∋月@日
早朝、私の血液サンプルを紛失してしまったと電話越しに謝罪してくる櫻井さんに「その程度なら問題はないから気にしないで」と言葉を返し、犯人の目処を付いてるんだけど。
あんまり会いたくないんだねぇ…。
しかし、私は血液を盗まれるほど有名な存在だったのかとビックリした。まあ、有名なのは二課の開発室で注射を射たれる度に絶叫するからだろうけど。
あのチクッとする感覚がダメなのよねぇ。普通の病院でも小さな子供が堪えてるのに、私ってば「じぬうぅっ!!」とか叫んでバカみたいね。
それでも怖いものは怖いので拒否してきたけど、血液サンプルまで盗まれていることの方が怖い。あの子は私の血を使って悪魔召喚でもしようとしてるのかな?
そんなことを考えながらクリーニング店の扉の鍵穴からマスターキーを抜こうとした瞬間、お店の中に天羽さんが立っていた。
とりあえず、気付かぬフリして藤尭くんの取りに来なかったスーツを届けに行こう。それに上手く行けば藤尭くんに天羽さんを押し付けることが…。
それだと藤尭くんが苦労するわね。
∋月℃日
今日は雪音さんが帰ってこなかった。
なんでも櫻井さんが自宅に忘れたモノを取ってきて欲しいと頼んだそうだ。この二人の信頼関係は羨ましいけど、なんとなく納得できるので我慢しよう。
ただ、そうなると独りぼっちで寝ることになるのだが、私の布団が異様に盛り上がってるのは何故だろうか?等と思いながら藤尭くんに朝まで飲もうと提案する。
なんとなく藤尭くんは察してくれたのか。行きつけの居酒屋で飲もうという話になって「他の人も加えて飲むのはどうかな?」と聞かれ、出来るだけ少人数で飲めるなら誰でもいいよ?と答えておいた。
それにしても天羽さんとの遭遇率が上がってきてるような気がするのはなんでかな?なんて思っていると寝室から「藤尭、アタシも行くからな?」という声が聞こえてきた。
ねえ、そういうのが怖いんだってば…。
そんなことを思いながらも自転車のロックを外し、サドルに座ろうとしたが後ろに天羽さんが座っていた。どうやって二階から降りてきたのだろうか?
まさか、二階の窓から飛び降りたとか?
流石に、そこまで危ないことはしないよね?
私は天羽さんの行動力にビビりつつ、背中に貼り付くように抱き着いてくる彼女の鼻息の荒さに半泣きで自転車のペダルを漕ぎ、お酒と藤尭くんに慰めてもらおうと居酒屋まで我慢した。
∋月∧日
なぜか藤尭くんが二日酔いでダウンしている。あの程度の度数なんてオレンジジュースと大差無いと思うんだけど?なんて考えながら隣で眠っている天羽さんを見て泣きたくなった。
私は酔い潰れた記憶もないし、藤尭くんが天羽さんを連れて帰ったはずなのに私の布団で気持ち良さそうに寝ている。もう、マジでどうすれば良いのだろうか?
そんなことを思いながら帰宅したばかりの雪音さんが「あたしも寝るからソイツを退かしてくれ」と言い出し、私の右腕を押さえ込んできた。
これは俗に言うところのハーレム状態なのだろうけど、私は同性愛に目覚めたつもりはない。なにより消去法で選ぶなら藤尭くんがいい。
あの人ってダメそうな雰囲気なのに家事全般は何でもこなすし、仕事も早くてイケメンだから優良物件なのは間違いない。
まあ、それなのにモテないけど。