怪獣娘(絶) 〜ウルトラマンZ参戦計画〜   作:ただのファンだよ。

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一月も遅れて、ウルトラ申し訳ありません。
遅れた理由?囚われた妹を探す旅人兄をしてました。
神里綾華ちゃん欲しい(27ランク)


【改造宇宙恐竜】EXゼットン登場!?




バラージの矢(後編)

「───ふざっ、けんなよ……ッ」

 

 投影されたホログラムモニターに映る火の星を見て、ヴェンタリスタ星人が拳を宇宙船の機械に叩き付ける。

 

「くそっ!くそっ!クソガァァア!?!?」

 

 一発二発三発。ガンガンガン!と殴り付け、機械が凹みだしているのに気付かず、癇癪を起こした子供の様に暴れる。

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ッ !?!?腹立つ腹立つ腹立つ!!なんで僕の思い通りにイカねぇんだよ!!!?!?俺は、ティアをォオ!そじでぇ、あの邪魔者を殺せって言ったんだぞォォオ!?なのぉにぃ、あんな、あんなあんなあんなあんなよくわかんない奴にやられてるんじゃねぇゾォ!!!糞虫がァッ!!」

 

 宇宙船が警告を告げる音声が連続で鳴り、息を切らしたヴェンタリスタ星人は機械に触り、()()()()()を呼び出す。

 

「へ、へへ、へへ。確か、あの人間はゼットンって言ってたよなぁ?だったら、()()()()()()()()()()よぉ。ハヒ、ただし、改造、してあるけどなぁ」

 

 ヴェンタリスタ星人が絶叫の様な笑い声を発しながら殴り付けるようにディスプレイに浮かぶ宇宙語で開放と書かれた箇所を押す。

 バット星人の宇宙船から一体の怪獣が射出される。それはヴェンタリスタ星人に乗っ取られる前にバット星人が準備していた最恐の怪獣の創造、その試作体(失敗作)だ。

 

 ───ゼットーン

 

 青い球体の中の怪獣が鳴いた。

 

 

 

 

 

 閃光が消え、地球の空が還ってくる。

 黒焦げの巨大物体(アントラー)が地上に落ちた。左半身で受けたのか左アゴが半ばまで融解し、左目も炭化していた。だがあれほどの超威力の火球を受けて原型を留めているのは流石と言うべきか。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 息を乱したゼットンがふらふらと落下するのをティアが掌で受け止める。するとゼットンの変身が解ける。手に持つソウルライザーには『ERROR』という文字が点滅している。どうやらゼットンの最高出力にソウルライザーのシステムが耐え切れなかった様だ。

 

『………』

 

 ゼットンを掌に乗せつつティアはもう片方の手をゼットンに近寄せる。びくりとゼットンが反応し、ティアを見上げる。

 ティアの手から柔らかな光の粒子がゼットンに振り掛けられる。粒子はゼットンに触れるとスッと溶ける様にゼットンの身体に染み込む。

 

「!……痛く、ない?」

 

 痛みだけではない、疲労感や激しい動悸も治まっている。まだ立ち上がる等の事は出来ないが、身体を苛む全ての苦しみは解消された。

 

「ありがとう」

『……ふふ』

「………」

 

 ゼットンの言葉はティアに通じるがその逆は無い。けれどゼットンにはティアが微笑んだのが自然とわかった。

 良い人だ、人と言って良いのかわからないが。とゼットンは思っていたその時。視線の隅、ティアの背後で倒れたアントラーが()()()()()()()()()()()

 

「まさか……?」

「───ギィチチチチッ!!」

「ッッ、危ない!」

『……』

 

 アントラーが急に起き上がりティアの背中に奇襲を仕掛ける。ゼットンが慌てて呼び掛けたがティアは動かない。何故?そんな思考が瞬間浮かび上がり。

 

()()()()()()

「───え?」

 

 それにティアは応えた。ゼットンの頭に優しい女性の声が聴こえた───いや、正確にはわかったと言うのが正しい。

 耳を通さず心で理解した、テレパシーだ。以前バルタン星人がゼットンに行ったそれと同じ。けれどバルタン星人のそれとは違い嫌悪感が湧く様な感触はしないが。

 

『心配しなくてもいいのです』

 

 ゼットンの心にティアは直接話し掛けた。それは時間の概念など関係無く、完成した思念(ことば)がゼットンに与えられる。その為にテレパシーを受け取った時には既に理解し終えている。

 

『何故なら……』

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ───ご唱和ください、我の名を!

 

ULTRAMAN

ALPHA – EDGE

 

 ティアとアントラーとの間に光が現れる。アントラーは知った事かと光ごと右のアゴでティアを貫こうとして───止められた。

 

「ギィィ…!?」

 

 光が消えると其処にアントラーの右アゴを掴んで受け止める銀色の巨人の姿が。

 

「……ゼット、様?」

『はい、そうです。私達のウルトラマンです』

 

 アルファエッジの姿となったウルトラマンZがアントラーのアゴを掴んで止めている。アントラーは頭を動かしアゴを放させようとするがびくともしない。

 

「ジェッア!」

「ギィィィィイイイイ!?!?」

 

 振り上げられる鋭拳がアントラーのアゴを根本付近からへし折る。不快な金切音(ひめい)を上げて後退する。

 

「ジィ…ア」

 

 ウルトラマンZがアントラーの折れたアゴを投げ捨てるとアントラーに向けて歩み出す。

 

 

 

 インナースペース内にて俺は取り戻したゼットライザーに視線を向ける。アントラーがティアさんの光の渦に囚われて暴れてた拍子に剥がれたゼットライザー、ティアさんはそれを見逃さず俺の元に届けてくれた。

 

「ゼットさん。俺、悔しいっす。俺一人じゃ何も出来ない。ティアさんがピンチの時もゼットンさんに任せて俺は何も出来ていない。ゼットライザーだって、ティアさんのお蔭で取り戻せた。ウルトラマンに成るのだってゼットさんが居るからこそです」

『………』

「でも、後悔も反省も後でします!今は、()()()()()()()()()()()やります!」

『!!そうだゼツト!何故なら俺達は!』

 

 がっちりと心が組み合うのを感じる。強い意志が光となって身体の奥底から力が湧いてくる。

 

『「ウルトラマンなんだから!!」』

 

───その時だった。

 

『……え?…!?』

 

 ティアさんが自身の胸を見る。そして俺達にも伝わる程の強い鼓動が広がる。

 

『こ、これは…!ゼツト様。これを、バラージの矢を受け取ってください!!』

『(!?)』

 

 ティアさんの胸のカラータイマーから青い光が飛び出し、ウルトラマンZ(俺とゼットさん)の頭上で本来の姿を象る。

 俺は手を伸ばし、光を掴む。バラージの矢が発する光がゼットさんの身体に流れ込んでくる。

 其れは長い持ち手と先端には弓の様なエッジの、一見錨の様な姿形をしている槍みたいな武器だ。エッジ手前には金色の球体、その下にレバーが備え付けられている。成る程、確かに大きな『矢』と言われても納得出来る形をしているな。

 

『これは!!』

(ゼットさん、バラージの矢に付いて何かわかったんですか?)

『ああ!光の戦士(ウルトラマン)の力を感じる!何万年も受け継がれてきたウルトラマンのチカラを!』

(何万年も、前から受け継がれてきた、チカラ)

『そしてコイツの使い方もわかる。わかっちゃいますよ!!』

 

 自信満々なゼットさんの声。なら信じましょう!

 

「ギ、ギチチチッ」

 

 アントラーがバラージの矢に怖れ、狼狽え、逃げる様に後退る。

 

(アイツ、怯えてる?)

『どうやらこの武器のチカラの波動を感じ取ったらしい』

(そういえば、あの怪獣はバラージの矢が見つかった星で暴れていた怪獣でしたよね)

『そうか!こいつは惑星バラージで暴れている怪獣を倒した巨人が残した物だ!』

(奴にとっちゃ特攻武器って訳ですね。………決めました!)

『…?』

(この武器。俺達が扱うからこいつを『ゼットランスアロー』と名付けましょう!!)

『ゼットランスアロー……ウルトラカッコイイじゃないか!』

 

 やった!気に入って貰えたみたいだ。

 完全に戦意が消失したアントラーとは真逆にゼットさんは興奮した様子で容赦無くゼットランスアローを扱う。

 ゼットランスアローに備え付けられたレバーを一度下に引くとその上の球体が光を放ちながら回転する。するとゼットランスアローのエッジが高熱を放ち炎を纏う。

 ゼットランスアローを左、右斜め下、再び左へ振るえば炎の軌跡がZを描く。そして最後にぐるりと手首のスナップでゼットランスアローを反転させて握り、大きく振り被ると技名を吼えながら投げ擲った。

 

『ゼ ッ ト ラ ン ス フ ァ イ ヤ ー !!

 

 炎のZを穂先にゼットランスアローがアントラーに飛来する。逃しはしない、必中を誓い劫火を連れ、元から逃げる気の無いアントラーの胸の傷に突き刺さる。胴体にZ型の炎の跡が刻まれ、炎は怪獣の体内から発火、倒れるアントラーの全身を炎で覆い。最後に爆炎の柱を立てた。

 爆炎から飛び出し軌道を描き戻ってくるゼットランスアローを右手で掴み、アントラーに背を向ける。

 

「キマッタァ…」

 

 よっしゃ勝ったぁあ!!ゼットランスアロー、めちゃくちゃ強え!

 っと。喜ぶのは後にしてティアさんと正体ばらしちゃった事を説明して口裏合わせないと。

 

 

 

 

『───ゼツト!何か来るぞ!』

(え?)

『ピロロロロ……』

(あっぶ)っ!?)

 

 それは青い流星。ティアさんが現れた時と似た、その色違いの青い球体が俺の頭上から降ってきたのを咄嗟に避けた。

 青い球からは何処か聞き覚えのある音が鳴っている。

 

(…ゼットさん。これ、何かわかります?)

『……わからない。唯、恐ろしい程の力の波動を感じる』

 

 青い球をじっと眺めていると球体の中心に赤い光が生まれ、青い球を突き破り、連続で三発の火の矢(かきゅう)が放たれた。

 

(!?ちょっ!)

『くっ!』

 

 その時、身体が自然とゼットランスアローをレバーのすぐ手前を右手で持ち、穂先を球体に向けるとレバーを引いた。弓の弦を引く様にレバーを引けばゼットランスアローのエッジ部分が光を帯びる。レバーを放せばレバーの上の球体が回転してエッジから矢を番えた弓の様な形の光弾が放たれる。それを火球と同じ数だけ射って相殺する。

 ふぅ、危っねぇ。今のは俺じゃなくてゼットさんが身体を動かしてくれたから対応できた。ゼットランスアローの扱いはゼットさんに任せた方が良さそうだな。

 

(てゆーか、攻撃してきたって事はコイツは敵っすよね!)

『ウルトラムカつく玉っころだな!』

 

 ゼットランスアローを構え、青い球体に向かって駆けだす。青い球体は特に何か仕出すなんて事なく、接近した俺はゼットランスアローの錨の様な形のエッジ部分の鋭利な先端をぶつけようと振り上げた。

 だが、

 

「ゼッ……トーン!!」

「ジャッ!?」

 

 青い球体が目の前で突然破裂。いや、正確には青い球体を突き破ってナニカが突撃してきた。俺は衝撃にゼットランスアローを手放し、吹っ飛ばされてしまった。

 

(いってぇ…、なんだよ急に───)

『危ないゼツト様!』

「ットォーン!!」

 

 吹っ飛ばされた俺に追い付き、俺の肩を両手で掴み地面に押し付けるナニカ。

 

「ピポポポポッ」

 

 ナニカは俺の肩を放すと腹を踏み付け、見下ろしながら独特な音を鳴らす。

 

(なんだこれ、熱い?───!!)

 

 謎の熱気を感じ、熱気の発生源に目を向けソレを視認する。

 赤い火球がナニカの顔の前に形成されている。突然のことばかりで何がなんだか理解出来ないが今がマズい状況だというのはわかる。

 

「ゼェ…」

(させるかっ!)

『ゼスティウムメーザー!』

「トッ!?」

 

 火球が放たれる寸前、額のビームランプから碧色の光線(ゼスティウムメーザー)を撃って怯ませ、その隙に両足から出た炎(アルファバーンキック)を推進力として脱出する。

 

「ジィ…ヤ」

 

 ナニカから距離を取るとアルファバーンキックをそのまま利用して軽くジャンプして着地、態勢立て直す。

 そして漸く、俺はナニカの全貌を見る事が出来た。

 

「ピポポポポ……ゼットォーン」

 

 其れは黒い身体、顔と胸部に黄色の結晶がある何処か虫の様な人型の怪獣だった。その姿、独特な声。よく観ると昆虫の様な前羽があったり、より人に近い姿形をしていたりするがとても覚えのある怪獣に似ていた。

 そう、其れはまるで、

 

(ゼッ……ト、ン?)

 

 最強の怪獣娘にして今現在、ティアの掌の上に居る少女に宿るカイジューソウルのオリジナル。

 宇宙恐竜ゼットンに似ていた。

 

 

 

「ピポポポポッ」

「!!ジュワッチ!」

 

青い玉から現れた怪獣が空へ飛び立ち、ゼット様が追って同じく空へ飛んでいった。

 

『あれは…ゼットン!?』

 

 私を掌に乗せる巨人の声が頭に響く。あの怪獣が、私のカイジューソウルと同じゼットン。でも、過去の情報(データベース)で見た姿とは違う。

 

「アレは何?」

『……恐らく、改造された個体かと。ヴェンタリスタ星人、まさかゼットンまで。でも、ゼットンを改造出来るなんて事が出来るのはバット星人ぐらいの筈』

 

 ウルトラウーマンが一人で呟いている。声を掛けてみるが届いていないのか返事は無く独り言が続いている。

 その時だった。ウルトラウーマンの身体の端々が光の粒子となって散り始めた。

 

『なっ!もう時間が!?』

「…?どうしたの?」

『すみません時間が無いのです!』

「え?どういう──」

 

 私の言葉を遮る様に女巨人の身体が金色の光へ変わる。当然掌に乗っている私は女巨人が変化した光に呑まれ目を瞑ってしまう。数秒後、目蓋越しでもわかる眩い光が消え、ゆっくりと目を開ければ、私は街の地面に立っていた。

 

「あの巨人は何処へ?」

 

 周りを見渡すけど住民が避難した街に人影は無く、女巨人の姿は完全に消えてしまった。

 

「………」

 

 私はソウルライザーを取り出す。画面を見ればERRORの文字が消え操作出来る様になっている。

 

「ソウルライド、『ゼットン』」

 

 ソウルライザーから光が発し、私の身体を覆い獣殻(シェル)を生成する。額に結晶、頭に対のツノが現れ変身完了。すぐさま浮遊して上昇、空から人影を探す。

 

「居ない」

 

 

 

 街を見下ろすゼットンより遥か上空、雲と言う層を突き抜けた大空という舞台で、蒼穹を疾走する二つの影が交差した。

 スピードに優れたアルファエッジのウルトラマンZと前羽の内側、背中から炎をジェット噴射して高速飛行する改造されたゼットン───『EXゼットン』だ。

 

「───ジィアッ!」

「───トォーン!」

 

 二つの天を駆ける巨影は雲を破り、大気を裂いて、軌跡を描く。ぶつかり、交差し、隣接して絡み合う様に上昇して弾かれる様に距離を離す。そして背を向けて飛行するEXゼットンをウルトラマンZが追う。

 ウルトラマンZは戦闘領域(バトルフィールド)を空へ変え、空中での激闘(ドッグファイト)を繰り広げていた。

 

「ピポポポポッ…ゼッ、トーン!」

(くっ…!)

『ゼ ス テ ィ ウ ム 光 線 !!』

 

 EXゼットンは振り返り、怪獣娘であるゼットンのモノより遥かに高熱の火球を乱射する。それらをウルトラマンZは停止して必殺の光線技を溜め無しで発射し、横に薙ぐ様にして火球群を撃墜していく。

 今度はウルトラマンZが反撃に頭部から光の双刃(ブーメラン)、ゼットスラッガーを放ちEXゼットンを狙う。ウルトラマンZの意思通り機動する双刃は飛行するEXゼットンへ切り掛かる。

 一度二度三度、左右交互に、時に同時にEXゼットンの身体に攻撃する双刃だが、EXゼットンの堅い装甲を貫く事が出来ず、やがてEXゼットンの腕に破壊される。

 

(クッソッ!強くて硬くて速いとか反則だ!)

 

 ゼットスラッガーを破壊した直後に背中から炎をジェット噴射による突進を寸前で躱したウルトラマンZ(ゼツト)が毒づく。

 現在戦っている相手、EX(改造)ゼットンはウルトラマンZが今まで戦ってきた怪獣のシルバゴンよりも力が強く、ザキラよりも身体が硬く、スピードは背中の器官でブーストしたゲネガーグよりも速いと、単純でわかりやすく強さを持っている。バルタン星人の様な様々な術がある訳じゃない、否、必要無い。

 

「ゼットォーン!!」

「ジィア…!」

 

 EXゼットンの背中に急激に溜まる熱反応が一気に解き放たれジェット噴射、とてつもない推進力を以てウルトラマンZに突撃する。ゲネガーグのそれとは明らかに違う速度。だがウルトラマンZには()()()()()()

 元よりEXゼットンがジェット噴射出来る事を知っているウルトラマンZはEXゼットンが溜めに入った瞬間に身構え身体の正面に捉えた。そしてEXゼットンの背中から炎が噴射され超加速した瞬間からウルトラマンZは、前転する様に前屈みになり両腕を伸ばす。

 前へ出した両手が迫るEXゼットンの頭部に触れる直前、ウルトラマンZの両足が火を吹いた。アルファバーンキックを推進力(ブースト)にぐるりと前転、両手はEXゼットンの背中に触れてEXゼットンの突進を受け流す。このままEXゼットンの背後を獲り、其処にゼスティウム光線を撃ち込んでやろうと意気込んだ瞬間。

 

「ピポポポポ!!」

「ジァッ!?」

 

 EXゼットンの背中のジェット噴射の炎が増大し、背後のウルトラマンZに浴びせた。

 ゼットンのバックファイアに吹っ飛び、炎の熱による痛みに悶え、飛行する事が出来ずバランスを崩し乱回転しながら落下。地面に背中から墜落した。

 

「ジ……ィァ……ッ」

 

 時間経過によるエネルギーの消耗とバックファイアによるダメージによりカラータイマーが鳴り出す。

 

「ゼットォーン。ピポポ…」

 

 ウルトラマンZを追う様にEXゼットンも降りてきた。

 

「ジァ!」

『 ゼ ス テ ィ ウ ム 光 線 !!』

「ジィィァアァァ!!!!」

 

 腰を上げてから、勢い良く跳ね起きると即席のゼスティウム光線を不意打ちの様に放ち、着地した直後のEXゼットンへと直撃した。

 

「トォ…トットッ……ゼットォーン!」

「……ジィ…ァ」

 

 けれど不意打ちのゼスティウム光線をEXゼットンは両腕を交差して受け止め、あろう事か少し後退させただけで耐え切られてしまった。

 

 

 

(以前のシルバゴンといい、コイツといい即席のゼスティウム光線全然効かねぇ!)

 

 倒せるとまでは思ってなかったが少なからずダメージは入れられると思っていた光線を防がれ、しかもピンピンしてる様子に吐き捨てる様に文句を言う。

 

『これが、ゼットン。……強過ぎる』

 

 ゼットさんも目の前の怪獣の強さに弱音が漏れる。……てかやっぱりゼットンなのかコイツ。

 ベータスマッシュでも力負けしそうなパワー、アルファエッジじゃないと対応出来ない飛行速度、必殺技の光線すら防がれる耐久力。へへ、相手の悪さに涙が出そうだ。

 ……だからって俺もゼットさんも簡単に諦められるか、怪獣娘の方のゼットンさん、それにティアさん。あの二人がアントラーを相手に戦ってくれたお蔭で変身出来てるんだ。その俺達が負ける訳にはいかねぇんだよ。

 

(覚悟はいいっすか?行きますよ、ゼットさん!)

『ああ、そうだな!絶対に勝つぞゼツト!!』

(おう)ッ!!)

 

 その時だ。強い光の波動を感じ取り、咄嗟に振り返ると地面へと突き立ったゼットランスアローが鎮座している。何故だろう、意思なんて無い筈なのに呼ばれている気がする……“これを使え”って。

 

『アレは……?』

(ゼットランス、アロー……バラージを救った神秘の巨人が遺した『矢』)

 

 ゼットランスアローを通じて『俺達に手に取れ』…そう言うのか?

 

(ゼットさん!)

『ああ!ウルトラわかってるでありまするよ!』

「ジィアッ!」

「ピポポポポ…ゼットォーン!」

 

 俺はゼットランスアローに向かって駆け出そうとした瞬間、ゼットンが火球を放ってくる。

 

(ぐっ、邪魔すんじゃねぇ!)

 

 飛来する火球を飛び込む様に前転して回避。直後にゼットスラッガーを放ち、これ以上妨害されない様に頭部の辺り狙って飛び回らせる。狙い通りゼットンは顔の周りを飛び交うゼットスラッガーをうざがって腕を振り回している。

 今のうちにゼットランスアローの前に移動して柄を掴む。

 

 ───光は絆だ。誰かに受け継がれ、再び輝く。

『(!?)』

 

 今の声は?ゼットさんも聴こえたみたいだし。ゼットランスアローを握った時に聴こえた。もしかして、ゼットランスアローを遺したという神秘の巨人の言葉…だろうか?

 

(光は絆…誰かに受け継がれ、再び輝く、か。だったらこの光、俺達で一番強く輝かせてやりましょう!)

 

 ゼットランスアローを地面から引き抜き、両の手で長い柄をぐっと握る。

 

「ゼッ…トォーン!!」

「ジャ!?」

 

 少しゼットンから気を晒した隙にゼットスラッガーを砕き、頭部に熱エネルギーを溜めていた。ちょっ!まだ準備出来てな…!?

 ゼットンが熱エネルギーを火球に換えて解き放たれそうになり俺は咄嗟にゼットランスアローを盾代わりに前に突き出す。

 

「ゼェ……ッ」

「───させ、ないわ…!」

「ドォッ!?」

 

 解き放たれる寸前の熱エネルギーに予想外の方向から火球が叩き込まれる。怪獣(ゼットン)のソレと比べれば小石の様に小さな火だが、間違いなくその火球は怪獣娘(ゼットン)の放ったモノ。別のエネルギーを受けた怪獣(ゼットン)の火球は形を保てず暴発し、ゼットン自身がダメージを負った。

 

「この星にゼットンは一つで十分。ゼット様、今です…!」

「ジィア」

 

 めちゃくちゃ有難い!ありがとうございますゼットンさん!

 

(ゼットさん!)

『応ッ!ウルトラ任せろ!!』

 

 身体から俺の感覚が離れ、代わりにゼットさんが動かす。等身大、且つウルトラフュージョンしてないゼットさん本来の姿(オリジナル)の時と近い感覚。

 ゼットさんはゼットランスアローのレバーを一度、二度と引いた。エッジ部分が赤ではなく青い光を帯び、二度振り回してから相手に差し向ける。するとエッジ部分に沿って、より大きな光の弓が展開される。弓があれば当然弦もあり、其処に氷の矢が番えられ、左手を柄に沿って動かせば釣られて氷の矢も引き絞られる。

 

(凍え)

『凍て付き』

「トットッ……ピポポポポ!」

 

 氷の矢の冷気を察知したのだろう、ゼットンは慌てた様に熱エネルギーを溜め始める。ハッ!今更気付いた所で遅いんだよ!!

 

『(砕け散れッ!!)』

『ゼ ッ ト ア イ ス ア ロ ー !!

 

 光の大弩(おおゆみ)から夥しい凍気を内包した冷獄の氷矢が飛翔する。其れは未だチャージ段階のゼットンをその火球ごと氷塊に呑み込み凍て付かせ、氷に囚われた全てが粉々に砕け散った。

 ぐるんとゼットランスアローを一度回して一言呟いた。

 

ジィヤッタ(決まった)

 

 

 

 

「あ、ティアさん!」

「!…ゼツト様、ご無事で」

 

 誰にも見られない様に変身を解いた俺はティアさんと合流した。

 

「それで、話というのは何でしょう?急ぎと言っていましたが」

「それは、その。……実は──」

 

 俺はティアさんが地球人に変身している事をバラしてしまった事を説明した。

 

「………なる、ほど」

「すみません」

「いえ、私を助ける為にしてくれたのでしょう?感謝こそしても怒るなんてのは筋違いです」

「……ありがとう、ございます」

「こちらこそ」

 

 優しい笑みを浮かべるティアさん───シズクさん。やっぱり、良い人だよな。聖女と呼ばれるのも納得だ。……なんでゼットさんはティアさんを邪険にするんだろうか?

 まぁ、それよりも今は今後の事を考えよう。

 

「これからどうしましょうティアさん」

「……その、がーるず?が何のリアクションもしてこないとは思えません。向こうからコンタクトを取ってくる筈ですのでそれを待ちましょう」

「了解です。それじゃあ一先ず、此処から離れた方が良いですかね?」

「そうですね。一緒に居るのを見られるのは余り良いとは思えませんから」

「はい」

「───みつけた」

 

 その声は頭上、空から聞こえ、“がちん”と固まる俺とティアさん。二人揃ってゆっくり見上げる。

 

「………」

 

 其処にはスマホの様な機械。アキが言っていたソウルライザーを片手に俺達、正確にはティアさんと画面を見比べているゼットンさんが。

 

「貴女がシズク・ウルティア。───ウルトラウーマンね?」

「……はい」

 

 ティアさんが観念した様にゼットンさんの問いを肯定する。ティアさんの反応に満足したのかソウルライザーを仕舞うと次に俺に視線を向けた。

 ぎくりと震える。

 

「そこの君は?」

 

 拙い!此処の答えようで俺がウルトラマンってのがバレる!?

 

「俺は、えっと、そのぉ…」

「───彼は私を心配してくださったのです!」

 

 俺が返答に滞っているとティアさんが割り込んでくる。

 

「心配?」

「はい。彼は私が変身して怪獣を相手にしているのを見て、優しい方なのです」

 

 ……なんか、恥ずい。

 

「変身したのを見た…?という事は君がアギラに連絡してくれた人?」

「え?あ、はい。そうです」

「そう。…()()()()()()

「え?」

 

 ゼットンさんが俺の右腕の手首を優しくだがしっかりと掴む。

 ???どゆこと?

 

「貴方にも一緒に来てもらうわ」

「「……ゑ?」」

 

 ゼットンさんの言葉に俺、そしてティアさんの口から声が溢れた。

 




次回予告(CV.ウルトラマンゼット)

『ゼットンに見つかりティアと共にGIRLSに連行される事になったゼツト!ティアの口からウルトラマン、侵略者、そして人類の敵シャドウについて語られる。
その裏で邪悪な影が蠢いている。

次回!

怪獣娘(絶) 〜ウルトラマンZ参戦計画〜

怪獣の魂


ウルトラ震えるぜ!?』

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