ロリ艦隊と異世界転生司令官   作:Red_stone

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第44話 リーダー=強いはおかしくない?

 

 そして、ラフィー。

 彼女が居るのは廃墟だった。

 傾いたビルの一棟、その屋上にコートをたなびかす男がいる。

 

「宣言は果たした。俺こそが冥界神槍(ガングニル)、貴様を冥界の供物と掲げ世界を取る男。この地上を支配するのは十二神将かアズールレーンか……決着を付けよう」

 

 美形の男。感触としては王権神授(ギャラルホルン)に近い。白コートにハット、そして腰まで届く黒髪と、女子であればうっとりしてしまうのが当然である。

 長門であれば比べられるかもしれないが、あれは幼いゆえに需要が限られる。男と女では比べようもないかもしれないが、赤城よりも美しい。

 指揮官? 黄金と芋を比べることに何も意味はない。

 

「あなたがリーダー?」

 

 とはいえ、ラフィーにとってはどうでもいいこと。世間付き合いするのであれば、むしろ引きこもり気質の彼女にとっては苦手ではあったのだ。しかし、倒す敵ならば関係ない。

 別に指揮官の容姿に惚れたわけではない。

 むしろ、その奇麗な顔をぐちゃうちゃにしてやりたいとさえ思う。歯を見せて笑った顔は世の女性にとってはご褒美だろうが、ラフィーにとってはとてつもなく不愉快だ。

 

「そう。俺が十二神将を纏める頂点にして王。他の者では知りえぬことまで知っているのだよ」

 

「……なん……だと……?」

 

「所詮、ここもまた実験室のフラスコ。人間など、そこらに湧く藻と何も変わらない。どうでもいいのだよ。なあ、貴様らも見捨てたろう? いや、あれは正解だったよ。少しは力を見せてくれるかと思ったのだがね。なんとも賢いことだ、褒めてやろう」

 

「ーー」

 

 不愉快な言葉だが、反論はできない。

 まあ、ラフィーは弁が立つ性格はしていない。相手の言葉を待つ。それは、指揮官も気になっていたところだから聞き逃せない。

 半ば決めつけているのを承知の上で、セイレーンによる実験だと思い込んでいるのは本人から聞いている。そこで隠すような指揮官ではない。

 ちゃんとエルドリッジだって聞いていたのだ、1㎜たりとも理解していなくても。ユニコーンだって聞いていた、眠気には勝った。

 

「そうさ、ここは実験場だ。我々と言う異物と、貴様たちと言う夾雑物。生き残れるのは一方しかいない。こういうのを蟲毒と言うのだったか? まあ、どちらにしろ共存する道などなかったのさ」

 

「……そして、あなたたたちは仲間を4人失っている。でも、ラフィーたちはまだみんな生きている」

 

「ーーそれは大いなる間違いだな。勝つのは我々だ、この世界は我々のためにある。決して、貴様らの楽園などではない。……そう、オブザーバーの声も知らぬ貴様らが”本命”だなどとあってはならぬ!」

 

 四方を雷が薙ぎ払った。

 十二神将とアズールレーン、人類抹殺を掲げながらもそれをやらない彼らとは和解の道があるかもしれない、とは艦船の中で話し合われていた。

 指揮官はともかく、長門あたりならば妥協点の存在には必ず気付く。だが、交渉する機会も得られなかった。

 ーーそして、ここで真実が発覚した。セイレーンの企みだ、つまりは蟲毒。殺し合わせて反応を見るのが目的なら、両者が生き残る道などない。

 少なくとも、共にセイレーンと戦おうなんてことにはなりはしない。そもそもどこに居るかもわからないのなら、目の前の敵を排除したほうが建設的だ。

 

「……そう。セイレーンの企み。うん、指揮官もそれは言ってた。あなたは見たんだね……アズールレーンに記録があるのは雑多なエクセキューターシリーズ。そして下位端末、テスターとピュリファイヤー。……じゃあ、オブザーバーは上位端末?」

 

 少し考えたが、思考は放棄。超広範囲攻撃など今更当たるわけがないが、しかし思考をそちらに取られてはミスに繋がる。

 これはただ戦争を開始する号砲、戦乱を幕開ける鐘の音だ。

 そして、最終決戦が故に出し惜しみはしない。

 

「だとしても、あなたを見逃す理由はない。ここで倒す。これがセイレーンの企みだとしても、罠は踏みぬいて砕くものだって言ってたから」

 

 駆逐艦が出現する。

 そう、これこそが全力全開。火力をぶつけたいならこれが最大だ。

 全長106Mの偉容は敵の魂を打ち砕くほどにすさまじい。そも、それは戦争の象徴だ。たったの一人で立ち向かうような生易しい現実ではない。

 

「……は! なるほど、艦船。貴様らもそれなら指揮官と同じく出せると言うわけだ。だが……可愛らしいぞ!」

 

 指揮官の母港に比べればちっちゃく見えてしまっても仕方がない。

 だが、それは轟音を響かせて砲塔を向ける。

 人一人を丸飲みにできそうな巨大な砲がうなりを上げる。戦争の権化を前に、冥界神槍は傲慢を崩さない。

 

「……リミッター解除。対象の殲滅を開始する」

 

 爆轟。

 ただの一撃で城すら打ち砕くその一撃は艦船の恩恵を受けて大地すら打ち砕く凶悪な代物となっている。

 

「だが、無駄だ。この俺は十二神将を統率するもの。ゆえ、誰よりも強いのだよ」

 

 余裕そうに、受け止めた。

 そして、何もダメージを受けることなく跳ね返した。

 

「……っこれは、ヘカトンケイルの!?」

 

 その現象には見覚えがある。

 山ごと削って酸素を奪いつくして倒した強敵。7名で火力を叩き込み続けるという頭のおかしなことをやって、やっとのことで隙を見つけた強敵だ。

 

「そして……それだけではない! この冥界神槍(ガングニル)は、下僕共の能力をすべて扱えると知るがいい!」

 

「でも、反射されるだけなら撃ち落とせばいい!」

 

 跳ね返った弾を撃ち落とす。

 ここは海ではないから、駆逐艦は動けない。艦船を出すのはとてもリスキーだ。後に戦いが待っていればやらなかったかもしれないほどに。

 もともと早くなくとも、動けないのは戦闘においては不利だ。

 

「殴り合いを挑んだ愚かな男の情熱を見よ。……紅炎絶翔(プロミネンス)

 

 極限まで圧縮した炎が爆裂する。

 機銃掃射で対応するが、敵の攻撃はまだ続く。

 

「では、次だ。傲慢な竜の前に己が無力を嘆くがいい……死氷降世(ニヴルヘイム)

 

 巨大な氷が降ってくる。

 1Mを超える氷の塊が直撃したら人間なら即死する。

 駆逐艦でも、当たればひしゃげる。それは四肢が折れるのと同等の損傷だろう。

 

「……まぬけ、だね」

 

 だが、ラフィーはその言葉を言い放つ。

 長大な駆逐艦では防ぐ手段がない。なら、艤装へと戻せばいい。

 

「それは一度、戦ったよ」

 

 氷塊を蹴る。

 玉突きを起こして術者へと迫る。本人よりも練度が劣るのは当然だが、しかし彼には他の能力がある。

 

「では、貴様が相手していない者を使おうか。悲しき人魚の悲哀を聞け。……堕天竪琴(オルフェウス)

 

 音による全方位破壊。

 11の能力が全てあるから、極める必要すらもない。適当に入れ替えながら使えば、相手は対応できずにつぶれていく。

 多彩な攻撃全てに対応することなど、できるわけがないのだから。

 

「そこそこ……かな? 指揮官のために、がんばるよ。眠くなんてない……鬼になるから」

 

 ラフィーはぶれない。

 相手がどんな力を持っていようと、やれることをやるだけだ。すなわち、ヒットアンドアウェイ。

 速度で相手を振り回しつつ攻撃を積み重ねる。

 

「っぬぅ! 氷が邪魔だ、のけよ! 役に立つがいい妖精、純白雪姫(スノウホワイト)

 

 破壊の雪が氷塊を破壊する。

 だが、やはりそんな広範囲殲滅ではラフィーは倒せない。

 

「状態良好……まだまだ行くよ!」

 

 懐に潜り込んだ。

 0距離射撃ーー

 

「っち! 我を守れ冥府門番(ヘカトンケイル)

 

 跳ね返す。だが、ラフィーは即座に退いている。ダメージはない。

 ラフィーは近くの場所に着地する。

 

「やっぱり、弱い。あなたは、ラフィーが戦った誰よりも弱い……」

 

「何を! 図に乗るなよ、艦船が! 全ての頂点に立つ我こそが最強だ。あらゆる能力を持つ俺に隙などあるものかよ」

 

 雷、雪、爆炎、多彩な能力が廃墟を焼きつくしていく。

 けれど、その攻撃は一向にラフィーを捉えることはない。

 

「能力を全く使いこなせてない。それなら、ヘカトンケイルを常時張ったほうがマシだよ。そうしても、彼女には及ばないだろうけど」

 

 そう言ったのは、アドバイスではない。

 プライドの高い奴がこんなことを言われてハイソウデスカと言うことを聞くわけがないのだ。

 証拠に、そら見たことかといわんばかりに能力を切り替えながら戦っていく。まばゆいばかりに破壊が乱舞して、しかして繋がってはいない。

 巧く位置取りをするラフィーにはかすりもしない。

 

「ふざけるな! ふざけるなよ、薄汚い艦船が。……ガキのくせに、この俺にたてつくな! 消えろよ! なんで、この俺に気持ちよく戦わせない!? おかしいだろうが! 世界は、俺のもののはずだろうが!」

 

 空を埋め尽くす破壊の奔流。

 けれど、それは花火だ。蟻の入る隙間があればかわせるのが、十二神将とアズールレーンの戦争のレベルだ。

 

「……ほら。もう沈む」

 

 ラフィーが冥界神槍の背後を取る。彼は王様のごとく動かない、傲慢がゆえにあくせく動くなどできはしない。

 今度こそ0距離射撃を成功させ、心臓を吹き飛ばす。

 

「馬鹿な……俺が負けるなど……」

 

 射殺さんばかりの憎悪の目で睨みつける。だが、倒れ伏した彼に何かをするような余力はない。

 だが、ラフィーは気にかけないばかりか欠伸までする。

 

「ふあ……ねむい……でも、指揮官のとこ行かないと」

 

 

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