アクマで妹!   作:あぐろむいしき

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まずは公開時刻が予定より遅れてしまい、申し訳ございませんでした。
直前で訂正箇所が見つかり、その修正に時間を取られてしまいました。
重ねてお詫び申し上げます。

さてそんな内容についてですが、今回のは自分でも何書いてるんだろうってなりました。やばいですね。




お酒は20歳になってからっ

 

 

 宇田川姉妹にラーメン屋に連行されて早めの昼食をとった後、俺は上原家を訪れていた。

 濃いブラウンの屋根にベージュに塗られた壁、広く面積の取られた窓ガラスといった綺麗な一戸建て。

 大きさもそこそこで語らずとも主人の稼ぎの良さを表している。

 そんな集合住宅ではない立派な一軒家の玄関の前で、俺はひとり訝しげな表情を作っていた。

 

 曰く、ひまりに勉強を教えてくれとのこと。

 

 巴によると彼女はどうも近日行われる実力テストがやばいらしい。1年生のこの時期から詰まっているようでは先が思いやられるが、ひまりが勉強が苦手なのは昔からなので今更呆れはしない。

 それに自分も別に用件もやることもなかったし、一応は歳上の甲斐性を見せることも必要だと思ったのでそれ自体を承諾するのはやぶさかでなかった。

 では、何故こんなにも渋い顔をしているのかと言うと──。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ま、早いか遅いかの問題だろ。健闘を祈る』

 

 

 

 

 

 

 

 

 不穏当が過ぎる。

 

 何故か巴がラーメンを奢ってくれたりしつこいほど念を押されたり、そしてなにより別れ際のこのセリフ。怪しさ以外の何物でもない。

 何が早いの? 何が遅いの? 確かに問題回答は早いに越したことはないけども。

 明らかに普通の勉強会ではないと悟ったので一時は撤退も図ろうとはした。

 

 

 

 

 

 

 

 

『昔からの付き合いとはいえ、ラーメン食って女の家に直行するのは抵抗がある。取り敢えず歯磨きをしに1度帰宅してもいいか?』

『おまえそれ帰ってこないつもりだろ。バレバレなんだよ』

『あこのブレスケアあげますよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 無駄に察しと女子力のいいヤツらめ。

 

 結果的に言うと、無理でした。

 逃げようとしたのがバレたので制裁を食らう前になんとかひまりの元を訪れはしたけれど……未だにインターホンを押すのがちょっと怖い。

 ただ遊びに来たり、ものを届けたりする時はなんの抵抗もなく押せるのに。ここまで押すのを躊躇うのは冬場の静電気が本番の季節くらいなもんだ。割とあるやんけ。

 

 

「……クロぉ?」

「わっ」

 

 

 ぐずぐずと逡巡していると、玄関から上原家次女、“上原ひまり”が扉を開けて声をかけて来た。

 突然目の前に現れた彼女に挙動不審な姿を晒してしまう。やはりと言うべきかじとりとした半眼で見られた。

 

 

「待ってても入ってこないから。何やってたの?」

「いやなんでもないから。気にしないで」

「ちょっと怪しいけど……まあいいや。さあ入って入って〜」

 

 

 怪しいはこっちのセリフなんだけど……。

 しかしこれ以上女子の家できょろきょろ動いていると、逆に此方に嫌疑がかけられかねないのでこれくらいで自重しておくことにする。

 とりあえず出してくれたスリッパに履き替えてリビングへと向かう。

 

 

「あ、今日はリビングじゃなくて私の部屋でやろうよ」

「え? なんで?」

「ちょっと……掃除出来てないからさ」

「…………」

 

 

 明らかに目が泳いでいるのは気の所為だろうか。

 それにひまりの母親は綺麗好きで休日になると殆どの場合掃除をすると、以前本人から聞いた気がするんだけども。

 

 

「って、今日はひとりなのか」

「うん。お姉ちゃんは遊びに行ってて、お父さんとお母さんは買い物」

 

 

 警戒心と猜疑心MAXで上原家に入ると、予想に反してそこは静謐な雰囲気に包み込まれていた。

 かなり静かだ。そういえば庭先にある筈の乗用ワゴン車もない。

 どうやら家族は皆出かけていてひまりがひとりなのは本当らしい。

 

 

「まあ休日だから、珍しくもないか」

「そうなの! 私だけテスト勉強があるから遊びにもいけなくて……」

「それは仕方ないんじゃない?」

 

 

 ただそう考えると巴は呑気にラーメンなど食べていたが、果たして余裕なのか?

 

 

「うん。だから誰もしばらく帰ってこないからね」

「なるほど。……どうしてそれを言ったのかはわかんないけど」

「うん。だからゆっくりしていっていいからね」

「…………」

 

 

 おかしいな、とても歓迎されている筈なのに1歩進むたびに自分の中の警戒心が上がってるぞ。

 流石に考えすぎだろうか……あまりにも疑っているようだと、捻くれているヤツだとも思われかねない。

 それによくよく考えれば状況自体は別に怪しいわけじゃない。ひまりは本当にテスト前に苦手な科目の勉強がしたくて、巴はその手助けをしたいだけという説もある。

 そう考えると別に普通な気がしてきた。妹の奇行のせいか、用心深くなり過ぎているのかもしれない。

 猜疑心で方を無駄に凝らせるのも考えものだ自らに言い聞かせ、ひまりに連れられて階段をのぼりながら2階の彼女の部屋へと向かう。

 

 

「…………」

 

 

 けれど部屋へと入るなり、再び疑念が再燃した。

 

 

「とりあえずエアコンつけるね」

「……なんでこの暑さで冷房つけてないの?」

「なんでって、今日はずっとリビングにいて、今自分の部屋に戻ってきたからだけど?」

「……なるほど?」

 

 

 と口では言うが……そんなわけが無いだろう。さすがに違和感ありまくりだ。

 今はスリッパを履いてるので床がどうか知らないが扉の取っ手が妙に冷たいし、エアコンのリモコンとスマホが雑にベッドの上に投げ出されている。

 

 これは少し前まではひまりが空調が働いていたこの部屋にいた証拠では?

 

 巴がチャットを飛ばしていたのは今から1時間弱前。その時点でここにスマホがあることはさっきの供述と食い違っている。

 そしてあのチャットがひまり宛てのもので内容がこの勉強会のことだとして、尚且つ最初から場所がここに決まっていたのならばエアコンはずっとつけていてもおかしくはない筈なんだけど……。

 

 

「よいしょっと」

「ん?」

「え?」

「ちょっと?」

「な、なに?」

「もしかして鍵閉めた? え、なんで今鍵閉めたの?」

「えっと……ほ、ほら、勉強の邪魔して欲しくないじゃん。ね?」

 

 

 ね? じゃないが?

 さっき両親も姉もしばらく帰ってこないって言ってなかったっけ。だから誰も邪魔はしないと思うんだけど……。

 それにいま家にいるのは俺とひまりだけなので、鍵を占める理由としては外から人を入れないと言うより中から出にくくするのが目的なのでは……。

 

 

「今日暑いよねぇ、まだ6月なのに」

「そうだね。まだ6月なのにね」

 

 

 なんだろうね、自らの足で来たのに拉致監禁されてる気分だ。

 いや他意はない。恐らく用が済んで早めに帰ってくることを危惧しているんだろう。そういうことにしておこう。

 

 

「やっぱ暑いや……脱いじゃおっと」

「は?」

「だ、だめかな?」

「いや暑いしなんで着てるんだろうかなって思ってたし、いいと思うけど……」

 

 

 ひまりは羽織っていたサマーパーカーを脱ぎだした。いや脱ぐんかい。

 どうして家の中でサマーパーカーなんて着てるんだとずっとツッコミたかったが、結局脱いでしまうらしい。

 

 

「…………」

「え、なに?」

「……それだけ?」

「え?」

「…………」

 

 

 ひまりはサマーパーカーをベッド放り投げ、キャミソールのような部屋着のような姿になる。ボトムのショートパンツも加味してかなり露出の多い格好だ。

 ……流石に男とふたりきりの6畳程度しかない部屋でその格好はないと思う。いくら昔からの顔なじみといってと油断しすぎではないか。

 暑いからだろうか。ならばさっきも言った通りもっと早く空調をきかせておくべきであって、服装も最初からその格好ないしは涼しいTシャツでもいいでは?

 

 

「……ふーんだ。いいもん」

 

 

 両者に気まずい空気が散見する中、ひまりは不貞腐れたようにパタパタと襟元を仰ぐ。

 歳不相応の豊満な胸元を持つ彼女のその仕草は精神衛生上非常によろしくない。肌色もちらちらと見えてる。

 

 なんだ、何がしたいんだこいつは……。

 

 こういうのは不意に見えるのとか普段の生活で垣間見れるのがぐっと来るのであって、この作られた色気に違和感を持たずにはいられない。

 しかも露骨に何かを狙っているのが明らかなのでドキリとするというのでもなく、むしろ何考えているのか分からなくて凄く怖い。後から金銭とか要求されないだろうか。

 

 

「…………」

「な、なんですか?」

「別にぃ……」

 

 

 不満げな様子のひまり。ムスッと頬を膨らませ、何故か自分の胸をつついていた。

 

 なんか……その、ごめんさいね?

 

 何故か自分の方が悪いことをしてしまったのでは無いかと錯覚する。

 しかしやっぱり何か変なことでも企んでいるらしい。

 もしも何も企んでいないのなら何故最初から薄着ではないのか、そもそも元からエアコンをつけておかないのか、などの疑問は尽きないので、つまりはそういうことなのだろう。

 

 

「……暑いなら冷房の急速冷房機能で風量を上げたらいいんじゃ」

「だめだよ、今日だってこんなに暑いのに!」

「いやだからこそエアコンに頼るべきなんじゃないの?」

「だめ。エコしないと。地球環境にやさしくないもん」

「さいですか……」

 

 

 ほんとにいたよ地球をいたわる学級委員長。まさか地球内にいるとは。

 けど今は地球環境のことよりももっと考えるべき問題があると思う。

 

 

「さてと、そろそろ勉強の方へ入ろうか」

「……わかった。今はそれで引いてあげる」

「…………」

 

 

 やりづれぇな……。

 もう企んでることを隠してないじゃんか。

 

 

「とは言っても俺は人に教えられるのは英語と現代文と日本史くらいなんだけど」

「じゃあ英語かな〜。教えて?」

「はいはい」

 

 

 白を基調とした丸い座卓テーブルの前に腰掛けると、続いてひまりも座る。

 

 

「……なぜとなり」

「……だめ?」

「今日ごり押しおおくないですかね」

 

 

 何故がすぐに右隣に。別にだめじゃないけどやりづらいだろうに。

 テーブルの直径は1.5メートル以上ある。向かい側に座っても問題ない大きさだ。

 

 

「でもこのテーブルは円形だよ?」

「そうだね」

「四角テーブルみたいな境界線がないじゃん」

「だから?」

「広義的に解釈すればここも向かい側──」

「無理があると思うよ」

 

 

 しょうもない言い訳する暇あるならおべんつよしましょうね。

 しかし結局はクロ左利きじゃん、問題ないよ! とごり押しされ、もうめんどくさいのでこのまま進めることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 

 

 

「えへへへへへへへへへへへへへへへへ」

「ねぇちょっと、もういい加減にしてよ」

 

 

 おい大丈夫かこれ。何か俺の知らない特殊性癖に目覚めてるんじゃないのかこれ。

 

 

「ぶ、物理的に絡まれている……離してくれる?」

「やらぁ……」

 

 

 時は30分前。ひまりが勉強の合間にジュースと菓子はどうかと勧めてきたところまで遡る。

 テスト勉強もそこそこ捗っており、これなら赤点回避どころか平均点獲得も見えてきていた。

 今まで休憩なしに頑張ってきていたし、それにひまりの謎のエコ活動によって冷房が抑制されている中でのその提案非常に魅力的で、二つ返事で相伴にあずかるにした。

 

 しかしそれが踏んではいけない地雷原だった。

 

 休憩を取ることにもさして問題はなく、出してくれたオレンジジュースもよく冷えていて美味しかった。

 では何が問題なのかというとそれはお茶請けに出てきた菓子だった。

 詳細は彼女曰く父の会社の同僚が海外旅行へ行った際のお土産の品との事で、カラフルな個別包装でラッピングされた親指サイズ程度のチョコレートである。

 

 

「ふふふ……」

 

 

 甘みの中にある僅かな酸味と喉のやけるような独特の感覚…… 感のいい人ならばもう答えに辿り着いてしかると察するが、そう、間違いなくウィスキーボンボンだ。

 ウィスキーボンボンは一応未成年でも食べることは禁止されていない。だからといって奨励されているわけでは勿論ないが、数個食べた程度ならばアルコール分解能力の低い未成年でもさほどの問題はない筈だ。

 ひまりが食べたチョコレートの数は5個。箱表記をみるに度数は3% 。1個10グラムとしてもひとつあたりのアルコール量は0.3グラム。よって総量はたったの1.5グラム。

 ひまりの体重は知らないが仮に数値を50キロとして「うにゅ!」……45キロとしても血中アルコール濃度は0.004%程度。絶対に酔うはずが無い。

 

 

「そんなおもくないも〜んっ」

 

 

 なのになんだこれは。明らかに悪酔いレベルでべろんべろんではないか。

 これでは勉強の続きも出来そうになし。しかも一人称の地の文にまで干渉してくるとは尋常ではない。やばい兆候出ちゃってんじゃねぇか。そもそもどうやるんだよそれ。

 俺も複数個食べて頭が少しぽわぽわとしているし、若干の睡魔もある。しかしひまりはそれ以上だ。もしかしたら極度にアルコールに弱いのかもしれない。

 

 

「くろぉ……れぇ、きいてるろぉ!?」

「これが絡み酒か……」

 

 

 しかし呑気に構えて考えている場合ではない。

 とりあえずひっつき虫と化した彼女を何とかしなければ。

 ひまりは両腕で此方の右腕に組み付き、指を搦めてしなだれかかってきている。薄着のひまりの胸部のふくよかな部分がもろに当たっているので下手に動けない。

 だからといって(いたずら)に時を過ごすわけにはいかない。何はどうあれひまりが酒に酔っている状態では故意であれ過失であれトラブルを起こすのは避けたいのだ。

 下手すると社会的に死んでしまうからな。名残惜しいがこのむにむにともおさらばだ。

 

 

「ひまりちょっと立って。取り敢えず横になろう? な?」

「よこりなるぅ……?」

「一旦寝ようねってこと。酔い覚まそうな」

「くろぉもいっしょならいいよぉ」

「魅力的な提案だけどね。けどここで寝ちゃうと今後しばらく冷たいブタ箱で寝る羽目になっちゃうんだ」

「むぅー……」

 

 

 しがみつくひまりを支えながら慎重に立ち上がり、背後の壁際にあるベッドへとゆっくりと誘導する。

 

 

「わたしくろぉといっしょにねたことらい……」

「普通はないもんだからね」

 

 

 もはや呂律が満足に回ってない。正直俺もかなり睡魔が強くなってきた。

 早急に休ませる必要がある。その後で俺もテーブルに伏してでも睡眠が取りたい。

 

 

「らっておとまりかいのろきらって!」

「お泊まり会の時? また懐かしいことを」

 

 

 果たして何年前の話だろうか。

 

 

「わらひくろぉのおふとんもぐりこんらのに……」

「あれ故意だったんだ……」

「でもくろぉいなかっらじゃん!」

「だから小さい頃は寝相悪くて……となり蘭の方へ転がりこんでたんだって」

 

 

 その際蘭にビンタを食らったのを今でも覚えている。

 

 

「わらひよりらんのほうがいいってことぉ?」

「いや、正直どっちもヤダな……」

「なんれっ!」

「強いて言うならめんどくさそうだからかな」

「うぅー……」

「もうどっちでもいいからさ、はよ寝よ?」

「わらひのほうがむねおおきいのに……!」

「あの頃はどっちも変わらなくなかったか?」

「ゆるせない! おしおきしてあげるっ!」

 

 

 いや胸の大小で同衾相手を選んでいる方がお仕置案件なのでは? そもそもそんなことが出来るような立場でもない。

 ひまりはうーっ! と唸りながら胸にぽかぽかとパンチをくりだしてくる。

 それを苦笑しながら宥める。この程度ならまだ可愛いもんだ。なんなら幼少期の蘭のビンタの方が痛かったまである。

 

 

「えいらっ!」

「ふぇ?」

 

 

 対処に手間を掛けされてくれるだけで特段害はないのはありがたい。とにかく早く彼女を運ばなくては。

 

 しかしそう高を括っていると、突如として視界が回った。

 

 その後遅れながら胸と腹あたりに衝撃が走るのを感じ、身体が後方に吸い込ませていく。

 

 

「が……!」

 

 

 そして眼下にはピンク色の物体が。ここでようやく事態を察する。

 やられた。こいつクソザコパンチだけじゃなかった。

 普段なら回避も受け止めることも出来たであろう彼女の飛びつき。しかし不意をつかれたこととチョコレートの影響で鈍くなったこともあって大幅に反応が遅れてしまった。

 

 

「ぐへっ」

「……ふふ、ふふふふふふ」

 

 

 ばふっと背中から後方のベッドから倒れる。上にひまりというおまけを連れて。

 仰向けで転がされたた上に不穏当な笑みを浮かべるひまりがうつ伏せで重なる。

 

 

「へへへ……つかまえたぁ……」

「ははは……つかまったー……」

 

 

 腹の上で身を起こし馬乗りの体勢になったかと思うと、またすぐに身を屈め身体を重ねる。

 息が荒く、赤く上気した頬は凄絶な笑みに背筋に冷や汗が垂れる。それに対して此方は乾いた笑いを浮かべることしか出来ない。

 

 

「おしおきっていったじゃん」

「いやされる謂れ無いじゃん」

「あるよっ。……さっきらってわらひがゆうきだしてゆうわくしたのにっ」

「恥ずかしかったんならやめろよ……」

「がんするーじゃん!」

「反応に困ること言わないでくれます……?」

「らから、おしおきれすっ」

「いやでもね? 可愛らしかったとは思うよ?」

 

 

 なんとかフォローを入れようとしたが、ひまりは聞く耳を持たず。

 彼女はずりずりと身体の上を這いよって顔を近づけ、ついには追い越してしまう。

 目の前に大きな膨らみが迫る。刹那、嫌な予感が脳裏をよぎる。

 

 

「……ごめんちょっと妹が心配だから帰」

「ふふ……えいっ」

「るぐぁ」

 

 

 本能に従い回避行動を取ろうとしたが、時すでに遅し。

 ひまりはすぐに腕を俺の後頭部に伸ばして、頭を抱え込んできた。

 

 ……あ、これむり。死ねる。

 

 社会的に死ぬとかの前に、ガチで死ぬ。

 声どころか呼吸のやり取りもキツイ。

 ふよふよとした重量感のある感触が顔を覆い、柔らかくもそれなりにある重さと暖かい温度が身体にのしかかる。

 それが何か分からなくなるほどには思考は落ちていない。

 クラスメイトの男子がこれを幸せ空間とか言ったいたが、何処がだろうか。どうやらマウンティングを取られて拘束されていると話は別らしい。

 

 

「くろぉー?」

「くぁwせdrftgyふじこlp……!」

「あはは、なにいってるかわかんらーい……」

 

 

 ぎりぎりぎりぎりぎり……!

 

 あかん飛ぶ。

 

 意識が遠くなる。力が入りづらい。チョコレートのせいもあって脳も正常な働きは期待できない。

 ついでに数値が上がった2人の体温と睡魔の影響で猛烈な眠気も襲ってきた。

 なんとかひまりの背中と腕に手を掛けるも、正直なんとか出来そうにはなかった。

 

 もしかして巴の言っていた早いか遅いかの問題とは俺の寿命の話だったのか。ていうかひまりこんなに力強いんだ……。

 

 鈍い思考の中で呑気にも思うことがそれなのかと自分でも呆れる。

 それにまさか胸の脂肪如きにここまで命を危機を感じるとは。もはや漫画ではないか。ダサいにもほどが──

 

 

「……? あれ? くろぉ?」

 

 

 最後に耳に届いたのはもう聞き慣れたひまりの間延びした(とろ)け声。

 眠気と息苦しさと暖かさでどんどん意識は細くなっていった。

 もう絶対ひまりに酒関係のものを摂取させるのはやめよう命に関わる。主に此方の。あと頼むから両親と姉上様はまだ帰ってこないでください命に関わる。主に社会的な。

 薄れゆく意識と冗談見たいな状況の中で、他の人が聞いたら笑うような決心をし、固く誓う。

 

 

「……他の子ナンパするくらいなら、私の事もっと意識してくれもいいのに……ばか……」

 

 

 あと望むならばひまりもこのことを覚えていませんように……。

 それを最後に俺は深く暗い水の中へと沈んでいくように、意識をそっと手放した。

 

 

 

 





上原 ひまり

羽丘学園高等部1年生。
九郎のタイプが巨乳の女の子を聞いて舞い上がり、それを意識させる服を何着か購入したはいいが、結局恥ずかしがって本人の前では着れていない。
そこそこ嫉妬深いので注意が必要。




?? 九郎

比較的巨乳の生徒が多い都内普通科高校。
妹を遠ざけるために『巨乳で黒髪ロングがタイプ』だと言ってしまった結果、つぐみの顰蹙を買いある種のトラウマを見せられた過去を持つ。その時巴は放置していた方がお灸にもなって面白そうだから、蘭はひまりと共に買い物に出かけていたからだという理由で助けてくれなかった。許さん。




やっぱり感想や評価をくれるとモチベが上がりますね。じゃんじゃん書けそうです。もし暇だしやってあげてもよくってよって人はよければいただけたらなと思います。やる気がでます(((ง'ω')و三 ง'ω')ڡ≡

ではまた明日。よければ見に来てくださいね。

コメディチックに書くのが好きなんですけどよね

  • これくらいでいい
  • いやもっとイチャコラさせろ
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