※オリジナル異世界ですが、登場人物の名前を覚える必要はありません。
その日、俺はいつもと同じようにアズールレーンで適当に周回していた。
メンバーは主力艦隊はエレバス、長門、ユニコーンに前衛艦隊がエルドリッジ、ラフィー、綾波だ。
何も言わなくていい。もちろん、分かっているのだ。
……こんなメンバーはあり得ない。いや、本当にシナジーも何もなくて無駄に燃料を消費するだけの編成だ。
こんなメンバーでやっているのは、単にかわいい子を詰め込んだだけ。指輪を上げた子たちを揃えた以外に何も理由はない。
しかも、手動戦闘もしていないから、ただ眺めているだけだ。
「ーーあ」
だから、集中力なんてないも同然。
もう半分寝ながらやっていると言ってもいいだろう。
だから……落とした。
しかもよけられない。
「え?」
一瞬にして拡大するスマホの画面。
それが物理的に大きくなったことを気づくこともなく。
「……痛」
ガツン、とぶつかった。
一瞬だけ意識がブレる。
その瞬間だけ、世界が切り離された。
「ってえ!」
目が覚めて、がばりと跳ね起きた。
一人で部屋にいるはずなのに、無意味に辺りを見渡す。
「ーーえ?」
だが、目に映るのは異常な光景。
そこは草原だった。床などどこにも見えない。
そして、自分を見つめる6対12個の視線。
しっかり目が合った。その瞬間。
「指揮官ーーエルドリッジ、着任した」
小さな影が飛び込んできた。
ふわふわの柔らかい体の感触をダイレクトに感じて、しかしピリリとわずかにしびれが走る。
「……エルドリッジ?」
見間違えるはずもない。
金色のツインテールに小さな体。
前掛けのような服は薄く小さくて、体のラインを隠そうともしていないよう。
その服の頼りなさは抱き着かれているからよくわかる。
半分痴女とさえ呼べるその恰好は、どこからどう見てもエルドリッジだった。
「あ…わたし…ロイヤルネイビー…ユニコーン…指揮官…あのぉ…お兄ちゃんって呼んでも…いい?」
空いている手を握られた。
こちらもユニコーンに相違ない。
片手には角の生えた馬のぬいぐるみを抱えて不安そうにこちらを見上げている。
「あなただったのね? 指揮官。私、エレバス――遥か遠い暗黒の世界から、あなたの呼び声を聞いてやって来たの」
幽霊のような、かぼそい気配。
声がなければ5人と見間違えていたかもしれない。
透き通るような白髪、見通すかのような赤眼。ゴスロリちっくな帽子を除けば普通に一番近い恰好かもしれない。
「ベンソン級駆逐艦ラフィー、命令を待っている……指揮官、この耳は本物じゃないから、そんなにじっと見ないで……」
そんなことを言いながら、恨めしそうな声を出している。
視線を向けると満足げに耳を揺らした。
こちらもツインテール、ラフな格好だが、大胆というよりむしろズボラな着こなしで肩が見えている。
しかも、今にもずれ落ちそうで胸が見えてしまいそうだ。
これはどきどきせざるをえない。
「 綾波……です。「鬼神」とよく言われるのです。よろしくです」
剣を下ろして適当にしている。
セーラー服を大胆にカットした服。肩もおへそも丸見えで、横乳が見えてしまいそうだ。
やる気のない表情。スラリとした肢体に背格好の割には大きい胸、これはこれで魅力的で、好きな人間にはガツンと来るだろう。
「余は重桜連合艦隊旗艦――長門である。お主は指揮官か?天下を取る資質があるか、しかとこの目で見させてもらおう」
そして、彼女……長門。
まず、目を引くのは巨大な艤装だろう。
見た目倒しではありえない存在感が目をそらすことを許さない。
だが、一通り見て、それを纏う少女に目を向ければ別の意味で目をそらせない。
巨大なマントがあるが、透明でその幼い体を隠す役には立っていない。
しかも、ネグリジェのような服だけで、歩けば下が見えてしまいそうになる。
「ーーえ?」
ゲームのキャラが実際に目の前に現れたとして、気が利いたことなど言えるわけがないだろう。
ただただ圧倒されて、何も言えなくなる。
「会いたかった」
抱きついて離さないエルドリッジが言う。
とくに何かを考察できていたわけでもなかったが、連想は働いた。
「会いたかった」とは、記憶の連続性がある。世界1秒前仮設でもないが、しかし彼女たちにその姿で居たという記憶があることは確実だ。
つまり、原作のように船の記憶を引き継いで生まれた、その瞬間というわけではなく。
「ユニコーン、その手」
ユニコーンを選んだのは単純に手を握られていて見やすかったからだ。
ーー右手の薬指。
この子たちがゲームのどの時点か、というのを確認したいのなら一番早い。
「どうしたの? お兄ちゃん」
首をかしげるユニコーン。
じっとこちらを見つめている。万感叶ったとでも言いたげに。
そして、その手には指輪が光っていた。
「それは……俺が?」
やっていたゲーム。
この子たちが俺のキャラだとするならば。
「そうだよ。忘れちゃったの?」
悲しそうに目に涙をためている。
他の子も、少し辛そうに目を背けて、さりげなさをよそおってこちらに指輪を見せつけている。
もちろん、あからさますぎてまったく隠せていないのだが。
「いや、覚えているさ。俺も、少し戸惑っていて」
「そう? ユニコーン、お兄ちゃんといっしょにいていい?」
「ああ、もちろん」
そう言って、頭を撫でてやる。
「……♪」
うれしそうにしている。
すると、エルドリッジが抱きしめる力を増してきた。
ぎゅうぎゅうと、不満げに体を押し付けてくる。
はっきり言って天国だから、もう少しじらしたいという思いもあるのだけど。
今度はエルドリッジの頭を撫でてあげた。
「指揮官、好き」
抱きついてくるのは変わらないが、体をこすりつけてくるような動きになった。
とても愛らしいし、彼女の体の柔らかさも存分に感じる。
「ラフィーは指揮官にかまってほしいって思ってない。うん、思ってない……」
後ろからツンツンとつついてくる。
顔を後ろに回せば不満げに頬を膨らませているラフィーと目が合った。
「ラフィーも、ね」
頭を撫でてやる。
この子も、とても嬉しそうにしてくれる。
「むぅ……この長門を無視するとは。指揮官もだいぶ肝が据わっておるな」
「綾波は別に。指揮官に頭を撫でてほしいなんて思ってないです」
こっちはこっちで可愛らしくむくれていた。
ああ、なんて愛らしいのだろうと思う。
「長門、綾波。こっちへおいで?」
手招きしてやる。
エルドリッジを引きはがす気にはなれなくて、それだと動けないから。
「指揮官がそう言うなら、仕方ないですね」
口こそそう言っているが、待ちかねたように嬉しそうに胸に飛びこんできた。
この戦力的に見れば馬鹿げているとしか言いようのない、ロリ艦隊の中でも綾波とユニコーンは胸がでかい。
それはこうして抱きつかれてみるとよくわかる。
「そんなはしたない真似など……」
恥ずかしそうにして顔を赤らめているが、行動は素直だ。
そそくさとエルドリッジの隣に来たから、手で抱き寄せた。
これで正面に三人を抱きしめて、さらに両隣からも抱きしめられ。
「指揮官、仲間外れは悲しいわ? それとも、私なんかは遥か遠い暗闇の世界で孤独で居るのがお似合いだとあなたは言うの?」
すす、と後ろに近づいてきた。
「エレバス、君も一緒にいてくれるなら俺は暗闇の世界でも構わないよ」
後ろから抱きつかれた。
「……指揮官。この暖かさ、嫌いじゃないわ」
これで、特に寒くもないのにおしくらまんじゅうでもしているかのような光景が完成した。
なぜ、というならば、この子たちは所持していたキャラで、結婚指輪も渡していて、好感度がMAXになっていたからという他ないだろう。
この状況、疑問だらけで何から考えようかとすら筋道が立てられない。
そもそも、自分の身体が人間のものではなくなっているという感覚のことすら、なにも検討できていないのに。
「ねえ、お兄ちゃん。ユニコーンには? ユニコーンには何か言ってくれないの?」
「指揮官、エルドリッジにも、言って」
そういう二人、そして他の三人も催促してくる。
あのセリフ、結構恥ずかしかったんだが。などと思うが仕方ないだろう。
こんなかわいい子たちなのだ、カッコつけるのは当然だ。
だから、次に考えることは決まってしまった。