ロリ艦隊と異世界転生司令官   作:Red_stone

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第14話 騎士団との接触

 

 

 艦船は昨日の激戦を微塵も感じさせないほどはつらつとしていて、服も旅路の最中と思えないほどに奇麗にしてある。

 もちろん艦船であるための恩恵だ。

 多少と言うに奇抜に過ぎて、さらに子供のするべき格好でもなかったが。

 

 一方、避難民……こちらはもう心身のショックも合わせて旅をできるような状況とはとても思えない。

 そのまま家を焼け出された後に行く先のない放浪者だ。

 

 そして、冒険者の残された二名。姿こそ魔法の付与された服のおかげで小ぎれいなものだが、目は避難民同様に死んでいる。

 仲間が死んだのだ、その事実を受け止めきれてない上に、二人では冒険者を続けるのも難しいだろう。

 もはや、ここから何かをしようと言う気も起こらない。

 

「……まず、ここから動かすこと自体が難しいか」

 

 指揮官は当の避難民には聞かせられないことを考える。

 まず、一つ目の選択肢としてはここで見捨てるということだ。むしろ、一番妥当な方策だろう。ここで死ぬのが望みなら、自由にさせてやればいい。

 けれど……この場合、艦船が嫌がるだろう。否とは言わずとも、思うことはあるはずだ。あくまで指揮官の目は6人にしか向いていないから、ここに留まることが下策でもこれは選べない。

 本来なら、十二神将を野放しにできないから、この選択肢以外はあり得ないのだが……

 

 逆に、二つ目の選択肢は、ここで生活基盤を整えること。

 しかし……まあ、こちらもありえないだろう。やはり十二神将を野放しにできない。この世界の人類とコンタクトを取ることは最低条件だ。

 十二神将の目的は人類殲滅と言っていた。指揮官が考えているように全てがセイレーンの実験だったとしても、やはりここで動かないのはないだろう。

 というか、もし残って避難民のために生活基盤を整えたとしても、完全に無駄だ。艦船にとってはそんなものなくても問題ないし、セイレーンもそれの向上には興味がないだろう。

 

 ゆえに、選ぶのは三つ目。

 恰好だけでいいから一つ目を行い、実際にやるのは二つ目だ。現地人類との接触時に言及しておけばそれでいいだろう。

 指揮官は見た目だけ取り繕う悪癖があった。

 

「……まともな勢力があれば、ここに調査隊を派遣するはずだな。ユニコーン、艦載機を飛ばして調べてくれ」

 

 つまり、何かしらここに向かっているはずとの予想を頼みにして、そこと接触する。

 一つの街が氷漬けになり、そして山が削り飛ばされた。

 これで何かしらの調査隊を送らなければ、上に立つ者としては無能だろう。十二神将の襲撃がもしあって、それの対応に追われていたとしても――ここは異常だ。

 十二神将規模の破壊が二度もある。一度は良いとしても、二度は異常だ。

 

「……あ! 見つけたよ、お兄ちゃん。ユニコーン、えらい?」

 

 嬉しそうに聞いてくる。

 データはダウンロードしたから位置は分かる。艦船はこういう時便利だ。口で言うか、何かに書くかしかない人間とは違って正確で早い。

 

「ああ、偉い偉い」

 

 頭をなでてやる。

 ユニコーンは嬉しそうにしながらも。

 

「ご褒美はキスが良かったな」

 

 と呟いた。

 

「何か言った?」

 

「ううん、なんでもないよ、お兄ちゃん。それよりも、どうするの? けっこう高度取ってるから、気付かれてないみたいだよ」

 

「そうか。……なら、警戒させることもないな。艦載機はそのまま上空で周回。皆で会いに行こう」

 

 ここで布石をしっかり置いて行く限り、やはり指揮官は指揮官だった。

 人間不信は人間の時から治っていない、というより……まだ残る人間性がそれなのだから笑えない。

 

「……了解」

 

「うむ。……エルドリッジ? さすがに指揮官と手を繋いでくれるなよ」

 

「……え?」

 

「エルドリッジちゃん、さすがに相手の人もいるから。……ね?」

 

「じゃあ、途中まで」

 

「うん、途中までなら問題ない」

 

 さらっとラフィーまで参加し手をつなぐ。

 

「……まあ、いいが。とりあえず見える距離になったら離してくれよ」

 

 緊張感に欠けるメンバーだった。

 

 

 そして、艤装を付けたまま交渉へと望む。

 

「止まれ!」

 

 魔法で拡声するまでもない大声が届いた。

 それを威厳と言うには十分だろう。怒鳴られて委縮するのは、誰でも経験したことがあるものだ。

 もっとも、艦船にとっては恐れることなど何もない。物理法則から外れるレベルの大声だが、そもそもここは異世界だ。不思議はない。

 

「……ふむ」

 

 怖くはないが……逆に、艦船でも拡声器機能までは持っていない。

 向こうに無線を受け取れる設備でもあれば楽だが、そんなものは持っていなかった。おそらく、魔法的な手段で解決しているはずだ。

 テクノロジーとしての体系が違うから、互換性も何もあったものじゃない。

 

「聞こえ――ないだろうな。少し、参るな。……大声を出すのは趣味ではないのだが」

 

 一応、止まる。

 横に並ばせたこの子達の砲身も空に上げさせる。いわば万歳の格好だが、動いた瞬間撃てるのはまったく降伏なんてしていない。

 

「ーー」

 

 次の言葉が降ってこない。

 どうやら、大人しく命令を聞いたのは向こうにとっても予想外らしい。

 槍を向けて、ビクビクと警戒していたから。まあ、氷竜を相手にこんなことをすれば漏れなく氷漬けになるだけだから仕方ない。

 それでも上に命じられればやらなくてはならない下っ端の悲哀か。

 ざわざわと声が聞こえてくる。もちろん艦船であるからには声も拾えるが……聞く価値もない。

 しょせんは戸惑いと疑いの声だ。

 

「……まあ、待ってようか。すぐに雑談も終わるだろう」

 

「指揮官、普通に話していると言うことは、逆に向こうは集音マイクの様な装備を想定してもいないと言うことでしょうか?」

 

「綾波、大分俺の思考を読めるようになってきたね。まあ、その通り。けれど、それだけでないね。拡大して観察してみな、あの上官さんをね」

 

「……あ、何か付けてます」

 

「集音マイクはなくともヘッドホンはあるようだ。けれど、電波ではない……おそらく魔法で代用しているのだろうね。魔法によって発達したテクノロジー、興味がなくもないが」

 

 ちなみに、指揮官は集音マイクがないのは魔法的なテクノロジーの欠陥と見抜いている。

 要するにノイズキャンセリングができないのだ。いくら耳を強化しても雑音に紛れてしまう。

 音紋まで照合できる艦船とは違う。

 

「そうですか? でも、技術者さんがいないと解析も複製も不可能でしょう。もらっても意味がないと思いますけど」

 

「帰る手段も見つけていないしね。ま、こいつは個人的な興味だ。ほら……向こうは話が終わったようだ」

 

 先ほどの男が10歩ほど前に出てきた。

 

「我らはレマルギア教国の第17騎士団『シュテル』である! 貴公らの所属を明かされたし!」

 

 なるほど、名乗れと言うことか。そう納得して。

 相手の期待を裏切ることを決めた。

 

「我らはアズールレーン所属、第一艦隊純白の雪姫(スノウ・ホワイト)。レマルギア教国との交渉を求める」

 

 自分たちがこの世界の勢力ではないことは分かりきっている。

 それでもなお、この所属を明らかにすると言うことは……はっきり言って敵対宣言。言葉を飾れば、中立国家としての対応を求めると言うことだ。

 そも、中立とは全ての敵に他ならない。

 

 けれど、国家に縛られたくなければ架空でも何でも所属を作ってしまうのが早い。7人と言う大所帯だから、第三者以外の選択肢がないのだ。

 そこに組してしまえば最後、国家の論理に囚われて抜け出せなくなる。

 ”中から変える”がお花畑の戯言なのは、子供でも知っている。従いたくなければ、入らない以外の選択肢がない。

 

「……」

 

 そして、相手は固まった。

 当然だ。アズールレーンなんて知らない。人間、知らないものを理解するのには時間がかかる。

 例え、単純に本当に知らないだけでも、知らないことを理解するためには時間が必要なのが大人と言うものだ。

 

「さて、声を張り上げるのも少々辛い。そちらに行っても良いかね? それとも、そちらが来るか……私としてはどちらでもかまわんがね」

 

 そこから畳みかける。

 どうせ、譲る気など僅かたりともないのだから。

 

「……ッ! 良いだろう、近くまで来るといい」

 

「礼を言う」

 

 3mほどの位置まで近づいた。

 

「……貴様らの所属は、その……アズールレーン、とやらで間違いがないのか?」

 

「ああ、間違いないな」

 

 さらりと言う指揮官に、相手は目を白黒させていた。

 こいつ、もの狂いかとも思うが……連れている相手が滅茶苦茶だ。

 今すぐ保護が必要な年齢の少女に過激な服を着せて愉しむ変態というのが第一感想だが、少女たちの殺気が尋常ではない。

 しかも、背負っているのは魔道具か何かだ。

 

 魔法だろうが科学だろうが、究極に至れば同じという言葉があるように、それは一目でわかる魔法の武器と化していた。

 当然だろう、それは現代技術と言うよりセイレーンの技術なのだから。

 

「……そこの、娘たちは」

 

「部下だな。特別な関係でもある。勘違いするなよ? 第1と名前の付く通り、我が艦隊はアズールレーンの中でも特殊だ。そもそも3つの陣営が入り混じった艦隊など普通はありえない。4つか2つはあったとしても、3だけはない」

 

 全てははったり。というか、そもそも指揮官はアズールレーンの……アズールレーン世界の仕組みを知らない。

 第1もただのゲームの話で、そこに特に意味はなかった。ねつ造である。

 

「特殊……?」

 

「とはいえ、あなた方もアズールレーンについては知らないようだな。まあ、しょうがない……こちらも、そちらのことは把握していなかったしな」

 

「どういう……ことだ……?」

 

 彼は混乱しすぎで敬語を取り繕うことも忘れているようだ。

 

「この大陸のことは知らなかったと言っているのだよ。正しくは、こんな欧州の辺境になど……ということになるがね」

 

 どうせ交渉で勝てるわけがないのなら、全てを煙に巻く。

 指揮官は己の交渉力に変な期待は一切抱いていない。そして、相手の善意にも欠片も期待していない。

 ならば、やりやすくするために事実と、そしていくらかのねつ造を混ぜて……徹底して情報過多で叩き潰して説明はしない。

 

 喉から手が欲しいほど求めている情報さえ、ユニコーンに無理をさせて艦載機を飛ばせばどうとでもなる。

 艦載機は落とされても資源を喰うだけだ。その資源ですら自然回復していくのだから、本当に国からの支援は不要である。

 

「……な! なにを!」

 

 馬鹿にされたと思って激昂しかける。まあ、辺境にいい意味などない。

 けれど、ガシャリと砲塔を鳴らされては正気に返るほかない。

 少女たちの冷たい目線はずっと変わらない。同盟国でない軍隊に向ける視線などこんなものだ。

 本人たちにとっては、指揮官と敵対していないのだから殺気も向けていない。……今は、まだ。

 

「ここには、死氷降世(ニヴルヘイム)が来ていたはずだ。奴をどうした?」

 

「知らないのか?」

 

 はん、と嗤う。もはや挑発のレベルである。

 指揮官にとってもこの交渉は難しい。落としどころすら見えていない。

 とはいえ、爆発させてイニシアチブを取ろうと言うわけでもない。単純に引けないラインから一切引く気がないだけである。

 妥協も譲歩もする気がないことをこれ以上ないほどに分かりやすく示している。

 

「どうしたと聞いている!?」

 

「どうしても俺の口から言わせたいのか? 別にそんなものはどうでもよいのだが……で、撃退したが、それがどうかしたか。確かに君たちの戦力では囮にすらならんだろうがな」

 

 これは事実だ。

 そもそもが時速30kmでしか移動できない騎士団が、1000人集まったところで脅威にはなりえない。

 それくらいの身体能力なら冥府門番(ヘカトンケイル)ですら持っていた。

 もちろん、前世に照らし合わせればフルプレートの行軍が時速30kmなどありえないし、なんならマラソンですらあり得ないのだが。

 

「……っ!」

 

 彼はなめられたと思ったのか、顔を真っ赤にする。

 一瞬、目を逸らす。指揮官たちの強大さ、山の消滅と現実的なことを考えているのかもしれないが……

 

「総員抜刀! 我らを愚弄するのなら、命が代価であると知れ」

 

 引けない一線は向こうにもある。

 相手がただ愚かだから間違ったことをするなどと、それは楽な結論だが現実にはありえない。

 我も人、彼も人なのだから……考えた末の結論で、論理もあれば事情もある。

 他人事だから、事情なんて知ったことではないから、”それは間違っている”で済ませてしまえる。

 

「……まさか。事実だろう」

 

 つまり、分かっていても”退けない”。

 面子と言うのはどこまでも重い。なぜなら、舐められてしまえばそれで終わりだ。ずっと舐められ続ける。

 どこかでガツンとやる必要があるのだが、しかし、それは第三者に言わせると「感情で動いて馬鹿だなあ」となってしまう。

 

「この無礼者どもをひっとらえよ!」

 

 だから、彼は絶望的な戦いに身を投じる。

 部下を引き連れ、地獄へと真っ逆さまに落ちていく。

 

「総員、艤装解除。遊んでやれ」

 

 そして、指揮官は逆の命令を出すのだった。

 

 

 

 

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