ロリ艦隊と異世界転生司令官   作:Red_stone

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第19話 住処

 

 そして、海のほとりへ。

 魔王は重桜を思わせる立派な屋敷をまるごとくれた。えらく剛毅なことだが、豪邸ならいくらでも余っているらしい。

 もともと強力な魔法の力により建設が容易なうえに、人口が少なく……人類との争いによっても数が減る。

 家は増えることはあっても、あまり減らない。まあ、人類の拠点にされたときは丸ごと爆破するようだが。

 

「……いい家だ。これで俺も、一国一城の主となれたのかね」

 

 そこは海のペンション、といった風情だ。

 重桜の荘厳なる地に比べれば安っぽいが、しかし7人には広すぎるし、豪華すぎる。

 部屋の総数は20を下らない。

 子供なら屋内で追いかけっこを楽しめそうだ。

 

「わー。ここに泊まるんだ、すごいね。お兄ちゃん」

 

「おー」

 

 そして、えらく興奮しているお子様が二人。

 普段はやる気がないか、指揮官にひっついているエルドリッジもこの時ばかりは目を輝かせている。

 

「わ、エルドリッジちゃん駆け出してっちゃだめだよ。あの、お兄ちゃん、探検してもいい?」

 

 ユニコーンは内気で臆病なだけで、行動は普段から子供そのものである。遊びたそうにうずうずしているのも、よく見る光景だ。

 案内役はすでに帰して、ここにいるのは身内だけ。

 今にも走り出しそうだ。

 

「どうぞ。長門、見ててあげてくれる?」

 

 ユニコーンはどうぞ、と言った瞬間に駆けだしていった。

 とてとてと走って、スカートが翻るのにもかまった様子はない。残念ながら、ユニコーンのは他と比べると長いから、中身は見えなかった。

 

「う、うむ。この長門に任せるがよい」

 

 探検したくてそわそわしていていた長門は、こちらは少し早足にとどめている。

 長門に至っては駆け足した瞬間に見えそうな服装だ。そして、今もちらちらと見えている。その丈はミニスカートどころではない。

 

「これ、エルドリッジ、ユニコーン。淑女が家の中で走るでないーー」

 

 長門の来ているものこそ、おおよそ淑女と呼べる代物でもない気がするが。

 二人はちょっと行った先で長門を待っている。手をつないで、また駆けだした。

 長門は目を白黒させている。

 ……かわらしいものだ、と指揮官は思う。ただ、少し精神的に疲れていてはしゃぐ気にもならなかったが。

 

「……指揮官、ゲームください」

 

「ラフィーも」

 

 こちらはなんというか、今風なのかもしれない。

 苦笑して、ゲームを放る。

 

「エレバス、少し付き合ってくれる?」

 

 指揮官は母港機能の裏技を発見していた。

 秘伝冷却水は基本、水として出てくるが……日本酒としても”出せる”。

 そして、艦船はまあーー見た目を人間の年齢に換算するのも合わないだろう。アルコールの分解能力という点で言えば、基礎能力が違う。

 

「いえ、待って指揮官。こういうところには……」

 

 台所のほうへ行く。

 

「ほら、やっぱり用意してくれていたわ。ちょっとしたおつまみも作ってあげる」

 

 エールに果実酒と、色々あり氷まで準備されていた。それらを持ってきたエレバスはまた台所に引っ込んでいく。

 とんとん、と包丁の音が聞こえてきた。

 

「ゲームはやめです。綾波も呑みます」

 

「ラフィーも」

 

 二人も乗ってきた。

 

「……もう少しゲームをしてていいよ。俺はエレバスを待つつもりだから」

 

 指揮官は頬杖を付く。

 なにか、家庭的な雰囲気だ。まるで人間の家庭、部屋の外で遊ぶ小さい子に、大きい子はゲーム。妻は料理を作っている、だなんて。

 なにかおかしくなって笑えて来る。

 

「了解なのです。では、ラフィー、ささっと勝負するのです」

 

「望むところ。ぎったんぎったんにしてあげる」

 

「こちらのセリフなのです。いざ」

 

「いざ」

 

 こちらの二人は真剣にゲーム機に向かい始めた。

 

「……中々、良い雰囲気だ」

 

 あたりを見渡す。木の板張りに、畳敷き。

 純和風で、なおかつ風の通り道を計算しているから、障子をあけ放てば全ての部屋を見渡せる。

 ユニコーンとエルドリッジが気軽に開けていって戻さないから、ここに居ても見渡せる。声も聞こえる。

 どうやら、楽しんでいるようだ。

 

「……」

 

 長門が目で、どうしよう? と訴えかけてきた。

 とりあえず、頷いて返しておいた。

 なにを意味するかは指揮官も知らない。

 

「……ええと。まあ、このままでよいか」

 

 耳を澄ますと呟きがここまで聞こえてきた。

 大声を出すのも面倒だから適当に返したが、障子を戻すのはしないことにしたらしい。

 

「本当に、良い雰囲気だ」

 

 ふ、と笑う。

 そして、呟く。

 

「盗聴なし、監視もなし。さて、信用しているという線はない。人手が足らないのかな? それとも、まさかここを選ぶとは思わなかったのか」

 

 向こうは艦船など知らない。

 すぐに海を見れる、というより防衛を普通は意識するだろう。バカンスではないのだ。

 見晴らしの良い場所は狙撃されるから、避けるのが当然のはずだった。

 

 もっとも、この第1艦隊に限れば防衛なんてないも同じ。

 地形? そんなものは変えてしまえばいい。そして、10mやそこらの単位で戦争をしていない。

 言ってしまえば、どこでも同じことなのだ。見るからに要塞じみた場所が二つほどあったが、どちらかを選ばせたかったのか。

 しかし、指揮官は桜重に近いここを選んだ。

 

「良い感じだ、魔族と協力関係を結ぶのは悪くない。人間相手だと、アレを見た後ではどうもな」

 

 彼も人、我も人。指揮官はあいにく人間ではなくなったが、感情があり、意思を持つという点では同じ生き物。

 ゆえに自分以外の誰かはそれぞれ自分のための目的を持っていて、それぞれ自らの欲望を達成するために動く。

 だから、尊重してーー妥協するのだ。そして、取り分を多くするために策を張り巡らせる。

 一人だけでできることなど何もないから。

 誰もが、誰かのためでなく自分のために生きている。

 

 一方で。自分が正しいと信じて、それは良いことだからと突き進めと恥ずかしげもなく言う輩を、指揮官は唾棄している。嫌っている。

 自分の教義は正しい、ゆえに従えと言う信仰に生きる者。

 それが社会のためだと言い、正しさを押し付けて反論を封じる者。

 --勝手に自分だけで死んでしまえと、指揮官はいつも思っている。

 

「あの様子では、人類は大変だな」

 

 だから、人類の未来は暗い。実を言うと人口過小な魔族も明るい未来は見えないのだが。

 国家は民衆を制圧できるだけの武力を背景にして支配する。そういう意味では、日本ですら警察と自衛隊がある。

 けれど、十二神将により社会不安が高まっている状況だ。

 これでまともな政治などできるわけがない。強力すぎる外敵が居る状況での統治など、無理難題に他ならない。

 

「……反乱が、起きますか?」

 

「おや、言葉に出したつもりはなかったんだけど」

 

「今回は十二神将による襲撃でしたが、例えば自然災害で多数の難民が発生した場合に何が起こったかを綾波は知ってます。暴動、テロル……社会不安が起きた際は地獄になります。弱いものが犠牲になる、なんて言い方がよくされますけど――実際は上も下もひっくり返したような大騒ぎ。みんな、顔を蒼くしながら必死に何とかしようとあがくのです」

 

「そうだね。けれど差別に虐殺、そういったマイナスは言葉では止まらない……助けるだけの資源がなければ、どうしようもない。社会不安を鎮めるのはありがたいお言葉ではなく、住居と飯でしかないのだから」

 

 良い支配者とは? それは、はるか昔から議論されてきたテーマだ。

 情に流されて難民に無制限の支援を行い、国庫をすり減らす者に国を司る資格はない。

 だが、痩せ細った哀れな難民に助けを求められ、それでもその手を払う非情の王に民はついてこない。

 結論、その状況に置かれた時点で何を選んでも不正解だ。正解があるとするならば、そもそも難民を生むような災害も紛争もなければよかったと、支配者に関係ない運の話だ。

 そして。

 

「ユニコーンの艦載機で見た。大規模プランテーションがない……食料生産のレベルは中世とは言わずとも、現代レベルには届いていないだろう。ばかすか捨てても、なお余った元の世界とは違う」

 

 そう、災害救助のハードルは元の世界と比べると遥かに高い。極論、食料が10のうち1が届いて、あとの9が腐って捨てても別に現代でならば問題はなかった。

 食べ物を粗末にするなと怒られるかもしれないが、それだけだ。

 ――けれど一方、この世界では9を捨てたらその分餓死者が出る。それは余って捨てた分ではなく、誰かの口に入るはずのものだったのだから。

 

「食べ物がないから、争うですか。……悲しいですね」

 

 そして、その食べ物の余裕は更になくなる。

 十二神将の襲撃によって焼かれるだけではない、その混乱により受ける農業と運輸へのダメージにより人類の余裕はさらに削られていく。

 先の例では、運べずに腐らせてしまうものが出てくる。

 

「でも、仕方ない。艦船は戦うだけ。……政治を行うのは、艦船じゃない」

 

 二人とも、少し暗くなった。

 どうしようもないことだ。力だけでは解決できない問題など、いくらでもある。

 現代知識を持っていれば皆を幸せにできる。寝言だ、そもそも、その”皆”とは一体誰だ? それを答えられない限り、世界を巣食うのは遠い夢だろう。

 

「現代の法律を導入しても、軋轢を生むだけだ。ーーとはいえ、何もできないわけではないが、な」

 

 そして、こっちがよいと思い付きを披露して、それが大当たりして皆が救われるのはフィクションの中の出来事だ。

 思い付きでできることなど、誰かが当の昔にやっている。科学知識がなくても、試して試行すれば量産できる。

 思い付きでできないことといえば、それこそ……悪そうな貴族をぶっ殺すくらいのものだろう。それも、やりすぎれば政治ができる人間が居なくなって貧乏真っ逆さまはアフリカの国々が自ら証明した。

 

「本当ですか?」

 

「まあ、一助くらいにはなるさ」

 

 視線を切った。話は終わりという合図。

 

「……できたわ。拙いものだけど」

 

 エレバスが料理を持ってきた。

 刺身に、吸い物。そしてサラダ。とはいえ、見るからに素人料理である。刺身はぶつきりで大きさが不ぞろい、サラダも洗ってちぎって盛っただけだ。

 

「へえ」

 

「あまり見ないで。本当に上手くないから、恥ずかしいの」

 

 顔を真っ赤にして、そっぽを向いた。

 

「まさか。とても嬉しいよ」

 

 指揮官は刺身をとる。

 

「うん。……すごくおいしい」

 

 とても機嫌が良さげだ。

 基本的に彼らは指揮官の母港機能で供給される食料で当座をしのいできた。それは美味であったが、それだけだ。

 なにより、見た目麗しい少女の手料理ならば、それだけで値千金だろう。

 

「それは……ええ、ただ切っただけだもの。味は変わらないわ」

 

 エレバスは顔を真っ赤にしている。

 だが、指揮官が無邪気に喜んでいるのが嬉しいのだろう。頬に浮かぶ笑みを隠しきれていない。

 

「俺はどこかのコックが作ったお上手な料理よりこちらの方が好きだけどな」

 

「もう……からかわないで、指揮官」

 

 台所に引っ込んでしまった。

 

「……うまい」

 

「おいしーい!」

 

 いつの間にか戻ってきていたエルドリッジとユニコーンが箸を手にしている。

 お子様コンビもどうやら気に入った様子だ。

 

「やれやれ、あっちに行ったと思うたら、もう戻ってきておったのか。……これはエレバスか。すまぬな」

 

「いえいえ。お子様にはこっちかしらね?」

 

 お椀に乗せたお米を差し出した。

 

「……早いな」

 

 指揮官が秘伝冷却水(酒)を口にしつつ彼女たちを見る。

 食卓を囲むのがこれだけの美少女ぞろいであれば、酒もうまくなる。まあ、幼女かもしれないが指揮官にとってはそのほうがいい。

 

「そう? ごはんって10分くらいで炊けるものじゃないの」

 

「1時間弱はかかるだろう。……魔族の技術かね? なにか、すごく地味だが」

 

「ふふ。電気を使わない炊飯器、ね。魔力を動力源にしているから、本当に似ているわ」

 

「ま、いいさ。今日くらいは呑もう」

 

「ーーええ」

 

 夜が更ける。楽しげな笑い声とともに。

 






いちゃいちゃシーンでした。
需要はこちの方が高いですかね?
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