ロリ艦隊と異世界転生司令官   作:Red_stone

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第5話 転生について

 そして、走り寄ってきた他の5人の相手もした後に、彼ら現地人……冒険者と会いに行く。

 駆け足の必要もあるまい。どうせそいつらは寝ているのだ。

 

 道中で、色々と考える。

 暇があれば話しかけてくるから、こういう移動の時でもないと思考に浸れないのだ。

 裏を返せば走っている最中は敵を警戒するために話をする余裕もないといえるのだが。

 しかし、指揮官の艦船としてのスペックは高いため、”余計な”思考ができる。

 

 特に準備するものもなかった。そもそも、母港の機能を持つ指揮官が居れば、水も食料も取り出し放題だ。 

 酸素コーラ、秘伝冷却水、魚雷天ぷら、海軍カレー、王家グルメ、フルコースの5種類しかないのが問題といえばそうなのだろうし、そして。

 ゲームの仕様通りに4ケタも在庫がなく、7人も居ると補給の心配もしなくてはならなかったが……勝手に補充されていた。

 とにかく、現時点では問題がない。

 

 艦船の彼女たちはどうやら、あまり不安には思っていないらしい。そして、指揮官たる彼もまた似たようなものだ。

 特に現実に戻りたいだの、仲間の元に帰りたいだのといった感情は湧いてこない。情が薄いのは前世の自分の問題な気がする。

 そもそも、この身体に記憶はない。記憶の上では相も変わらず、現実の〇〇〇××だという日本人だと認識だ。

 だからこそ、かわいい彼女たちと一緒に居られる幸運に感謝して、それ以上は考えない。

 

「ねえ……皆には、したいことがある?」

 

 聞いてみた。

 無論、質問した彼にそんなものはない。

 その立場に立たされて思うのは、ただの一人で異世界に放り出されて、すぐに目的を持てたらそいつは大したものだという実感だ

 まあ、ここで情も血も通っている人間なら、家族の元に帰りたいと願うのだろうが。……そのあたり”彼”は家族関係が冷え切っていて、特に帰りたいとも思わなかった。

 そして、また会いたいと熱意を燃やすほどの友もなく。

 続きを読みたい漫画もあったが、それとて形を結ぶまでには至らない淡い感情。だからこそ、艦船としての戦闘衝動に引きづられてしまうのかもしれない。

 そして、それを止めるだけの倫理すらもない。

 

 ――何もない、冷めた人間。

 

「「……」」

 

 わずかに沈黙が流れた。

 いくら子供の身体を持ち、思考もそれにひきづられる傾向があったとしてもこの子たちは人間である前に艦船だ。 

 子供には意味が分からない人生論も、この子たちには意味が分かる。分かってしまう。

 それだけの経験は脳髄にインストールされている。ーー鋼でできた艦船として戦った記憶がその小さな体に秘められている。

 

「ラフィー、ねむい……ねたい……」

 

 寝ぼけ眼をこすりながらついてくるラフィーが言った。

 緊張感がないと言われてしまうだろうし、この態度に眉を顰める人間は少なくないのだろうけど。

 ……これはこれで、一つの割り切りで、結論なのだ。

 ぐだぐだと考えるよりも、やるべきことに集中する。反対に、そのときでなければだらけ始める。

 自分で考えろなどと口酸っぱく言う輩には扱いにくいだろうが。

 

「ラフィー。寝てもいいけど、転ばないでね?」

 

 指揮官としては、特にどうとも思わない。むしろ、首をこっくりこっくりとさせているラフィーが可愛らしいとすら思っている。

 酸素コーラを後ろに放り投げると、器用にキャッチする。

 ニコっと笑う。無邪気で、可愛らしい笑み。

 

「ありがと。これがないとやってられない」

 

 豪快に瓶に口を付けて飲み始めた。

 まるでおっさんのようなしぐさだが、妙に似合っている。

 これはこれで、子供らしい仕草なのかな……とちらりと思う。

 

「これ、ラフィー。いかんぞ、そんな女子がはしたない……」

 

 長門が渋面を作っている。

 どうやら重桜の象徴として緩んだところを人に見せられなかった彼女は、相応に身だしなみに厳しいらしい。

 まあ、今も人のことを言えるような恰好ではないと言われそうだが。

 しかし、この下着のような格好でも、肝心の下は一度も見せていないのだから……これは、しっかりしていると言えばいいのか。

 それとも、そもそも下着みたいな恰好はやめろと言えばいいのか。

 

「長門、うるさい。小姑みたい」

 

「な……なあッ! ラ、ラフィー。言うに事欠いて、小姑とは、何を言うておる! だ、大体……お主も、余も、指揮官の伴侶ではないか」

 

 顔を真っ赤にしていた。

 

「やだ、長門……純情キャラ?」

 

 わたわたと慌てる長門とは裏腹に、こちらは泰然としていた。

 指揮官も、渡した自分が思うのも何だが、よくコーラを走りながら飲めるな、とずれたことを思っていた。

 

「ぬぐぅ。きゃ、キャラとか……そんな”はいから”な言葉を言われても余には分からん……!」

 

「長門、気にしないでください。ラフィーの間の取り方は少々独特ですし、それに……」

 

 綾波が助け舟を出そうとして。

 

「ゲームの話? ラフィーと綾波、よくやってるよね」

 

 ユニコーンが諸共に撃墜した。

 

「ゲーム……というより、今風の言葉だけど……長門はネットとか、知らなそう」

 

「な、なにおう!? そのくらい、余も知っておるぞ。あれじゃろ? ぱーりぃ、とか、チョリース、とか」

 

「「「……」」」

 

 全員が首を傾げた。

 

「あ、綾波まで!? なぜじゃ。余だって、りゅーこーの最先端をだな……」

 

 あたまにポンと手を乗せた。

 

「し……指揮官?」

 

 期待するような、怖がるような、そんな顔。

 

「長門は長門のままでいいよ。その方が可愛いから」

 

「指揮官――ッ!?」

 

 赤くなるやら、蒼くなるやら。少し、騒がしくなった。

 

 

 そして、到着する。

 抉られた地面、渇いた血と肉が積み重なった赤色の地獄の中で気絶している5人。

 

「……さて、どうするかな」

 

 普通なら運び出して清潔な場所で看病すべきだが……あまりやりたくはない。

 血と鼻水と泥に塗れた身体を担ぎたいだなどと思う輩は残念ながら少数派に属するだろう。 

 そして、愛らしい彼女たちに背負わせると言うのも酷だし、それをさせるくらいならば放置しようというのも一般的な考えであるはずだ。

 艦船としてどうなのだろうと思うが、そういうコードは入力されていない。

 兵器として作るのなら人間に絶対服従で作るべきだと考えるが、思うにセイレーンの装置を転用、もしくは与えられた技術をそのまま使っているだけだから行動を縛ることができないのだろう。

 それでも規定を何も”知らない”のはおかしいことかもしれないが。

 

(これも、セイレーンの実験だったりするのか?)

 

 指揮官は日本に居たときはオタクと呼ばれる人種だった。

 漫画もアニメも、エロゲもかなりやっていたから分かるが、あのようなゴブリンキングに心当たりがない。

 まあ、モブキャラだとすれば忘れても問題ないのだろうが。

 

 まじまじとその姿を見ても特に感じるものはない。

 イケメンにはほど遠いが、気持ち悪いような顔でもない。

 まあ……普通だ。

 

(そもそも、男5人というのはありえないだろう。いや、主要キャラでなくとも初めに出すキャラとして間違っている。見る側は第一印象でさっさと切ってしまうものだから、当たり前に女を出す。奇をてらうなんて、ありふれた死亡フラグに過ぎないのだから)

 

(だからこそ、これは導入シーンとしては落第以下だろう。ゆえに、原因を考えるなら、やはりアズレンを前提とするべきだ。鏡面海域どころか、規模的には平行世界まで作った? 奴らの狙いは歴史再現を繰り返し、何か特別な力……特機戦力とでも呼べばいいのか、そんなものを求めていたはず。力が必要なら、別に再現にこだわる必要もないということか。まったく別の状況下における反応を見ているのだとしら……)

 

 ため息をつく。

 現状、最有力候補はこの世界がフラスコの中の世界であること。そして、予想するに決して倒せないほどの敵が現れるのだろう。

 なにせ、セイレーンが求めているのは倒せないはずの敵を打倒す特機戦力だ。

 丸々世界を一つ作ってまでやる実験だ、おそらく生易しいものではないはず。だが……

 

(精々踊ってやるさ。踊っている間はこの子たちと共に在れるのであれば)

 

 ちらりと様子をうかがう。

 6人はそれぞれ思い思いに時間を潰している。

 ラフィーは船をこいでいるし、長門は偉そうに腕を組んでいるが実際は何も考えていないだろう。

 綾波は中二よろしく明後日の方向を向いているが、敵を警戒している。

 エルドリッジは倒れている彼らの頬を突っついているし、ユニコーンはそんなエルドリッジの後ろで止めようか迷っている。

 

「……指揮官、どうした? 怖い顔をしているぞ」

 

 エレバスがかつん、と杖を鳴らした。

 

「悪いね。少し、不愉快な未来を考えていた。……エレバスは俺とお別れになるとしたら、どうする?」

 

 実験と言うからには、結果を出さなければ打ち切りになるだろう。

 別の可能性ももちろん考えられるが――しかし、この異世界転生と言う状況自体が薄氷の上に成り立つものであることは事実だ。

 いつ崩れても不思議はない。

 

「何を意味の分からないことを言っているの? 私とあなたは光と影、離れることはないでしょう?」

 

 さらりと言う。が――眼の奥に宿る光は何であるのか。

 信じ切って疑っていない。さおそれが常識であるかのように語っている。

 

「それは分からないんじゃないかな? 君たちが俺に愛想を尽かして出ていくことだってあるかもしれないし」

 

 エレバスは近づいてきて頭を撫でる。

 真剣な表情で見つめられる。

 

「……指揮官、本当に大丈夫?」

 

 頭の心配をされてしまってしまった。

 一般的に言えば、おかしいのは彼女の方だと思う。

 まるでヤンデ……

 

「少し、休む? 膝枕をしてあげるわ。少し眠れば変なことも言い出さなくなるでしょう」

 

 ひょい、と頭を抱え込まれて膝枕の体勢になる。

 地面の上だが、艦船としての水に浮く力を悪用すれば汚れはどうにでもなるとはいえ。

 

(しかし、なんだ……やわらかいな。いい匂いもする。……ねむく、なってきた)

 

「光あるところに闇あり。あなたのいる場所には私がきっとそばにいる。これは運命ではなく、法則──ふふ」

 

 エレバスの声が聞こえる。

 けれど、眠気に負けて世界が暗闇に閉じていく。

 だから、その声は聞こえない。

 

「指揮官。あなたを逃がすくらいなら、私はあなたを刈って私だけのものにするわ。……覚悟、してね?」

 

 艦船たちも、少しばかりの休息をとる。

 

 

 




最期に少しだけヤンデレシーン。
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