とあるオタク女の嶮難。   作:SUN'S

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第16話(櫻井了子(フィーネ))

「上等だ、この野郎ッ!!」

 

もはや戦う術を失った筈のアイツは私の振り落とすネフシュタンの鞭を掻い潜り、スニーカーの靴底を顔に押し付けるように飛び回し蹴りを放ってきた。先程まで親友だのなんだの言っていた癖に容赦のない攻撃を放ってくるところは相変わらずだな。

 

しかし、ネフシュタンの特性は「超速回復」だ。その程度の打撃など痛くも痒くもない。むしろネフシュタンの強度を上げるには丁度良い攻撃だが、アイツの拳を受ける度に身体の内側を揺さぶるような衝撃を感じる。このまま攻撃を受け続けるのは馬鹿のすることだ。

 

「貴様、そこを退けえぇ!!」

 

「ぐっ、がはぁっ!?」

 

私の薙ぎ払うように放ったネフシュタンの鞭はアイツの横っ面を捉え、分厚い鉄製の壁にぶち当てることで地上へと続く通路が通れるようになった。

 

パラパラと崩れた通路の壁がアイツを押し潰すように降り注ぎ、左腕と右足しか見えない状態で見事に埋まっていた。これならば動くことも出来ないだろうが、念には念を入れてトドメを刺しておくべきか。ギリッと鞭を握る手に力が籠り、肉体のコントロールが一瞬とはいえ奪われた。

 

やはり、私の塗り潰したと思っていた櫻井了子は僅かながら残っているか。そんなことを考えながら地上まで直通のエレベーターを起動しようとした瞬間、真下から凄まじい威力の衝撃が押し寄せたかと思えばエレベーターの天井を突き破ってカ・ディンギルの外まで吹き飛ばされていた。

 

シンフォギア装者が唖然としながら私やアイツのことを見ていた。いや、むしろ殺すなど普段は言わないヤツの言動に驚いているのか?なんて思いながらヤツの目の前まで歩み寄り、頭を振りかぶって額を叩き付ける。

 

「お前の意地やバカみたいな友情ごっこに付き合っている暇はない、さっさと消えろ!!」

 

「ふざけんじゃねえぞ、誰がテメーのために消えるか!!それと友情ごっこじゃねぇし、テメーは私の友達だろうがッ!!」

 

私の真似をするようにガンッと額を叩き付けてくるヤツを睨み付けながら間合いを広げ、右拳を横っ面に叩き込んで吹き飛ばそうとしたがアイツも私と同じことを考えていたのか、私の右の脇腹に深々と左拳が突き刺さっていた。

 

「「おぐぉっ!?」」

 

二人して後ろに仰け反りながら身体を元の体勢に戻す反動を利用して拳を放つ。しかし、ネフシュタンを纏っている筈の私の方が有利なはずだ、それなのに私がヤツの拳に打ち負けるのは何故だ!?

 

「貴様に何が分かる。あの月を穿たねば、バラルの呪詛を消さねば愛する人にも会えない気持ちが!?二十数年しか生きたことのない貴様のようなヤツにいぃぃ!!」

 

「くっだらねぇなぁ…そんな拗らせた恋心のために大人でもない雪音さん達を巻き込んだのかよ」

 

「貴様、私の恋が『くだらない』だと!?今すぐ訂正せねば本当に殺すぞ!!」

 

「ハッ、本当に殺すとか覚悟も持ってねぇヤツが一丁前に語ってんじゃねえぞ?」

 

パキパキと拳の骨を鳴らしながら中段に拳を構えるヤツを睨み付けるが「良いから来いよ」と手招きするアイツに呆れ果てる。もはや、自分から動くことも出来ないほど弱ってる癖に一歩も後退がろうとしない。

 

「自分の生き方すらまともに選べねえような半端者が偉そうに恋だの愛だのほざいてんじゃねぇ!!」

 

アイツの言葉に判断が鈍り、気が付けば私は月を見上げるように倒れ伏していた。ズキズキと痛みを訴えてくる右頬を押さえながら上半身を持ち上げればフンスと左拳を掲げる風見当麻が見えた。

 

「ああ、もう、分かったわよ、私の敗けで良いから好きにしてちょうだい…」

 

今度こそあの人に会えると思ったけど、今回は厄介な友達を作ったせいで会うのは、もう少しだけ先になりそう…。

 

まあ、それでも月を穿つことを諦めてないけど。

 

 

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