ロリ艦隊と異世界転生司令官   作:Red_stone

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第34話 人間たちの戦い

 

 

 ゴブリンキングが、山のごとき偉容で人間に語りかける。

 その姿、まさに”王”。視線のみで心胆寒からせる威厳は、覇者のみが持つ資格。この王の前に立つならば、国くらいは背負っていなければ。

 

「貴様らの力、見せてみろ」

 

 動き出す。大木のような足を踏み下ろすごとに地面が揺れる。

 そして、その手が持つ棍棒にも魔法の力は宿っている。

 

「言われずともォ!」

 

 『星』が動いた。連撃、1秒で30を超える星の輝きが敵を切り刻む。

 極限まで圧縮したその星の輝きは鋼鉄ですら容易に刻む死の煌めきだ。

 

「そんなものか」

 

 だが、魔法の鎧は意に介さない。星の輝きは虚しく鎧の表面を這って消えていく。

 ゴブリンキングの再生能力以前に傷を付けられていない。

 やはり、彼の攻撃力は弱いのだ。手数で補うスタイルだが、決定力が欠けすぎてどうしようもない。

 騎士団の中でも単体戦力としては下から数えたほうが早い。それでも、最低ではないけれど。

 

「……ああ、こんなものだ。やはり魔法の鎧、耐性に穴があるような手落ちはないな。だが、それは当たり前に当たり前が通用するということ」

 

 そして、次の一瞬では効果が変わる。

 今までのは触診だ、弱そうなところを探っていた。そして、それが無かったからやり方を変えるだけ。

 切り裂き、血があふれる。鎧の隙間狙いだ、人間のやることは変わらない。鎧が固ければ隙間を狙うだけの話だった。

 そして、もう一つ。

 

「バカみたいに余裕かましてりゃ、こっちとしても楽なんだよ」

 

 ゴオン、と音叉でぶっ叩いた。

 鎧に刃は通らないから、ハンマーで叩くのは人の歴史ではよくあることだ。まあ、馬鹿正直にハンマーを使うのではなく、フレイルという紐付きハンマーと連結した槍を使っていたのだが。

 しかも、こいつは音の衝撃まで追加される。

 『塔』の神具は並大抵ではない。至近で喰らえば鎧も皮膚も貫いて、体の中身そのものをどろどろのシチューへと変える。

 

「ごぼっ!」

 

 口、そして目から血があふれだした。

 ホラーな光景だが……それを成し遂げた彼らに油断などない。そんなものができるはずがない。

 なぜなら。

 

「では、もう一度言おうか。そんなものか、人間」

 

 ゴブリンキングはその瞳を揺らがせない。委細構わず、眼下の小人を睨みつけた。

 微動だにしていない。血を流させることはできたものの、それがダメージかは疑わしい。

 3mは下らない巨躯が進軍を開始する。

 

「っち! 引け」

 

「ぐーー」

 

 『星』の退避が遅れた。

 判断が、ではない。『塔』に言われるよりも先に動き始めていた。それでも間に合わなかったのは純粋な実力差。

 筋力がいまだ人間レベルであるという悲しい現実だった。

 

「いいや。これなら、まだ……!」

 

 棍棒は棍棒で当て方というものがある。

 扱いが難しいとされる日本刀ほどでなくとも、”ちゃんと”当てないと威力がなくなる。そこを見極めて、当たり所を見極めればダメージは軽減できる。

 

「馬鹿め」

 

 ゴブリンキングが吐き捨てた。

 軌道が変化したわけではない。棍棒が巨大化したわけではない。

 しかして、『星』のジャンプする軌道が変化した。引き寄せられたのだ。

 

「……っな!? これは!?」

 

「魔法の付加効果か!」

 

 『塔』が焦った声を出す。

 一方でかけられた方はと言うと、悲鳴を漏らす暇もない。自らが弱いのは分かっている。だから、全ての神経を今起こっていることに注ぐ。

 予測? そんなものは才能ある人間がやっていればいい。他の隊長たちと比べて一歩劣る自分は目の前の出来事に集中しなければ生きていくことさえできやしない。

 考える暇などない。相手の攻撃が当たりそうならせめてダメージの少なさそうなところで当たる。それも構わなければ立ち向かうまでだ。最初からそう決めていた。

 

「おおおおおお!」

 

 叫ぶ。けれど、相手の攻撃を相殺? そんなもの、攻撃を百篇繰り返そうが無駄だ。だが、わずかでも攻撃の威力を落せるのなら意味はある。

 才能のない自分にはそれしかないと思い定めて戦場に居るのだ。迷いはない。

 

「っが! ぐあーー」

 

 骨が折れる音とともに吹き飛んでいく。

 だが、奇跡的に肋骨の一つや二つは折れても手足は折れていない。口から血が溢れて錆の味にえずこうとも、まだ戦える。

 

「……貴様ら!」

 

 だが、運の良さもそれまでだ。戦場の模様で言えば、ゴブリンが占めるのは7割ほど。つまり3割の確立で自軍の傍に落ちることができたのだけど。

 やはり凡才は凡才。持っていないと言うのはそういうことだ。

 

「まだ剣は振るえる。足も動くぞ! 恐れずしてかかってこい、貴様らを下し、王を倒す!」

 

 雪崩のように襲い来るゴブリングラップラ―どもに向かって吠えた。

 満身創痍、なれど眼の光は消えていない。

 

「ギャギャギャギャ!」

 

 敵は鉄の軋むような音を立てながら襲い来る。

 その剛腕は鎧を付けていようが関係なく中身を押しつぶす。

 

「……は! 見え見えの攻撃で! ぐぅっ!」

 

 かわすために飛びのいた、その衝撃で骨がきしむ。肺が痛む。

 ダメージは相当深い。一刻も早く治癒を受ける必要があるだろう。凡人らしく、折れた骨は勝手に繋がったりはしないのだ。

 動くたびに肉を削り、最悪の場合は肺に刺さる。

 

「それがどうしたァ!」

 

 委細構わずとばかりに踏み込んで首を刈った。

 

「あああああ!」

 

 そして5閃、周囲にいる10体ほどをばらばらにしたうえでゴブリンアーチャーの弓矢さえ叩き切った。

 だが、それは弓矢に対してかわすだけの体力がないということであり。

 

「ギャギャギャギャ!」

 

 次は10体のゴブリングラップラー、見渡せばさらに多くの敵が集まろうとしている。

 しかも、アーチャーに対処するだけの余裕はない。本来なら星剣は遠近自在、星を飛ばして首を刈れるはずだったのだが……そもそも狙い定めるだけの時間的な余裕がない。

 

「いいだろう。いくらでも来るがいい、相手してやる……!」

 

 状況が絶望的? そんなことを考えない。

 ただただ目の前に集中するしかできないからこその自分。星剣を構え、近くの敵から順番に殺す。

 

 

 

 そして、『塔』。

 

「っづ。ああああああ!」

 

 こん棒と音叉が交錯する。

 地響きするように音が鳴り、かき鳴らされた音が爆撃のように周辺を蹂躙する。

 

「っは! しっかり防げよ。そら!」

 

 そして、ゴブリンキングの猛攻は熾烈を極める。

 その攻撃を受け止めるうち、『塔』の神具に亀裂が入る。

 まるで地獄だ。音叉が響くたびにゴブリンが50はまとめて爆殺される。そして、こん棒が地面に当たる度に起こる地震はもはや立っていられないレベルに達していた。

 関係のない木々が遠くで倒れる。

 

「吠えてんじゃねえ! 魔族の奴隷ごときがァ!」

 

 確かに『塔』も対抗できていた。

 とはいえ、このままでは武器が破壊され順当にすりつぶされて果てるのみ。

 そして、助けに行こうにもこの地獄に足を踏み入れて生きていられるものは居ない。

 魔術ですら音と衝撃によってかき消されて何の意味も持たないのだ。

 

「死ぬがいい、魔物。この世界に貴様らの居場所などどこにもないと知れ」

 

 『戦車』の到着。

 重装甲にものを言わせ、鉄塊のごとき腕を振り下ろす。

 

「っが! てめえは……少しはやるようだなァ!」

 

 砕き、折られてちぎれた枯れ枝のようになった腕は一瞬で再生する。

 そして、鎧もまた魔法のように巻き戻る。

 

「再生か。ならば、核を破壊するまで」

 

 『戦車』はあくまでも鋼のごとく揺るがない。

 重い足取りで大地を踏みしめ、何であろうと粉砕して轍に変える。

 

「ハッハアアアア!」

 

 魔法、発動――こん棒の魔法の力を発動すれば何人たりとも彼の攻撃から逃れることなどできはしない。

 引き寄せられ、その絶大な威力で文字通りにぺしゃんこにする。

 

「……退けねえなら」

 

「突っ込むまで」

 

 そして、激突。

 人間の方も退くことなど選ばない。引き寄せられる力に逆らわずに突っ込んだ。

 

「「「おおおおお!」」」

 

 奇跡的な均衡は、しかし人間側の敗北を意味している。

 体力が違う、持久力が違う。何より2対1で引き分けになったと言う事実はどちらかが欠ければ均衡を維持できないと言うことであり。言うなれば余裕を残している。

 

「じゃ、お前から死ねや」

 

 ゴブリンキングは『塔』を蹴る。

 彼は血煙とともに吹き飛んた。

 

「……それは隙だな」

 

 鮮やかな切り返し、腕力勝負が不利になったと見るや否や受け流し、こん棒を地面へと突き立てた。

 

「死ね」

 

 そこから繰り出されるは絶技。剛腕がうなり、鎧の上から心臓を叩く。

 芸術的とすら呼べるコンビネーションはゴブリンキングの意識の間隙を縫い、反撃すら許さずに心臓を潰す。

 目にに光が無くなった、その一瞬にアッパーカット。鎧のない豚の顔は破砕されて潰れたトマトになる。

 

「……は。さすがに痛かったぜえ」

 

 それでもゴブリンキングはゴブリンキング。

 この程度で倒せようはずもない。巻き戻るように再生したそいつはこん棒を振り上げる。

 

「人間を舐めるな。糞共が!」

 

 駆けつけたのは『塔』。口の端から泡交じりの血の唾を吐きながら、音叉剣を突き刺した。

 その神具の真の力を発動させる。

 

「……っが! は――ッ!? ゲボッ!」

 

 それこそは共鳴破壊の真骨頂、敵を中身から破壊する魔技。

 口から洩れるは血の煙。内部で沸騰した血液が血管を焼く。そればかりか筋肉も骨も震えてボロボロに。耐えるために力んだ筋力が己と骨を砕いて痛覚を焼く。

 

「ッギ……イイ――」

 

 苦し紛れに振り下ろした腕が『塔』の肩を粉砕する。

 ゴブリンキングの再生能力は1秒で死ぬ苦痛と溶け崩れていく体を持たせていた。

 

「いい加減にくたばりやがれェ!」

 

 砕けた肩。条理など知ったことかと言わんばかりに音叉剣を握りしめる。

 さらに、もう一方の無事な腕を振り上げ、刺そうとして。

 

 ――影法師の金魚が彼の影に潜る。

 

「……『次元渡り』。魔族か!」

 

 それは空間を渡って施された呪法。

 対象の体力を削り、いずれは死に至らせる暗殺の業。『塔』の必殺は邪魔されて、致命の隙を晒してしまう。

 

「ジャア!」

 

 ゆえにゴブリンキングの二撃目が到達する。

 どこかの誰かからの援護なそ知らずに、拳が『塔』の頭部を破砕する。その一瞬前。

 

「させん」

 

 『戦車』がかばう。交差した両腕で受けてなお、砕けた。

 

「……小癪な!」

 

 ならば構わぬ。二人まとめて粉砕してくれようと、魔法のこん棒を宙に掲げる。

 防御も反撃も無視した一撃必殺。

 単純であるがゆえに対処の術はない。

 

「ふざけるなァァ! 物見遊山のクズどもが、俺たちの邪魔をしてんじゃねえ!」

 

 喝破。

 要するに気合いと根性だ。『塔』はそれだけで呪いを打ち破る。そして二本目を敵に突き刺す。

 

「「喰らえェ!」」

 

 瞬間、『戦車』が砕けた拳を音叉剣に叩きつける。

 音が響く。

 こん棒は振り下ろされることなく地に落ちる。ゴブリンキングの身体が傾く。

 

「にん……げん……」

 

 伸ばされた手を。

 

「貴様らに掴めるものなど何もない。ただ死に絶えろ」

 

 ようやく到達した『星』が切り刻んだ。

 

 

 

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