ロリ艦隊と異世界転生司令官   作:Red_stone

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第29話 決着

 

 

 そして、一方紅炎絶翔(プロミネンス)

 

「テメエがアイツを殺ったのかよ。正直、仲良くもなかったよ。そもそもが鼻もちならねえお嬢様と悪ガキが気の合うはずもねえわな。だが、仲間だった。だから、仇はとってやらねえとな」

 

 爪を構える。

 実のところ、彼は先ほどまで指揮官以外を相手にしていなかった。

 女子供は攻撃しないと誓っているのだ。街を滅ぼしたときもその誓いは守っていた。

 周囲の魔物が生存者を喰らいつくしたから、むしろ死ぬまでの時間を伸ばして苦しめたとさえ言っていいのだが。

 しかし、後のことなど彼には関係ない。……男だから、女は殴らない。そういう奴なのだ、紅炎絶翔(プロミネンス)は。

 前哨戦で艦船に炎を向けた? かわせると分かりきった攻撃は殴るうちに入らないだろう。

 

「だから、殴るぜ。歯ァ、食いしばれや」

 

 翼を納め、爪を真っ赤に染め上げた。

 広範囲、かつ高威力。あらゆる攻撃を真っ向から焼滅させる翼を使わないのが手加減などであるはずがない。

 いくら彼が特異な性格をしていようと、否……漢と書いて男と読むほどにそれを信仰しているからこそ、仲間の仇討で相手を舐めた真似をするはずがない。

 

 綾波の魚雷のダメージが残っている。

 わずかに炎の収束がぶれるから、コントロールに集中を割く。そんなことをしている暇はないと、ただの牽制が通じない高次元の戦いと自覚するからこそ油断しない。

 彼は喧嘩に関してはどこまでもクレバーで冷静だ。

 ゆえにこそ、これが最適解。3名の艦船を相手にするには全霊を振るわなければならないと理屈でなく理解したから。

 

「嫌なのです。殴られずに殴る。攻撃の届かない遠距離から好き勝手にぶち込むのが現代の戦争なのですよ?」

 

 対して、綾波は大剣を掲げようとも突っ込まない。

 指揮官はアレだから突っ込んでいくのだ。わざわざ必要もないのに危険を冒す趣味はない。

 

「なら、こっちから行くまでだ!」

 

 彼が疾走する。

 海面を爆発させての大ジャンプは派手だろうが隙だらけだ。ゆえに一歩一歩を踏みしめる。

 敵は隙を待って必殺を叩き込むつもりと理解しているからこそ慎重に。

 

「……は! 馬鹿め! 貴様のやり方に付き合うはずがあろうものか! 重桜の誇りの前に塵と消えるがよいわ!」

 

 しかしなお、叩き込まれるは一つの戦争と言えるほどの超絶火力。

 必殺を温存しながらも火力はなお激しく。そもそも回避するというレベルではない。人をミンチに変える弾幕が、文字通りに雨あられと降り注ぐ。

 そして。

 

「長門ちゃん。ユニコーンは重桜じゃないけど……」

 

 おずおずと後ろに控える彼女は爆撃機でもって海を紅蓮に染め上げる。

 何十、何百と墜とした爆弾はその一つ一つが鉄塊くらいなら易々と砕き得る殺りく兵器だ。

 

「細かいことは気にするでない! ユニコーンは仲間なのだからな!」

 

「ええ。畳の上で指揮官と一緒にお茶を飲むのです。きっと、楽しいですよ」

 

「わ……! うん、たのしみ」

 

 いっそ可愛らしいとさえ言える会話、その裏では街の10や20は容易に瓦礫と化すほどの火力が連続している。

 それを成すのが3人の少女などと誰が信じられるだろうか。

 この世界で人類が生まれてきてから行ってきた破壊、それを1秒で超えながらも止まらない。

 

「ぐ……! この……! このォ!」

 

 炎熱の爪は全てを切り裂く。だが、しかし――”それ”でない部分は容易に削れ行く。

 土台、両の爪だけで身体の全てを守り切るなど不可能、爆炎が皮膚を焼き、衝撃が中身をすりつぶす。

 翼を使えば? 制御が甘くなった翼など、撃ち抜かれるだけだ。

 ゆえに。

 

「まだ……! まだだ……! 俺は、諦めちゃいねえ!」

 

 吠えて、進む。

 そう、これは氷竜と指揮官の焼き直しだ。指揮官が彼で、氷竜が彼女たち。全てを砕く力でも、一瞬でも対抗できればその一瞬を積み重ねて肉薄する。

 勇気を進む力に変え、狂気を耐える力と化せば、茨の道すら踏破できることは証明されている。

 

「あなたは一つ、忘れているのです」

 

 彼は決死でもって近づいた。

 致死量の血を流し、肉が削れて骨まで見えても諦めることなく踏み越えた。

 ゆえにこそ、綾波は最強の一を再び開陳する。氷竜になかった至近距離での必殺が。

 海面は爆炎に飲まれ、耳は衝撃でイカれた。ゆえに魚雷を捉える術も迎え撃つ術もなく。そして、溺れる者は藁をも掴む。

 正常な精神をしていれば、都合の悪いことは忘れてしまう。近づけたことに満足して敵の持っている武器は考えない。

 だって、突破できないだろう? そんな都合の悪いことを考えていれば成功するとも考えられないから、忘れるのだ。

 

「それが舐めてるって言うんだよ!」

 

 爆砕。

 紅炎絶翔(プロミネンス)に魚雷を見る術はない。聞く術はない。ありとあらゆる知覚は爆炎の元に粉砕された。

 ゆえにこそ、これは予測。この瞬間に必殺を叩き込んでくると信じたからこそ、恐れも迷いもない。

 そして、その破れかぶれとも言える一撃は見事に魚雷に命中した。

 

「……っな! 馬鹿な、なのです……!」

 

 最大の、そして最期のトラップをしのがれた綾波は、やむなく大剣を防御に使う。

 それで不足と見たのか、後方に下がる。

 だが、そこはもうすでに殴り合いの距離になっている。

 

「おおおおお!」

 

 追いすがる。

 相手の必殺を迎え撃った? それでどうにかなるくらいなら、人は、最初から現実逃避などしない。

 至近距離で相殺したとはいえ、爆発はした。

 ゆえにその腕は半ばからちぎれ、内臓は衝撃でシチューのように溶け崩れた。

 それでも、なお……あと一秒でいいからもたせやがれと己が身体に喝を入れる。

 

「っく。ああ――」

 

 彼の炎により大剣が溶け崩れた。

 触れてもいないのに服が炎上する。

 氷竜のときでさえ感じなかった死が間近にある。

 

「道連れでも、貴様だけは連れていく……!」

 

 ちぎれて消えた腕を掲げる。

 形作るは炎の腕。己が根本さえも焼き潰しながら綾波へと迫る。

 自らをも焼き潰すその威力は絶大だ。例え最堅を誇る指揮官でさえ容易に炭に変えてしまう。

 

「ったあ!」

 

 全力でのジャンプ。

 だが、それで逃げきれはしない。

 

「くたばれェ!」

 

 命を薪とくべた一撃が綾波を飲み込む。

 その、一瞬。

 

「「……」」

 

 ”空中に着地する”。

 否、それは指揮官へと。後ろで向かい合った状態で跳び、互いを踏み台に。つまり、着地点は互いの足の裏だ。そこからタイミングを合わせて身体をひねり、蹴り出して、直角に飛翔する。

 

 冥狼の最期の咆哮と、絶翔の魂込めた一撃が空中に虚しくぶつかり合う。

 

 ――何のことはない。恋人同士のつながりとかそういうスピリチュアルなことですらもない。

 艦船同士は通信ができる。ゆえに互いに飛ぶタイミングを測れば、このくらいの曲芸は軽いもの。

 人間がやればありえない神業だ。けれど、これには種もあれば仕掛けもある。なんならタイミングを合わせての空中着地は練習だってやっていた。

 

「あ……ああああああ!」

 

「ぐ……ぬぐおおおお!」

 

 二人は威力を弱めることもできずに苦悶の声を上げる。

 勢いを弱めたらその瞬間に飲まれて消える。奇跡的な均衡は崩せない。だが、命すら捨てた最期の一撃は維持するだけでも魂を削る。

 

「さあ、魂を刈り取る時が来た!」

 

「貴様たちの強さも、絆も、本物だった。もう休むがよい」

 

 砲艦と戦艦、その主砲が牙をむく。

 

「……させない! 仲間は――やらせない!」

 

 更なる介入が行われる。

 この戦争はスノウホワイトと十二神将のもの。ゆえに、敵は窮地に陥っている二人を含めて残り11人。

 樹木の竜――大人の胴ほどもある木が彼らを守る。もちろん、普通の木であれば太さなど関係なく主砲は貫き爆砕する。

 だが、それは十二神将の生み出す植物。この世の理とはかけ離れた強度を持つそれは主砲すらも防いでのける。

 そして、そのまま脱出する。

 

「……なんで、きやがった? 放っておいてくれればいいのによ。俺みたいな馬鹿に構って痛い目見ることなんざなかったんだよ」

 

「そうよ。あなた、ここは苦手でしょう? 立っているのも辛いんじゃないの」

 

 ボロボロの二人を抱えている彼女は、髪は緑色で耳がとがっている。

 年のころは20代後半だろうが、見る人が見ればとうが立っていると見るだろうが、それは一部の特殊性癖で、普通は豊満でおしとやかな魅力的な大人の女性に見えるだろう。

 明らかにエルフを意識したような姿をしている。そして、その姿が伊達ではないことは知れている。

 

 植物を扱うのだ、海は鬼門である。

 確かに海水に値を伸ばす特殊な植物はマングローブなど数あるが、それはただの例外だ。

 木を生やし、海すら陸の孤島に変える神代治世(アースガルド)でもそのままの海など一秒だって居たくないはずだ。

 なのに今はスノウホワイトを避けて、海へ海へと退避している。陸は離れ行くあかり。

 

「ふざけないで。仲間でしょう、助けるのは当然だわ」

 

 怒った。

 仲間だから見捨ててはおけない。たとえ火の中水の中でも、必ず助けに行くと。

 それが彼女の性格だ。

 

「馬鹿な奴だな」

 

「ええ、本当に馬鹿。こんなことして、冥界神槍(ガングニル)に叱られるわよ」

 

 実際に彼女たちは指揮官と関わることを止められていた。

 1日やそこらのペースで考えてはいない。人間とは違うのだ、いや1日を大した時間と捉えるのはワーカホリックな日本人だけかもしれないが。

 基本的に殺すしかないだろうが、仲間の犠牲を防ぐためならば手間の10や20は惜しくないだろう。

 そこで馬鹿みたいに飛び出していったのが絶翔なのだが。

 

「……ふん。そのくらいで助けられるんだったら、いくらでも叱られてやるわよ」

 

 止まる。一つの木を生み出す。

 それは世界すらも支える木。原初にして全て、彼方から聞こえるエンジン音に捕まらないように小さく形成したが、それが一つの大陸すらも覆いつくしてしまえる生命力を秘めていることは変わらない。

 

「さあ、飲んで。私の世界樹の雫ではその傷を完全に癒すことはできないけれど、楽になるはずよ」

 

 回復魔法、厳密には異なるが似たようなものだ。

 これで回復されてしまえば指揮官たちが与えたダメージが元の木阿弥だ。どころか、魚雷の威力を知られたことが完全にマイナスとなる。

 結果的に相手の切り札を丸裸にしたことは、情報戦と言う意味では彼らの勝利と言っていいだろう。

 このままでは戦局は十二神将の有利に傾く。

 なにせ、残り8名は顔すら知られていない。否、人類襲撃に姿を表した3名の情報を魔族と人類から入手したとしても、残り5名。

 そして、戦力としては11対7。

 

「させませんよ、そんなこと」

 

 彼女の身体に剣が生えた。

 影も形も見えなかった、というのは少し違う。ただの人間に擬態していた。魔力反応を弱めてしまえば尾行も容易。

 強力すぎる異能者の弱点がここにある。普通は擬態などできないのだ、艦船は前提として生まれながらにそれを組み込まれているからできる。言い換えれば人間に紛れるという特殊能力を持っている。

 ゆえに、十二神将は初見では擬態を見抜けない。ただの人間など蚊も同然で、よく見たりしないから。

 

「……え? なんで」

 

 結果がここに。エルフの耳はひくひくと痙攣するように、そしてその眼は虚空を胡乱に見つめ。

 完全な奇襲を前に、呆気なく致命を刻まれた。

 飲めば治る奇跡の癒し、世界樹の雫も、手から滑り落ちて広大な海と混ざっては取り返しがつかない。

 

「指揮官ですか? あの人は暗殺には向かないです。それとも、剣のことですか? 直してもらっただけですよ」

 

 ぐり、と傷を抉る。

 人間でも、ナイフで刺されて生き残るやつは居る。だが、刺したまま、4分の一回転でもさせてやれば生き残った者はいない。

 と、と後ろに跳んで着地する。距離を挟んで睨みあう。

 

「なんで……あなたたちは人間とは関係ないのに……ッ! どうして、こんなにも私たちを憎むのです……?」

 

 睨みつける。

 その手はまだ仲間をかばっている。満身創痍で、海に浮かぶ力すらも残っていない彼らを。

 掌から零れ落ちた世界樹の雫があれば戦闘復帰も可能だったろうが。

 きっと、そんなことより仲間の身を優先したのだろう。 

 

「ごめんなさい。確かに艦船は人間を守るために産まれましたが、あの人たちは綾波たちを作った人とは違うのです。……あなたたちとは戦う大義もないのかもしれない。でも、指揮官が言ったのですよ」

 

「……なにを?」

 

「あなたたちは私たちが指揮官と一緒にいるためのチケットなのです。なら、切らなくてはいけないでしょう?」

 

 エレバスのような言い分。それはつまり。

 

「あの男と一緒にいるため? そんなことで殺すの? そもそも、そいつがそう言っているだけでしょう」

 

 そう、それはただの指揮官の妄想だ。

 事実ではないとは言わないけれど、誰かにそう言われたわけでもない。

 十二神将を殺さなければ、世界ごと消滅させられると本気で信じている狂人の戯言だ。

 

「ええ、指揮官は説明してくれましたが綾波には正直言っている意味が分かりませんでした」

 

「……あなた」

 

 憎しみをたたえ、しかし攻撃には転じない。

 彼女の手には大事な仲間が乗っているのだから。

 

「は! 狂信も、教義も、信念も、はたから見れば意味の分からねえ戯言だろうよ。そして、それだけで誰かを殺すにゃ十分だ! なあ!」

 

 絶翔が飛び出す。

 爪すら作れないほどに消耗していても、真っ赤な火を拳に灯して敵を倒そうと血を吐きながらもまっすぐ敵を見据えた。

 

「……特攻。鬼神をなめるな、なのです」

 

 勇気ある彼は消し飛んだ。

 魚雷の発射準備は完了していた。敵を最大限に警戒するからこそ、致命傷を与えたら離れて観察していた。

 読み切られた勇気は蛮勇だ。何も意表を突くことなくただ死んだ。

 

「そして、時間切れです」

 

 エンジン音が近くなる。

 綾波が姿を現した時点で通信を切る理由はなくなった。

 

「……あ。ああああああ!」

 

 全力で木の結界を作ろうと、すでに致命傷は胸にある。

 いくつも爆弾が落とされる。ただただ仲間を守ろうと頑張っても、壁を作るだけでは意味がない。

 ただ燃え尽きて、炭と化す。

 

「――」

 

 綾波も油断せずに前を見据える。

 確実に倒したことを確認するため。倒したら生きていて、必死の治療で復活したなんてことは許さない。

 全て燃え尽きたのを確認すると、くるりと後ろを向く。

 

「さて、危険な任務を達成しましたし、指揮官には抱きしめてもらうことにするのです。それくらいの役得は期待してもいいですよね」

 

 スキップしそうなほど上機嫌で海を行く。

 

 

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