とあるオタク女の嶮難。   作:SUN'S

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第2話

ゑ月∬日

 

今朝、客足の少ない時間帯に訪ねてきた櫻井了子から特撮の悪役を頼めないかと聞かれた。まさか櫻井さんが特殊撮影技術に使ってる機械を造ってるとは思いもしなかったよ。

 

そんなことを考えながら友達の頼みを断るのも失礼なので了承したら「この前のアタッシュケースに企画書も付属してるから宜しくね!」とクリーニングを終えたばかりの白衣を受け取ると腕時計を見ながら帰ってしまった。

 

しかし、二十代後半のオバサンが出演しても大丈夫なのだろうか?なんて思いながらも櫻井さんが話していた企画書を探すためにアタッシュケースを開けると教科書サイズの企画書が出てきた。

 

パラパラと企画書を流し読んでいると、この前のプレゼントは特撮の撮影で使用する小道具だったことが発覚した。

 

どうしよう、ちょっとだけ装飾の位置を変えちゃったんだけど。こういうのって謝った方が良いんだよね?と唸りながら悩み続ける。

 

それにしてもインクルシオでもグランシャリオでもなく魔獣転化"ハイブリッド"とか二つの性質を兼ね備えた武器とか良いところを適当に寄せ集めたような設定だった。

 

まあ、べつに良いんだけど。

 

ゑ月―日

 

そろそろ私の出番だって櫻井さんからメールが送られてきた。グランシャリオの色違いとはいえコスプレしてテレビ出演するのはドキドキする。

 

とりあえず、武闘派主人公を務めるツヴァイウィングの二人は殺陣を覚えてるそうだけど。どうにも可愛い女の子を殴るのは気後れしてしまう。

 

そんなことを思いながらカラフルな雑魚戦闘員と共にピッチリしたスーツを纏う二人の目の前に立ちはだかり、なんとか覚えたセリフを噛まずに言えた。

 

どうやら二人ともセリフはアドリブを入れてるみたいだけど、攻撃のパターンは覚えやすいし、すごく基本に忠実なモノだったので受け流し易かった。

 

二人ともセリフにアドリブは入れるけど。

 

たぶん、トレーナーなんかに教えられた動きの振り付けを破ることが出来ないようだ。おとなとして引っ張りたいけど、こういうのは本人の覚悟を見せる大切なところだ。

 

しっかりと自分を見せようとする気迫は感じるけど、もう少しだけ踏み出すために必要な勇気が足りないのかな?なんて思いながら二人のお腹を軽く叩いて戦線離脱する。

 

一応、極悪非道の悪役を演じるとはいえ女の子を殴るのは罪悪感しかないわね。

 

深い溜め息を吐きながら「おつかれ」とコーヒー缶を投げ渡してくる櫻井さんに「私の演技って大丈夫だったの?」と聞けばサムズアップが返ってきた。

 

ゑ月≧日

 

今朝、ずいぶんと汚ないワイシャツを持ち込んできた大きな男の人はボディービルダーなのだろうか?等と思いながら付着しているケチャップを手洗いで擦り落とす。

 

そういえば私の出演してしまった特撮は、何時になったら始まるのかな?と考えているとヨレヨレのジャケットを抱えた藤尭くんが入店してきた。

 

どうやら彼は外回りの時に不幸な出来事に巻き込まれることが多いみたいだ。それに、この前も通り魔の出没する住宅街に商品の宣伝のために通っていたみたいだし…。

 

それと私はクリーニング店を維持するのに大変だから藤尭くんを助けることは出来ないんだけど。そうだね、いつでも藤尭くんの愚痴を聞いてあげるから私のお店に来ればいいよ。

 

そんなことを言えば「もう、ホントに優しい。なんで了子さんと仲良しなのか、マジで分からないんだけど」等と言われたが、私が櫻井さんと仲良くなったのは最近なんだけどね。

 

まあ、仲良しって言ってくれるのは嬉しいけど。

 

 

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