東方幼霊夢【二.五次創作】   作:罪袋C

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毎度お待たせいたしました。
結局三人称で書く事に致しました。
しかし作者の文章力の問題でところどころ一人称にすり変わるところがございますのでご了承ください。


第三話

「・・・・・・」

 幻想郷一の大妖怪、八雲紫は博麗神社を訪れていた。

 神社の階段を登りきると小さな巫女さんとそのお友達が出迎えてくれた。

「えーと、霊夢ちゃんはいったい何してるのかしら?」

 ただし顔にやたらと口紅を塗っていたり、アイシャドーや頬にも朱が塗られていた。

 早い話がとても厚化粧、しかも超下手なのだ。

 

「ゆかりごっこ!」

 

 さすがの大妖怪も全く悪気のない子供の精神攻撃は堪えたようで、しくしくと泣き出してしまった。

「・・・あんたなにやってんだ?」

 そこへ神社から顔を出したのはルーミアであった。

「あら!」

 ルーミアの存在に気づいた紫が顔をルーミアに向ける。

「これは久しぶりね、人喰い妖怪さん」

 

 

   ──これはまだ博麗霊夢が幼くて

 

            人食い妖怪が大きかった頃のおはなし──

 

 

「あッはははッ!飲め飲め~!」

 今日、博麗神社ではある意味異変が訪れていた。

 博麗神社のテーブルには所狭しと料理が並び、巫女さまは麦酒(ビール)を特大ジョッキで飲んでいる。

 もちろん参拝客は少ないが金がないわけではない、しかしこれほどまでに豪勢な夕食はそうそうできるものではない。

 もちろん、こうなったのにも理由はある

「異変も解決!飯も紫のおごり!ごきげんじゃ!」

 今日の巫女は異変を解決し、その報酬として紫におごらせてこれだけ豪勢な夕食としていたのだ。

「ほら、霊夢も飲め飲め~」

 彼女は麦酒のジョッキを持って立ち上がり、霊夢たちのそばへ移動した・・・が、ルーミアに止められてしまう。

「っておい、子供に酒飲ませてんじゃねーよ・・・てかそんな仮面どこから持ってきたんだよ!」

 彼女は最強の狩人(プレデター)の仮面をつけていたのだ。

「あひゃひゃひゃひゃひゃ!」

 やがて彼女は霊夢たちに酒を飲ませるのを諦めたが、仮面のまま麦酒を飲み始めた、一体どこから飲んでいるのかは不明である、ついでにあの笑い声も意味不明である。

 紫はその豪快な飲みっぷりに微笑を零し、霊夢と魔理沙はオムライスやナポリタン、ピザ、不思議な帽子の乗った鳥の丸焼きなど、好きな食べ物を次々口に放り込み頬張っている。

「・・・・・・」

 いつにもまして騒がしくて、いつにもまして眩しい食卓。

 

『人喰い妖怪さん』

 

 先ほどの紫が放った言葉が頭の中に反響する。

 

(人喰い妖怪・・・か)

 

 

 ──時は少し遡る

 

 

「忠告?」

 場所は夜の妖怪の森の最奥。

「そう!古き友人として忠告よ」

 そこで八雲紫とルーミアは相対していた。

「これ以上人を喰うのをよしなさい」

 今、地面は無数の人の屍、それも骨だけで埋め尽くされていた。

 もちろん紫はこの骨の中に面識のある人間がいたからとか、人間が愛おしいからとかそんな理由で忠告に来たわけでは、ない。

「おいおい、人喰い妖怪にそれを言うのか?」

 ルーミアは少し呆れた様子である。

「ふふ、そうかもね、でも、あなたの場合・・・・」

 紫が骨塚を見やる、ここだけでいったい何人の死体が置かれているのだろうか、少なくとも小さな村なら既に全滅しているであろう量がある。

「ちょっと食べすぎじゃないかしら?」

「そうか?」

 ルーミアは全く悪びれた様子も見えない。

「あなた、幻想郷の住人全員食べ尽くす気?いくら人喰い妖怪だとしても度が過ぎてるんじゃなくって?」

 幻想郷は人と妖怪のバランスを保つことによって成り立っている、人が一方的に減るのは困るのだ。

「村の人もあなたを恐れているわ」

「・・・・・・」

 ルーミアはしばらく考えるような素振りを見せた、そして、足元にあった頭骨の一つを手に取る。

 

「満たされないのよ

 

 食べても食べても食べても食べても」

 

 どんなに食べてもどうしてもお腹いっぱいにならないの」

 

 そう言ってルーミアは頭骨を再び放り捨てて仲間のもとへ返した。

「ねぇ紫、妖怪が人間に恐れられて忌み嫌われるなら・・・」

 

 

「私達妖怪はなんで幻想郷(ここ)にいるの?」

 

 

「・・・・・・」

 紫はしばし扇子を口元に当てて考えたようだった。

 が、すぐに「帰るわね」と言って歩き始めてしまった。

「とにかく人を喰うのは()()()()()()

 紫は森の出口側へ歩いて行った、答えはもらえないのか、とルーミアは少しがっかりしていると、紫は立ち止まり、言った。

「あなたのさっきの答えはこれから来る人が教えてくれるかもね」

 そう言う紫はどこか楽しそうであった。

「それじゃあまたね」

 それだけ言い残して紫は森の中へ消えていった。

 それから程なくして、森の中からひとりの女性が現れた。

「・・・・・・へぇ」

 ホッケーマスクを被り、片手にはチェーンソーならぬただのお祓い棒を持った巫女服を着た女性、つまりは当代博麗の巫女だ。

「あなたが紫が言ってた人かしら?」

「・・・・・・」

 彼女は何も言わない、ルーミアはそれを肯定と受け取った。

 

「おいしそうね、食べていい?」

 

 ルーミアは答えを聞かずに襲いかかった。

 

 

 巫女戦闘中・・・・・・

 

 

 最終的に立っていたのは博麗の巫女であった。

 戦闘力に圧倒的な差があった。

 ルーミアの攻撃は当たらず、逆にみこの攻撃のことごとくが当たる、そんな一方的な戦いだった。

「うっ・・・・・・」

 ルーミアは重傷ではあっても生きていた。

 殺してもらえると思っていた。

 満たされないなら死にたいと思った。

「・・・どうしたの?止めを刺さないの?」

 彼女は何も言わない。

 自分で死ぬことができずとも、私に完勝した彼女なら殺してくれると思った。

「言っておくけど負けたからって私は絶対に人を喰うのを控える気はないわよ」

「・・・・・・」

 しかし、彼女は殺してくれない。

「あんたがここで私を殺らなきゃ私はこれからも何十、何百人って人を喰うわよ」

 これだけ言えばきっと殺してくれる。

 

「わかったらさっさとトドメを刺しなさいッ!人間ッ!」

 

 

 

 そう思っていた時期が私にもありました。

 ルーミアは博麗神社目の前の大木に縄でぐるぐる巻きにされてさらにダメ押しと言わんばかりに御札を貼られていた。

「っておいッ!なんだよこれッ!?」

 彼女はパンパンと手を払うと口を開いた。

「うっさいわね、悪い子にはお仕置きよ、反省するまでそこに縛り付けとくわ」

「はぁ!?」

「じゃあね」

「ちょッこらッこれほどいていけ!」

 巫女はルーミアの言葉には聞く耳持たず、神社の方へと帰っていってしまった。

「ったく・・・なんなんだあの女・・・・・・ん?」

 少し横を向くと木の影に隠れるようにひとりの少女が立っていた、巫女服を着ているところを見るとあの巫女の娘だろうか。

「・・・」

「・・・」

 その少女は吹き戻し(今日(こんにち)よく縁日で見られる息を吹き込むと紙の部分が伸びる笛)を咥えてこっちを見ている。

「・・・・・・なんだよ」

 

 ぴっーぴっぴっぴーーぴぴぃー

 

 少女は吹き戻しを吹いて答える。

「いや喋らねぇと分かんねえから・・・」

 そこへまたさっきの巫女が戻って来て、少女の後ろ襟を掴んで持ち上げた。

「ほら、ご飯にするわよ、霊夢」

 どうやら少女の名前は霊夢と言うらしい。

 ぴぃ~~~~

 霊夢はやはり吹き戻しで答える。

 巫女はそのまま霊夢を抱っこして再び神社の方へ歩いて行ってしまう。

 その途中れいむは一度にっこりと笑うと「ぴゅ~~~」と吹き戻しを吹いて手を振って去っていった。

「・・・・・・ちっ」

 どうしてこんなことになってしまったのか、私が何をしたのか(人喰いです)、とにかく退治されることはあってもまさか反省させられることになるとは思わなかった。

 これは私とアイツのどっちが先に根を上げるかのチキンレースだ。

 

 

 

 翌日、昼。

「・・・・・・なぁ、だからさ」

 ニコニコと笑いながら霊夢がルーミアの周りを動き回っている。

「なんなんだよッ!お前はッ!?」

 ルーミアは、くわっと牙を剥いて威嚇するが、全く堪えた様子もない、拘束されているから怖くないのか、それとも彼女に最初から恐怖心というものを抱いていないのか、普通ならば後者はありえない、彼女は今はこれでも有名な人喰い妖怪なのだ。

「あんた、だれッ!?」

「はぁ?」

 どうやら後者なようだ。

「はぁ?お前、それを聞きに来たのか?」

「うん!」

「・・・・・・ルーミアだよ」

「そんなことよりおまえ、おなかへってないかッ!?」

「って、おい、自分で聞いておいてそんなことって・・・」

 なんとも自由気ままなその少女は後ろ手に持っていた何かを取り出した。

「ほらっ!おにぎりだっ、くえ!」

 それは霊夢の言ったとおりおにぎりだったが、形は三角というよりも球形で、どうやら霊夢が作ったもののようだった。

「お前は会話できないのか?それとも私をおちょくってるのか?」

「はらへってないのか?」

 少女は少し不思議そうな表情になる。

 昨日からずっと縛られ、昼まで何も食べさせてないのだ、普通なら空腹を感じるだろうが、最近の彼女は慢性的に空腹に苛まれている。

「いや・・・・・・いらねーよ」

 食べたところでそんなもので腹は膨れない、とは言わなかったのはかすかに残った良心がそれを妨げたのだ。

「まったく・・・・・・油断も隙もないわね」

 再びあの巫女が神社からやってきて霊夢をひょいと持ち上げる。

「お、おー・・・」

 突然持ち上げられたことと見つかった驚きで少し焦っているようだ。

「こんなやつにご飯なんていりません!」

 あまりにきっぱりと言われたものだから多少の憤りを感じた私は彼女を思い切り睨めつけてみるも、彼女は全く意に介した様子もなく神社へと戻っていった。

「ほら霊夢、ご飯にするわよ!」

 呼ばれた霊夢は多少困ったようだが、一度私の元まで駆け寄り、おにぎりを私の足元に置いていった。

「ちゃんと食えよ~っ!」

「・・・・・・ふっ」

 案外いいところがあるんだな・・・・・・だが。

 

「どうやって食えばいいんだよ・・・・・・」

 

 今の私はまさに手も足も出ない状況なのだ、地面に置かれたおにぎりが食えるはずもない。

 

 

 それから幾日も過ぎた、日が沈み、昇るたびに霊夢はおにぎりを持って私の元を訪れた。

 毎回毎回あのおにぎりを持ってきては私が追い返すか、博麗の巫女に連れ帰られていた。

 しかも回を重ねるごとにおにぎりの形が悪くなっていくのだ、最後の方などただご飯盛っただけだろと言いたくなるような出来だった。

 それだけなら良かったのだがある日は走ってくる途中で石に躓き、あろうことか私におにぎりを投げつける─故意ではないから投げつけるとは違うかもしれないが─という事故すらあった。

 

 さらに数日が経った。

 今までは春らしい陽気で晴れていたものの、いつまでもそんないい天気が続くはずもなく、私が木に縛り付けられてから初めて雨が降った。

 別に普段から野ざらしに近い状態の生活だったから大して気にならなかった、だがどうにも物寂しい。

 時刻は昼頃。

 いつもなら霊夢がおにぎりを持ってくる時間だ。

(さすがに雨の中持ってくるほどバカじゃないか・・・・・・)

 ふと、そんなことを考えると突然雨が止んだ。

 顔を上げると霊夢が傘を持ってきていたのだ、後ろにあの巫女の付き添い付きだが。

 霊夢は私を縛っている縄を使って木に傘を縛り付けると、あの巫女と手をつないで家へと帰っていった、途中振り向いて私に手を振っていた。

(雨に当たらないというだけでこうも暖かくなるのか・・・・・・)

 傘があったにもかかわらず、相変わらず私の視界は濡れたままで、数滴の雨が滴った。

 

 あれ以降も毎日毎日霊夢は私の元を訪れた。

 変化したことを上げるならばあの巫女も一緒にここを訪れていることだ。

 ある日は霊夢の足を掴んでその場でぐるぐる回転していた、危ないだろうと思ったけれども、霊夢が楽しそうに笑っていたものだから、私もつい、笑みがこぼれてしまった。

 

 また幾日かが経った。

「何だよ、また今日も来たのかよ」

 もうすっかり日課となったこの会話。

 ぐぅ~、と霊夢の腹の虫が空腹への講義を上げた。

「あー、おなかへった、どうする?」

 どうやら・・・というよりもやはり霊夢は自分の昼食を使ってこのおにぎりを作ていたようだ。

「・・・元々お前の食いもんだろ、それ食べればいいだろ」

「・・・・・・」

 霊夢はしばらく私とおにぎりを見比べたあとに、大きく「うんっ!」と頷いた。

「・・・・・・ったく」

「はいっ!」

「は?」

 霊夢は、持ってきていたおにぎりを半分に割って、片方を私に差し出していた。

「はんぶんこっ!」

 そう、霊夢が提示した案はひとつのおにぎりをはんぶんこにすることだった、自分もお腹がすいていて、それが自分の飯なのに、だ。

「これでふたりともおなかいっぱい!」

 

 

「ありがとう・・・・・・」

 

 

 霊夢が手に持ったおにぎりを頬張る。

 いったいどれくらい振りの食事だろうか。

 それは確かに見た目はお世辞にも上手とは言い難いものだった。

 しかし私が今まで食べてきたもので、いや、もしかしたらこれから食べる中でも、一番美味しい食べ物だったかもしれない。

 霊夢が私を指差して笑っている、一体どうしたって言うんだよ・・・・・・なんだよ、霊夢の顔も歪んでよく見えない。

 頬を温かい何かが流れていく。

 ああ、なんだ、私泣いてるんだ。

 それを霊夢が笑ってるんだ。

 まったく、久々に泣いたよ。

 まったくお笑いだな、人食い妖怪が人に出されたおにぎりを食べて泣くなんてさ。

 でも、充分だ。

 たった半分のおにぎりでも、満たされた。

 私が今まで満たされなかったのはお腹じゃなかったんだな・・・・・・

 そこで私と霊夢は、何があるわけでもないのに、ただただ笑い続けていた。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 誰かが私に声をかけている。

「うぅ~?」

 薄く瞼を開き、確認する。

「ちょっと聞いてるの?人喰い妖怪さん?」

「あ~?」

 声をかけてきていたのはどうやら紫だったようだ。

「まったく幸せそうな顔でボーっとしちゃって、のんきな人喰い妖怪ね」

 周りを見ればかーちゃんが寝ていて、霊夢と魔理沙は後ろで遊んでいた、保護者何してんだよ。

「幸せなんてあっと言う間にどっか行っちゃうんだから、今のうちにしっかり噛みしめときなさい」

「余計なお世話じゃ」

「・・・・・・」

「まだなんかからかうネタ持ってるのか?」

「・・・そうね、あなた・・・あれから人間を食べなくなったみたいだけど、どうしちゃったのかしら?」

「あー、いや別に・・・ただ、なんていうのかな、もっとうまいもん見つけたし・・・」

「あら?いったい何を見つけたのかしら?そのおいしいものって」

「何ってそりゃ・・・・・・」

「ルーミアルーミア!」

 呼ばれて振り返ると霊夢が串団子をこっちに向けていた。

「はいっ!あ~ん!」

 

 ずっと・・・

 

 ずっとずっと探していた・・・

 

「あ~ん」

 団子の一つを食べる。

「どうだ?うまいかっ?」

 

 やっと見つけることができた・・・

 

 私が食べたかったもの

 

 

 

 

 

 

 

「うん・・・おいしい」




もう喰ったさ。ハラァ・・・いっぱいだ。
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