アタシ達はフィーネを騙る奴らとの戦いを制し、平穏な日常を取り戻すことが出来た。あの人はアタシを残してネフィリムと一緒に「バビロニアの宝物庫」で心中しようとしたのはマジで許し難いことだが、あれはアタシ達を守るためにネフィリムと、たった一人で戦い続けようとしたんだと思う。
そんな全ての人類を守ろうとする人を雪音と一緒に捕まえて砂浜に顔面からダイブしたのは良い思い出と言えれば良いんだが、アタシを差し置いて雪音はあの人の胸に顔を埋めてやがった。そういうのは最初に助けられたアタシの特権だろうが、二番目は大人しく腕かお腹に顔を押し付けてれば良いんだよ。
まあ、翼や響の言葉で落ち着きを取り戻せたとはいえ雪音の非常識な行動を叱るのは年上として当然のことだ。あとでアタシも胸に顔を埋めたりしたいけど、あの人に嫌われるのは嫌なので表立って言うことは出来ない。
「天羽さん、この書類は…」
「ん?ああ、婚姻届だな」
アタシの目の前で困惑したように首を傾げる彼女を見ていると年上だというのに可愛く見えるのは仕方のないことだと思う反面、女として負けてるような気持ちになるのもアタシなりの愛の形だと考えることにした。
いくら取り繕ってもアタシは、あの人を独り占めしたくて雪音や了子さんにも渡したくないと思ってるし、ずっと我慢してた気持ちを抑えるのも限界だ。このまま拒絶される可能性も否めないが、アタシはこの人を諦めることは絶対に出来ない。
それだけは断言することが出来る。
「風見さん、ずっと貴女を想い続けてたアタシの気持ちを受け止めてくれないか?」
「いや、でも、ねえ?」
「なあ、どうしてもダメなのか?アタシが女だから風見さんは頷いてくれないのか?」
「そういう訳じゃないけど、私みたいなオバサンを好きになる理由が分からないのよね」
なんだ、そんなことか。ツヴァイウィングのコンサートでギアの解除されたアタシを守ってくれた甲冑のヤツが、アンタなのは百も承知だ。了子さんはアタシに隠そうとしてたけど、そう簡単に惚れた相手を忘れるわけないだろ?
そうハッキリと言えば顔を両の手で覆うように天を仰ぎ、深い溜め息を吐きながら「天羽さんみたいなイケメンの吐く台詞はオバサンの心臓を突き刺すんだよぉ…」と小さな声で言っていた。
アタシと風見さんを隔てるテーブルを跨いで風見さんの両の手を掴んで顔を間近で見詰めながら「アタシと結婚してくれ」と問い掛ける。風見さんは強引に詰め寄ってもアタシを弾き飛ばすなんてことはしない。
こういう自分の危機でも相手を気遣える優しさに惚れたってのもあるけど。マジでアタシはこの人以外を好きになること絶対にはないって確信できるものを感じた。
「当麻さん、絶対にアタシが幸せにしてやるよ」
「いや、うん、もう、はい、よろしく」
真っ赤にした顔を俯かせるアタシの大切な人を見てると胸の奥がキュンキュンするのは新発見だ。まあ、何はともあれ、アンタは世界で一番のアタシだけの宝物だ。この人だけは絶対に雪音や了子さんなんかに渡したりしない。
「よし、新婚旅行はハワイで決まりだな」