付けなかった。逆にどんな硬質な身体の怪物だろうと我がアゴは砕き抉り裂いた。逃げようとする奴もいたが我が息吹で引き寄せ、最後には我がアゴによって死んだ。

 惑星バラージ(我が住処)でもそうだった。我に殺せぬ存在などいない。あの銀色の巨人だって我を仕留め切る事は出来なかった。

 

「ギィィチチチチ」

 

 このエモノを殺せば、次はあの小さな者だ。我を捕らえ、あんな空間に閉じ込め、殺し合わせた忌々しい小さな者。我を解き放った事を後悔させてやる…!

 

「───ピポポポ」

 

 その時だった。勝利を確信して慢心していたアントラーの背中で(いた)みが爆発した。完全に油断していたタイミングでの奇襲に驚いた余り、獲物(ティア)を挟むアゴの力が揺らぐ。

 

『!!今ッ!」

 

 ティアはアントラーのアゴから力が抜けた瞬間を逃さず脱出に成功。すぐさま距離を離すと、救助してくれた相手を探して見上げる。

 

「………」

 

 頭に対のツノ。黒い長髪、額には黄色の結晶。無機質な目でジッと見下ろす少女。

 ティアには感じ取れた。少女の中に内包されて混じり合った怪獣の魂を。

 

『…ゼットン』

 

 光の国、宇宙警備隊の中でも屈指の実力者。ウルトラ兄弟や彼らに匹敵する戦士達すらも苦戦させる最恐の怪物、宇宙恐竜ゼットンを宿した最強の人間が現れた。

 

 

 

「……ウルトラ、ウーマン」

 

 私は貴女が───()()

 醜い嫉妬だと理解している。だが、思わずにはいられない。何故?何故、貴女がゼット様に救われるの?

 私だったのに、私だけがゼット様の掌に救われた。ゼット様の隣に立った。ゼット様の助けになったのに。私だけ───だった筈なのに…ッ!

 なんで貴女がゼット様の腕に救われるの?なんで貴女がゼット様の近くに立っているの?なんで貴女がゼット様の傷を癒し助けとなるの?

 なんで?なんでなんでなんで?なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで?

 

「話を、聴かせて貰う。死なせたりしない!!」

 

 貴女は何者なのか、何故地球に来たのか。ううん、そんな事はどうでもいい。後でピグモンが勝手に尋ねるだろう、そんな事よりもゼット様の事を、ゼット様について識っている事を全て、教えて貰う!!

 

「だから、邪魔を……しないで!!!!」

 

 彼女の周りに浮かび上がる幾多もの火球がアントラーへと一斉に殺到した。

 

 

 

『ーー!?……?』

 

 何故か、とても恐ろしい事が起きそうな予感にティアが身震いする。

 

『今のは、一体?…はっ!いいえ、そんな事よりもゼットライザーを取り戻してゼツト様へお返ししなくては!』

 

 アントラーは無数の火球が直撃し、全身を隈無く火炙りにされるが堅い甲殻に阻まれ直接的なダメージへと至ってはいなかった。

 アントラーが反撃に磁力光線でゼットンを狙い撃つ。だがゼットンのテレポートで躱され、また無数の火球に襲われる。

 

「ギィィィイイイ!!!」

「!」

 

 地上に居ては拉致が開かないと踏んだのだろう。アントラーが背中の堅い前羽を広げ、その下にある後ろ翅を高速で動かし飛翔する。

 その巨体からは想像出来ない程の高速飛行で迫るアントラーにゼットンは判断が一瞬遅れる。アゴなど関係無い、その巨体での体当たりだけで叩き潰してやろう。

 ゼットンはテレポート、それにバリアも間に合わないと判断すると両腕を胸の前で交差して防御姿勢に移り、衝撃に身構える。

 

『させません!』

「……?」

 

 けれどアントラーがゼットンを轢く事はなかった。ティアがゼットンの前に『入り口』を創造、同時にゼットンの背後に『出口』を創造。アントラーはそのまま『入り口』に入り、『出口』から出た。

 

「……ありがとう」

 

 目の前から光の残滓とティアの手から溢れる光から助けられたのだと理解したゼットンが礼を言う。

 そして振り返り見上げる。視線の先には混乱して空中で停止しているアントラー。

 

「ウルトラウーマン」

『……?』

 

 ゼットンはアントラーから視線を外してティアに向けて呼び掛ける。ティアはゼットンの言葉に首を傾ける。あざとい。

 

「あの怪獣を空中に留める事は出来る?」

『はい、出来ます」

 

 ティアの言葉はゼットンには通じない、代わりに頷く事で応える。ゼットンはティアの仕草に満足した様にふっ、と微笑むと視線をアントラーに戻して告げる。

 

「地上だと被害が出るから空中で留めて。()()()()()()

 

 ゼットンは対人ではなくもっと規模の大きい力の持ち主だ。よって、彼女は本気を出しにくい。本気を出す、それだけで小さな村ぐらいなら簡単に蒸発してしまう。だが、狙いが地上から離れた上空なら話は別である。

 

『わかりました』

 

 ティアはゼットンの頼みに応え、両手を空に向ける。掌に光を灯すとアントラーに向かって光の粒子として放出した。

 粒子は渦となってアントラーを呑み込むとその場に封じ込める。アントラーは光の渦から脱出しようともがくが身動きすら満足に出来はしない。

 

「……ピポ、ピポポポ!!」

 

 ゼットンがアントラーと並ぶ高度に転移すると両腕を上げアントラーに向ける。額の結晶が強烈な光を放ち膨大な熱量(エネルギー)が集い、凄まじい熱気が撒き散らされる。地上で行えば周辺の建物や地面(コンクリート)が融解し始める熱量が平然と放たれている。

 そして創り出される火球は赤から紅へ、紅から赫へ、赫から蒼へ、蒼から()()変換(かわ)った。

 

「私のカイジューソウル、怪獣である本来のゼットンは、『一兆度の火球』を放ったそうよ。さて、私の『本気』は、何度だと思う?

 

 『真・トリリオンメテオ』

 

 ゼットンが小さく笑みを浮かべ、自身の頭部程のサイズの黄金の火球をアントラーに向けて構える。アントラーが黄金火球の熱量を感知する。アントラーの脳裏には鮮明に浮かび上がる記憶が、白銀の巨人が焔を燈した左腕が己の胸に消えない大傷を残した一撃。

 ゼットンの黄金火球(真・トリリオンメテオ)はその巨人の焔の一撃をアントラーに連想させた。

 

「ギィィ!ギィィィッッ!?!?」

『ぐっ、ぐぅぅ!に、逃しはしません!絶対に…!!」

 

 アントラーは全力で光の渦から脱出しようと暴れ、ティアは逃すまいとより(ちから)を込めて閉じ込める。

 そしてゼットンの黄金火球が今、解き放たれた。

 

『ーーーーー』

 

 音が消え、空が染められ、大気が潰れる。熱が押し寄せ、光が弾け、極光が世界を支配した。

 それは、そう、まるで小さな太陽。恒星が如き火の星。爆発では無い、火球に内包された超絶熱エネルギーが解放され、その全貌を魅せた結果だ。

 これが彼女の、最強の怪獣娘、ゼットンの本気だ。

 

 

 

 

 

 




ゼツト「勝ったな、風呂入ってくる」

ブルトンとガンマフューチャーの弾幕戦めっちゃすき。
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