ロリ艦隊と異世界転生司令官   作:Red_stone

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第7話 十二神族、来襲

 

 

 6人の子たちはいつも指揮官の周りを囲んでいる。 

 歩いているときも、食事をとっているときも。そして、眠る時でさえも。指揮官が一人になることなどないくらいに。

 指輪を与えられているためか、指揮官によく懐いている。そのうえ、艦船の本能として命令に従うべしと刻み込まれている。

 指揮官にべたべたと、いつも……とても楽しそうにしている。

 

 だから二つのパーティの旅は、おのずと二つのパーティのままで混じることがなかった。

 貴重な人とのふれあいの機会というのなら、それを完全にふいにしている。

 人間がどういうものかも知らずに、ただ自分達だけで完結する。

 社交性にあふれた者……例えばジャベリンなどが居れば違うのだろうが、これは人嫌いの指揮官が選んだ艦船たちだ。

 基本的に人付き合いに難を持っているから、向こう側から話しかけられない限り触れ合うことがない。

 

 ーーただ、散歩のように、指揮官との旅を楽しむだけだ。

 道案内は男5人、けれど気にしなければいないのと同じだ。

 逆に冒険者たちの側としても、姿形は子供だから体力の心配をしていたが、不要だとわかってからは普通に歩いている。

 彼らにとっても、この異様なパーティと馴染めというのは酷な話だろう。

 

 何せ、幼女6人……もっとも、学年で言えば中学生辺りになるかもしれない子もいるが、十分子供だ。と、男が一名。

 目端が利かなくても、ずっと見ていれば左手の薬指に指輪をしているのが分かる。

 どういう関係だと、詰問するのは無理がある。

 キレて襲い掛かれたら全滅だ。

 それこそ、楽しそうだからまあいいか、なんてありていな結論に落ち着いてしまうのは当然と言えた。

 

「君たち、街があるというのは……あちらか?」

 

 だから、指揮官が訪ねてきたときには哀れなほどびっくりしていた。

 指揮官も悪気があって冷たい声色をしているわけではなく、ただコミュ障なだけなのだが。

 

「お、おうーーそうだぜ。どうした?」

 

 動揺が収まりきらないのか、目が泳いでいる。

 

「ならば、手遅れか。……しかし、やらない理由にはならんな。どこまで取り戻せるか」

 

 指揮官が彼方を厳しくにらみつける。

 空気が一変した。殺気をまとい、引き絞られた弓のごとく緊張感を増していく。

 

「なに……ッ!?」

 

 指揮官の様子に不吉なものを感じたのか、彼も慌てて目を凝らす。……すると、なにかが空中に見える。

 

「チュートリアルは終わりかな」

 

 指揮官が呟いた。

 

「え……?」

 

 視力強化。それを見る。

 ”それ”は絶望だった。

 空に浮かぶ空中要塞。氷で構成された城、攻めるには容易でなく、さらに硬い。そして、それを天空に浮かせるだけの脅威。

 --ありていに言えば世界の終わりだ。

 街など、それが突っ込むだけで全て壊される。生き残れようはずもなく、皆殺される。それを数十回ほど繰り返せば、なるほど人類はこの世から消えるだろう。

 

「空ならば遠慮は要らない。長門、全力砲撃……スキルを使って奴を撃ち落とせ」

 

 指揮官はためらわない。

 冒険者たちには分からないが、今も熱源が一秒ごとに消えていくのを感じている。それは命の輝き、ありていに言ってしまえば街の人間たちの生命反応。

 艦船のレーダーが捉えたリアルタイムの地獄だ。

 天空に浮かぶ氷城の暴威が殺戮をふるっていた。ゆえに誰一人逃れられず、氷に閉ざされた生命なき氷像と化す。

 

「了解した。指揮官……余は長門……重桜の長門である! 重桜の誇り、そして威信を目に焼き付けるがいい!」

 

 そして放たれる『BIG SEVEN-桜‐』。

 あらゆる全てを灰燼に帰す究極の一撃、地に向けて放てばそれこそ救うべき街を焦土と化す”それ”が氷城に突き破り、中心部の竜さえも脅かす。

 

「オオオオオオ!」

 

 大地を震わす偉容、人の心を打ち砕く竜の声が響く。

 咲き誇るように増殖する氷の花。ディテールを増し、氷城は窓も扉も閉ざし空中に浮かぶ一つの球体と化す。

 意味するのは防御態勢。長門の一撃を脅威と認めつつも、避けるには及ばぬと判を下す。

 

「余の一撃。重桜の一撃を受け止めると申すか! ならばよかろう、その傲慢ごと打ち砕いてくれる!」

 

 長門が叫ぶ。

 彼女は強い。最高レベルに達しているのはもちろん、さらに設定上「強力な一撃を持つ」ことがストーリーで示されている。

 システム上はともかく、この世界では彼女以上のダメージを叩きだすことなどできはしない。

 

「ーーカカ」

 

 だが、竜は彼女を嘲笑った。

 そして、長門の一撃は本体にまで届かない。

 

「……なん……じゃと……?」

 

 呆然と見上げる長門。

 そして、敵は反撃を開始する。

 

 ーー氷城の城壁が堕ちてくる。

 

「エレバス、破壊しろ」

 

「了解、妹は……この子たちは私が守るわ」

 

 スキル発動『魂凍ル氷闇ノ深淵』。

 視界を埋め尽くす弾幕が、堕ちる城を破壊する。見上げるほどに巨大かつ荘厳な氷の城は砕いてもなお、その欠片だけで人を殺すには十分すぎる。

 

「ラフィー、エルドリッジ。対空砲で対処」

 

 ゆえに更に砕く。

 指の先ほどまで小さく砕けば、ダイヤモンドダストの幻想的な風景が見れる。

 

 けれど、狙いはそれではない。

 道は作った。ならば、後は一直線に駆け上がるのみ。

 

「さあ、綾波。……行こうか」

 

 綾波に手を差し出す。

 手と手を取り合い、ユニコーンの艦載機に飛び乗って氷城までまっすぐに。

 

「ーーオオオオオオ!」

 

 竜が吠える。それは攻撃の予兆。

 1トンを超える氷塊は攻守に優れた優秀な兵装。もちろん、そんな馬鹿げたものを操れればという話ではあるが。

 

「くっく、面白い。プロローグはもう終わりと。……超えて見せろというのだろう? 敵は強大、攻撃は届かず喰らえば死だ。ああ、なんとも分かりやすい」

 

 ただただ強いーーそれこそが竜と言えばそうなのかもしれないが、しかし一般的な作品の竜と比べて強すぎると不平を言っても叱られることはあるまい。

 ステージいっぱいに、どころか土台ごと押しつぶす氷城墜としの一撃は回避不可能にして絶死。

 文字通りに城を跡形もなく粉砕することが前提条件として求められる。

 さらには、それは通常攻撃であり、攻撃回数が限られた必殺技ではないこと。

 そして敵は守りは厚く、再生する。

 これだけの悪条件は中々見ない。

 

「ならば、近づけば良いだけのこと! ユニコーン、艦載機を射出しろ。足場を作れ! 綾波、いけるな?」

 

「もちろんです。鬼神の力、見るがいい……ッ!」

 

 身体をたわめ、ばねを溜める。

 スタート、自らの体を射出し、氷から氷に飛び乗ってジグザグに。

 そして、周りを周回しながら攻撃を加えるユニコーンの艦載機が敵をかく乱する。

 

「くっく、ハッハーーッ!」

 

 指揮官は狂ったように笑う。

 踏み外せば死。

 マリオをはじめとするRPGにはよくあるステージだが、これは事情が別だ。なにせ、踏み外せば本当に生きて戻れない。

 ファンタジーはファンタジーで、現実とは違う。

 ジャンプしたら次の浮島に届く、は、だから駆け抜けられるということにはならない。

 けれど、高レベルの恩恵が不可能を突破する。ありもしない、経験というものが戦闘能力を引き上げる。

 

「ああ。いいぞ、いくらでも来い!」

 

 蹴って、飛んで、攻撃が当たるようなら氷を殴り飛ばして位置を調整する。

 そんな暴挙。まともにプレイすれば100回は死ぬような曲芸をこともなげに実行する。

 しかし、敵としてはRPGのようにクリアできるように弾幕を撃つ必要はないのだ。

 視界全てを埋め尽くして回避できなくさせるのはゲームでは禁じ手でも、現実では当たり前にやるべき策の一つでしかない。

 だから、下から援護する。砲撃で氷の壁を砕き、道をリアルタイムで作り続ける。当然敵は塞ごうとするからイタチごっこだ。

 けれど、回数を重ねるだけ指揮官と綾波は敵に近づく。

 

「くは。……さあ、突破されるぞ!? ご自慢の氷の領域はアトラクション程度か! ならば笑ってやろう。楽しかったぞ」

 

 都合、26回。それだけの移動を費やし氷城までたどり着いた。

 そして、その狂った命がけの強行軍が楽しくてたまらない。アドレナリンが火を噴いて止まらない。

 艦船としての本能が闘争心に薪をくべて、さらにさらにと燃え上がる。

 

「ーーふ!」

 

「ーーは!」

 

 拳と大剣が氷を砕く。

 けれど、リーチが足りない。破壊は竜にまでは届かない。

 

「ち」

 

「ダメでしたか」

 

 氷の反撃をかわし、艦載機に飛び乗る。

 あれだけ苦労して近づいたにもかかわらず、不利と見るやすぐに距離を離す。しかし、狂ったような笑みは指揮官の顔に張り付いて剥がれない。

 もう一度、と逸る気持ちはあるが……ああ、前と同じではつまらない。

 何か、手をーーあの氷の壁を突破する手段を。しかし、最大攻撃はしのがれたし、直接攻撃にしても弾かれた。

 

 見れば案の定、敵周辺はすぐに氷に閉ざされる。

 砕いた壁もすぐに復活したようだ。

 あのままとどまっていたら、いくら飛んで跳ねてで回避しても氷の霧に肺をやられていた。

 

 そして、指揮官からの命令が艦載機に伝わっているのは何のことはない、常に無線をつなげた状態で戦闘しているというだけのこと。

 艦船なのだから、声による情報通信にこだわる必要などない。

 むしろ電波のほうが速く、確実だ。

 

「さすがに硬い。では、次だ。……タイミングはつかめたか、綾波? 次は雷撃でアプローチする。俺が砕いたところに突っ込んでやれ」

 

「指揮官が危ないですよ?」

 

「問題ない。ユニコーンが回収してくれる」

 

 指揮官の目には執念が宿っている。

 絶対に殺すという鋼の意思。そして、その殺意に酔いしれている。

 

「でも……!」

 

「命令だ、綾波。さて、隙ができたぞ。エレバス、今のうちに削ってやれ」

 

 氷の霧は近づく者を殺す避けようのない死だ。

 細かな霧が肺を突き刺し、死に至らせる。それは毒ではないから、毒耐性ですら無意味だ。

 息をする生き物ならばなんでも殺せる。……そんな切り札が負担なく使えるはずもない。

 

 下にいるエレバス、ラフィー、エルドリッジが敵の領域を削っていく。

 

 業を煮やしたのか、戦術を切り替える。氷の壁を射出した。

 あの霧は範囲が狭い。ゆえの切り替えだが、もちろん指揮官はそれを待っていた。

 

「さあ、行くぞ綾波! もう一度だ」

 

「了解なのです」

 

 もう一度のアプローチ。

 当然のように先の光景を再現する。

 すでに手札は切った。同じ条件なら同じ結果が得られるだけだ。

 

「ーー」

 

 けれど、氷を殴り壊し、そこに魚雷を叩きこんでも壊れない。

 二弾攻撃でさえ、同じ結果を繰り返すに終わった。

 そして、今度は撤退ができない。ヒット&アウェイを捨てた捨て身の一撃ゆえに、しのがれたら大きな隙をさらす。

 

「……クク」

 

 竜はその決定的な隙を見落とさない。

 必ず殺すと殺意を向けて。

 しかし、視界に収めたその男は中指を一本立てていた。

 

「貴様のような強大な竜は殺し合いなどやったことがなさそうだから、一つ教えてやろう。基本、勝ったと思った瞬間が一番の隙なんだよ」

 

 その言葉を理解するより先に、上から暴威が襲ってきた。

 

「重桜の誇りは折れぬ! 何度でも立ち上がると知るがいい!」

 

 急降下の勢いをそのままに、上空から長門のスキルが襲い掛かる。

 指揮官の狙いは主に二つ。

 一つは単純に長門を戦闘機の乗せ、遥か上空から急降下した勢いで砲撃させることで破壊力にスピードを加えること。

 第二に注意を下に向けさせた上で、別のことに力を使わせること。破壊個所の修復に指揮官を殺すための攻撃、その二つに出力を回していたから、急に防御に回すことなどできない。

 攻防一体などと言っても、そんなものは手順を踏めば突破できるものでしかなかった。……少なくとも、このメンバーにとっては。

 

「グルルオオオオオ!」

 

 けれど、腐っても竜。雄たけびと共に力をふり絞る。

 敗北など認めぬと、死ぬのは貴様らだと。生まれながらに蹂躙する立場にいる竜は、その矜持にかけて刈られる側には回らぬと喝破をかける。

 

「馬鹿め、もう遅いーー」

 

 けれど、もう詰みだ。

 どこまで誇りを種火に燃え盛ろうと、死神の鎌はすでその首を捉えている。

 そう、指揮官はすでに命じてある。

 

「いっちゃええ!」

 

 ユニコーンの声。爆撃だ。

 氷を砕き、長門の砲撃が竜に直撃する。

 

「ガアアアア!」

 

 苦し紛れの一撃。そのはずが、氷塊の一つが指揮官に迫る。

 空中ではかわせない。

 が、致命傷ではない。苦し紛れで死ぬほど情けないことはないゆえに、決して死にはしない。怪我は負うだろうが……

 

「かまうな! ()れ」

 

 そう命じるも、地上からの砲撃が氷塊を砕く。

 ユニコーンの戦闘機が指揮官を拾う。

 

「……ッ!」

 

 羽の上で転がる。

 そもそも戦闘機の使い方として上に乗るほうが間違っているのは言うまでもない。

 指揮官でも立ち上がるまでは多少の時間を要した。

 それは、明らかに隙だった。指揮官を救うための行動が、敵に反撃の猶予を与えた。

 

「ガアアアア!」

 

 氷の霧が膨れ上がる。

 全てを飲み込み……

 

「ーー」

 

 霧が消えた後には何も残っていなかった。

 

「取り逃がした、か」

 

 

 指揮官が悔しげにつぶやいた。

 暗い雰囲気を抱えたまま、地上へと戻る。

 

 

 

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