怪獣娘(絶) 〜ウルトラマンZ参戦計画〜   作:ただのファンだよ。

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本日二話目です。
まだの方は前編からどうぞ。





怪獣の魂(中編)

「……あの、というのは」

「この状況で惚けるの?」

 

 スッ、とエレキングの目が僅かに細くなり威圧感も増した。

 ティアはエレキングの視線を受けて一度目を伏せると強い意志を宿して目でエレキングの瞳を見返し、そして答えた。

 

「あの方は私と故郷を同じし、宇宙怪獣ゲネガーグを追って現れた宇宙警備隊の隊員。名前を『ウルトラマンゼット』と言います」

「………そう。ならこれからは仮の名称であったけど正式な名前として呼称出来るわね」

「ゼット。それがあの方……コホン、ウルトラマンの名前」

 

 ティアの発せられる情報に皆が真剣に聞き入っている。特にゼットンは髪を掻き上げて露出させた耳を澄ましている。

 

「ゲネガーグっていうのはウルトラマンゼットの前に現れたあの怪獣ね。でも、なら何故ウルトラマンゼットはゲネガーグを倒したというのに地球に残っているの?」

「……あの方はゲネガーグを追って地球に現れましたが一人ではゲネガーグを止める事が出来ませんでした」

()()()()?」

「……………………はい」

 

 エレキングの疑問にティアはその端正な顔を僅かに曇らせた。

 “言いづらい”或いは“言いたくない”という想いを露骨に表す表情の変化から視線が集中し、やがてティアは観念した様に言葉を発した。

 

「あの方は……この地球に生きる、とある少n──コホン、男性と一体化して力を合わせる事でゲネガーグを倒す事が出来ました。あの方は力を貸していただいたお礼としてこの地球を守る為に一体化した男性と共に戦っているのです」

「「「………」」」

 

 ティアの言葉、それはGIRLSのメンバー達にとって完全に予想外の事だった。ウルトラマンと共に戦う人間がいる、その事実はとても重大だ。

 もしもその人間とコンタクトを取り、そして協力関係を結ぶ事が出来ればGIRLS、延いては地球にとって()()()()()となる!

 

「そ、そのウルトラマンゼットと一体化した人というのは、どなたなのですか!是非教えて頂きたいのですが!」

 

 ゲネガーグから始まりヴェンタリスタ星人による送り込まれる怪獣(しかく)の襲来。それは半世紀以上の月日を経て今新たな───否、嘗ての大怪獣時代の再来を示している。

 地球を舞台とした怪獣大戦争に過去に現れた正体不明の巨人の様な()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()多くの怪獣娘や地球上にある命を護る事が出来る。怪獣の魂と常人離れした異能を持っているとしても彼女達はヒトだ。本来の怪獣に比べれば遥かに矮小で非力な存在でしかない少女達に前線に立たせる事を肯としない、寧ろ忌避するピグモンは彼女中では既に協力を前提とした問いをティアに向けて訊ねた。

 

「………」

 

 ピグモンの内心を見透したティアは小さく俯き、一度、ゆっくりと瞬きを挟み───光の国の聖女(涙を語り継ぐ者)として少し、ほんの僅かに哀しげを表情を浮かべてから、ピグモンに向けて言った。

 

「申し訳ありませんが私には答える事が出来ません」

「………え?」

 

 

 

 

 

 岡田さんの説教が終わった後、俺は現在会議が行われている大部屋から出てすぐ近くのGIRLS所属の怪獣娘の方々や職員さん達が活用している休憩スペースには紙コップに入った熱いお茶を飲みながらぽけーと呆けている。ティアさん、上手く誤魔化してくれてるかなー。

 やっぱり、正体がバレるのはマズかったりするんだろうか?……するんだろうなぁ。だって今まで地球にやって来たウルトラマンの方々って皆正体不明だったらしいし。テレビとかだって「普段は透明で見えないだけ」とか「自分達とは僅かに次元のズレた場所に居り、干渉する時だけ次元の壁を超えて現れる」とか「人間に擬態して紛れている」とか色々な説が浮上してたし。

 ただまぁ、現状俺に出来る事なんか何もない訳で、簡単に言えば。

 

「すっ……げぇ暇」

 

 ぽけーを通り越してボケーと内心“ばなな”とでも言ってそうな頭の悪い人になっているとふと時計の二本の針が午後5時を指し示しているのが見て取れた。

 

「あ、大怪獣ファイトの時間だ」

 

 俺以外に此処の休憩スペースを使っていない為、何も気にする事なく壁に備え付けられたテレビサイズだと中々大きいモニターの電源を付ける。

 本来なら日本最大の動画共有サービス『シュワシュワ動画』で配信されている大怪獣ファイト。シュワシュワ動画を観ること自体は無料で可能だが高画質版や過去の配信を観るには会員入りしないといけない。

 

「まぁ、GIRLSの施設の此処だと関係無い話だけどな」

 

 画面にはこれでもかと超綺麗な画質で今回のファイター両者が映し出されている。バトルフィールドとなっているのは元々はアメリカ領土だった火山島の北側に広がっている火山の噴火や溶岩の影響により不毛な大地となった荒野。その一部を怪獣の捕縛に使われていたと電磁シールドを活用して用意されている。

 そんなバトルフィールドに立つのは二人の怪獣娘。両者其々をアップし、テロップと実況アナウンサーにより紹介される。

 

 身に纏う獣殻(シェル)はどこか骨の様な質感を感じさせるフード付きのパーカーだけ、それもチャックをほぼ全開にした様な見た目に、両足のブーツに右手が無骨で鋭い爪を武器とする『キリエルクロー』へと変化した浅黒い肌の少女。深く被ったフードで顔を隠し、唯一露出した口元には不敵な笑みを浮かべる、怪獣娘。

 

炎魔戦士『キリエロイド』

 

 もう一人は白い内側の髪を覆う様な黒髪に赤色を基本色とし真ん中に黒い丸が描かれた何処か鳥類の目を思わせる髪飾りを左右対に付け、メガネを掛けた少女。背中にはマントの様な漆黒の翼、胸部には厚みのあるプロテクターを装備し、腿部分が膨らんだ袴の様な獣殻(シェル)は何となく近代的な天狗といった容姿をしている。おへそ丸出しのお腹を大きく露出した獣殻(シェル)に身を包み、メガネを人差し指でクイッと上げて知的な笑みを浮かべて対戦相手に目を向ける怪獣娘。

 

破滅魔人『ブリッツブロッツ』

 

 互いに白と黒のカラーリングの怪獣娘が試合開始を告げるゴングを今か今かと待ち侘びているのが映像越しに伝わる。当事者ではなく傍観者である筈の俺がゴクリと緊張に息を呑む。

 

 そしてカーンッ!とゴングが鳴った。

 

『ハッ!』

『ッ!?』

 

 初動は全く同時、だが持ち前のスピードの差からブリッツブロッツが先手を制した。正に疾風、矢の如し。亜音速の一撃を浴びせ、そのまま自身の領域───即ち空へと飛び上がる。

 キリエロイドもブリッツブロッツのスピードに驚愕しながらも何とかガードを挟む事には成功し、攻撃自体が軽かった事も合わさってダメージはほぼ無しといって様子だ。実際は攻撃をくらった直後も半身が僅か蹌踉めいただけで今も平然と空に浮かぶブリッツブロッツを見上げている。

 暫しの睨み合いを経て、ブリッツブロッツが再度仕掛けた。空中で姿勢を変えキリエロイドとは反対方向へ空を蹴り、広がった翼が大気を斬り裂く。再びキリエロイドに一撃与える。

 

『ぐ……っ』

『ふふ、まだまだ。わたしの速度はこんなモノではないぞ』

『チィ…!」

 

 正面に捉え、尚且つ来るとわかっていた。のに関わらず捉えられない速度にキリエロイドが舌打ちする。そんな様子からブリッツブロッツは果敢に攻め続ける。自前の機動力を活かしたヒット&アウェイ。

 

『だったら!』

『むっ』

 

 キリエロイドが何かしらの予備動作に入る。警戒して攻撃の手を止め上空へと避難するブリッツブロッツを視界に収めつつキリエロイドは全身に気合いを込めた。

 ぼう、ぼうぼう、とキリエロイドの周りに火の粉が舞う。そして(ごう)っ!と彼女の右手(キリエルクロー)に業火が灯る。

 

『ハァァァ……ッ!ハアァ!!』

 

 右手に宿る業火を天に向けて解き放った。ひゅー、と花火の様に打ち上がる炎。そして、

 

『弾けろォォォ!!!』

『なっ!?』

 

 ばあぁんっ!!?! という音と共に爆発し、怒涛の様に炎で空を覆い、埋め尽くした。

 堪らないといった様子で押し寄せる炎から逃れる為に慌てて地上へと降りる。

 

『フッ、どう。お得意の空を失った気分は?」

『ふふ、まんまとしてやられたよ。だが、たかだかわたしから空を奪ったぐらいで勝った気になっているのかい?』

 

 ブリッツブロッツはまたもメガネをクイッと上げると翼を広げ、足先が僅かに大地より浮く。そして姿勢はそのままで高速でスライドするかの様にホバー移動しキリエロイドの背後を取る。地に堕ちようとも天狗の疾風、変わる事なく。

 

『でも、空に浮かばれ続けるよりはマシ。こっからはアタシの領域』

『ふはっ、いいだろう。わたしの武器はこの翼だけではないと教えてやろう』

 

 身体の重心を下げてぐっ、と地面を踏み締めるキリエロイド。

 対してブリッツブロッツは両腕を左右に広げてから前方伸ばし右手を上、左手を下に置く。

 

『ッッ!ィィヤァァア!!』

『ハァァァッ!!』

 

 二人同時に前へ駆け、キリエロイドが先手として蹴りを放つがブリッツブロッツは軽やかに身を翻してこれを躱し、背後を取ったブリッツブロッツが回し蹴りを放つがキリエロイドも後ろ回し蹴りで迎え打つ。両者の蹴りがぶつかり、凄まじい音と衝撃が趨る。

 繰り出される格闘戦はほぼほぼ互角といった感じだった。ブリッツブロッツは自慢の機動力と浮いているが故の予測の難しい変則的な技で攻め。キリエロイドも得意の蹴り技を主体としつつ鋭利なキリエルクローによる鉤爪や突き、そして格闘技に炎を纏わせた攻撃などで負けじと応戦する。

 

『……っ……っ』

『はぁ…はぁ…』

 

 互角の格闘戦は互いの体力をごりごりと抉る様に削り、両者荒い息遣いで向かい合う。

 特に疲労とダメージから自慢のスピードが落ち、尚且つキリエロイドが慣れてきた事もあり序盤とは逆転してブリッツブロッツの方が押されている。

 

『チェアッ!』

『ぐあっ』

『!? ここだァァア!!』

 

 ブリッツブロッツがキリエロイドの蹴りを横腹で受けて一瞬体幹が崩れる。その一瞬の好機をキリエロイドは見逃さなかった。

 

『ハァッ!』

『がっ!?』

 

 体幹の崩れたブリッツブロッツの腹をキリエロイドが鋭い一撃で蹴り飛ばす。身体を“く”の実に曲げて後方へと吹っ飛ぶブリッツブロッツを背を向けた直後に連続バク転で追う。

 

『ハァァ…!』

『な!拙──」

『───セヤァァァッ!!』

 

 吹っ飛ぶ身体が地に落ちるよりも素早く接近し、跳ね飛ぶキリエロイドを視認したブリッツブロッツが何とか翼を広げて逃れ様とするが時すでに遅い。空中で身体を捻ってスクリュー回転し、そのまま両足揃えた蹴りがブリッツブロッツの腹を捉える。キュルギュルギュルッ!とエゲツない音を立てながら硬い巌の地面に押し付け、尚も回転は止まらない。

 ブリッツブロッツの半身が地面に半分埋まり、漸くキリエロイドがブリッツブロッツを踏み台に跳び上がり離脱する。くるりと空中で身を翻し、そして可憐に着地。そしてアナウンサーの実況。

 

『決ィィま……ッッたぁぁあああ!!?!? キリエロイド選手必殺のドリルキックコンボがブリッツブロッツ選手に炸裂ゥゥゥ!! ブリッツブロッツ選手、動かない! ノックダウン!! 勝者は炎魔戦士キリエロイドだァァア!!!!』

 

 モニターには息を切らしながらも左腕を掲げ、やり切ったと言わんばかりに天を見上げるキリエロイドの姿が。

 すると、ぽろりとキリエロイドのフードが取れて素顔が露わになる。まるで炎の様なぼさっとしたボーイッシュな金髪と今まで戦いぶりとは裏腹にとろんと垂れ目に碧眼がよく映えた幼さの抜け切らない童顔。鋭い蹴り技を得意とし、悪魔を連想させるフードに被った姿は“カッコイイ”と人気だが、その素顔はとても可愛らしい。

 

『……? ……!? ーーー!!!!』

 

 最初、フードが取れた事に気付かず。違和感から自身の顔をペタペタと触り、阻む物がない事から素顔が晒されている事を察すると顔を真っ赤に染めてから両手で覆い隠し、声にならない悲鳴をあげて猛スピードで走り去っていった。瞬く間にカメラに映らなくなるほど遠くに行ったその速度はブリッツブロッツの最高速度にも負けてはいないのではないかとネットで話題になり、暫くの間キリエロイドが大怪獣ファイトに出場する事が無かったのは別の話。

 

「いやぁ、凄かったなぁ」

 

 高画質で観る大怪獣ファイトはやっぱり凄いな。俺も会員登録しようかな? 月額550円(税込)か〜、うーむ。でも画質ぐらいしか恩恵ないんだよなぁ。

 

「───あ、見つけた」

「…え?」

 

 くだらない事で腕を組んでウンウンと唸る俺を背後から呼び掛ける声に振り返ると、そこには怪獣娘の、方…が……?

 ()()()()。テレビとかでも見た事の無い怪獣娘さんだ。

 

「えっと。どうされました?」

「……………」

「???」

 

 取り敢えず用件を訊ねてみたけど返答は無く、晴れた日の空の様な水色の髪のその人は無言でじっと俺を眺められておられる。

 流石に対応に困り、周りに助けを求めて視線だけを彷徨わせるが、まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ふふ、すみません。()()()()()()()()()()()()()()

「……?それってどういう」

「コホン、失礼しました。初めまして、私は会議が行われている間、貴方の対応をする任を申し付けられた者です」

 

 その人は側頭部に対になる角を生やし、銀の様な金の様な髪色と金色の瞳にこれまた凄い獣殻(かっこう)。言い方悪いけど大事な所だけ隠し、スッッケスケの腰布と複数ある尻尾がそれぞれが全く別の感情を持っている様に動いている怪獣娘さんだった。

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