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博麗神社、その境内の中にある博麗の巫女である霊夢の生活スペースで2人の少女がちゃぶ台を挟んで向かい合っていた。
「ねぇ魔理沙、アンタって妖怪たちのことをどれだけ知ってるのかしら」
「ん?いきなり藪から棒になんだよ」
普段の雑談に突如として交わった不思議な質問に魔理沙は怪訝ながらふざけて答えようと口を開き……霊夢の真剣な表情に口を閉ざしてしまった。そしておふざけ無しで答える。
「どれくらいか、か……うーん、普段の生活や能力程度かな。なんでこんな質問をするんだぜ?」
「そう……そうよね。うん、ならいいわ。今の質問は忘れて」
「おいおい、いきなりそう言われると余計に気になるじゃないか」
「本当になんでもないの、気にしないで」
「そう言われてもな」
そう言って魔理沙は立ち上がり霊夢の横に座ってその表情を伺う。霊夢のその顔はどこか不安を内包した表情だった。それを見て何かあると確信すると魔理沙はより霊夢に近づき、顔と顔を合わせるために霊夢の頬を両手で挟み込んで力ずくで自分へと向けた。
「霊夢、お前がそう言ってことはなにか気になることがあるんじゃないのか?」
「……」
「お前はここ、博麗神社の巫女様だぜ、一応は幻想郷最強。そんなお前がなんの意味もなく、他愛もない質問を無意味にしないだろ?」
たとえそれが意図したわけではないとしても、どこか博麗の巫女としての力が反応しているのはこれまで起こった異変からでも、今までの霊夢の行動からもわかっていた。故に魔理沙はその訳を聞き出すまで引き下がることは無いだろう。
「……そうね、話した方が本当はいいのかもね」
「おう、ならとっとと吐いちまえ。スッキリするぜ?」
やっと話す気になった霊夢から手を離し話を聞く体制を整える魔理沙に対し、霊夢はキョロキョロと周りを見始める。
「その前にアイツを呼ばないと……出てきなさいスキマ妖怪。見てるんでしょ、具体的には私と魔理沙の間で」
おもむろに霊夢が虚空に向かって話しかけ、最後の方になると自身と魔理沙の間に素早く手を伸ばしそこにあるであろうスキマヘ手をかけた。
そして開こうとするも……なぜか開かない。全力で力を込めるも全然開かない。そのことに徐々に苛立ちを貯め始めた霊夢。その顔は鬼も顔負けな怒り顔であった。
「ちょっ、抵抗しないで!なんでそんな全力でスキマを閉じてる訳!?」
『いや、だってまだ準備が出来てないし。それにそんな般若みたいな顔で見られたら怖いじゃない!』
「誰が般若ですって!?」
『ひっ!らぁーん!助けて!この巫女怖いんですけど!』
おもむろにお祓い棒を取りだした霊夢。それを無遠慮にスキマへと叩き込んだ。
『ちょっ!?待って、なんでそんなに威力あるの!?こっちのスキマにまで影響あるんだ──』
再度振りかぶり、スキマの先にいるであろう人物の目の前までお祓い棒を突き刺す。
──ズドン!!
『ぴっ……!』
「次はスペカを放つわよ」
『え、え?』
「さ〜ん……に~ぃ……い~──」
「分かったわよ!少しは待ちなさいよ!」
「呼んだ時にすぐ来ない方が悪い」
「こっちにも都合ってものがあるのよ。全く……霊夢、貴方は相変わらずワビサビというものがわからないのね」
その言葉をスキマ妖怪──八雲紫が呟いた瞬間お祓い棒を手にたたきつける。その音にビビった紫はスキマから転げ落ちて頭から床にぶっ刺さってしまった。
「おいおい、ちょっとやりすぎなんじゃないか?それに霊夢……妙に強くなってないか?」
「そうね、やりすぎたわね……強くなった?私が?そうかしら、普段と変わらない気がするんだけど」
「そうかー?まぁいっか。強くて悪いことはないもんな!」
今の両者のやり取りを見ていた魔理沙は少々違和感を覚えつつも別に支障はないか、と思いつつ紫を見る。頭を床から抜き終えた紫は頭に着いた畳のクズを払いつつ正座をする。その様子を見て霊夢も座り3人は食卓の横で三角形に座って話を始める。
「それで、霊夢。私を呼んだのはなんか理由があるんでしょうね?」
「いつも必要ない時にスキマから顔を出すのに……いいわ、今はそんなこと大事じゃないもの」
「霊夢、幻想郷の賢者も引っ張り出すってそんな大きなことなのか?」
「いえ、今回に関しては紫には賢者より犯人としての立場で居てもらうのよ」
頭の上にクエスチョンマークを浮かべた魔理沙を放置し、霊夢は紫へと話しかける。
「紫、最近アンタ……なんかやらかしたでしょ」
「なんのことかしら?」
「じゃあこれは何?」
霊夢は懐からおもむろに取り出した奇妙な石……いや、不気味な石を3人の間に置く。その形状は非常に薄気味悪く、人間の胎児に角に、翼が生えた異様な石だった。
「あたしがこれを見つけたのどこだと思う?」
それを見た瞬間の紫の表情の変化は劇的だった。一気に表情が変わり、まるで睨むようにその石を見つめ始めた。
「霊夢、まさかだと思うけれど……私の家を見つけたわね?」
「そう、やはりあの家が、あのボロ屋敷がアンタの家なのね」
「……はぁ……そっか。やっぱり見つかっちゃったのね」
ため息ひとつついた後、元の表情に戻った紫は次に霊夢を見て心配そうにつぶやく。
「まさか、見つけるとは思わなかったわよ。一体どうやってあの境界に入ったのかしら?」
「それが分からないのよ」
「分からない?」
「気づいたらあんな辺鄙な、薄暗い場所にいたの。そしてそこの腐り果てた庭で拾ったのよ」
霊夢は今の言葉に考え込む素振りを見せる紫に当てが外れたのか、怪しむような表情を少し引っ込めて改めて質問を続ける。
「聞くけど、これはあんたが何かやらかしたわけじゃないのよね?」
「えぇ……私はそれについては手出しをしていないし、あそこの空間も私の仕業じゃない」
「じゃあこれはなんなの?それにあそこも普通と違う空気というか、異常に何かの気配が漂ってたわよね」
もはや話についていけないのか魔理沙は少々居心地が悪くなっているようで、少しソワソワし始めている。その事に両者が気づくことは無いが。
「その石は端的に言えば『悪魔』ね」
「悪魔?
「これは幻想郷の外で生まれた悪魔なのよ」
「じゃあこれも忘れ去られた存在というわけ?」
「いえ、それは自身の意思でここに来ているの。博麗大結界に力を吸われたせいでそんな石になっちゃってるけど」
「ふーん……それは後で確認するとして、あの空間はいつからあったのよ」
「だいぶ昔からよ、確か──」
「なぁ!」
ついに蚊帳の外に追い出されていた魔理沙が爆発した。
「何よ、こっちは大切な話をしてるの」
「いや、それもそうだけどよ。なんの話ししてるのか私にはよく分からないんだ。それに霊夢の最初の質問の意図も分からないし」
あー、と。完全に忘れていたようで霊夢は手をポンっと叩き気づく。
「そうね、紫。先にこっち終わらせてから話の続きしましょ」
「えぇ良いわよ。今はまだ危ない時期じゃないから」
「……それで、魔理沙。最初の質問の意図だったわね」
「おう」
「それはね」
一旦間を置き、今回起こっている妙な事件について話を始める。
「ここ幻想郷に住む妖怪、人外達が本来の姿に戻りそうなの」
これより幻想郷全てを巻き込んだ異変である【幻想郷大侵略】が始まる。
それは幻想郷史上最も大きい異変となるだろう……
【to be continued】
【topic:この作品における博麗霊夢】
博麗神社の当代の巫女。自由奔放で、その性格は割と冷徹。仲間意識というものを持っておらず魔理沙でさえ友人止まりで、紫ぐらいしか信頼していない。でも割と魔理沙は大事、ストッパーになってくれるし?
【topic:この作品における霧雨魔理沙】
普通の魔法使い。力を誇示するのが好きで常に難癖をつけて弾幕ごっこを行いたがる。かなりの脳筋で派手な魔法ばかり使う。霊夢の力に嫉妬してるけど、霊夢は大事。寂しいしね。
【topic:この作品における八雲紫】
幻想郷の賢者様。多分幻想郷で一番謎な女。唯一霊夢に信頼されており、幼い頃からの付き合いがあるため霊夢の事は姪みたいな気分で見ている。娘は橙。蘭も娘。