とあるオタク女の嶮難。   作:SUN'S

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第26話

Π月Ζ日

 

私の両隣を押さえるように座っている月読調暁切歌の俊敏な対応に驚きながら白髪の変態の語る「英雄理論」を聞き流す。

 

チラリと頑張れば通れそうなダクトを視線を動かすことで見ていると「そこを通るのは無駄よ、いくら鍛えていても関節の着脱は人間には不可能だもの!」と御満悦な表情を向けてくる若ママさんに言われたが、私は全身の関節を強引に外せるから行けるんじゃあ…。

 

いや、流石に大人が通れるほどダクトが広いとは限らないし、ちょっとだけ入り口を見る程度なら良いわよね?なんて思いながら両の腕を掴んでいる二人も一緒に持ち上げ、ダクトの入り口を見ると肩の関節を外せば通れそうなサイズだった。

 

私の監視する三人に態とらしく諦めたような振る舞いを見せながらトイレに行きたいと抵当な言葉を並べながら一人になる口実を作り、天井にある換気扇の真ん中をアッパー気味に殴って動かなくする。

 

あとは換気扇を囲っているモノを引っ張り落としながら両の腕を振り下ろして肩の関節を取り外す。この痛みで叫びそうになるのは仕方ないのだが、今は二課の人に無事を知らせることが優先事項だ。

 

しかし、ここは空気の行き交う場所が多くて出口を見付けるのも難しい。なにより後ろで「逃げられたデース!」とか「まだ、近くにいるはず…!」等の声が聴こえてくる。

 

Π月≧日

 

飛行船の天井を蹴り破って出たかと思えばミサイルやガトリングを乱射する雪音さんと狂ったように突撃槍を振り回す天羽さんが見えた。

 

ソッと蹴り破った天井の中に戻ろうとしていると風鳴さんの「風見さん、そこに居たのですか!」と叫ぶ声が聴こえ、渋々ながら風鳴さん達に立ち上がって無事を知らせる。

 

私の方を凝視する二人の視線を避けるように風鳴さんの傍に飛び降りようかと思ったけど、私はパラシュートも何も持っていない。聖遺物と同化しているとはいえ、この高さから落ちれば確実に死ぬのは分かり切っている訳だ。

 

それなのに天羽さんと雪音さんは「あたしのところに飛んでこい!」と言わんばかりにノコギリや剣の飛び交う戦場の真ん中で両の腕を広げ、どちらかを選べと僅かに睨み合いながら主張している。

 

ここで一人を選んだらヤンデレになるとか嫌なルートに進むのだけは絶対に避けたい。むしろ私に執着している理由を問い詰めたい。どれだけ思い出そうとしても二人との接点が分からないのだ。

 

とりあえず、紐なしバンジーを体験することなるなんて数ヵ月前の私は知る由もないんだろうが、こういう貴重な体験を出来るのは役得とポジティブに考えるしか気持ちを切り替える方法はない。

 

まあ、どこの世界でも女は愛嬌より根性で決める時も必要となる事態に巻き込まれることもあるはずだ。その時は覚悟を決める以外に出来ることはないのだが、私は知り合った女の子が同性愛に目覚めるのだけは勘弁して欲しかった。

 

Π月&日

 

結局、私を受け止めたのは立花さんで恨めしそうに雪音さん達は親指の爪を噛んでいたが、ばっちぃから爪を噛んだりするのはやめなさい。

 

それにしても以前に見たネフィリムはキモい見た目だったけど、更に見た目も叫び声も気色悪くなってるわね。あの白髪の変態の考えてることは理解するのも嫌になるわね。

 

ただ、私の個人的な考えなんだけど。どんな時代でも人を蹴落としてまで英雄になろうとする気持ちが強すぎる変態とは絶対に分かり合えると思わない。

 

私の前に立って銀色の杖を掲げた白髪の変態に聞こえるような声の大きさで言い放ち、怒りの矛先を私に向けさせることで雪音さん達がノイズを無限に生み出す杖を狙えるように立ち回る。

 

どれだけ頭が良くても自分勝手な人間に付き従う人はいない。独り善がりの馬鹿みたいな演説を垂れ流し、自分こそ正しいと主張するばかりで他の人の意見は聞き入れようとしない。

 

そんな独裁者みたいな英雄は私の生きる時代に必要ない。さっさとアメリカに帰って地道に慈善活動に励んでる方がよっぽど効率的だ。

 

 

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