ロリ艦隊と異世界転生司令官   作:Red_stone

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第12話 十二神将襲来(下)

 

 敵の反射能力により、拘束したはずの指揮官と綾波が自分の力で跳ね飛ばされた。ボールみたいにあっさりと飛んで行く。

 

「……この!」

 

 吹き飛ばされていった指揮官と綾波を見てラフィーが激昂する。

 

「いかん! 熱くなるな、ラフィー……!」

 

 長門の静止も聞かずに盛大に砲弾を撃ち放つが、しかしーー

 

「あらあら。それで攻撃しているつもり? 生ぬるくて、あくびが出るわね」

 

 敵は暇そうにくるくると日傘を回しつつ、全ての攻撃を跳ね返す。

 

「きゃあ……ッ!」

 

 ユニコーンが悲鳴を上げる。

 反射された砲弾がそこかしこを抉るのだ。

 絶対の防壁に対し、それを叩こうとすればおのずと火力は過剰となる。のだが――彼女たちの絶大な火力が逆に自分たちの首を絞めている。

 かと言って、火力を下げるのは勝利を諦めるも同然だろう。

 

「許さない……!」

 

 さらにエルドリッジすら砲撃に参加する。指揮官や綾波を見ると勘違いしがちだが、基本的に艦船は砲戦主体である。

 地獄のような戦場に、更なる火力を投入する。現出するのは火炎地獄だ。とても生物が生存できる環境ではない。

 

「こうなれば、さらなる火力をもって制圧するまでじゃ!」

 

 そして、長門までも砲撃に参加すれば結果はどうなるか。

 ……そう、山が”抉れる”。

 

「え? え? にゃあーー」

 

 ユニコーンは状況についてこれないのか目を回している。

 そもそも軽空母なのだ、接近戦どころか遠距離戦ですらもなく、正しい運用は前線基地としてのそれ。

 砲撃戦で周囲が抉れて削れるなどという砲弾の嵐の中で、立ってはいられない。

 

「さて、私たちは下がりましょうか。あの子が提灯の光に惑わされている間に」

 

 エレバスがユニコーンの手をとって避難する。

 実は長門までが砲撃に参加したのは目くらましのためだ。

 全て跳ね返されても、跳ね返した砲弾と近くに着弾した砲弾で、どこもかしこも呼吸すら危うくなるほどの火炎と粉塵が立ち込めている。

 今のうちに各自が最大の効率を発揮できる位置に移動する。

 

「ぬーー本当に全て、跳ね返すのか……!」

 

「けれど、跳ね返すだけじゃラフィーには当たらない」

 

「あなた、嫌……」

 

 そして、艦船の攻撃は更に激しさを増す。

 当たらなければ、当たるまで撃てばいい。そらされようが、反射されようが、かまうことなく過剰な破壊を注ぎ込む。

 

「学習しないのね。……冥府門番は超えられない。あなたたちの攻撃は通じない!」

 

 彼女が小さな手を、長門へと向けた。

 その、瞬間。

 

「……む! そんなこけ脅しがこの長門に通じると思うてもらっては困るぞ!」

 

 一際大きな砲撃を撃ち放った。

 

「あなたこそ。私の異能が攻撃をただ跳ね返すだけだなんて、十二神将を舐めすぎているのよ」

 

 反射。そして軌道が捻じ曲がる。

 今まではただ撃った方向に跳ね返るだけだった。例えば撃ったのが銃弾なら、一歩右に移動すればそれだけで回避は事足りた。が……

 

「……ぬおっ!」

 

 ”これ”は違う。

 野球のボールのように、容易く砲弾の軌道が捻じ曲がる。

 まるで物理法則に反しているが、そんなものは今更だ。

 問題なのは、攻撃を反射されるということは、もっとも無防備であるはずの攻撃の直後を狙われるということ。

 

「きゃあっ!」

 

 かろうじて直撃は避けられたものの、被害は甚大だ。

 ゴロゴロと転がって、煙がぷすぷすと昇っている。何度も受ければ危ない。

 

「うぅ……また失敗しちゃった……」

 

 涙目で呟いた。

 

「よくも長門を泣かせたな?」

 

「万死に値するのです」

 

 激しい砲撃の合間を縫って飛び込んだ指揮官と綾波の二人が、手をつなげるほどの近距離で砲撃戦を開始する。

 

「おとなしく死んでおけばいいものを!」

 

 日傘をぶんと振り回した。

 能力のこもったその一撃は、たとえどんな魔法の金属でも容易に捻じ曲げる超能力が籠っていたが。

 ……そんなもの。

 

「そんなトロイ攻撃が当たる分けねえだろうが!」

 

 指揮官には当たらない。眼球狙いで石を弾く。

 

「……っわ!」

 

 そいつは思わず目をつぶる。

 もっとも、石はむなしく弾き返されるのみだったが。

 

「鬼神の力、味わうがいい……!」

 

 文字通りの零距離射撃を刊行する。

 そして、速い。跳ね返された瞬間には別の場所に移動している。

 

「ちょこざい……! あれは……ッ!?」

 

 ユニコーンとエレバスが位置についた。巨大化したぬいぐるみに二人乗りは癒されるような可愛らしい光景だが、発揮される効果は割とエグい。

 敵の顔にははっきりと面倒くさいと書いてある。

 

「ユニコーン…頑張る…!」

 

「果てなき暗黒から暗黒から逃れることはできないと知りなさい」

 

 開始するは暴虐。

 一人に向けて放たれるべきではない戦争そのものの火力。

 ただの一秒で街すらも灰燼と化す威力が、地形そのものすら蹂躙すして地獄絵図を作る。

 

「なるほど。この思い切りの良さが死氷降世(ニヴルヘイム)を撃退した秘密かしら? シミュレーションではあなたたちが勝つ確率は0.002%だった。もちろん、逃走を選んで生き残ったケースは多かったけれど、勝ってしまうなんて異常ね。でも、ここまで闘争心が強いなら……あるいはそういうことかしら?」

 

 多少、考え込んだ。

 現実逃避は欠片も含まれていない。むしろ、この火力という現実に屈する気が微塵もないからこその余裕である。

 つまり、舐め腐っているのだ、この敵は。

 

「そして」

 

 衝撃と火花のカーテンの向こうから砲塔が覗く。

 ーー砲撃。

 

「無駄ですわ。しかし……お速いですのね。……それで」

 

 背中で能力が発動した。

 ちらりと男が自分の蹴りで、自分が吹き飛ばされているのが見えた。

 

「なるほど。隙が無いのです」

 

「なければ作るまでだがな」

 

 綾波、指揮官の二人はボロボロになりながらも接近戦を実行する。

 爆破の衝撃によって丸裸になった山は爆弾と放火によって火炎の坩堝と化している。

 その中を負傷覚悟で二人が突っ込んでくる。

 わずかでも能力を切らせば死ーー物理を切ればその瞬間に拳が急所を抉り、火炎をおろそかにすれば炎が全身を舐める。すさまじいまでの殺戮空間。だが。 

 

「ーーは! 全ては無為! 何度でも言わせてもらいますわ! 我が冥府門番を超えることは能わない! ゆっくりと観察させていただきますわ。……我が同胞を退けた、力の秘密をね」

 

「そちらも必死だな、実験動物(モルモット)。ご同輩として忠告してやろう。……この世に完璧など存在しない。失敗はたいてい、下らないとしかいいようのないどうでもいいミスから始まるんだーーよ!」

 

 顔面に思い切り拳を突き入れ、突き入れた指揮官のほうが顔をひしゃげつつ飛んで行った。

 

「さあ、我慢比べと行きましょう? 戦うのは嫌いではないのです」

 

 砲火の中、荒れ狂う炎を無視して縦横無尽の軌道を描きつつ砲弾を浴びせていく。

 小さいダメージを追い続けるが、でかいのはもらっていない。

 そして。

 

「……回復? 光はーー上ですわね。忌々しい……!」

 

 綾波はユニコーンのスキルによって回復する。

 そして、回復役を先に倒そうにも彼女は上空だ。

 冥府門番は隙の無い完全防御だが、攻撃手段に乏しいという欠点を持つ。特に空の敵を相手にするのは厳しい。

 

 本人の動体視力が低いから、空の上を狙うのはそれだけで困難だ。

 軌道を捻じ曲げて反射したところで上下左右どこかに動けば簡単に外れる。

 衝撃と火炎を周囲にまき散らす砲弾は地面に当たってこそのものだ。

 

「おや。ようやく苦い顔を見せてくれましたね」

 

「そんな、素人考えが通じるとでも思いますか!?  どうせ、あなたたちごときでは私に傷一つ付けることもできないというのに!」

 

 そう、だからと言って勝ち筋ができたわけではない。

 決して負けないからこその余裕で、そこを崩せたわけではない。

 

「その時があなたの終わりなのです」

 

「減らず口を!」

 

 声の聞こえる方角に狙いを定めた。

 綾波はスーパーボールのごとく跳ね回って、位置なんて分からないが問題ない。下手な鉄砲も、数撃ちゃ当たるのだ。

 

「私はそっちにはいないのです」

 

「っく!」

 

 そちらに向けた。けれど、火のカーテンをいくらか削るだけで当たった様子もない。

 

「--破!」

 

 いきなり肘撃ちが襲い掛かってきた。

 指揮官だ。気配を消して、忘れたころに殴りかかってくる。

 しかも、自分に向けられた火力をこいつにお見舞いしようにも自分の攻撃の反射を受けて吹っ飛んでいくのだ、間に合わない。

 

「この……!」

 

 いらだちが混ざる。

 まったく状況を好きにできない。

 ここに釘付けにされ、滅多打ちにされるばかり。ダメージを積み重ねているのは向こうのはずなのだが、こうも好き放題されるのは気に喰わない。

 

(……何が狙いです? 無駄なのはわかっているでしょうに。いいえ、そうですわね。このまま続けて、私の消耗を誘う気ですか。時折混ざる物理攻撃も、能力を無限に使い続けることはできないと思っているから混ぜていると考えれば、辻褄は合いますわね)

 

 彼女は無駄なことを、と嗤う。

 確かに直接攻撃と遠距離攻撃では反射の仕方が異なる。

 直接攻撃では攻撃そのものを相手に返す。いわば空間転移と衝撃操作をノータイムでやっている。

 ただ角度を自在に変えて跳ね返すだけの遠距離攻撃とは種類そのものが異なるといっていい。

 

 けれど、それは彼女の意思で操っているわけではなかった。オンオフの切り替えはできるが、逆に強弱でさえ決められないし範囲設定もできない。

 下手に範囲や強度を設定できると漏れができる。どこからでも、どんな攻撃でも跳ね返せるのがこの能力の売りなのに、汎用性を目指した結果で欠陥を抱え込んでは意味がない。

 

 だが、この場合は逆に如何に作戦を考えようと無駄ということになる。逆に言えば応用が利かないのだ。

 そも、作戦とは相手の油断している個所に適切な戦力をぶつけることを言うのだから。

 --全てを反射できる冥府門番(ヘカトンケイル)に通用しない。

 

「……あは。見てあげますよ、あなたたちの無駄なあがき。さて、あと何時間持ちますかね?」

 

「何日でも」

 

「あなたを倒すまでなのですよ」

 

 戦火は更に激しさを増す。

 砲撃が地形そのものを変えていく。山から平地へ、そしてくぼみへと。それでも収まりきらずに大火が空すら焼く。

 火炎地獄というものがあるとしても、少なくともここよりはマシだろう。

 破壊、破壊、破壊が積み重なって轟音と熱が世界すら砕く。

 

「「「ーー」」」

 

 砲火の主、三名が衝撃と爆音と火災の坩堝を叩き込み。

 空を駆ける乙女二名が戦火に火をくべる。

 戦鬼二名が火炎の中で舞い踊る。

 

 飽きもせず、続ける。抉れ削られ、開いた穴が連なって悲惨な姿になっていく山を気にかけるものは誰もいない。

 

 ……そして叩き込まれた砲火が、万を超えようとした折に。

 

「ーーッ!?」

 

 ぐらり、と冥府門番(ヘカトンケイル)の頭が揺れる。

 瞳が虚空を映した。

 

「終幕だな、傲慢な超越者。次は異能だけに頼らず、心技体でも鍛えることだ」

 

 指揮官の手刀が心臓を貫いた。

 

「……かふっ! 馬鹿、なーー」

 

 呆然と自分の胸を見る。

 男の手が深々と埋まっていた。信じられず、何が起こったのかも分からない。

 

「殺ったのです!」

 

 そして、剣が首を狩った。

 

「……?」

 

 そして、首が飛び景色が一回転しても、彼女には自分の敗因がわからなかった。

 

「「……ッ!」」

 

 二人とも地を蹴り、殺戮領域(キリングエリア)から脱出する。

 そう……”酸欠”を回避するために。

 山を削るほどの火力があれば、当然酸素も相応に消費する。

 閉鎖空間どころか見晴らしの良い自然の地であるため、地形を変えてくぼみを作る必要さえあったが、結果はこれだ。

 首尾よく絶対の防御を切り崩せた。

 能力自体は完璧でも、扱う本人は完璧ではない。僅かな隙を突いた。

 

 まあ、もっとも、向こうが酸素を必要とする生物なのかは怪しいところがあったのが、その時は彼女が見抜いていたように遠距離の中に物理を混ぜて、殺せるまで消耗戦をするだけだった。

 

 そして、それでも無理ならば撤退するだけだ。

 何のために足の速いラフィーとエルドリッジを長門の直掩に置いたのか。いざというときに綾波と指揮官を救助して一目散に逃げるためだ。

 

 とはいえ……

 

「勝った。疲れた……」

 

「綾波、へとへとです」

 

 気の抜けた指揮官と綾波はずるずると座り込んだ。

 そして綾波はちゃっかりと指揮官に背中を預けている。

 

「終わった。……ふは。指揮官、ラフィー……ちょっとおねむ……」

 

「重桜の誇り、見せてやったぞ。……うう、ちょっと痛いののこってる……」

 

 ラフィーと長門は草原に寝転んでしまった。

 

「V(ブイ)~」

 

 エルドリッジはわざわざ走って行って指揮官に抱き着いた。元気が余っている。

 

「はうう……お兄ちゃん、ユニコーンも疲れたよ」

 

「魂の安らぎを……求める」

 

 ユニコーンとエレバスも近くに降りてきて身を寄せる。

 

 




有名な反射能力者は一方通行が居ますが、彼は酸欠になったら主人公補正で覚醒しそうですね。
冥府門番の方は気合いで覚醒しない代わりに、1週間でも数ヵ月でも戦い続けられる継戦能力が売りでした。人間は水を補給しないと1週間で死ぬのが弱点ですね。

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