怪獣娘(絶) 〜ウルトラマンZ参戦計画〜   作:ただのファンだよ。

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【暗黒星人】ババルウ星人登場!?
【寄生生物】セレブロ登場!?

※怪獣娘になった時の服装を獣殻(シェル)言う設定を知り今までの話を修正致しました。


ご唱和ください、我の名を(後編)

───時は、僅かに遡る。

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

走る、走る走る。肺が痛い、呼吸が乱れる、何度も転びそうになる。でも止まらない、止まれない。

今は一瞬一秒を争う機会なんだ!俺はそう自分に言い聞かせて足を進める。そして目的の場所に辿り着いた。

 

「う、うるとゴホゴホ!…くっ、う、ウルトラマン!」

 

ピーオンピーオン、と機械的な音声と赤く点滅する胸のカラータイマーを鳴らして立ち上がろうとするも、失敗しているウルトラマンに声を掛けた。

 

「ジャ、ジャア…」

「!!……っ」

 

ウルトラマンが俺の声に気付いて俺を見る。やっぱり近くで見るとめちゃくちゃデカい。俺は臆する気持ちをぐっと我慢して話し掛ける。右手には拾った謎の機械、左手には三枚のメダルを持って。

 

「これ、アナタの物だろ!これがあったらあの怪獣に勝てるのか!!」

 

見た事も無ければ用途もわからない、そんな機械とすぐそばに落ちていたウルトラマンの横顔が描かれたメダル。そして現れたウルトラマン本人。無関係な筈がない。俺は確証の無い確信を持ってウルトラマンに言葉を発する。

 

「ジャア!?」

 

そして実際にウルトラマンは「何故それを」とでも言いたげに驚いた反応を見せた。やっぱり、コレは元々ウルトラマンが持っていたアイテムだったんだ。

 

「これ、返す。だから立ってくれ頼む!俺には出来なくてもウルトラマンなら出来──」

「……ジャア」

「る……って、え?」

 

だったらこれを返せばあの怪獣を、俺がそう思い機械とメダルをウルトラマンに渡そうとした瞬間、ウルトラマンから意を決した様な反応を見せたと思えばウルトラマンは目も眩む様な光となり俺を呑み込んだ。

 

 

 

───……人。目を開けなさい、地球人。

 

「───ん?……はっ!?」

 

反射的に腕で目を守る様に動かし目を閉じていた俺は、不思議な声に呼び掛けられてゆっくりと目を開いた。

 

「どこだ、ここ?」

 

視界に映るのは暗い空間だった。見渡す限り果てはなく、先の見えない空間が続いてる。更には赤、青、黄色と不思議な光がふわふわと浮いている。

 

『こちらです、地球人』

「え?…ってうお!?」

 

背後から声が聞こえて振り返れば、さっきまで倒れていた筈のウルトラマンが立っていた。

 

『突然の事で混乱していると思うが話を聞いて欲しい。私はウルトラマンゼット』

「ウルトラマン…ゼット…」

『頼みがある地球人。今の私はウルトラヤバい状況に陥っております』

「……ん?ってそれじゃあどうすれば!?」

『一つだけ手はある。私とお前が一つに成ればもう一度戦える。手を組まないか?私もお前の力が必要なのでございます!」

「………」

 

…聞き間違い、じゃないよな?やっぱり、何というか。

 

「言葉遣い、変じゃね?」

『───え、マジ?参りましたな、地球の言葉はウルトラ難しいぜ』

「えっと、それは一先ずどうでもいいや。兎に角、アナタと手を組めばあの怪獣を倒してアイツや家族、それに皆を守れるんだな!?」

『ああ、守れる…!』

 

言葉遣いこそはちょっと変なウルトラマンだけど、今の言葉には信頼出来る重みがあった。だったらやるべき事は一つだけだ!

 

「やる!俺がアナタの力になる!どうすればいい!!」

 

俺の返答にウルトラマン───ゼットは頷いて眩い光へと変化した。光は小さく一点に集結して形となり俺の手元に降りてきた。それはさっき拾ったアイテムと同じ物だった。

 

「これって」

『さぁ、その『ウルトラゼットライザー』のトリガーを押します』

 

ウルトラマンのアイテム、『ウルトラゼットライザー』の取手を握れば親指で押せる位置にボタンがあった。……トリガーって、これだよな?

よ、よし。俺は、ゼットライザーのトリガーを恐る恐るだが意を決して押した。

すると、俺の目の前にZの様な形の光が展開され、人一人通れるぐらいの門に変わった。

 

『その中に入れ』

「りょ、了解」

 

俺はゼットの声に従って門の中に足を踏み入れる。

門の中は不思議な空間だった。幾つもの光が幾何学模様でも描く様に駆け巡っている。

その光の中から一枚のカードが現れる。カードにはゼットの横顔と、俺が描かれていた。なんで、俺?

 

『その『ウルトラアクセスカード』をゼットライザーにセットだ』

 

ゼットにセット……いや何でもない。

俺は言われた通りにゼットライザーにアクセスカードをセットする。

 

《Zetuto Access Granted》

「うおっ!お、おお?」

 

機械的な音声に困惑していると光が俺の腰に集まり形になる。何かのケース、って言うよりはホルダーに見える。開けてみると、中にはさっき持っていたメダルが三枚入っていた。

 

『ゼロ師匠、セブン師匠、レオ師匠のウルトラメダルだ。スリットにセットしちゃいなさい。師匠達の力が使える筈だ」

「了か……ん?師匠?……師匠!?ゼットってあの有名ウルトラマン達の弟子なのか!?」

『え?あ、ああ』

「す、すげぇ!ウルトラマンの弟子、それも三人も!!うおー!ヤベー!」

『い、いいから早くセットしちゃいなさい!』

「え、あ!ご、ごめん」

 

俺は急いで三枚のメダルをそれぞれのスロットに入れる。順番はウルトラマンゼロ、ウルトラセブン、ウルトラマンレオの順だ。

チラリと目線だけゼットに向けると何やらもじもじしてる。もしかして、照れてる?

 

『セットしたな?じゃ、じゃあ次はメダルをスキャンだ』

「えっと、あの、俺が言うのもなんだけどもっと急がないか?」

『安心しろ、ここの空間は時空が歪んでいるからここでの一分は外での一秒だ』

「あ、そうなのか。なるほど」

 

じゃあ今だと、現実じゃ十秒も経っていないのか。

俺はゼットの言葉に少し安堵すると言われた通りにゼットライザーを動かしメダルを認証させる。

 

《ZERO.》《SEVEN.》《LEO.》

 

認証し音声が鳴り終えると、空間を駆け巡る光から幾つかが軌道を変えて集まる。集まった光は形を変えてゼットに変わった。

 

『よし!なら俺の名を呼べ!』

「ウルトラマンゼット」

『あ、いえ。もっと気合を入れて言うんだよ!』

「お、おう」

『よし、じゃあもう一度。今度はウルトラ気合入れていくぞ』

 

ゼットが腕を広げて胸を張る。あたかも自身を主張するかの様に。

 

『ご唱和ください、我の名を!』

 

あ、いや、多分意図して自分を主張してるわ。

 

『ウルトラマン、ゼェット!!』

 

よ、よし。これで変身して俺があの怪獣を倒すんだ。

ゼットライザーを握る手に力が籠る。俺は声の限り叫びゼットライザーを天に翳した。

 

「ウルトラマン!ゼェェェット!!」

 

…………。…………………。

何も起きない。もしかして、不良品、とか?

 

『トリガー!トリガーサイゴニオスノ!』

「………これ?」

『ソウ、ソコ』

 

………。は、はは、はや、

 

(早く言えぇぇーーー!?!?!)

 

俺は恥ずかしさに赤面しながら半分八つ当たり気味にトリガーを強く押した。

トホホ、こんな締まらない変身したの俺だけじゃないの?

 

 

どこからともなく現れたのはメダルの元となった三人のウルトラマンの虚像(ビジョン)。それぞれが声を上げて光に成ると飛び交いやがて一点に集結し、その地点から一人のウルトラマンが現れ巨大化する。

素体こそはウルトラマンゼットのまま、上半身に青と銀、下半身は赤と銀のカラーリング。胸と肩のアーマーはそのままに腿にはプロテクター。

一番の違いは頭部にある。額にはウルトラセブンと似たビームランプと頭頂に元からあるトサカの左右にウルトラマンゼロのゼロスラッガーの様な双刃。

 

───宇宙拳法、秘伝の神業。

 

ULTRAMAN

ALPHA – EDGE

 

「ジュワァッ!!」

 

 

 

 

 

 

そして、時は重なる。

ゼットンが張ったバリアが破れる瞬間、怪獣──いや、ゼットと一体化した今なら奴の名前がわかる──ゲネガーグに飛び蹴りを見舞わせ、そのまま自分でもびっくりする程の超スピードで力尽きて落下しようとするゼットンさんを掌に乗せる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

よかった、どうやら疲れているだけで怪我も無さそうだ。俺はゼットンさんを優しく心掛けて安全な場所に降ろす。

 

(お疲れ様です。後は任せてください!)

 

他の怪獣娘の子がゼットンさんを支えるのを確認すると、ってあれはアキ?アキはゼットンさんに肩を貸しながらもこちらをじっと見つめてくる。

 

「……アナタは?」

「ジャア」

 

どうやら人の言葉は話せないみたいだ。俺は立ち上がるとアキ達に背を向けてゲネガーグに向けて足を進めた。全身に満ち溢れるウルトラマンの(ちから)を感じながら。

 

(すげぇ、これなら戦える!)

『息を合わせて戦うぞ!地球人!!』

(おう)ッ!!)

 

俺はゼットの言葉に気合いを込めて応える。ゼットの口癖を借りるとするなら。

 

(覚悟しろよ?今の俺は、いや、俺達はウルトラ強ぇぜ!)

 

 

 

 

また現れた巨人。よく見ているとさっきの巨人と似ている。まるでさっきの巨人に色々付け足した感じ。見渡すとさっきの巨人はどこにも居ない。多分、あの巨人はさっきの巨人が変化した姿なんだ。

 

「………」

 

でも、何故だろう。あの巨人が、巨大な怪獣に向かって歩き出した巨人と、ゼツトが重なって見えた。

……ううん、そんな訳ない。それより今は早くゼットンさんを連れて離れないと。

 

否定した筈なのに消えない想い。

ボクは無意識の内に祈っていた。

 

───どうか、あの巨人が勝ちます様に。

 

 

 

 

 

起き上がるゲネガーグを正面に捉えると静かに構える。これはメダルを通して与えられたウルトラマンレオ、そしてレオの弟子でもあるウルトラマンゼロの宇宙拳法の構えだ。

 

「ジィ…ヤァ…」

 

適度な脱力、無駄な力みを削ぎ落とす為に息を吐き、動じる事なく無くゲネガーグの突進を片手で受け止める。腕に伝わる衝撃が腕から胴へ、胴から腰へ、腰から足へ分散しながら流れ最後には地面の確かさに呑まれて消える。

完全に停止したゲネガーグに今度はこちらから反撃に正拳を放つ。ガンッと確かな手応えを感じゲネガーグが怯むのを察する。続けてもう一発打ち込んでゲネガーグを後退させ、その隙に再度構えを整える。

 

「ギィガアアア!!」

「……ジッ」

 

ゲネガーグが顎を広げて噛み付こうとしてくるので今度は両手で受け止める。右手はゲネガーグの鼻先の角を、左手で下顎を押さえて動きを止める。するとゲネガーグは顎を振るう事で俺の手を払い除け、今度こそと突進してくるが角の側面、続けて大きく開けた口内、頬の内側に裏拳を叩き込む。口内の痛みに堪らず怯んたゲネガーグの胴体に蹴りを一発。左腕で顎を押し上げ胴体に右腕によるチョップを数発打ち少し距離を取る。

 

「グゥゥ…ッ!!」

「………」

 

常に構えを崩さず、冷静に相手を見据え、如何なる攻撃にも対処できる様に心掛けよ。パンチは拳で打つのでない、足先から腰、胸や肩も使い全身で打ち込め。

誰かに教わった訳でもないのに自然と理解できる。戦い方が、この力の使い方が!!

 

「ディアッ!ディッア!デェィアッ!!」

 

馬鹿の一つ覚えの様に再び突進してくるゲネガーグに俺は左足での回し蹴り、右足での後ろ回し蹴り、そして仕舞いにウルトラマンレオのレオキックの様な炎を纏わせた回し蹴り『アルファバーンキック』と、流れる様な三連蹴りをゲネガーグにくらわせる。

堪らず後退(あとずさ)り距離を開いたゲネガーグは吠えながら身体を赤く発光させる。また光弾をばら撒く攻撃をするつもりだろうが。

 

(その攻撃は何度も見てんだよ!!)

 

俺は人差し指と中指だけを立てる手の形を左右の手で作り頭部に近付ける。胸のアーマーが光を発し、肩のアーマーへと伝わり、頭部の双刃に集束、エネルギー状の刃『ゼットスラッガー』を形成。

 

「ィイッヤ!トゥワー!!」

 

さらにゼットスラッガー同士を稲妻状のエネルギーで連結させヌンチャクの様に扱いポーズを決めてから駆け出す。

ゲネガーグの背中から無数の光弾が次々と放たれ続けるがゼットスラッガーを繋げたヌンチャクを巧みに扱い全て叩き落として距離を詰めるとそのままヌンチャクをゲネガーグに叩きつけた。それも一発ではなく何発も。俺のヌンチャク捌きにゲネガーグの身体に無数の切り傷を刻まれる。

 

『これが宇宙拳法、秘伝の神業か!?ウルトラ強ぇ!!』

 

頭にゼットの興奮した声が響く。もしかしたらこれがゼットの素なのかもしれないな。

ゲネガーグが距離を取る。突進や噛みつきぐらいしか出来ないゲネガーグは接近戦でボコボコにされ、かと言って光弾はヌンチャクによって弾かれる。ゲネガーグは最後の手段として口を開きエネルギーを溜め始める。

ゼットンさんのバリアを破ったエネルギー砲を撃つつもりの様だが。

 

(させる訳ねぇだろ!!)

「ジヤ!」

 

腰を下ろし、左腕を腰に、右腕は胸の前で横に伸ばすウルトラセブンのエメリウム光線やウルトラマンゼロのエメリウムスラッシュに似たポーズを取り、同じ様に額のビームランプから放つ碧色の光線『ゼスティウムメーザー』でゲネガーグの口内を撃ち抜いた。口内のエネルギーが暴発してゲネガーグが大きく悶絶する。即座で撃つ事出来、尚且つ精密な射撃が行えるゼスティウムメーザーはかなり重宝しそうだ。

 

(そろそろトドメを刺してやる!)

「グギィ……ッ、ガアアアッ!!」

「ジャア!?……ズゥッ」

 

その場で暫くバタバタ暴れていたゲネガーグに向かってトドメの必殺光線を撃とうと構えた瞬間、ゲネガーグが起き上がり突進を仕掛けてきた。しかも背中から推進器官(バーニア)でブーストを掛けて。

俺は不意を打たれその突進をモロに受け背後のビルを破壊し、空に運ばれる。

 

(くっ、離れろ!!)

「ディヤッ!!」

 

俺はゲネガーグを蹴り飛ばし空中に浮遊して体勢を整える。その間にゲネガーグは大口を広げチャージを終えていた。エネルギー砲を最後の一撃にするつもりか?

 

(はっ!いいぜ、受けて立ってやるよ!)

 

俺もさっき撃とうとした必殺光線を再度構える。

両の拳を向かい合う様に胸の前に並べればアーマーが光を放ち、エネルギーが腕に伝わる。拳を手刀の形にしてから両腕を今度は上下になる様に並べてから左腕を斜め上、右腕を斜め下に伸ばせば光の『Z』の文字が描かれる。光のZを圧縮して両腕を繋ぐ稲妻状のエネルギーにしてから右腕と左腕の向きを逆転させてから手首を重ねる様に腕を十字に組んで放つ、ウルトラマンゼットの必殺技!

 

『(ゼスティウム光線!!)』

 

解き放たれ真っ直ぐ伸びる光線とゲネガーグの放ったエネルギー砲がぶつかり、超エネルギーがスパークする。

威力は互角、だがゲネガーグが自分ごと進む事で押し込んでくる。

 

(ッッ!負、け、るっかー!!)

 

更に一際輝き光線の威力が増しゲネガーグのエネルギー砲を押し返す。そしてゼスティウム光線がゲネガーグに届いた。ゲネガーグは光に身体を灼かれる痛みに絶叫しながら地面に叩きつけられ爆発、倒されたのだ。

ゲネガーグの爆発に巻き込まれて小さく光る何かが散らばったのが見える。

 

俺は地面に着地するとゲネガーグが爆発した地点に振り向きゲネガーグが完全に倒されたのを確認すると空に向かって飛び上がった。

その際に、Zの軌道を描いたのは完全に無意識だった。……しかも後でテレビのニュースを見たらZが斜めに倒れたから寧ろNに見えた。トホホ、締まらないのは変身だけにしてくれよ。

 

 

 

「……えぇっと、確かこの辺だよな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ウルトラマンゼットとなってゲネガーグを倒して空へと飛び上がった直後、俺はゼットに『散らばったメダルを回収してくれ、御頼み申し上げます!』とやっぱり可笑しな言葉遣いで頼まれ、気が付くと地上に立っておりゼットの頼み通りメダルを探していた。

 

「お!あったあった。これ、だよな?」

 

拾ったのは二枚のウルトラメダル。ウルトラマンエースとウルトラマンタロウの横顔が描かれたメダルだった。取り敢えず腰のメダルホルダーに入れておこう。

 

「ゼツト!」

 

んや?背後から呼ばれので振り返れば、そこにはアキの姿が。

……なんか、怒ってる?

 

「何でこんな所に居るの!危ないでしょ!!」

「……あ」

 

嗚呼、なるほど。うん、その通りだわ。アキが俺の前までやってきてペタペタと大きな怪獣娘としての手で身体を触ってくる。

俺がウルトラマンゼットに成ったって事は、黙ってた方がいいよな、うん。

 

「いや、えっと、これは」

「大丈夫、怪我はない?」

「え?あ、ああ、大丈夫。どこも怪我してないよ」

「……よかったぁ、ゼツト、何度も電話してるのに出てくれないし、もし何かあったらって思うとボク、心配…したんだ」

「…っ、ごめん」

 

目尻に涙を溜めるアキに何か言おうと思ったが何も思い付かず、俺は一言謝る事しか出来なかった。

 

「ううん、いい。こうして無事でいてくれたから。でも、もう心配させないで。……こわ、かったよ」

「…わかった。二度とお前を心配させたりしない」

 

……嘘だ。確信はないけど俺はまた、ウルトラマンゼットとして戦う事になる。そんな気がする。

 

 

 

「………」

 

すっかり回復したゼットンがアギラを空から見つめている。怪獣は倒されたとは言えまだ安心は出来ないと暫く見守っていたが、何事も無く安全だと確認するとテレポートしようとした瞬間。

 

「……?」

 

視界の端できらりと光る何かを発見した。ゼットンは光る物の近くにテレポートするとソレを拾った。

 

「これは?」

 

拾ったのは一枚のメダルだった。銀色のさっきの巨人に似た存在の横顔が描かれているメダル。

 

「………」

 

何故だろう?このメダルを見ていると、何か心に騒つくモノがある。

ゼットンは気付いていないがゼットンが拾ったのは彼女のカイジューソウルと因縁のある『ウルトラマン』の力が込められたウルトラメダルだった。

 

「……!」

 

ウルトラマンのウルトラメダルを手放す気になれず、ゼットンはメダルを持ったままテレポートした。

 

 

 

 

 

 

闇の中に蠢く影。黒いスライムの様な塊に腕と角を付けた生命体と呼んでもいいのか疑問に思う存在。これらの存在は『シャドウ』と呼ばれている。出自、生態、目的、全て不明。わかっているのはシャドウは人類の敵だという事だけ。

そしてシャドウを秘密裏に抹消する者こそが怪獣娘。このシャドウはつい先程まで怪獣娘から追われていた、だが怪獣の出現により怪獣娘がシャドウ討伐よりも人間の救助任務に当たった為逃げ切る事に成功した個体であった。

 

『………』

 

声帯を持たないシャドウは音を放つ事なく蠢き、とある物を見つけた。

()()()()()()()()()()()。ゲネガーグの腹に収まっていたのであろうソレをシャドウは模様なのか本当の目なのかわからない単眼で見詰め、やがてゼットライザーに覆い被さった。

モゴモゴ、カタカタとゼットライザーを呑み込んだシャドウが蠢き、圧縮する。

 

『………』

 

そこに在ったのは、ウルトラ───否、『シャドウゼットライザー』と呼ぶべきだろう。青と黒のカラーリングは黒と紫へと変わり悍しい気配を放っている。

 

「へへ、へへへへへ」

 

シャドウゼットライザーに近付く人影。何処にでもいる若者の一人と言った風貌の男は、妙にコミカルな歩き方をしながらシャドウゼットライザーを見下ろしニタァと笑う。

男が前髪を掻き揚げると()()姿()()()()()。金髪に赤い瞳、金と黒のボディ。胸の中央にはウルトラマンのカラータイマーに似た器官が備わっている。

彼の正体は、『暗黒星人』と呼ばれるババルウ星人の一人だ。彼は同族全員が得意とする高度な擬態能力を使い地球人に紛れていた異星人で、その目的は怪獣娘を利用した地球侵略だった。

 

「折角、GIRLSに職員として潜入して漸く作戦開始って時に怪獣、そして何よりウルトラマンが来た時はどうしようと思った、け〜ど〜♪」

 

ババルウ星人はシャドウゼットライザーを拾い上げるとにまにまと笑いながら小躍りする。

 

「なんだかワカンねぇけどこんなん作るって言ったらウルトラマンの奴らしかいねぇよなぁ〜」

 

使い方などさっぱりわからないというのに強力な力を手に入れたとでも言いたげに機嫌が良い彼は、背後で蠢く影に気付かなかった。

 

「いやー、こ、れ、も?日頃の行いが良かったからかなー!」

 

そしてターンして振り返った瞬間、物影からナニカが飛び出しババルウ星人の顔に飛び付いた。

 

「うげぇ!?な、なんだよこれ!離れアァ、ア、ああ、ァァア!?」

 

顔に張り付いたナニカを引き剥がそうとのたうち回るババルウ星人だが、その口内へとナニカは侵入。ババルウ星人はえずくが侵入を抑える事は出来ずナニカは完全にババルウ星人の中へと侵入した。

最初こそババルウ星人も痙攣していたがやがて動かなくなる。

 

「……!!」

 

動かなくなったババルウ星人が突然として立ち上がる。とても不気味で不自然な、まるで身体の()()()()()()()()()()()()かの様だ。

それも少しの間で、すぐに正常な動かし方を理解すると歩き出す。そして落としたシャドウゼットライザーを拾い上げ、近くのゲネガーグの肉塊に手を突っ込み橙色の結晶を取り出しシャドウゼットライザーと結晶を交互に見ると一言呟いた。地球の人間だと理解出来ない言語で辛うじて『キエテ カレカレータ』と聴き取れる。

 

意味は、

───いい気分だ。

 

ナニカに寄生(しはい)されたババルウ星人の姿が変わる。一人の男性の姿に変わったババルウ星人、いや、寄生生物セレブロは不気味で歪んだ笑みを浮かべた。

セレブロの周りにはシャドウゼットライザーを通じてか次々とシャドウが湧き出てきた。

 

 

To Be Continued




次回予告!!

『侵略者襲来!?瞬間移動や分身で翻弄してくる厄介な宇宙人だ。全て地球人を滅ぼして地球を自分の星にするつもりか!?ゼツト、惑わされない方法を見つけるんだ!!次回!

怪獣娘(絶) 〜ウルトラマンZ参戦計画〜

侵略者を討て!


ウルトラ見抜くぜ!」

前書きの『〇〇登場』って要ります?

  • ウルトラ欲しいぜ!
  • カレカレータ…(必要無い)

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