ロリ艦隊と異世界転生司令官   作:Red_stone

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第22話 羊娘

 

 

 和やかに朝食を終えた後、指揮官は雰囲気を真剣なものへと変える。

 ちなみに、朝食を作ったのはエレバスだった。

 実は鳥……饅頭の方がおいしく見た目もよく料理できるのは6人の秘密だ。指揮官には話していない。

 

「それで、昨夜に捕えた三名か。……まだ生きているみたいだな、碌に拘束していないとはいえ治療もしていないのに生命力が強いことだ」

 

 昨夜の三名については、適当に鎖で巻いて海岸の方で放置していた。

 家には入れたくなかったし、そこに放置して暗殺なり回収されるのならそっちでもよかった。

 指揮官には生かす義理も、死なせてやる優しさもない。

 そして結局、朝食を食べ終わってもまだそこに居たわけだが。

 

「お兄ちゃん、お兄ちゃん。ユニコーン、がんばったよ。ユニコーン、偉い? いい子?」 

「ああ、ユニコーンは偉いな。ラフィーも、ありがとう」

 

 二人の頭を撫でてやる。

 お手柄であることは確かだ。まあ、艦船を脅かすほどの力はなかったとはいえ、指揮官は長門とのお楽しみを邪魔されずに済んだのだから。

 

「とはいえ、まあ……特に案があるわけでもないのだが」

 

「ふむ……尋問、するかの?」

 

 復活した長門の言葉だ。昨夜は指揮官が風呂に入れたが、もう一回入ってきた。

 多少なりとも頭がすっきりしたようだ。まだダルそうではあるものの。

 

「それ、必要? 聞くことある?」

 

 疑問を呈するのはラフィーだ。

 単純に疑問だ。そもそも知りたいことなんてあったか? と言う。

 

「うむ……まあ、魔族の事情なのか、魔王の罠かとか、色々あるが」

 

 長門は苦々し気だ。

 言い出しっぺではあるが、欲しい情報もそれほどない。

 政治状況を調べて、重桜のやり方を押し付ける気もない。悪いところの改善だけすれ良いと言われるかもしれないが、長門が居て、指揮官が重桜の方針に傾倒している以上はそうなる。

 

「魔族の事情は関係がないな。こちらが首を突っ込む必要はない、利用されるからな」

 

 大体、政治をしようと思えば色々動く必要がある。

 夜に”遊んで”などいられないくらいに。 

 だからやらない、指揮官にとってはシンプルな論理だ。

 

「でも、魔王の罠と言うのはないと思うのです」

 

 だから、この話に意味はない。

 ただの世間話の延長だ。目の前の敵を倒して、目先の平安を守るだけなのだからどこかの誰かの思惑を一々考える必要はない。

 

「まあ、そうであろうな。ならば、初めから爆発物でも満載した家を用意すればいい話じゃ。我らの力を試したと言うのも……」

 

「それは、魔王の方からちゃんと言ってくれればいいことです。演習なら受けるのですよ。こんな、暗殺者を使う必要はないのです」

 

「そうなんじゃよなあ。しかし、そうするといよいよ捕虜の扱いに困るのじゃが」

 

「聞く必要がないが、殺しても角が立つ。放置でいいか」

 

 そういうことになった。

 

 しばし、まったりとしていると扉をノックする音が聞こえる。もちろん、レーダーで監視しているからそれが誰かまで分かっている。

 いや、名前は分かっていないが。

 

「あのー。メア・フォン・メルリオセです。開けてくださーい」

 

 昨日の場にいた羊娘だ。

 声も、幼くかわいらしい。タイプとしてはユニコーンと似たような臆病なロリッ子タイプか。

 

「はーい。ちょっと待っててくださいー」

 

 同じタイプということを感じたのか、ユニコーンが駆け出して行った。

 もしかしたら、浮けれているだけかもしれないが。

 

「私も行ってくるのです」

 

 綾波も腰を上げた。

 この子の場合、純粋な戦略上の観点からだろう。ユニコーン単体だと接近戦に弱い。まあ、ここでバトルが始まる可能性はほとんどないが、隙を潰しておくのは習性に近い。

 

「お、おじゃましています……」

 

 とたとた、と急ぎ足でやってきた彼女は頭を下げた。

 

「礼儀正しい子だね。まあ、魚雷天ぷらでもどうぞ」

 

「は、はい。え……魚雷? 天ぷら?」

 

 羊娘は魚雷をてんぷらにしたものを前に、目を白黒させている。

 魚雷なんて見たことはなかったらしい。もしくは、爆発物を揚げてしまうのに驚いたのか。まあ、それは見た目だけで立派な食べ物だ。

 

「おいしいよ、メアちゃん。ほら」

 

 仲良くなれそうと感じたのか、ユニコーンはえらく積極的である。

 さくさくと、朝食はもう食べたと言うのにまた魚雷天ぷらを一つ取って、両手でもぐもぐと食べ始める。

 

「あ、ありがとうございます……? あ、おいしい」

 

 羊娘は目を白黒させている。

 

「お茶、どうぞ」

 

 エレバスがお茶を持ってきた。

 もうお母さんの風格だが、ロリ具合は他の子と変わらない。幼な妻……というレベルではなく普通に幼い。

 子供が一生懸命やっているようで、実に愛らしい。

 

「あ、どうもです……ええと」

 

 その娘は上を向いて考え込んでしまう。

 

「魔王のお使い?」

 

 指揮官はその娘を寄越されたことについて考える。

 とはいえ……単純に指揮官のことをロリコンと思っているのだろうと、簡単な結論にたどり着くほかないのだが。

 真偽はともかくとして。

 あの場に居たのであれば前提として実力は十分。政治分野の知識がなくとも、言伝には事足りる。

 要するに、丁度良いロリが居たから伝言役を与えただけ。ちゃんとした話は魔王城でやればいい。

 

「あ、はい。ええと、一週間後に会合をしたいと」

 

「承知した。まあ、十二神将の動きを掴めば外に出ているかもしれんが……できる限り優先することを約束しよう」

 

「……?」

 

 指揮官の言葉の意味を少し考えて。

 おおかた了承との意味を掴んで、ぱっと表情が明るくなる。

 

「あ! お、お願いします」

 

 深々と頭を下げた。

 ゆったりとしたローブが下がると同時に胸元も見えそうになり。

 

「「……」」

 

 丁度両隣に座っていた長門とラフィーに足をつねられた。

 

「あの! 指揮官さん、何か困ったことありますか? えと、魔王様に……あのできる限り、えと……べん……? べんぎ? を、ほれ? って言われてて」

 

「あはは。違うよう、メアちゃん。そういうのは便宜を……あれ? あれれ、なんだっけ」

 

 突っ込んだユニコーンも忘れてあたふたしている。

 

「ユニコーン、お主も忘れてどうする。便宜を図る、じゃ」

 

 そして、長門がまとめた。

 

「あ、それ! 便宜を図る、だよ」

 

 ユニコーンのテンションが高すぎる。

 

「そ……そうなんだ」

 

 羊娘は少し引き気味だ。

 

「しかし、困ったこと……ね」

 

 指揮官はしばし考える。

 

「何か、ありますか?」

 

「困ったこととは違うけど、砂浜に転がしてあるのを引き取ってほしいかな」

 

 苦笑いして言った。

 

「……? ええ!? あれ――バルさん、テオさん、クシャルダ様! なんで……」

 

 そっちに意識を向けたのか、魔力を感知したようだ。

 死にかけているのだから隠すも何もないだろう。調べれば分かりやすい。

 

「不法侵入者だ。もしかして、知り合いだったかな? アズールレーンには協定を結んでいない国の捕虜に対する規定はなくてね」

 

「え? だって、魔族ですから、皆知り合いみたいなものですよ?」

 

「…………へえ」

 

 指揮官は少し笑む。

 なるほど、そこまで人口減少……最初から増えていないだけかもしれないが。しかし、同種を増やすことにかけてはとても苦労しているらしいことが分かった。

 

「す、すごい弱って……! ど、どうしましょう?」

 

「医者でも連れて来ればいいんじゃないかな?」

 

 指揮官は完全に他人事だ。

 

「あ、そうですね。すみません、また来ます!」

 

 飛び出していった。

 

 

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