ロリ艦隊と異世界転生司令官   作:Red_stone

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第18話 魔族

 

 

 そして、陸が見える。人間では大航海でも、艦船にとってはピクニックだ。かくて三時間のピクニックは平和に終わった。

 

「結局、罠も何もなかったが……」

 

「必要ないということみたいなのです……!」

 

 綾波が剣を構える。

 

「そのようだ」

 

 レーダーに反応。魔族が来る。

 

「……ここは魔族の領土。何用で参られた?」

 

 こちらに合わせたのか、数はちょうど7。

 一目見てわかる、人間ではないと。

 羊の角をはやした女の子、鬼の角をはやし蝙蝠の翼を広げた男、炎を纏いまるで火の精であるかのように誇らしげに火の粉を振りまく男と……一目見ただけでそれだ。

 

 艦船は艦船で、装備でごまかせそうな綾波はともかく、長門は明らかに狐耳を生やしている。人間か魔族と言えば魔族寄りの見た目だろう。

 あいにくと鉄血はいないが、重桜と鉄血の連合=レッドアクシズではセイレーンの技術を積極的に取り入れたことによる身体変化が起きている。

 つまりは狐の耳であり、綾波の機械的な耳だ。

 

「交渉をしたい。こちらはアズールレーン所属、第一艦隊純白の白雪(スノウ・ホワイト)だ」

 

「……アズールレーン、だと?」

 

 話すのは蝙蝠の羽の男。

 蝙蝠といえば吸血鬼を思い出すが、鬼の角と日光に身体を晒していることを思えば、違うのか。

 とはいえ、元の世界の伝承に魔族が倣う義理もない。それに思考を引っ張られてはやがてとんでもない勘違いをすることになるだろう。

 

「そうだ。何か思うところでもあるのかね? 魔族」

 

 指揮官は彼らがアズールレーンを知らないことを当然だと思いながらも、態度には出さない。

 まるで名の知れた勢力のように堂々としている。

 

「聞いたことがないな。人間の組織か? ……しかし、そこに居るのは人間と……魔族、か? 見たこともないが……魔族か?」

 

「残念ながら、こちらは魔族でも人間でもないさ。試してみるか?」

 

 指揮官がこれ見よがしに殺気を送る。

 配下の子は構えはしない。リラックスしているように見えても、敵対勢力との交渉時に気をぬくような間抜けはいない。

 そして、艦船の身体能力があれば砲塔を上から下に戻すことに一瞬すらも不要。すでに戦闘態勢だ。

 

「……やめておこう。人間どもはどうか知らんが、こちらではミーレス山脈での戦闘を観測していた。山一つを吹き飛ばすような化け物とは戦えん」

 

「話が早くて助かるよ」

 

 半分、侮辱のようなものだが……指揮官は気にしない。

 そして、艦船も指揮官の影響を受けている。一番大事なもの以外はどうでもいい、と世の中とのかかわりを避けている。

 当然、艦船たちも指揮官以外に何を言われようとも、そこまで気にしない。

 大体、指揮官が艦船を自認している以上、艦船の花嫁は艦船であるべきだろう。魔族だの人間だのは、勝手にやっていればいいのだ。

 自分たちは艦船、異種族なのだから。

 

「ーーついてこい。魔王様のもとへ案内する」

 

「いいだろう」

 

 指揮官はちらりと一番背の低い影を見る。

 羊の角を付けた女の子だ。

 羊の頭蓋骨を乗せた杖を大事そうに抱えて、蔓をまとった豊満な女性の影に隠れている。

 見れば羊の角の少女はオッドアイで、手足も羊の毛皮に包まれている。いや、あれは手袋の類なのだろうか……?

 

「……指揮官、集中してください」

 

 綾波に手をつねられてしまった。

 

「了解だ」

 

 指揮官は苦笑した。

 

 

 そして、魔王の城へ。

 これが物語であれば、アイテムを探し、四天王を打ち倒し……冒険の果てにたどり着くべきものだが。

 現実ではこうして、あっさりと魔王のもとまでたどり着く。

 なぜなら、現実だからだ。

 普通に考えて、四天王を倒されれば国家が傾くレベルの損害であろう。そんなものがいるかは差し置いて、迎えに来た7人はかなりの実力者であるから軽々と失えない。

 あのクラーケンごときは一蹴できるだけの実力はある。指揮官があっさりひねった騎士団のリーダーも瞬殺できる。

 それでも……”山”を攻撃目標として文字通りに吹き飛ばせる連中とは争えない。

 

 そして、至極あっさりとたどり着いた魔王城は、踏破した道に似つかわずやはり荘厳であった。

 

「……上等な家だな」

 

 立ち込める瘴気。

 そして……歪んだ角が至る所から生えている。

 どこからどう見ても、禍々しい存在が住むにふさわしい悼ましい城だ。

 まあ、指揮官としてはこんな家には住みたくないという感想だが、しかし威厳を示すという点についてはこれ以上はないだろう。

 

「皮肉か?」

 

 すかさず返事が返ってきた。

 どういうものを想像しているのだろう。確かにアニメで出てきた重桜の島は荘厳だったが、それこそあれは象徴だ。

 さらに、魔王城の禍々しさと重桜の神聖さでは比べようがない。どちらも素晴らしいとしか言いようがなく、甲乙をつけるとすれば好みの問題でしかないだろう。

 そして、指揮官は好みで甲乙をつける気がなかった。

 

「まさか、本当にそう思っているよ」

 

「……魔王様のもとへ案内する」

 

 納得はいかなそうだが、己の職務は果たしてくれるようだ。

 開けた場所を四度潜り抜けて、奥へ。

 

「招待に答えてくれて感謝しよう、異世界の者よ」

 

「こちらこそ、お招きいただき感謝する。現地政府の主にして、魔族の代表者様」

 

 夜闇を凝縮したかのような黒いマント。勝気な笑み、口元には牙がちらりと見える。血のように真っ赤な瞳。

 そして、身体には不釣り合いなマイクロビキニのような服で己が身体を惜しげもなくさらしている。

 何よりも、特徴は……小さいこと。

 

「ちっさ……ロリっ子?」

 

 ラフィーが呟いた。

 

「なんじゃとぅ! 妾は魔族を支配する魔王にして余闇の支配者、闇より暗き暗黒(ロード・オブ・ダークネス)のメリオル・フォン・フィオイルじゃ! 貴様こそちんまいガキんちょではないか!?」

 

 ガーっとまくしたてる。

 なんだか、そう……とても可愛らしい。とはいえ、発散する魔力はギャグでは済まない。

 彼女ならば、指揮官たちと同じく地形を変えることができるだろう。

 

「ラフィー、ガキんちょ違う。ガキと言ったほうが……ガキ。やーい、こども」

 

「こ……このぅ! 表へ出ろ! けちょんけちょんにしてくれるわ!」

 

「ふわ……眠いからまた後で。長門、キャラ被りの危機。やっちゃえ」

 

「……何をやっちゃえというのだ、ラフィーよ。余には訳がわからぬのじゃが」

 

「く……ここにも……敵が……!」

 

 なにやらすぐに仲良くなったらしい。

 まあ、歳も歳で、しかも頭が凝り固まった老人より歳が近い女の子のほうが良いらしい。

 もっとも、ここにいるのは全員が年齢不詳だが。

 

「おい……何歳だ?」

 

 指揮官は横の男に問いかけた。

 

「女性の年齢を私の口から教えられるわけがないだろう」

 

「なるほど。……それも道理だな」

 

 きゃっきゃと騒ぐ女の子たちをしばし眺めた。

 

「さて。では、こちらはこちらで話をしましょう」

 

 横の男がそのまま本題に入る。

 どう考えても初めからそのつもりだったようにしか見えない。

 

 そして、指揮官は根拠もなく確信する。

 魔王のアレも演技……まあ、わざと素を見せている可能性もあるが。しかし、計算内であることは疑いようがない。

 子供のような姿をしているから、子供に対するようなアプローチをとったのか。

 子供相手にどう反応するかを見極めるのは悪くない手段だ。どうせ、そのまま戦闘に移行したところで当の子供……魔王も参加する。

 総戦力で挑まなければ、順当に全滅して終わるだけだ。

 

「……で、これは君たちの予想の中でもベストに近いものかな?」

 

「まさか、ただの勘違いであればどんなに良かったでしょう」

 

 指揮官と男は横で内緒話をする。

 ここで世界の行く末が決まってしまうというのに、世間話のような気楽さだ。

 

「くく。中々言うね。面白い」

 

「人間との戦争中に十二神将、そしてアズールレーン……頭を抱えたいのはこちらの方なのだが」

 

「それを相手に言うのもどうかと思うがね」

 

「しかし、状況から言って、十二神将と貴様らとで関係があることは確かだろう」

 

「さて、そこらへんはこちらにも分からんね。当然、アズールレーンにも敵がいるわけだが、それはあいつらではないよ。関係があるかは知らない」

 

「知らない、で済むものかよ。貴様らのような者はこれまで観測できていない。つまり、この世界のどこかから流れ着いたものに決まっている。……どうか帰ってくれ。秩序を乱すな、世界を砕くな。お前たちが本気を出されると我らも、人も、生きてはいけない」

 

 血を吐くような言葉だった。けれど。

 

「悪いが、帰還手段は俺も知らない」

 

 指揮官はにべもなかった。

 

「ま、落ち着けよ。どうせ十二神族の襲撃はすでに受けたんだろう? それを撃退するということがどういうことか。……たかだか山を吹き飛ばしたのを映像で見たくらいじゃ実感できるわけもない」

 

「……その通り。我らは十二神族の襲撃を受け、多くの犠牲を出した。だがな、奴は! あの最悪な最凶は! 人類抹殺と言った! 下等な人間を滅ぼすのならそうすればいい! だが、我らまで巻き込むな……!」

 

 許されるのであれば壁に手でも打ち付けて、蜘蛛の巣状のヒビでも作りそうだ。

 

「いや。あいつら、君たちもまとめて人類と言っていると思うけど」

 

「……は?」

 

 完全に虚を突かれた男の顔は見ものだ。

 指揮官は男に興味などみじんもないが、イケメンが口をぽかんと開けている様は男が見ても楽しめる。

 まったく、美人は得だと言うのはどうやら男でも通用するらしい。

 

「襲撃を受けたのならそういうことだろう。少なくとも、一度襲撃があったのなら、このまま見逃すという選択肢はないと思うね。大体、人類だの魔族だのは分け方の問題だろう。興味がない者にとっては人類で一括りにしてしまえる」

 

「貴様も……我らを愚弄するか」

 

「いや、単に現状の分析だよ。不快に思うのなら、俺自身は魔族と人類を一緒くたにして扱わないことを約束しよう。とはいえ、十二神将にそれを言っても無駄だと思うがね。常識的に考えて、な」

 

「……」

 

 まだ不愉快なのか睨みつけてくるが、指揮官は気にしない。

 

「で、どうする?」

 

「どうする、とは……」

 

「我々第一艦隊の処遇だよ。君たちは留め置きたいのか、それとも出て行ってほしいのか。……どちらかな? こちらも十二神将の本拠地がわかっていない以上は、どちらも代わらないのでね。希望を聞こう」

 

「留め置きたい……と結論はすでに出ている」

 

「なるほど。では、暫しの間だけ滞在させてもらうとしようか。……なんだかんだ、彼女たちも楽しそうだな」

 

「ええ……魔王様は魅了の魔力も持っておられる。半端では立つこともできず跪くのみ、友達など居られなかった」

 

「はは。なら、丁度いいか。多少は人間の子と触れ合ったとはいえ、基本俺たちは同族以外と触れ合うことがないからな。……良い機会だろう」

 

「住む場所はいくつか用意した。……好きに選べ」

 

「後であの子たちと選ばせてもらおうよ。……まあ、しかしアレだな」

 

「なんだ?」

 

「人間は君たちのことを蛮族蛮族と呼んでいたが、君たちのよほど紳士だと思ってね」

 

「当然だ。そもそも攻めてきたのは人間どもだ。我々は防衛しているだけ、侵略さえやめれば争わずに済むというのにな」

 

 憎々しげにそう言い放った。

 指揮官はただ苦笑するだけだ。あの子たち以外など何も信じない指揮官は分かっている。正義が好きなら、それこそ人の業だの原罪だのと言うだろうが……

 どう感じるかなど、政治モデルの違いと環境のせいでしかない。

 国民を見て指導者がどうのこうのと格付けをするのは失笑してしまう。良い指導者が国を富ませるなんて、政治に興味ない者のたわごとだ。

 指導者も、国民も、環境も、全て揃ってこそ富むものだ。要は総合力、どれかが悪いだなんて悪口大会を開いてもしょうがない。

 

 鑑みるに、魔族が平和に感じるのは、出生率が低くて戦死が経済に与えるダメージが大きすぎるだけだ。

 魔王城なんて気取っても、近くに人影も居ない場所に魔王がいるのは、人が多い場所なんてそもそもないからだ。

 おそらく、魔族の人口が人類の人口の0.1%を上回ることはないだろう。 

 逆に人類は人口が増えすぎて、土地が足りなくなっている。

 

 細かいことを完全に無視した上で地球の国家モデルと比較すれば、指揮官にとってはこれくらいの予想は容易いことだった。

 ここが悪い、それだけを言いたいだけなら簡単だ。指揮官は改善の腹案など一切考えずに好き放題に言っている。

 

 彼はただ、遊び戯れる彼女たちを見て目を細めるだけだ。

 

 





魔族編でした。
魔族が指揮官たちを受け入れたのは懐が広いなどと言うことではなく、化け物を隔離して放置すると言う選択肢が取れると言うだけです。
人間の場合、殺せる保証があるか、どこぞの勇者みたく奴隷同然に扱えるかでないと殺す選択肢以外なくなるためああなりました。
魔族の方が未来がありそうに見えますが、国家としては発展の代償でお決まりの人口縮小でお先真っ暗と言う事実。

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