ロリ艦隊と異世界転生司令官   作:Red_stone

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第21話 夜襲

 

 

 艦船たちはお屋敷と土地まで貰ってしまった。それは彼女たちの危険性を考えたうえで、それを上げるからどこか遠くに行ってくれという代物でしかなかったが……

 それがゆえに質が良い。十二分に楽しんで、今は誰もが眠る真夜中だ。

 もっとも、指揮官と長門はお楽しみの最中であるのだが。

 そしてそれはそれとして、闇夜に溶け込む影が二つ。

 

「ここから先は通行禁止。……もう夜だよ、ねむい」

 

「あの、ここはもうユニコーンたちのお家だから帰ってほしいなって」

 

 眠たげにあくびするラフィーと、彼女の背に隠れるようにして立つユニコーン。

 その言葉に対し、闇夜は静寂を返すのみ。

 何もない、どこにでもある風景……

 

「入っちゃダメ、聞こえなかった?」

 

 ラフィーが一歩を踏み出す。

 踏みしめた足が、地面を貫通する。そして、起こるはずの地震はない。

 空間が砕けた。

 

「……っが!」

 

 苦痛の声。

 空間からにじむように聞こえたその声は、とどのつまり悲鳴だ。

 位相空間に潜む特殊能力を、真っ向から力技で蹴りぬき、その衝撃が位相空間そのものを揺らす。生まれるのは三次元的な物理圧迫すら伴う地震だ。

 つまるところどんな特殊能力であれど、隔絶したレベル差の前では無意味と言う好例だ。

 

 蹴りは単純な物理攻撃と言えど、艦船の身体は別。その高レベルの神秘は小賢しい能力など歯牙にもかけない。

 基本、低レベルの特殊能力は純粋な高レベルには通じない。弱い力でも利用方法を見出してのジャイアントキリングなどは不可能だ。

 強者は強者で、弱者は弱者だ。この関係が覆ることはない。

 

「化け物が!」

 

 そして、ラフィーの足。その横からナイフを持った手が伸びる。

 足は位相空間に埋まっていて抜けない。

 ゆえに回避できるはずもない。その暗殺者はラフィーの足の腱を断ち、さらには袖に仕込んだクナイをユニコーンに投げ、離脱をーーそこまで考えて。

 

「ざんねん」

 

 ガキン、と鉄と鉄をぶつけたような音が響く。

 これこそ艦船と人間の差。

 彼は髪の毛ほどの傷さえ与えられればそこから侵入する毒と呪いを兼ね備えた、魔王すら殺すに足る”空間に潜る”凄腕の暗殺者だ。

 けれど、傷つけることさえ叶わないなら打つ手はない。

 

「……そんな」

 

 それは並大抵の一撃ではなかった。

 暗殺者であるがゆえに真っ向からの勝負には弱いが、それでも指揮官一行が遭遇した騎士団のリーダーなら頭の先から股間まで一刀両断にできるだけの威力はあったのだ。

 

「むだな努力、わざわざ遅い時間までごくろーさま」

 

 ラフィーは動きが止まった一瞬を逃さない。

 その腕を掴んで、引き上げた。

 ぐしゃり、と骨の砕ける音が響いた。

 

「……っぐぅ!」

 

 痛みで気が遠くなるが、目を見開いて敵の隙を探す。

 彼もちゃんとした暗殺者だ、激痛くらいでどうにかなりはしない。がーー完全に砕けているとなると腕は使い物にならない。

 折れたなら無理やり固定する手段も取れたが、これでは邪魔にしかならない。しかも、動くたびに砕けた骨が筋肉と皮を破り、中から外に飛び出してくる。

 

「ーーッシィ!」

 

 ゆえに、脚。

 靴に仕込んだナイフで目を狙う。

 古今東西、柔らかいところを狙えば目しかない。

 

「……っだめ!」

 

 爆発音が聞こえる前に蹴った脚が抉られ削られ、赤い蒸気と化す。それは音を置き去りにする銃弾。

 夜を住処とする暗殺者は音にも敏感だが、音さえもなければ認識すら厳しい。

 ユニコーンが手に持っていた艦載機の機銃が、そいつの脚を綿菓子のように吹き飛ばしたのだった。

 

「っづ! おおーー!」

 

 足がなくなった。この窮地において暗殺者はそれだけを認識した。

 あとは知らない。血の足りなくなり、激痛に焼かれる頭ではそれ以上は考えられない。

 ゆえに、あとは最終手段を使うだけだ。

 歯に仕込んだスイッチを起爆、さらに彼は忍者である前に魔族。魔力を暴走させての二重起爆はこんな木で組まれた家など一撃で跡形もなく焼滅させる。

 

「はい、それもだめ」

 

 掌低。頭を粉砕しないよう気遣われた一撃は顎を砕き、スイッチすらも破壊した。

 誤作動はない。

 そも、艦船としてはこの程度の爆発は喰らっても問題ない。長門の邪魔をしてしまうことになるが、まあそこは”できる”ほうにかけた。

 結果は成功、自爆を食い止めた。

 

「ユニコーン、周囲には……」

 

 その瞬間、ラフィーの足元で砕けていく空間。

 虚空に飲み込まれる直前、ラフィーのもとに飛ばした艦載機が爆発する。

 超高密度に圧縮した6000度の炎。それはありていに言えば魔法版スナイパーライフルということにもなるだろうが。

 

 

「しまった……!」

 

 ラフィーは虚空に落ちていく。

 ユニコーンも持っていた艦載機を失い、新たに出す必要があるのだが……

 

「っこれじゃ、飛ばす暇が……!」

 

 狙撃は連続する。

 走ってかわしているのはいいが、艦載機発進の暇がない。

 

 そして、ラフィーは位相空間の中へ。

 

「我らの任務は魔王の客人7名の始末。……だが、それも不可能となれば一つだけでも貰っていく! 闇とともに果てるがいい!」

 

 虚空の先、暗い泥のような渦がどこまでも続く空間。

 位相空間に潜り込むサイレントキラーの能力は、あの忍者のものではない。

 痩せさらばえた老婆のようなしわくちゃで醜い姿の魔女、その魔族の固有能力。

 

「そういうの、ラフィーは嫌い。相打ち狙いで勝てるとおもってるなら、大間違い。勝つ気のない者に勝利はないって、指揮官も言ってた」

 

 砲塔を構え、撃つ。

 

「無駄じゃ! この位相空間はどこにでもあってどこにもない! ねじくれておるのじゃ……どこぞへと飛ぶだけよ」

 

 ねじれた空間の中で砲弾の軌道が滅茶苦茶に曲がって、明後日の方角へ飛んで行った。

 攻撃を無効化した老婆はほくそえむ。

 魔王ですら恐れざるを得ない一撃だ、誇るに足る偉業であろう。けれど、それで満足してしまうなら先はない。

 

「あ、そ」

 

 ラフィーはそんなものにかまわない。

 撃つ。撃つ。撃つーー

 

「恐怖でおかしくなったか! そら、貴様はあと三分で終わりじゃ。この空間とともにねじれて粉砕され……」

 

 当たった。

 着弾点は腹。それも右の方だ。だから、頭とかろうじてつながっている左手が残った。

 

「計算した。弾道計算でどう撃てば当たるかは分かったよ。あなたたちはやっぱり十二神将とは違う、果てがある。……あれだったら、計算できないし、当たるほど近くもないはず」

 

 敗因はただの力の差だと。

 どうしようもない総合力の差で順当に負けただけだと冷徹に宣告した。

 

 

 

「うー。うーうーうー」

 

 一方、ユニコーンは逃げ続けている。

 一撃も当たっていないが、やはり攻撃に転じる暇がない。

 

「あう。これじゃラフィーちゃんに怒られちゃう。指揮官の役に立てないよう。ねえ、どうしようユーちゃん」

 

 腕の中のぬいぐるみに聞いても答えは返ってこない。

 人語を介するそぶりはあるが、ぬいぐるみだ、しゃべりはしない。

 

「……」

 

 敵のスナイパーは黙々とユニコーンを狙い続けている。

 超高圧縮した超スピードの弾丸は敵よりも先にスナイパーの心身を削る。艦船に傷をつけられるだけの威力、伊達でもなければ消耗は極悪だ。

 命すらも種火と燃やし、ターゲットを狙う。

 

「え? ユーちゃん、なんとかしてくれるの?」

 

 なにかぬいぐるみが身振り手振りで何か伝えたと思いきや、めきめきと巨大化した。

 ユニコーンの動きが止まる。

 スナイパーはチャンスを逃がさずに眉間を狙う。

 

「っわ!」

 

 ぬいぐるみの柔らかそうな羽がその弾丸を弾き飛ばした。見るからに布なのに、燃えてもいない。

 ユニコーンが艦載機を装填する。

 

「ありがと、ユーちゃん。艦載機さん、行って!」

 

 飛行する。6機編成。

 発進直後に一機撃墜された。

 けれど、なにもかまうこともない。本気なら更に6機、そして6機と追加していくだけだ。

 もっとも、この場合は不要だけれど。

 そして、スナイパーは更に2機を撃墜したけれども、あたりまえに残り3機に焼かれて戦闘不能となった。

 

「……勝った! わぁい、勝ったよ、ユーちゃん。ユニコーン、お兄ちゃんのお役に立てたかなあ?」

 

「じゅうぶん。……かえろ」

 

 位相空間から脱出したラフィーと家に帰る。

 

 

 

 そして、次の日。

 

「あれ、みんなそろってる? おひゃよ……」

 

 長門が指揮官にお姫様抱っこで運ばれてきた。

 

「うう……腰立たにゃい……」

 

 運んでも、いつものように正座はできない。ぐにゃりと机の上に倒れこんだ。

 相当のダメージを受けている。

 

「……」

 

 指揮官は何食わぬ顔をしている。

 しかし、何も聞くなと態度で示している。

 

「ねえねえ、長門ちゃん」

 

 ユニコーンが長門に近づいた。

 

「どうだった? ねえ、どうだった? そんなにすごかった?」

 

「ユ、ユニコーン。うむ……あまり、こういうことはな。その、大声では……」

 

「だってだって、気になるもん。ね、ね、ね? 長門ちゃん」

 

 指揮官がユニコーンの頭をぽんと叩く。

 

「あ、お兄ちゃん。……もしかして、だめだった? ユニコーン、悪い子?」

 

 しょんぼりとしてうつむいてしまった。

 

「そうだね。うん、悪い子のユニコーンには夜にたっぷり教えてあげるから、ベッドにおいで?」

 

「……ほんと? 二人きり?」

 

「うん、二人きり」

 

「わあ、楽しみ!」

 

 ユニコーンはパッと笑顔になった。

 

 

 

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