ロリ艦隊と異世界転生司令官   作:Red_stone

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第27話 ケンカ屋の真の姿

 

 

 いきなり喧嘩を売ってきたそいつは指揮官を叩きのめし、地に沈めた。

 完全にノックアウトしたはずの指揮官に向けて、つまらなさそうに言い放つ。

 

「起きろ、テメエ。気付いてんぞ」

 

「……ふむ。決着が気に食わなかったか? しかし、今のはどう考えても俺の敗北だろう。確かに気絶から0.02秒で再起動したが、それは単純に種族としての性質だ。なあ、勝利を誇ったらどうだね」

 

 地に伏せた指揮官が薄目でそいつを見る。

 まあ、負けた側が特に気にしてもない様子だと勝者はやるせなくなるだろう。もっとも、指揮官にはそんな心の機微などわからない。

 彼女たちの目の前だから負けたくはなかったが……それだけだ。

 そもそも喧嘩に一々何かを思うようだったら、武道の一つも志す。指揮官にとって強さなど、彼女たちとともにいるために必要なスキルの一つでしかない。

 

「うっせえ。スカした顔が気に食わねえんだよ。ガキ見る大人みてえな面しやがって」

 

 そいつは手を伸ばす。

 

「別にストリートファイトで負けても、そこまではな。とはいえ、これでも悔しいと思っているぞ? 女の前で負けたくはないだろう。リベンジできるものならしたいと思ってるし、これから少しは拳法も学ぼうと思っているのだぞ?」

 

 指揮官はそれを握り返す。

 夕日の決闘というには、朝早いし通じているものもなさそうだが。それでも、少しは何かがつながりあった気がして。

 

「は。……その面でようやく溜飲が下りたぜ」

 

 そいつが握った手に力を入れて起こそうとする。

 

「……あん?」

 

 びくともしない。

 

「俺の顔に全力で蹴りを入れて、折れないわけがないだろう? 人間を演じるのなら、もう少し位は観察しろよ。……なあ、十二神将」

 

「……ッ!」

 

 爆発音が連続する。

 人一人分に向けられるものとしては最大規模の密度の銃弾がそいつを襲う。

 たとえるなら弾幕のカーテンだ。しかも、当たる前に互いにぶつかって神であろうと計算しきれない跳弾の嵐になっている。

 防御どころか見ることすらできないその嵐はまさに津波だ。何かの壁で防ごうがその津波は止まらない。

 

「二人目、ここで潰させてもらおうか」

 

 そして、指揮官は掴んだ手を離さない。

 火力の嵐に巻き込まれるだろうが、そんなものは効きやしない。十二神将も、指揮官も余波ごときでは倒せない高次元の存在だ。

 ゆえに遠慮なく巻き込める。躊躇はしない、演習では効かないことをいいことにいくらでも的になっている。ちゃんと、この世界にきてからも練習しているのだ。

 

「正気かよ、テメエら……!」

 

 しかし、さすがに十二神将。

 それだけで倒せるほど甘くはない。

 熱と爆音、そして煙でレーダーすらも使用不要。けれど、指揮官は掴んだ手が軽くなっていないことに即座に反応する。

 ドロップキックの要領でそいつを跳ね飛ばした。

 

 ――戦場は海上へと移る。

 

 

 

「……は。中々にいい判断だぜ」

 

 煙の外に出たそいつの姿はさながら悪魔だ。

 炎熱の翼を纏い、灼熱の爪を研ぐ。

 紅の翼があらゆる攻撃を焼滅させ、赫灼の爪があらゆる生命を断つ。

 それこそ冥府門番とは真逆のタイプだろう。あれは完全防御が攻撃能力に転嫁されていたのに対し、こちらは絶対攻撃が防御能力として作用している。

 

「炎か。死氷降世とは逆の属性かな」

 

 そして、炎は氷と相反する属性でもある。

 氷は炎よりもエネルギー密度が濃い。炎に同じ大きさの氷を落としたらどうなるかは言うまでもないだろう。

 ただ、ここで問題となるのは……それで、一つの街を氷に閉ざしたあの氷竜と同格ということ。

 つまり、全てを氷に閉ざしたあれを静かな侵略というのなら、これは絢爛たる破壊。全てを一瞬のうちに破壊して灰すら残さず焼滅させる。

 

「つまり、そうしていれば世界を終わらせられるというのだろう? お前は」

 

 指揮官が静かに問う。

 

「まあな、そりゃそうだ。気候変動だの、海流がどうだのと俺には難しいことなんざ分からねえ。けどよ、面白くねえだろう? 海をちょいと10度ばかり温めてやりゃ人類が全滅とかさ」

 

 つまりは、これが氷竜と同格ということだ。

 海を……全世界でつながっている海を二桁も温度を上げてしまうことができるほどの火力が一点に集中している。

 今無事なのは、あまりにも火力が高すぎて熱が伝わる前に蒸発しているからだ。

 エアークッションに断熱効果があるのは専門知識でもなんでもなく誰でも知ってことだが、これは蒸気が空気の代わりをしている。

 彼が浮いているのも飛行能力持ちだからではなく、爆発すらも焼き潰してその上に立っているというだけの話。

 

「触れたら……終わりかな」

 

 指揮官が自らの腕を撫でる。 

 蹴り飛ばしたあの一瞬、わずかに爪がかすっていた。それだけで服の袖は哀れなほどに焼けこげ、無残な火傷が刻まれた。

 

「指揮官、下がって」

 

 綾波が前に出た。

 刀を持って、だが、それを振るうつもりもない。

 

「海上で艦船(我ら)と戦う意味を思い知ってもらう」

 

 長門を中央にそして、彼女の隣に指揮官が立つ。

 陣形を組む。

 

「自己リミッター解除……」

 

「好きじゃないけど、頑張る」

 

 綾波、ラフィー、エルドリッジの単縦陣、そして後方に長門、ユニコーン、エレバス。

 陸上であろうと力は振るえる。けれど、彼女たちは艦船。

 ゆえに、陸のそれとは訳が違う。

 

「……は! いいぜ、来いよ。この十二神将が一人、紅炎絶翔(プロミネンス)の暴虐を前に立っていられるのなら、見せてみろ!」

 

 爪を、翼を打ち鳴らす。

 炎が実体を持たないことなどまるで無視だ。凶悪すぎるほどの熱量が現実さえも凌駕する。

 

紅炎裂爪(クリムゾン・ネイル)、そして鳳翼絶翔(ハイペリオン・レッド)は止まらねえ!」

 

 紅の激爪が炎を噴出する。

 通り道には水蒸気爆発が起こり、視界を、聴覚を蹂躙する。だが、それですら余波だ。制御から外れた残り香が、爆発を起こせるほどまで温度が下がったからの現象に他ならない。

 

「そんなもの、当たるはずがないのです!」

 

 だが、ここ()は艦船のテリトリー。

 威力が強かろうが、音速すらも超えていないような火球にあたるはずもない。当たれば炭すら残らない火力程度に恐れをなすようでは、とても氷竜とは戦えない。

 指揮官も、彼女たちも激戦を潜り抜けた戦闘巧者だ。

 

「お返しなのです」

 

 海を割るような砲撃が走る。

 エレバスと長門まで加わったそれは山を削ったときの火力よりもなお激しさを増している。

 現実の物質であるなら耐えきれない暴力。地殻すら砕く威力を前に。

 

「はーーそちらこそ、それで俺の絶翔を抜けると思うなよ、ガキども!」

 

 紅蓮の翼で打ち払う。それだけで全て消滅した。

 それが十二神将、彼らは容易く現実など超えて見せる。彼らの起こす超常は現実の理すらも力技で打ち砕く。

 炎で爆圧と衝撃は相殺できないなんて物理学は、真っ向から叩き伏せた。

 

「……ッ!?」

 

 だが、それは油断だ。

 地殻を割る程度の攻撃は、本命を隠す牽制に他ならない。

 仕込んだのは魚雷、彼女たちは駆逐艦。本来砲撃よりも魚雷を得手とする。陸の上では魚雷はまともに運用できなかったのだが……海ならばこんなものだ。

 指揮官仕込みの小細工は、流々と敵の警戒をかいくぐった。

 

「下か!?」

 

 裂爪を向けた。海を割り、魚雷を破壊する。

 だが、全てを破壊できたわけではない。

 がむしゃらの反撃など予想する以前の問題だろう。

 ただの一撃では防げないように魚雷を並べるなど、隙だの云々以前に当たり前にやるべきことだろう。むしろやらない理由がない。

 

「っぐ!? がはーー」

 

 当たったのは3本。それも炎により減衰していたのだから到底倒すには至らない。

 深い裂創を刻み、アロハシャツは残骸に成り果てた。

 けれど、生きている。……それも、指揮官は予測済みだ。

 

「この……掌の上ってか!? うざってえんだよ、ちょこざいな!」

 

 ユニコーンの全力爆撃が海を紅蓮に染める。

 反撃で2機か3機潰されようと知ったことではない。ただ爆撃の威力で確実に海の藻屑と仕留めるために。

 環境破壊を気にするようなそぶりを見せた指揮官だが、そんなものはただのポーズだ。現に今も、荒れ狂う爆弾の衝撃が海を伝わり1㎞先の魚たちが死に果てている。

 

 そして絶翔の体制が崩れた今、できるのは翔で爆弾を焼き消すことだけ。

 それも、数割を消すのが精いっぱいで後は体制が崩れたまま耐えるしかない。当たり前に致命傷だ。しかし……

 

「はっはぁ! しのぎ切ったぜェ! やっぱ、人間はやればできるものだなァ」

 

 どの口で人間などとほざくのか。

 喰らうしかなかった爆弾は根性で耐えた。もちろん、一つか二つの爆弾は爪で破壊した。爆弾の衝撃の密度が薄い箇所に向かって跳んだという諦めの悪さも耐えた一因だろう。

 あちこちの骨が砕け、内臓が潰れた。生きていること自体が医学に喧嘩を売る有様で。しかし、喧嘩ならば彼は負けない。

 焼け焦げた身体を押して反撃へと移ろうとする。

 

「ガキどもを使うスカしたその面、ぶん殴ってや……」

 

 特攻しようと脚に力を込めた瞬間、それを見る。

 長門とエレバスのスキルを込めた主砲がすでに狙いをつけていた。

 致命傷を与えた? 中身の潰れる音を聞いた? それがどうした。敵は十二神将、ならば駄目押しの十や二十は用意しておくのが当然だろう。

 

「やべ……」

 

 翼なら壁にして防御も、消し飛ばす攻撃にも使えた。けれど、それは爆弾を打ち払うために使ってしまった。防御のために畳むには0.1秒の時間が要る。

 爪が使えれば握り潰せる。だが、こんな体制で、しかも狙い定めた相手の攻撃を前にどう当てろと言うのだ。

 つまり、これはチェスで言うところのチェックメイトだった。

 

「余とエレバスの同時攻撃! 防御タイプでない主には防げんぞ!」

 

 長門が勝どきを上げ、彼は爆炎の中に消えた。

 

「……長門。それ、フラグ」

 

 

 

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