怪獣娘(絶) 〜ウルトラマンZ参戦計画〜   作:ただのファンだよ。

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本日二話目です。
まだの方は前編からどうぞ。

【剛力怪獣】シルバゴン登場!?




大潜入!?虹の魔境調査作戦!(中編)

「……虹、か」

 

高校の授業中、俺は窓側の列の席で教師の言葉を聞きながらも空に浮かぶ虹を見つめていた。

変身は出来なくてもゼットさんと会話するぐらいならこちらからでも出来る様になり、相談してみた結果。あの虹は以前ゼットさんやゲネガーグが通ったブルトンの異次元穴の影響で空間が歪み、何処でもない何処か、異次元空間に繋がってしまったらしい。あの虹も空間の歪みにより発生した磁波が虹に見せかけてるだけの様だ。夏の日差しで道路が溶けて心綺楼が出来るのと近いのかな?

 

「まぁ、()()()()()()()()()らしいし特に気にする事はないかな」

「授業中に独り言とはいい度胸だな。ならあの英文を訳してみろ光国(みつくに)

 

げ、項羽!?───じゃなくて英語の教師の矢的先生。

黒いさらっさらのロングの髪にノースリーブのタートルネックを着たデカい胸の美人先生。その見た目と何事にも動じないクールな性格から男女問わずに人気者な先生。ただ、クソが付く程の真面目で少しでも聞いてないと判断すれば難題をぶつけてくるんだよなぁ。

……と言っても聞いてない俺が悪いのは事実な訳だし答えますか。俺は黒板に書かれた英文に目を向ける。えっと、何々……?

 

「………『遠い星からやってきた男が愛と勇気を教えてくれる』」

「……ふん、いいだろう」

 

なんだこの英文?

俺が答えると先生は興味をなくした様に俺から視線を外して黒板の方へ向かっていった。それにしても先生の腕、ってか肌綺麗だな───づッ。

ふと背筋にゾゾゾッと氷でも入れられた様な錯覚と突き刺す様な視線を感じる。俺は恐る恐る目だけ向けると。

 

「……ッ」

 

アキが射殺してきそうな目で俺を睨んでた。バルタン星人やゲネガーグと戦った俺だが、あの二体よりもずっと怖いぞ!

ツーっと冷たい汗が一滴額から流れ、俺はアキと目が合わない様に窓の外に顔を向ける。くわばらくわばら……ん?

 

(虹の所の近くに、なんだあれ?ヘリコプター?……でもなんかゴツいな、プロペラ二つ付いてるし。軍用、とかか?ってもしかして異次元空間に入るつもりか!?)

 

俺は軍用ヘリ?に目を凝らす。すると思った通り、ヘリは虹のすぐ近くで消えた。異次元空間への歪みに入ったんだ。

 

(ウルトラマンになって助けに行こう)

「おい光国、二度目はないぞ!……それともなんだ?お前は私と二人放課後にでも補習を受けたいのか?」

「……ギリィ」

 

取り敢えず今は真面目に授業を受けよう。

い、いや、別に歯軋りしだしたアキにビビった訳じゃないよ?学生の本分は勉強を受ける事なだけだし。

 

(誰に言い訳してんだ俺?)

 

何故だか胃の痛い時間を過ごした。

 

 

 

 

 

「いつもの時間でいいよな?」

「…………うん。またね」

「お、おう。……行ったな」

 

学校を終え、どこか不機嫌なアキをGIRLSまで送り届けた俺はそそくさと人気の無い裏路地に入り込む。念の為もう一度周りを確認し、人がいない事を確認してからゼットライザーを取り出す。

空を、虹の箇所を見上げればゼットライザーを握っているからか異次元空間への歪みが今にも消え掛かっているとわかる。

急がないと…ッ。俺はゼットライザーを額の前に上げて祈る様にぐっと握った。

 

「ゼットさん、()()()()()()

 

ギリギリまで追い込まれ、それでも諦めない俺とゼットさんの気持ちがぐっと噛み合った時に漸く変身できる。それが俺がウルトラマンZに変身する最低条件。

 

「……うぐっ」

 

だが()()()()()。それは()()()()()()()()()()()()()事だ。

既に何度か試した事もある。

 

「……っ、……ッ」

 

身体が俺の言う事を効かなくなる。まるで俺の中に別の存在が居て、それに動かされてる様な……いや、事実その通りなのだが。

まだ慣れない感覚につい反射的に抗ってしまい呻く様な声が漏れる。

俺の身体は一人でにゼットライザーのトリガーを押した。俺の背後にヒーローズゲートが現れ、続けてアクセスカードをゼットライザーにセットする。

 

《Zetuto Access Granted》

 

機械的な音声が鳴り、メダルをセットする事なくゼットライザーのブレードを動かし最後にトリガーを押した。

背後からヒーローズゲートが迫り俺に触れる。ヒーローズゲートが俺を過ぎた時、俺の姿は地球に初めてやってきた時の、本来(オリジナル)のゼットさんの姿に変わっていた。しかもサイズは俺の身長とほぼ同じ。等身大のウルトラマンZだ。

 

『全く、この姿はウルトラキツイって言ってるだろう』

(す、すいません)

 

俺の身体を借りてゼットさんが変身するこの状態なんだが、実はエネルギーの消費が普段の比じゃなく50秒しか維持出来ないという欠点を抱えている。

俺個人の見解なんだが、さっきも言ったけどウルトラマンZには俺とゼットさんの二人の気持ちが歯車みたいに噛み合う事で変身できるのに対して、今回の様な変身はゼットさんだけの意思で無理矢理に変身しているからなのでは、と考えている。

つまり、この状態でもゼットさんと心を合わせる事が出来ればアルファエッジの時みたいに三分間の変身が出来るんじゃないか?要検証だ。

って今はそれどころじゃねぇや。

 

『まぁ、お前の気持ちはわかりまするが」

(はは、ははは…。それよりも早く行きましょう時間は限られてますよ!)

『ああ、そうだな』

「デュワァ!」

 

ゼットさんは空へ飛び立つ、行き先は異次元空間の入り口。

俺の身体を借りたゼットさんは異次元空間の入り口に入り、無事侵入する事が出来た。お邪魔しまーす。

異次元空間の中は樹海だった。ゼットさん越しに見渡してみれば例のヘリが確認出来た。

 

『もう無理。限界でございます』

(え?…あ、ちょっ!?」

 

そこでゼットさんが限界を迎え変身が解けてしまい俺は空中に投げ出され、そして落下した。

 

「うげぇっ!?……ああ」

 

落下する最中、木の枝に服が引っ掛かり宙ぶらりん姿になる。枝がミシミシ言ってるし、ヘタに暴れたら枝が折れて地面に激突しそうなので取り敢えずこのまま辺りを確認しよう。

目に入るのは木と葉っぱと土と空。それが見渡す限り続いてる。うん、辺り一面大自然。

 

「……」

 

そしてそんな大自然の中でとびきり異色を放つのが赤い爆発、黄色い電撃、弾ける大岩───を受ける銀色の怪獣。

集まれ怪獣娘(ガールズ)、飛び出せかいじゅうの森。ヤバイやん。

 

「■■■■■■ッッーーー!!」

 

結構離れた俺でも咄嗟に耳を押さえてしまう咆哮。その音量は衝撃となって襲い掛かる。全身に圧が掛かりバキッと今一番聴きたくない音が聞こえた。

一瞬の浮遊感。直後、重力の偉大さを知らしめられ俺の身体は落下する。

 

「わああああーー!?!?あべしっ」

 

腰が痛い。背中からビターン!と地面にぶつかる。

不幸中の幸いなのは地面が硬いコンクリートや岩とかじゃなくて比較的柔らかい土とそのうえ、クッション代わりの草が敷かれていた事だ。

 

「……お陰で若くして腰痛持ちに成らずにすんだな」

 

腰を押さえつつ立ち上がるとゼットライザーを再度構える。連続変身で申し訳ありませんけど、今度は俺も一緒なんで頑張りましょう!

 

「おおおっ!」

 

走り出した俺はゼットライザーのトリガーを押して目の前に現れたヒーローズゲートに飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

ゼツトが異次元空間へと入る一時間前。

異次元空間へと侵入した自衛隊とゼットン、エレキング、レッドキング、ゴモラの四人の怪獣娘は作戦開始前、改めて行われたピグモンの指示通りに動いていた。

そして先頭を進むのはゼットンとライフルを装備した自衛隊の一人。

 

「まさか、また君と共に行動する事になるとはね。頼もしい事には変わりないが………大丈夫なのか?」

「……はい、問題ありません。大山隊長」

 

大山と呼ばれたゼットンの隣に立つ彼は、バルタン星人によるGIRLS襲撃の際の自衛隊の部隊隊長その人だ。

今回怪獣娘と共に異次元空間の調査作戦を聞き、誰よりも早くに立候補し、バルタン星人襲来の際に怪獣娘と直にコミニケーションを取った彼なら今回も怪獣娘と共に活動できるだろうと彼の部隊が抜擢された。

 

「………」

「…そうか」

 

大山はゼットンの表情から何も感じ取る事が出来ず、先の発言が嘘か真か判断出来なかった。無理をしているのではないか?大山は特別なチカラこそあるモノの若い女性である彼女を一個人として心配していた。

しかし立場上、一人に肩入れする訳にもいかない。仕方無しと彼は一先ずゼットンの言葉を信じて部下の一人の元へ向かい話し掛ける。

 

「通信機の調子はどうだ?」

「ダメです。やっぱりこの空間の異常な磁場が原因で繋がりません。それにこんなもの見た事なく、お手上げ状態としか言えません」

 

今回の彼らの部隊には最新の装備や乗り物が与えられていた。

軍用ヘリに銃器と様々な機器が渡されていた。無論通信機も異国の最新の物だ。だが異次元空間へと入った途端に通信機は使えなくなってしまった。何とか通信機を使用出来ないかと試行錯誤しているが最新、それも異国の物だ。何をどう触ればいいのかすら判らずじまいだった。

 

 

 

「どうぞ」

「おう、ありがとよ」

 

集団の殿、背後からの襲撃に対抗すべく警戒しているのはレッドキング。彼女は自衛隊の隊員の一人から水筒を渡された、彼女も礼を言ってから受け取り水を飲む。

超常の存在である怪獣娘同士が試合としてだが戦う大怪獣ファイトの初代チャンピオンである彼女、その実力は折り紙付きで現チャンピオンであるゼットンにこそ一歩届かないが今でもナンバー2の座は守り続けている。そして、再びチャンピオンに返り咲く為にトレーニングを重ねている。彼女は間違いなくトップクラス怪獣娘の一人だ。

 

「お前らも無理すんなよ。後ろにはオレが居るからな!」

「はは、流石に自分より下の歳の女の子に守られっぱなしは情けないからね。まだまだいけるよ」

「へー、ガッツあるじゃんか」

 

そんなレッドキングは面倒見が良く、それは今この場でも発揮されている。レッドキングは隊員達と対等に話し、隊員達は頼り甲斐のある彼女の姉御肌な性格と態度に背中を守られている為、適度な緊張感が保たれている。

 

 

 

「……はぁ、呑気なものね」

 

部隊の上空にはエレキングが乗る軍用ヘリが位置し、頭部の対になる三日月型のツノをアンテナみたいにくるくると回して近くに動くものがないかレーダーの様に探知している。

それは真下にいる部隊の人間は勿論、更に下である地中に潜るゴモラの居場所もしっかりと察知していた。

 

「……!止まって」

「!?一旦とまれ!」

「了解!」

 

エレキングの角がナニカを捉えた。異次元空間の強力な磁場の影響で感知しづらくはなっていった為、ソレは突然エレキングのレーダーに反応した。

 

「ん?……皆、とまれ!」

 

頭上のヘリから顔を覗かせ、目立つ様にケミカルライトを振るう部下の姿にいち早く気付いた大山は、部隊を停止させてゼットンに目を配る。

大山と視線が合い、あらかじめ意図を教えられていたゼットンはこくりと頷き、テレポートでエレキングの元へ向かった。

 

「何か、感知したのでしょうか?」

「かもしれんな。全員に警戒する様に伝えろ」

「ハッ!」

 

その時だった。

ドシンドシンと地響きを起こし、エレキングはおろか普通の人間である隊員達でも何故今まで気付かなかったのか不思議な程大きな音が近くで鳴り響く。

不可思議な現状に戸惑うも流石は訓練された者達というべきか、すぐさま陣形を組んで警戒態勢に入る。怪獣娘も遅れて警戒する。

 

「上だ!!」

「まさか……!?」

「おいおい、ウソだろ」

 

人の何十倍の巨大な尻尾、銀色の体表に黒い罅の様な模様を走らせ、両側頭部にはヤギの様に渦巻く角、後頭部から尻尾の先までトゲの様な背鰭を無数に生やし、およそ括れの見当たらない図体の怪物。

見上げるとこちらを()()()()()、怪獣『シルバゴン』が全員の視界に映った。

 

「……ギィグゥ?」

 

シルバゴンは首を左右に振って視線を巡らせる。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「くそっ!上の奴らは何してんだ!」

「俺達もこの距離で気付かなかった。きっとこの空間が異常、或いはあの怪獣の能力かもしれん!」

「言ってる場合ですか!?隊長どうすれば!」

「まだ撃つな、却って刺激する可能性がある。今現在、襲われていないのは奴が案外温厚な性格なのかもしれん」

「そ、そんな事が、あり得るんですか?」

「人間だってそれぞれ性格は違う。最大限警戒しつつ様子を見よう」

「「「了解」」」

 

すぐそばに怪獣が居るというのに、慌てず大山の指示に従う隊員達。彼の隊長としての人望、信頼が窺い知れる。

シルバゴンは凶悪な顔からは信じられない程に大人しく、首を小さく振って辺りを確認している。まるで何かを探している様にも見える仕草だ。

 

「何かを探しているのでしょうか?」

「わからん。だが、念の為にヘリは遠ざけておこう。連絡できるか?」

「はい」

 

大山の指示を受けた部下は腰元から銃口の大きい銃に一発の弾を装填すると空に向けて放った。

バビュンと音を立てて赤い煙が空へ線を描く、彩煙弾だ。ヘリの方も意図を理解した様で煙の方へ離れようとした、その時。

 

「……!ギィァ」

 

シルバゴンは煙を辿り、顔を上げ、そして吠えた。探し物が見つかったのだ。

シルバゴンが腕を伸ばす、離れようとする軍用ヘリに向けて。

ヘリは伸ばされる腕に慌てて離れようとするが捕まってしまった。

 

「グワォォオオ!!」

 

ヘリを掴んだシルバゴンは無邪気な子供の様に喜び、無邪気な邪悪さを曝け出した。ヘリを掴んだ腕とは逆の腕で振り上げれば、直後にヘリに叩き付けようと振り下ろされた。

───瞬間ヘリから飛び出す人影が。

 

「させないわよ」

 

エレキングだ。

彼女は腰に装着された尾の様な太鞭を右手で握り、取り外すとシルバゴンの目に向けて振るった。バチンッ!と音がし、シルバゴンがヘリを離して目元に両手を押さえてたたらを踏む。

対して浮遊能力の無いエレキングが上に伸ばした左腕をゼットンが掴みテレポートでヘリの元へと運ばれる。

 

「……凄く堅いわね」

 

シルバゴンを己の武器で叩いた時、この世のものとは思えない異常な堅さを思い知った。鉄や壁の様な無機質な硬さでは無く、生命体特有の堅さ───だというのに鋼鉄なんかを遥かに凌駕する怪獣の皮。

まるで限界を超えてギュウギュウに綿を詰め込まれたヌイグルミだ。

 

「これは厄介よ、ゼットン」

「───問題無い。貴女達もいる」

「私は戦闘タイプじゃないのだけれ」

「自衛隊の方達を避難させて」

 

言葉を遮る彼女にいいのか、と視線で訴える。

だがゼットンはエレキングに目を向ける事すらせずシルバゴンを見据えている。

 

「わかったわ」

 

やがて観念した様に返事をすればゼットンは何も言わずに転移した。

 

 

 

 

「オラァ!!」

「!?ギィアォォオ!?」

 

レッドキングが自慢の豪腕をシルバゴンの右脚の膝裏に叩き付ける。がくん!と膝が曲がりバランスが崩れる。

そこに、

 

「足元注意ってね!」

 

ゴモラがシルバゴンの足元から飛び出した。

直後に右足の下が崩れ、陥没する。足を取られて前のめりの姿勢になる。

 

「ギィォォオ!?」

「……ゼッ、トン!」

 

両腕をブンブンと振り回しながらなんとか倒れない様にバランスを保とうするシルバゴン。仕草だけならなんだか可愛らしく見える光景だが、容赦無くゼットンがシルバゴンの後頭部に流星の様な飛び蹴りを見舞い、脳が揺れたシルバゴンはそのまま前方へ倒れた。

 

「うわっ!…おっとっとっ、ふぅ」

 

ドシーン!と大地が揺れる。ゴモラなんかは大袈裟にバランスを崩すもなんとか持ち直す。

 

「こいつを、くらいなぁ!!」

 

どこからともなくレッドキングが飛び出す、両腕で掴み掲げるのはおよそ3メートル程の大岩。それを伏せるシルバゴンの後頭部に落とす。

 

「続くよ!」

 

レッドキングに続いてゴモラがシルバゴンの頭目掛けて攻撃する。

両足で大地をしっかり踏んで全身に力を込める。ぶわっと赤いオーラがゴモラの身体から滲む様に放出され、額のツノに集結する。

人の目ではわからないがよく見ると角が微弱ながら振動しているのがわかる。

 

「チャージ完了!じゃあ、いっくでー!『超振動波』!!」

 

それは本来は固い岩盤などを柔らかい土へと崩し、地面の中を自在に掘り進む為の能力を衝撃(エネルギー)波として攻撃する技。ゴモラ自身がいざという時にしか使わない奥の手。規格(スケール)の違いからダメージは微々たるもの───と侮る事なかれ。

振動が生み出す破壊エネルギーは実体ある物質である限り確実なダメージを外から内へ、内から外へ打ち響かせる。

 

「ギオオオオッーー!!!」

 

それでもやはり威力が足りず、精々頭痛程度の痛みしか感じていなかった。寧ろシルバゴンに怪獣娘達を敵と判断させ、怒らせる結果となった。

咆哮という衝撃はシルバゴンに比べて短小すぎる者(ども)をまとめて吹き飛ばした。

 

「うわー!?」

「くぅっ、なんて馬鹿げた大声だよ」

 

咆哮で怪獣娘達を吹っ飛ばしたシルバゴンは起き上がり、その巨軀故の災害級の暴れっぷりを披露する。

地面を踏み砕き、腕を大気を薙ぎ払い、山や木を蹴飛ばす。飛来する土塊や岩、木の破片が無差別な砲弾となって襲いくる。

 

「……っ……!」

「あぶッあぶな!?」

「フッ!ハッ!」

「くっそぉ、これじゃあ迂闊に近づけねぇぞ」

 

ゼットンはテレポートで振り回される腕を躱し、ゴモラは地中にいながら踏み潰されそうになり、エレキングは飛来物を右手の尾鞭や左手の円盾で防御し、レッドキングは大岩の陰に身を潜めている。

巨体故の脅威、巨大故の強み、怪獣としての王道───怪獣娘の失われた原初の力こそが彼女達の相手なのだ。

 

バシュ!───ドカーン!!

「ギィィガァア!?!?」

 

怪獣娘達が苦戦しているその時だった、風切り音と共に飛来したナニカがシルバゴンに直撃したのは。

爆発の熱と音がシルバゴンの顔面を殴り付ける。

 

「……!?」

 

宙に浮くゼットンが飛来物の軌道を辿れば、ロケットランチャーを構えた大山隊長の姿が。

 

“彼女達に遅れるな!我々が何の為に日夜訓練を積んできたか思い出せ!!我々、人間の力をあのバケモノに思い知らせてやるぞ!!”

 

ゼットンには聞き取る事が出来なかったが大山の言葉は、部下達全員の士気を高め武器を向けさせた。勇ましき雄叫びと共に銃弾が、ロケット弾頭、更には組み立て式の砲台からミサイルが放たれる。

人類の叡智の結晶の一つである近代兵器が異次元の怪獣に立ち向かう。

 

「ギィゥゥゥ……ッ!」

 

顔を集中的に狙われシルバゴンもたじろいだ。

威力自体は大したものでは無く強靭なシルバゴンの身体には蚊に刺された程にも効きはしない。()()()()()()()()()()()

目は弱点でない生物などいない。元より視力が弱く、動いていない物を()()()()()()シルバゴンでも目を潰されるのはたまったものではない。『目』とは生物共通の弱点だ。

 

「ギィグゥ……ガァァアアアア!!!」

 

だが、シルバゴンもバカではなかった。いや、或いは生物としての本能が為したのだろうか?

シルバゴンは単純に両腕で顔を隠して自衛隊の元へ走り出した。

 

「なっ!?撤退!総員撤退だ!急げぇーー!!」

 

その指揮は最適だった。最も取るべき選択と言えた。

が、最適な答えが必ずしも最善に繋がる事は無い。

 

「だめだ!追い付かれる!?」

 

()()()()()()()()()体格差(サイズ)が違い過ぎるのだから、人間が100歩走ろうとも怪獣は一歩で踏み潰す。

レッドキングが岩やら木やらを投げるが気を引く事すら出来ない、ゴモラはシルバゴンの足元の土を崩そうとするが追い付かない、ゼットンが火球を次々と放つがシルバゴンの表皮を軽く炙る程度にしかならない。

 

「……っ」

 

逃げる自衛隊を背後にエレキングが尾鞭と円盾を構えるが挑んだ所で結果は目に見えている。

 

(どうする、どうすればいい!?)

 

必死に思考を巡らせ打開策を考える。

けれど案は何も浮かばない、寧ろ瞬く間に潰れる距離に焦りを抱き思考が白熱化する。

 

(───あ、ダメ、だわ)

 

エレキングを暗い影が覆う、頭上にはシルバゴンの巨大な足が見える。

思考に耽る余り、全てが手遅れとなった。エレキングの命はシルバゴンの足によって潰され、後には彼女だったモノだけが残るだろう。いや、それすら残らないか。潰れる、砕け、踏み躙られてバラバラになり土と混ざって終わり。

諦めた。なまじ聡明だったが故にエレキングは逃れられない死に抗うと云う行為を捨てた。

 

「………」

 

目を閉じ、死を受け入れる。そしてシルバゴンの足はエレキングの()()()()()()()

 

「キャッ」

 

大きな揺れと全身を打つ強風にエレキングをらしからぬ声を上げて尻もちを突いた。

反射的に目を開けて見上げた。自分は何故生きているのか、何故私の(ウンメイ)が変わったのか、一体何が起こったのか確かめる為に。

 

「ギィォォ……グガァ…」

「ジィ…アァ」

 

シルバゴンの呻きと聞き覚えのある声が、耳に届いた。

何者かがシルバゴンの首に両足を絡め、肩車の様な姿勢と成り後方に体重を掛けている。これによりシルバゴンの足はエレキングに届く事なく地面を踏み締めていた。

 

「ジェヤァ!」

 

そしてシルバゴンの上の───光の巨人(ウルトラマン)は身体を捻ってシルバゴンを倒れさせた。

 

「う、ウルトラマン、Z」

 

その男に、場所も次元も関係無し。

怪獣から命を守る為、光の巨人は光臨する。

 

ULTRAMAN

ALPHA – EDGE

 

(え、とんでもねぇ露出じゃん。エロキングだわ)

『おいコラ』

 

 

 

 

 

 

 怪獣が倒れた際にゴロリと転がり、勢いを利用して立ち上がり戦闘態勢を整える。

 

(ふぅ、大丈夫。俺は落ち着きましたよゼットさん)

『…………』

 

……なんすか、ゼットさん。その『大丈夫かコイツ?』って目は。

しょうがないじゃないですか、あんなヤバい格好してるあの人が悪いんですよ。こちとら高校生、見るなって方が無理なんですよ!!

 

『いや!その理屈はウルトラおかしいだろ!?』

(可笑しくありませーん!?ゼットさんだって絶対見てたでしょ!!)

『え……いや、そんな事、ないでございますよ』

(見てましたね?見てたんでしょ、正直に白状した方がいいですよ!)

『あぁもう!そんな事より来るぞゼツト!』

 

ゼットさんが誤魔化すよう言うが事実怪獣は向かってきているので此方も迎え撃つ。俺は怪獣───銀色の身体してるしシルバゴンとかでいいだろ───シルバゴンに向かって駆け出した。

 

「ギィォォオオ!!」

「ジェヤッ!」

 

シルバゴンが咆哮しながら頭を突き出して突進してくる。 俺は奴のヤギみたいに渦巻く角を掴んで抑えつけ───切れずに腹で受け止める。ぐぅっ、思ったよりもずっとパワフルだぞコイツ!?

 

(こっの、ヤロウ!)

 

シルバゴンの顔に膝を打ち込み、怯ませた隙に押し除けると正拳を打つ。って硬ぇ!?ホントに生き物かコイツ!?

 

「ギュオオオオ!!」 「!?ジヤッ!」

 

シルバゴンが腕を振り回して攻撃してくるが半歩程下がれば躱せる。そしてすかさず反撃に奴の横っ腹に肘打ち、正拳、膝蹴りと三連打を叩き込む!……けど、シルバゴンは堪えた様子はない。

 

(ああ……これはアレですね)

『ウルトラタフなヤロウだな…!』

 

すげぇ防御力、それにあのパワーが突進だけなんて訳もないだろうし。純粋に厄介なタイプの怪獣だなコイツ。 という訳で作戦変更!リーチを保って戦うぞ!

 

「イィヤ…トゥワー!!」

 

ゼットスラッガーを稲妻状のエネルギーで繋いでヌンチャクの様にした、『アルファチェインブレード』を展開して構える。 打撃がダメなら斬撃で、とシルバゴンに一発、二発、三発をゼットスラッガーで叩き込む。ゼットスラッガーが奴にぶつかる度に火花を散らした。

 

(まだまだいくぜー!)

「ジェアッ!トゥワー!ジィヤ!」

 

左手で振り下ろして一撃、右手に移してから横薙ぎに一撃、もう片方のゼットスラッガーを左手で操り一撃。ぐるりと回転しながら大振りに一撃……て、うおっ!?シルバゴンがゼットスラッガーを咥えて止められ、仕舞いには噛み砕かれた。

 

「ギィィオオオオ!!」

(ちょ、あぶっ、まっ!?)

 

反撃だと言わんばかりにシルバゴンの猛攻。防御は得策ではないとなんとか避け続けるけど、やべぇ…段々キツくなってきたぞ。シルバゴンが右腕で殴り付けてくるのを屈んで躱し、左腕で薙いでくるのを往なし、突進での頭突きを前転で避ける。

 

(だったらこれでもくらいやがれ!)

 

アーマーが光を放ち、左右に広げた両腕にエネルギーが迸る。

 

『(ゼスティウム光線!!)』

 

両腕を十字に組んで即席の必殺光線を放ち、突進を躱され隙だらけなシルバゴンに直撃し炸裂、シルバゴンが吹っ飛んだ。

 

(よっし!これは流石に効いた、だ…ろ…?)

 

俺は自分の目を疑った。

シルバゴンが()()()()()()()()()()()()()()

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