私はネフシュタンの鎧の欠片を組み込んだモノをアイツに渡したことに二課の奴らは気付いているかは分からないが、それなりに貴重なデータを得ることは出来た。
完全聖遺物「ネフシュタンの鎧」は一度でも起動すれば機能停止することは無い。その起動実験を実行する前に生身の人間と接合すれば、どのような変化をもたらすのか調べる価値は有った。
なによりアイツの警戒心の無さは利用している側なのだが、柄にもなく不安を感じてしまうのは、この
この肉体は非人道的実験の拒絶ばかりだったが、最近は何も感じなくなってきた。それでも科学者の未知へ対する探求心は残っているのか、アイツを利用しようと考えてから拒絶反応が減少している。
「なんとも言えないわね…」
私の呟いた言葉に首を傾げるクリスとアイツを見ながらクリーニング店の屋上から見る花火は不覚にも美しいと感じてしまった。
だいたい、クリスにはアイツの監視を命じた筈なのにアルバイトと勘違いされて普通に給料を貰ったりして商店街を食べ歩くことが増えたそうだ。
「フィ…了子もスイカ食べるか?」
「そうね、貰おうかしら」
そんなことを考えているとスイカの種を口元に付けたクリスが冷えている半月のようなスイカを渡してきた。まあ、こういうのも悪くないわね。
私の視界からアイツが消えたことに気付いて後ろに振り返ると「蚊取り線香って毒素を撒き散らしてるのかな?」等と言いながら何十個も蚊取り線香を配置するアイツがいた。
どうして、クリーニング店に蚊取り線香が山のように置かれているのかは追求しないけど。血を吸われるよりマシなのは同意する。あの人と過ごしていた時代に蚊は存在すらしていなかった。
それなのに気付けば毎年のように血を啜ろうと集ってくるのが鬱陶しくて仕方無かった。そう考えると蚊取り線香を造ったヤツは天才なのだろう。
「なあ、アイツもフィーネもあたしから離れたりしないよな?」
夜空に消えていく花火を見ながらポツリと呟くクリスの頭を軽く撫でながら「私達は居なくならないわ」と伝えると嬉しそうに笑っている。
そう、私とアイツは月を穿つまで貴女の傍に居てあげるから安心しなさい。どれだけ犠牲を出そうと月を穿ち、バラルの呪詛を取り除くまで何度でも繰り返してやる。
「そういえば船ってなに?」
「フィーネだっつってんだろ!?」
私の決意も関係なく騒ぎ立てる二人に溜め息を吐きながら仲裁する。それとフィーネの名前を安易に語るのは私が危ないからやめなさい。
しかし、アイツの身体を使って実験しているとはいえネフシュタンの鎧の影響を受け付けない頑強さは末恐ろしいものだ。あの肉体を構築するモノを調べればシンフォギアすら上回ることは可能だ。
私は数メートル先のサンドバックまでバネを身体に巻き付けた状態で走り、その体勢を維持することすら不可能としか言えない。私の頭脳とヤツの肉体さえ有れば完全無欠と言っても過言ではない。
「てめっ、聞いてくれよフィーネっ!!」
「私のスイカだ」
「もう、貴女達は本当にうるさいわね!?」
どうか今回こそ月を穿てますように…。