アクマで妹! 作:あぐろむいしき
評価バーに色が着きました……驚きです。お気に入り登録や評価してくださった方、そして読んでいただいた方にはもう感謝感謝です。ありがとうございますっ。
あと、今回微キャラ崩壊注意かもです。
「ではまずはお名前と志望動機をお願いします」
「クロがここでバイトしてる〜ってことで来ました、青葉モカです。愛人しぼーです」
「そうですかよくわかりました。ではお出口はあちらです」
さて面接も終わったことだし、通常業務に戻るとしよう。
俺は限りなく爽やかな営業スマイルを意識し、流れるような所作でバイト先の喫茶店に冷やかしに来たクソ迷惑は女をゲットアウトさせた。
そういえばもうすぐ先程オーブンに入れたスポンジ生地が焼ける頃だろうか。そろそろ様子を見に行かなければならない。
お客様には是非とも出来のいいの菓子をお求めになっていただきたい。なので、バイトとはいえこんな奴のために時間を無駄にしている暇など微塵もないのだ。
その後素早くテーブルから立ち上がると、バイトの面接ために使っていた部屋の扉に手をかける。
「ま、まあまあクロくん。モカちゃんだって悪気があってここに来たわけじゃないんだし……」
「そーだそーだー」
すると……自分がバイトをさせて貰っているこの喫茶店、“羽沢珈琲店”の店主の娘である“羽沢つぐみ”がまあまあと窘めてくる。
人あたりの良さそうな顔をあははと苦笑させて、未だ居座ってやがる我が妹、青葉モカを擁護する。
「そうは言うけどな、つけあがらせると酷いんだぞこいつは」
「スイーツは食べるのが好きなのでまかないも出るかと思い、ここを志望しました」
「聞いてないけどね。では退出していただいて結構ですよ」
「特にティラミスが好きです」
「帰っていいですよ」
「けどお兄ちゃんはもっと大好きです」
「いや帰れよ」
もうなんなのこいつ。どうして友人の家兼兄のバイト先に来てもこんなにブレないのか。
頼むから大人しくしていて貰いたい。年頃なんだし。マイペースなのはいいことかもしれんけど、時と場合は考えて欲しい。
「大好きって言ってくれるのは嬉しいんだけどね、ただ限度ってものがあるんじゃないの?」
「お兄ちゃん……好きに限度なんて、ないんだよ?」
「なめらかにうぜーなこいつ。いやね、いい加減ご近所さんからの疑惑の目を誤魔化すのも厳しくなってんの」
「そんなの堂々としてればいいんだよ〜。……あとなめらかにうざいってなに?」
摩擦係数ゼロの厄介なブラコン行為はやめようねってことだよ。
「堂々として解決するんならいいんだけどね」
「……ほんとに?」
「待ってやめて。何する気?」
いやだから怖いんだって。ご近所さんに手を出すんじゃない。
「外堀から埋めようかな〜って」
「ほんとやめてよねそういうの。あれから駅前の本屋のお姉さん俺の目ぇ見てくれないんだからな」
「お兄ちゃんってちょっと女の子の友達多すぎるよね」
「それって何か悪いことなの?」
「あたし幼なじみの4人だったら許してあげるって言ったよね」
「そんなこと言ってたっけ……」
「なのにあろうことか花咲川の女子ナンパしてるって言うじゃん」
「ど、どこまで伝わって……情報速すぎでしょ」
「なーんでそんな勝手なことするのかな〜」
相変わらずにこにこしてるくせに恐ろしい。
じりじりと迫る妹の圧に戦く。わきわきと両手を動かしながら近づくモカに此方も応戦しようと身構える。
「……ふふっ」
すると、俺たちの姿が面白かったのか、ずっと此方を静観していたつぐみが堪えきれないといった風に小さく吹き出した。
「ふたりってほんとに仲良いよね」
「確かに悪くはないけど行き過ぎてるのもどうかと思いませんかねぇ」
「それはそうだけど……クロくんもなんやかんやモカちゃんには甘いし、まんざらでもないんじゃない?」
「そんなことはないと思う」
「ふふっ……少し妬けちゃうな」
いや妬けるて。羨ましいってこと? これが?
「でもモカちゃんの気持ちも分かるなぁ」
「っていうと?」
「多分構ってくれないからちょっかいかけてるんじゃないかな」
「ちょっかい?」
「うん」
「構ってやれば大人しくなるって?」
「そうじゃないかな」
「モカ、本当か?」
「もうこうなったら全部あたしが管理してあげないとだめかな……」
「いや絶対違うだろこれは」
ぶつぶつと……何かとんでもねぇ危険思想を孕んだ発言をしていないかこいつ。冗談抜きで貞操が危ない。
もう何かされる前にどこかに閉じ込めた方が良いんじゃなかろうか。でないと此方が先に監禁されそうな勢いなんだけど?
「もう危険物取扱注意シール貼ってお子さんと俺の手の届かないところに置いておくのが1番賢明なんじゃないの?」
「そ、それはどうなのかな……」
「お兄ちゃんって、結局巨乳の子が好きなの?」
瞬間、空気が凍った。
今は夜の閉店作業中で、マスターは奥で片付けをしており、ホールには自分たち3人しかいない。
床の掃き掃除をしていた俺だけでなく、モカ以外の、店内全ての時間が停止した。
結局最後まで居座っていたモカは暇で暇で仕方がないのか、営業時間間際に注文したクリームソーダのストローをくるくる回しながら唐突にそんなセリフをぶちまけた。
「──っ!」
刹那、僅かな思考ラグ明けに1番最初に確認したのは背後……テーブルを拭いている羽沢つぐみ。
彼女の様子を動向を把握するために、そして必要ならばスタートダッシュを切る準備をするために俺は身を素早く翻した。
「……そうだね……それ、私も気になってたかも」
そんな彼女は幽鬼の如くのオーラを発し、ゆらりと揺れると、布巾を置いて此方の存在を視界に捉えた。眼の中のハイライトとも呼べる部分は消滅し、暗澹な闇を瞳に宿す。
ワンチャンス……もしかしたらモカの言葉が聞こえていないことを期待していたが、そんな淡い希望は泡沫のごとく砕け散った。
「ちょっとナンパ系のおしごと思い出したから俺はこれで──」
「ナンパ系のおしごとなんていかがわしい業務、うちにはないからね?」
先日の宇田川姉妹の時とはレベルが違う状況の不味さに、瞬時に逃走の第1歩を踏み込んだ。
「まだシフトの時間は終わってないよ? どこ行くのかな」
が、それも糠に釘。これは瞬歩ではないね。ソニードですわ。
体勢を落とした時にはもう優しく肩を叩かれていた。いや速すぎる。そのあまりにも速い接近、俺ですら見逃しちゃうね。
「そうだよね。いま仕事中だもんね。だから掃き掃除しないとだよね」
「うんうん。で?」
「いやその……で? とは……」
「分からないかな」
すすす……と、つぐみは背後からさらに距離を縮め、両手を両肩に置いた。
なんだろう……言語化しづらいけど、最近いっつもこういうのな気がする。
「お兄ちゃんって昔から女の子に尻に敷かれるタイプだよね」
「敷いてる人間が言わないでくれます?」
またしても元凶になったモカがにやにや笑いながら、こいつもててて……と歩み寄ってくる。
こいつは何かしでかさないではいられないのか。黙ってクリームソーダだけを飲んでいればいいものを。
それに尻に敷かれてるとかいうけれど、俺個人としてはそんなつもりは無いんだけど。ただおまえらは俺が立ってるのにも関わらず無理やり押し倒して敷いてくるじゃん。どうしろと?
「そして物理的にも敷かれるタイプ」
「それをするのもお前だけだ」
「ひーちゃんにもされてたじゃん」
「あれは……いやそれより、別に胸の大きい子が特別好きなんて思ってないんだけど」
「でもクロくん、ひまりちゃんにデレてたって聞いたよ?」
「だからデレてはない」
しかし今は尻敷かれている現状などよりも解決せねばならない事態が発生しているのでとりあえずは後回しだ。
今はとにかく誤解を解くのが最優先にと、根拠のない謂れを払拭せんと弁明する。
「……ふーん?」
しかしどうしたことか。いつもは俺の言うことを素直に受け入れてくれるつぐみが、今回は何か納得の言ってないような声を返す。
普段のつぐみならある程度説明すると分かってくれるのに。あはは……と、申し訳なさそうに笑う柔和な雰囲気で許してくれるのに。……数少ない常識人天使ポジの筈なのに。
後ろにいるので表情の確認は出来ないけど、何だか不機嫌の波動を感じる。
つぐみはひしっ、とお腹に手を回して、此方の肩口に顔を埋める。さらに逃げづらくなってしまった。えっと……あの、なんでしょうか……?
「女の子がこーやって背中からくっつくとね」
「はぁ」
「自分の匂いをつけるのと、自分以外の女の子の匂いを確かめることが出来るんだよね」
「えっ、なに急に。ホラー?」
「今はどっちも出来るよね?」
「えっと……」
「だから、嘘ついてもバレるんだよ?」
「や、その……」
「ひまりちゃん最近柑橘系の香水買ったんだって」
「…………」
「今うちでは扱ってないよ? 柑橘系」
「…………」
「クロくんの嘘つき」
いやいや怖すぎんだろがよ。ホラー映画かな?
確かにここに来る途中にひまりと会ったけども。
あまりにも正鵠を射ているつぐみの考察に、思わず歯もがちがちなりそうなほど震える。最近初夏に差し掛かったのもあってこれからは店内も冷房が必要になってくるだろうが、彼女がいれば羽沢珈琲店の電気代も節約出来るのではなかろうか。
いや……最近怖い怖い言い過ぎてもう飽きたわとか言われるかもしれないけれど、まじで怖い。このつぐみはガチだ。
知り合いの中で怒ると1番怖いのは紗夜とつぐみ。次点でモカだ。
蘭や巴も怒ると怖いがそれもある程度限度があるのでまだマシな方ではある。
ただなんというか……普段大人しい人間がキレると手が付けられないというか、抑圧されている人間程噴火するとえげつないというか……。
つまり簡単にいうと、このままでは俺の危険が危ない。
ちょっとモカ? 助けて欲しいのだわ? この子お友達でしょう?
「でもでもっ、大丈夫だよ? クロくんがちょっとえっちなのは昔から知ってるもん」
「妹様! 妹様ぁ!」
「このクリームソーダおいしいなー」
「ばっかお前、助けろっつってんのにぃ!」
「自業自得〜。この際太もも教に改宗したら?」
「そんないかがわしい宗教あるわけないだろが!」
「つぐにも物理的に尻に敷かれてきたらいいんじゃなーい?」
「間に合ってるんだよなぁ……毎朝やらてますからね! おまえに!」
「そりゃあ妹の手で性癖歪めてあげる作戦だからね」
「あれガチで言ってたの!?」
衝撃的なカミングアウトに驚きを隠せない。最近やけに扇情的に煽ってくるとは思ってたけど、まさかそんな魂胆があったとは。
そんな分析をしている中でもつぐみの腕の力はどんどん強くなる。背中に確かに彼女の温度を感じるのに、額には冷や汗が滲み出る。
「性癖……歪める……かぁ」
「ちょっと? 『なにそれ名案かも』みたいに頷かないで?」
「確か耳が弱いんだっけ」
「助けてモカ早くぅ!」
「し〜らなぁい」
これはいけないぞぉ……このままでは俺の性癖がどうこうの前につぐみの性癖が歪むんじゃないのか。
やむを得ずモカに助けを求めようとも、彼女はどこ吹く風。いつもはべったりなくせに今という時にはまったく靡かない。
「つぐみって、そんな性格だったっけ……」
「誰かさんが節操ないんだもん。……仕方ないよね?」
こうして──、この時から、俺は2度とつぐみの前で胸の話はするまいと誓った。
無粋なことを気にしてはいけないので何故かとは聞きはしないけど。しかしとにかく、つぐみの前で胸の話はダメなのらしい。
純粋で優しく、料理が上手くて献身的。そんな天使のような常識人羽沢つぐみにも、地雷というものがあるんだろう。
……いや? そういえばこの話しだしたのって、モカじゃなかったか?
ちらりと見ると当のモカは、呑気にクリームソーダを飲んでいる。そして此方の視線に気づくと小悪魔のようににまりと微笑んだ。
まるで確信犯のように。やっぱり危険物じゃないか。
まさかこいつ、例の俺の性癖歪める作戦の為につぐみをけしかけたんじゃあ……。
やはりこの妹、早いうちになんとかしなければならないようだ。
羽沢つぐみ
羽丘学園高等部1年生。
純粋で優しい女の子。ただ自分のあるパーツにコンプレックスを抱いているのか、その話になるととてもこわい。無自覚だがひまりと同じく少々ヤンデレみがあるので油断しているとがぶりとやられることも。
Q、ジャンプ漫画ネタ多くないですか?
A、気の所為です。
今回もなんとか間に合いました。なのでちょっと雑だったかもしれませんが……。
次はある程度固まっているので、なんとかなりそうです。
では次回も、よければよろしくお願い致します。
コメディチックに書くのが好きなんですけどよね
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これくらいでいい
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いやもっとイチャコラさせろ