「……さて」
気だるい身体を無理やりに起こす。
ただ気絶するに任せて眠ったわけではない。少しばかり移動しても十二神将の追撃があれば無駄な努力だから、そのまま眠ったという話。
十二神将の追撃があるなら場所など関係がなく、それなら多少の休息を取っておいた方がましである。
とはいえ、最低限の休息を取ったならこんな戦場跡に残る理由もない。単純に、よく休めない。
「起きろ、エルドリッジ。それとユニコーン、エレバス、綾波。長門とラフィーを連れて場所を移すぞ。だが……まあ、水浴びをしたい気分だな」
服がズタズタ――なのは指揮官の母港機能を使えば何とかなる。
艦これの大破システムなんてアズレンにはないから、ゲームの戦闘では戦闘終了時まで服は破けない。
とはいえ、これは現実だから……機能を使えば直ると言うことになったのだろう。もちろん戦闘中でできることではないが。
とはいえ、髪や服の中まで入り込んでこびりついてる灰と煤はどうにもならない。
「眠い」
「うう、お兄ちゃん。ユニコーン、もっとやすみたい」
エルドリッジとユニコーンは目をこすって、とても眠そうにしている。
まるで子供が泥まみれになるまで遊んで、そのまま寝てしまったみたいな様子だ。もちろん、彼女たちにもとても頑張ってもらったのだが。
「駄目よ。そんな煤まみれで」
「そうなのです。あまりにも汚いと、指揮官にも嫌われますよ」
とはいえ、それは許されない。
あまり年の変わらない子供に見える長門と綾波がたしなめた。性格の違いか、こういうのを見ると指揮官としては面白くなる。
「水浴び、する」
「ユニコーンも、がんばって起きるよ」
そして、残りの二人も回収し……ついでに避難民たちも回収して、湖へと。
艦船の能力があれば、水場を見つけるのは容易い。
ただし、足が速いから避難民より先に着くのも止む無し。そういうわけで。
「俺は向こうで入ってくる」
指揮官は学習した。
このまま話していると、どうせ全員で入る羽目になる。倫理感に薄い指揮官でも、それがマズイことくらいは分かる。
だから、先手を打って一人で行動する。
エレバスと長門と手を離すのはかなり惜しかったが……まあ、仕方がない。ちなみに、順番で適宜入れ替わっていた。
「……」
無言で服を脱ぎ、無言で水を浴びる。
特に独り言を言う趣味もない。火炎の真っただ中にいたために汚れも相当酷いことになっている。
艦船の機能のために旅の汚れとも無縁であるが、さすがに浄化能力の限界を超えていた。
どうせある程度落ちれば浄化能力が何とかするだろうとあたりを付け、適当に済ませる。
さて、もういいかと適当に見切りをつけたころに。
「指揮官、見つけた」
一糸まとわぬエルドリッジがやってきた。
しかも指揮官以上に適当で、ところどころに灰と煤が残っている。
「……いや、おい」
頭を抱える。
頭の隅で誰か止めなかったのかとぼやく。
まあ、そんなときでも視線はエルドリッジの身体を凝視しているのだが。
「……だっこ」
そして、彼女は自身の状況に一切頓着することなく両腕を広げて全てさらけ出す。
まあ、意図自体はポーズの通りに抱っこしろと言うことなのだろうが……全て見えてしまう。
「――もういいか」
考えても仕方ないので指揮官は悩むのを止めた。
どうせ、何をやってもエルドリッジが悲しむことはないだろう。そのくらいは、これまでの生活で確信している。
なにせ”指輪”も渡している。役得と言うことにしておけばよいだろう。
「むぅ。……指揮官、きいてる? だっこ」
頬を膨らませて不満げにしている。
ここまで無邪気な子に、指揮官も反応は……まあ、するが。
「ああ、分かった」
とりあえず抱き上げて水に入れる。
とりあえず、洗い残ししかない頭を洗ってやる。
「えへへ。くすぐったい」
そんなことを言いながら無邪気に笑っている。
他の箇所も洗う。まあ、本当に大事な部分は汚れていない。さすがは艦船の服と言うべきか。
言ってしまえばアーティファクトか何かの類だろう。
「……指揮官、指揮官。高いの―」
遊んでもらっていると勘違いしているのか、とても楽しげである。
色々と感触を愉しんでしまった指揮官は少し罪悪感を抱いた。
「……ほら」
お望みの通りにしてやるが、ほどなくして気付いた。
”高い高い”を全裸ですると凄いことになった。もちろん、エルドリッジは全く気付いていない。無邪気なものだ。
「わー。たかい。たかーい」
きゃっきゃと喜んでいる。
「まったく、お前は無邪気だなエルドリッジ」
「えへへ。指揮官、好き」
やっぱり何も身に着けていないのに、抱き着こうと腕を広げている。
まるでキスをねだっているようにも見えて。
「こういうこと、知っているのか?」
指揮官はエルドリッジに顔を近づける。
エルドリッジははてなマークを浮かべている。
「……なぁに?」
それでも、ニコニコと笑顔だ。
指揮官に何かされることなど想像もしていないような。もしくは何をされてもいいと受け入れているような。
「キスの時くらいは目をつむってくれ」
「……んん? ……ん」
よく分かっていない顔だ。だけど、目は閉じた。
「エルドリッジ、好きだ」
キスを落とした。
「むふー」
喜んでいる。
「今の、分かった?」
「おくちと、おくちで、ちゅー? 気持ちよかった。もっと」
彼女はどこまでも無知で、だからこそ貪欲だ。
よく知らない快楽でも、与えられたらもっともっととせがみ続ける。
「そう? もっとしたいんだ」
「……ん」
もう一度、キスを落とす。
何も知らない子供にいたずらするような背徳感。しかも、向こうまで乗り気なのだから留めるものが何もない。
他の子も、こういう時に限って来ない。
「指揮官……まだ。もっと」
「……仕方ない」
もう一度。
「……あ」
「……あ」
エルドリッジが目を開けていた。
「……エルドリッジ」
「指揮官も、目、あけた」
少し、空白の時間が流れる。
「指揮官、ちゅー」
「よほど気に入ったみたいだな」
その後何度もキスをした。
――女子会――
艦船たちは指揮官抜きで集まる。時折こういうことをしている。指揮官も、一人の時間がほしいと思うことはある。
ユニコーンはわくわくした気持ちを抑えきれない様子で聞く。
「どうだった? エルドリッジちゃん」
「ん……キス、された」
わあ、と湧く。
艦船6人で集まっておしゃべりに興じていた。話題はもっぱら指揮官のこと。
全員指輪を持っているのが良かったのか、とても仲が良い。
「いいな、いいな。綾波ちゃんもしてもらったんでしょ?」
「ええ。あと、おっぱいも揉まれました」
くすくす笑う。
余裕がにじみ出ている。この6人が居れば逃がさないという肉食獣の笑みでもある。指揮官が他の人間に興味がないというのも良い様に作用しているのだろう。
「いいな。ユニコーンも、してほしいな」
「まあ、指揮官は複数だと気後れするようなので。どこか二人きりになれれば、すぐに手は出してくれると思いますよ。あまり誘惑に強くもないみたいです」
「そうだね。ときどき、ユニコーンもおっぱいに視線を感じるし」
色々と筒抜けの指揮官であった。
「うむ。まあ……綾波は色々とこぼれそうな格好をしておるしの」
「長門の言えたことですか。そんなネグリジェみたいな格好で外を出歩いているくせに」
「なんじゃと。これは重桜に伝わる由緒正しき装束なのじゃ! 決して変な、えっちい服ではない!」
「でも、長門は指揮官の前でお尻見せてるでしょ」
「にゃ! にゃにゃ……にゃんのこと……」
「動揺して口調が崩れてますよ」
「ええい! 綾波とて指揮官の前で、無意味によくかがんでおるではないか! そんなに見せつけたいか!」
「うぐ! いや、それはですね。指揮官の目線を誘導するのが楽しいと言うか……」
「そんなに興奮しない。……みんな、やってる」
「うむ……それだとラフィー。ぬしもやっておるということか? 普通にだらしないだけかと思っておった」
「……他の人の前ではちゃんとして。見せてない」
「ねえねえ、エルドリッジちゃん。指揮官とのキス、どうだった? 甘かった? レモンの味、した?」
「……よくわからない。でも、もっとしたい」
「ユニコーンもしたいなあ。一緒にお風呂、入りたいなあ」
とりとめのない話が続いて、夜は指揮官のところに押しかけた。