▼月¥日
なぜか立花さんの友達が誘拐されたことを聞かされた。どう考えても立花さんを誘き出すための道具として扱う光景しか思い浮かばない。
そう思いながらも不安そうに友達との写真を眺める立花さんを励まそうと風鳴さん達は必死に言葉を繕っているのが丸わかりだ。
まあ、こういう青臭い青春も悪くないわね。なんて考えていると櫻井さんが小さな声で「お前は単独で三人の装者を相手に戦えるか?」と聞いてきた。
そりゃあ、足場が安定していれば子供に負けることはないけどさ。相手は人質を取ってるんだよ?と言葉を返せば「その程度の逆境を乗り越えろ」と無茶ぶりを言われたけど、確かに無茶すれば立花さんの友達を奪い返せるわね。
それに二人目の融合症例を欲しがるのは科学者として当然のことよね?と櫻井さんに言えば苦笑いを浮かべながら肯定するように頷いてくれた。
とりあえず、私は向こうで改造手術を受ける前に立花さんの友達を奪還するのがミッションだ。あんまり大々的には言える雰囲気じゃないけど、先ずは相手をブッ飛ばすことを考えるか…。
▼月*日
早朝、テレビを通じて立花さんの友達を誘拐した若ママさん達に向けて真っ向勝負を持ち掛けた。ただ、もっと正確に言えば人質の交換を申し出たという訳だ。
どれだけ策略を練ろうと研究者を抱えている組織の人間は研究の対象となるモノを見れば手に入れようとするのは当然のことだ。
私だって限定版のフィギュアを見付けたら購入するために全力を尽くす。なによりネフシュタンの融合症例なんて、そう簡単に会えるものじゃない。
この無謀とも言える最適解を了承してくれた櫻井さんには感謝するけど、若ママさん達と戦うことになった原因も櫻井さんなんだよな。
あとで櫻井さんの大切なケーキを食べてやろうか?なんて考えていると発狂寸前の変態が腰に飛び付いてきた。今は我慢するしかない。
まだ、若ママさん達が立花さんの友達を逃がすところを見ていない。それにしても頬擦りしてくる二人は何なのだろうか?
そういうのは若ママさんにすればいいのに、それとも年頃だから照れ臭くて出来ないのだろうか?等と考えていると白いリボンの似合う女の子が虚空を見詰めていた。
うん、明らかに正気じゃないね。
▼月「日
これは予想外の出来事だ。
最初の作戦では「立花さんの友達を手放したところを全員纏めてボコり倒す」はずだったんだが、気付けば拘束されて変態の策略で立花さん達は友情を試し合う戦いを強いられてる。
どうにか逃げ出す手段は無いだろうかと部屋の中を見渡しても監視役の女の子が射抜くような視線を向けてくるだけで逃げ出すことは…。
うん、いつでも出来そうだ。
そう思いながら映像を見ていると立花さんのシンフォギアが解除された。いや、むしろ身体の中に埋まっていたシンフォギアが消えた。
私も立花さんも身体と聖遺物が融合していた特殊な装者だったのは確かだ。その力の根底を消すのは戦略としては当然だが、彼女の友達を巻き込んだのは許さん。
革製のベルトを引き千切り、指の骨を鳴らしながら監視役の女の子を脅して制御室まで連れていくように要求すると意外にも簡単に承諾してくれた。
ひょっとして、これは罠なのだろうか?