二年前のコンサートで数え切れないほど人が死んだ。アタシも翼の気持ちも考えずに絶唱を使おうとしたから反省するところは多いけど、アタシはあの時の真っ黒な甲冑を纏ったヤツが忘れられない。
何処からともなく颯爽と現れたかと思えば百を越えるノイズと真っ向から殴り合って打ち負かし、心身共にボロボロだったアタシ達を襲おうと飛び掛かってきたノイズを受け止め、アタシ達を一瞥して申し訳なさそうに「ごめんね」と言ってくれた。
元はと言えばアタシ達のネフシュタンの起動実験で寄ってきた奴らを肩代わりしてくれてるのは甲冑のヤツなのに、アイツは気にもせずアタシ達を守ってくれた。
たぶん、あの人が居なかったら絶唱を使って死んでいた。死ななくても一生を病院のベッドの上で過ごすことになっていたかもしれない。
そう考えると自分の無謀さに呆れてしまう。
「あ、風見さんですか?」
そんなことを考えていると藤尭がロビーのソファで誰かと電話してるのが見えた。アタシの知ってやるヤツじゃないのは確かだ。
好奇心とはいえ他人の電話を盗み聞きするなんてダメなことなのは分かってるけど、なぜか藤尭の電話を聞かないとイケない気がした。
まあ、なんと言えばいいのか。
アタシは運が良いらしい。
ずっと探してた相手が藤尭と知り合いで明後日に会うそうだ。ちょうど訓練を終えたばかりの翼を捕まえて、そのことを教えると驚いたように藤尭を見ている。
そりゃそうだ、自分を助けてくれたヤツと知り合いだってのに正体すら教えてくれない仕事仲間とか驚きしかないよな。まあ、それでも会えるならどんなことしても会いたいと思うのは当然だ。
漸く会えると思って商店街を歩いている藤尭を尾行しているとクリーニング店に入っていった。こっそりと店内を覗くとコンサートで見た甲冑が置かれていた。
ああ、やっぱり、アタシに内緒で会ってたんだ。
なんとも言えない感情が胸の奥から込み上げてくるが、藤尭のおかげで再会できたら良かった。ただ、どうやって話し掛けるべきか。
そこが問題なんだよ。
アタシや翼は顔バレしてるけど。
あんな甲冑を着込んでたってことはバレたくないってことだ。あの人の嫌がる姿なんて見たくないけど、その隣でモタモタと手伝いの真似事してるヤツは誰だ?
「藤尭くん、寝不足みたいだけど…」
「え?ああ、これぐらい大丈夫ですよ」
「それならいいけど、無茶するのはダメよ?」
「ああ、うん、ありがと」
なんだか藤尭の対応にムカついてきた。
あの人はすごい親切な対応してるのに上の空みたいな感じで聞き流してやがる。ここはアタシがガツンと言うべきなのか?
「テメーら、誰だ!!」
その叫び声と一緒に飛び出してきた銀髪がカラーボールをぶん投げてきた。アタシは当たらなかったけど、翼は払い落とそうとして右足や上着に弾けた液体が付着している。
はあ、今回は諦めるけど。
次こそお礼を言えるように頑張らないとな。