ロリ艦隊と異世界転生司令官   作:Red_stone

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第6話 異世界人

 

 冒険者たちが目を覚ます。

 彼らのリーダー、グリゴリー・スキルダだ。

 まず、仲間の様子を確認し、生きているのを見ると安心したように安堵のため息をこぼした。

 

「――ここは?」

 

 きょろきょろと周りを見渡している。

 そうすると、横にいる一団に目が留まる。

 

 指揮官はすでに起きていた。というか、数分も寝れなくて、すぐにこっちまで歩いてきた。

 誰が膝枕をするかを争う長門と綾波の声に起こされてしまったのだ。

 そのせいで更に論争が起きたのだが、頭をなでてやるだけで黙ってしまった。ちょろいと思い、そういうところも可愛らしいと感じる。

 

「見覚えがないか? ご存知の風景だと思うがな」

 

 そんな趣味全開の彼だが、とりあえず顔は真面目なものに固定している。

 一瞬前まで、ロリに囲まれてかまえかまえと大合唱されていた様子はその姿からは伺えない。

 名前も知らない冒険者たちのことなどどうでもいいが、しかし……さすがにそんな不真面目というか、犯罪一歩手前と言おうか、そんな姿は見せられない。

 というより、そんな浮ついた気分で臨むことなど許されない。

 

 ーーファーストコンタクトというのは重要だ。

 

 ここは異世界、そんな中に武装勢力が現れれば現地政府と衝突するのは当然だろう。

 なぜなら政府とは暴力装置、民を従わせるだけの戦力がなければ立ちいかないのだから。平和ボケしているといわれる日本にでさえ、犯罪者を武力で制圧する銃で武装した組織(警察)がいる。

 そして、強力な兵器を持つ勢力が現れたのであれば、無抵抗主義でもなければ何をするかは一目瞭然であるだろう。

 

 そう考えれば、指揮官たちの7人と言う頭数は多すぎた。

 それこそ、街を焼き払うことも可能な戦力が7つ。

 たとえ相手が一人で制圧できるほどに弱くても、安心材料としては弱すぎた。暴力などなくても、心を縛る方法はいくらでもあるのだから。

 現地政府がどれだけのものかはわからずとも、指揮官は武力になど頼らずとも心を砕く方法を10は挙げられる。

 

「……」

 

 グレゴリーは息を呑む。

 そんな姿だけは可愛らしい過剰戦力たちに見られている緊張感を味わいながら、彼は周りを見渡した。

 剣は転がっているが、手に取らない。

 そもそも反抗するというレベルではない。戦力の桁が違いすぎるから、刺激するような真似はできない。

 

「……元の場所かよ!」

 

 反応が遅れて突っ込みを入れた。

 指揮官は中々愉快な奴かと思って笑う。

 ラフィーに綾波も、つられて笑ってしまう。

 もっとも長門やエレバスは警戒を強めているし、ユニコーンとエルドリッジは怯えて指揮官の背中に隠れた。

 

「まあ、地面がひっくり返っているから分かりにくなっていたようだな。ところで、君は我々のことを覚えているか?」

 

 指揮官の声は固い。

 警戒を何一つ解いていない。例え、相手が虫けら同然の強さでも油断などしないし、できない。

 

「……アズールレーン、第一艦隊純白の雪姫(スノウ・ホワイト)?」

 

 彼の記憶力は悪くないらしい。

 あの地獄の中でしっかりと覚えていたのは褒めてやってもいいだろう。

 

「で、お前は我々を知っているかね」

 

「いや、知らない。聞いたこともない……助けてくれたのはありがたいが……お前たち、何なんだ?」

 

 まさか、何”者”でもないとは、と軽く笑う。

 確かに艦船は者であるかは微妙だなと指揮官は思う。艦船は艦船……人間では、ないのだから。

 そして、自分もーー今や人間の一人である意識はとうに亡くした。

 

「さてな。どうにも態度を決めかねている」

 

 深刻な表情を作って明後日の方向を見る。

 自分にも分かっていないことを説明しても無駄だから、指揮官ははぐらかしにかかった。

 

「……は?」

 

「まあ、こちらとしても元の艦隊と離れてしまったのでね。帰還の目途も立っていない以上、現地の政府機関と関係を持たずにはいられないわけだが、ここで一つ問題がある。そもそも、国家機関とはその性質上他者を食い物にする。隣人は良き友だが、隣国と心を結ぶことはないのだよ」

 

 難しいことを言っている風だが、実は何も分からないから棚上げしていることをそれらしく言っているだけだったりする。

 

「つまり」

 

「一言で言ってしまえば、そのあたりの常識を教えてくれると嬉しい」

 

 はぐらかした上で、直球に求めていることを言う。

 最初から最後の言葉だけ伝えろなどと言われるかもしれないが、これは詐欺のテクニックだ。

 目的を悟らせない、効用はそれだけだが……それだけに”煙に巻く”効果が強い。

 人間、生きていれば言葉で何でも伝わるわけがないことは経験している。だから、分かること以外はシャットアウトしてしまうようになる。

 これは生きる上で当たり前のことだ。だって、他人のことなんて何でもかんでもわかるわけではないのだから。

 ゆえに分かるところだけ返すのが良い人で、悪い人は多分そっぽを向いてどこかへ行ってしまう。

 ……指揮官の誘導したとおりに。

 その真意を考えることもなく。

 

「常識……ね」

 

「諸々を。どんな小さなことでもいい。重要かはこちらで判断する」

 

 広く、浅く。何も情報がない現状ではどんなものであれ、重要だ。

 そして、彼らに指揮官たちの知識が全くないことを悟られないこともまた重要で、この二つは両立させる必要がある。

 

「ああ、その前に。ーーまずは場所を移そうか」

 

 戦場跡を後にして、草原に移動する。秘伝冷却水を渡しつつ、話を聞いた。

 反応はそれぞれ……もちろんラフィーは寝ていたし、エルドリッジは指揮の膝を枕にして、綾波はうつらうつらとして脇をつついたら寝ていませんよ、などと狙ったかのようなことを言い、長門とユニコーンはしっかり聞いている。そして、エレバスは聞いてないようなふりをしつつ、しっかり聞いていた。

 冒険者の彼らは逆に画一的だ。リーダーがしっかり話して、仲間もそれを聞いている。時折訂正や助け船が入り……この指揮官に対して下手なまねができないことはよくわかっている。

 

「なるほどね。大体わかった」

 

 とりあえず、ここは地球……それも欧州の辺りの地理を再現したものである。ただし、イギリス・ドイツ・フランスに位置する3つの大国が人類の生存権を担い……その外側は分かっていない。

 確かめようにも海に棲む魔物のせいで調査も碌にできない状況だという。

 政府については立ち位置すらも碌に分からなかったが……理解できたのは、どの国も”ろくでもない”とい言うことだけだ。

 力があれば冒険者として自由に生きることができるとのことだがーー

 

(冒険者だから自由に生きますというのはありえないな。いつの世も正論とは痛いもので、正論は権力の特権だ。正論を振りかざせば、個人などいかようにもできてしまう。極論、兵力を配置せずに、民を人質にとって出撃でも迫れば戦費を浮かせることができる。あなたが動かなければ罪のない民が犠牲になってしまいます、といった具合だ)

 

 指揮官としては、人の善意などまったくもって信じていなかった。

 多少汚い……否、汚くなくとも正当な手段で己らを使いつぶすことは容易だろう。

 目の前の彼らで一流というのなら、艦船という特級戦力なら使い道などいくらでもある。潰れるまで使い倒せば、脅威も消えて一石二鳥だ。

 

「……とはいえ、君たちと話していても埒が明かないな。とりあえず、近くの町に寄らせてもらいたい。案内を頼めるか?」

 

「ああ、もちろんだ」

 

 そういうことになった。

 もちろん、指揮官がそういう風に誘導したわけだが。

 

 そして、冒険者の彼は仲間の手当を。

 指揮官は彼らから離れ、自分の仲間と話をする。

 

「ーー聞かれている様子は、ない」

 

 ラフィーの第一声。

 

「そうじゃな。彼らにも我々の目的を探ろうという気配があったが」

 

 長門。難しい顔をしている。彼女は一番この世界を気にかけている一人だ。

 この異世界で人がどう暮らしているか、心配で仕方ないらしい。

 重桜の巫女の慈悲は自国民だけでなく、あまねく民草に向けられているらしい。

 

「そこは俺が避けた。戦力は我々が上だ、彼らも無理やり聞こうという気にはなれないようだな。話をはぐらかしても追及されなかった。正直、俺に交渉力というものを期待されても困るからな……」

 

「まあ、装備もボロボロになってましたから寝た子を起こすような真似はしないと思います。彼らを警戒する必要はないでしょう。……信頼も、できないかと思いますが」

 

 綾波。見知らぬ人間を諸手を挙げて信用するほど甘い人間ではない。

 いや、もしかしたらそんな”優しい”艦船なのかもしれないが、完全に人を疑ってかかっている指揮官の前でそんな発言はしない。

 

「で……でも。あの人、優しそうだったよ?」

 

 こんなことを言うのはユニコーンだ。

 頭を撫でて黙らせた。

 

「あいつら、アズールレーンの関係者じゃない。でも、セイレーンともかかわりを持っているとは思えない。……あいつらは、なに?」

 

 エルドリッジ。これも、指揮官の資質によるものだろう。指揮官がそういう志向を持つ以上、彼女たちもそれに引きずられてしまう。

 戦う敵を決めるのは艦船ではなく、あくまで指揮官だ。

 もっと言えば、大本営が決定して、それに指揮官が従う形なのだがーー普段からそのあたりは混同しているのに加え、それ(大本営)がない今は指揮官が独自判断で動いている。

 

「その正体については今議論すべきことではない……かな。おそらく、ただの当て推量にしかならないだろうよ」

 

 そして、指揮官の結論は様子見。

 もっとも声色と態度を見れば分かるだろうーーこれは戦略的な友好路線であり、指揮官本人は彼らを微塵たりとも信用していない。

 間違った言い方をすれば敵視している。

 オタクといっても、その内心は様々だ。そして、指揮官は他人が嫌いな類の人間だった。むろん、社会生活を問題なく送れていたことから致命的とまでは言えないが……その感情は彼女たちにも伝播する。

 

「ならば、第三者として扱うのが礼儀ということであろうな。……しかし、アズールレーンにはそのような規定はないぞ、指揮官。どうする?」

 

「……さて、ね。このまま連絡が取れないままであれば、俺が決定する以外にないのだろうけど」

 

 少し考え、宙を向く。

 けれど、下手の考え休むに似たりというか……人間嫌いで、一方で憎悪するほどにも思い入れがない、死んでいないから生きているような人生を送っていた指揮官にはその応えは出せない。

 ゆえに。

 

「長門はどうしたい?」

 

 他人に任せる。

 

「……む? 我々は指揮官に従うが」

 

「そういうことじゃないよ。別に決定権を譲ろうとする気はないさ。ただ、長門はどっちがいいか気になっただけ」

 

「助けられるなら、助けたほうが良いと思う。……重桜の益を損なわぬ範囲であれば……」

 

 少し気まずそうに身じろぎする。

 見つめられていたからか、少し頬を染めていた。

 次に綾波を見る。

 

「……見捨てるのは後味が悪いのです」

 

 少し、戸惑い気味だ。

 ラフィーを見る。

 

「助けられるなら、助ける」

 

 静かだが、その時が来れば”やる”だろう凄みを感じた。

 エルドリッジを見る。

 

「ーー」

 

 頷いた。同意見、ということだろう。

 ユニコーンは。

 

「助けられるなら、助けたいよ。お兄ちゃん……だめ、かな」

 

 上目遣いに訪ねてくる。なかなかにグッと来る仕草だ。

 少し離れた個所で髪を風に流しているエレバスを見る。

 

「慙愧も、後悔も、執念も、ずっとまとわりつくものなのよ。……そして、冷たいだけの闇は好きではないわ」

 

 分かりにくいが、ようする見捨てたという罪悪感のことだろう。

 罪悪感を持ちたくないから、助けたい。もしくはそれに囚われないようにとの優しさか。

 指揮官も、自分が誰かを率先して救いたいという人間ではないことを自覚しているが、しかし罪悪感をこの優しい子たちに抱かせたくはない。

 ……それはきっと、つらいことだろうから。

 まあ、指揮官本人はそれを自分がそんなことを感じるなんて自分でも思っていないけれど。

 

「なら、守ろうか。……人類を」

 

 そう決めた。

 軽い覚悟というわけではなかった。

 守るのも、守らないのも”どちらでもいい”。

 テレビの向こう側のように、関係のない人間共だ。

 けれど、かわいい子たちの前ではカッコつけようという下心と、喜ばせたいという気持ち。そんな、関係のないことで決めてしまう。

 

 実際、衝撃的なことが起きたところで一日二日で性根が変われば世話はないのだ。

 だから彼は何も変わらない。

 指揮官となって艦船になり、人間を辞めようと……そいつはそいつのままだった。

 

 

 




 指揮官の目的は6人の艦船を囲うことのみです。それ以外に興味を持っていません。
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