「えっー……と」
どこだここは。
気づいたらなんか砂だか砂利だかの上で大の字のまま倒れていた。上体を起こし周りを見て見ても先程の疑問は解決しない。なんだあのボロ屋敷、ホラゲかなんかの舞台か?
「ったく、何があった?」
こうなる前の記憶を思い返す程もない。いつも通り仕事が終わり、家に帰り、ビールを飲みながら冷凍の鍋焼きうどんを食べながらテレビを見ていた。
「ん、で、気づいたらここか……ホラゲかよ」
呪われた覚えもないし、呪われるようなことは見覚えない。良くも悪くもモブといった感じだったからだ。社畜と笑いたきゃ笑え、俺はそれを胸を張って言い返そう「満足してんだから黙ってろ」ってな。
「さて、どうしたものかね。こういうものの定石はあの屋敷に脱出のヒントとかこの空間の秘密とかがあるんだろうさ」
よっこらと立ち上がり、体の後ろについている砂利を払う。この薄気味悪い歪んだ灰色の空を見ない為にも屋敷の方へと足を進める。
「はてさて、鬼が出るか蛇が出るか。出来れば蛇の方がマシだな」
「ここが私の屋敷よ」
霊夢、魔理沙、紫がスキマからその姿を表し寂れてボロボロとなった屋敷へと到着した。
「あー、なんというかあれだな……」
「ん?」
「ボロ臭くねぇか?」
「マヨヒガ……だったわよね、あんたの家」
「そうね。でもおかしいわねぇ?ここまでボロかったかしら」
マヨヒガ、突如として山の中に出現する生活感を感じられる痕跡を残した屋敷。本来なら屋根がガタガタ、扉も立て付けが悪くなっていたりせず普通に暮らせる屋敷なのだ。欲ある者には何も与えず、欲がない者に恩恵を与える屋敷である。
「考えられる原因としては、やはりこれかしら」
霊夢がしゃがみ庭に落ちている石を手に取り2人へと見せる。それは先程紫を問い詰めた際にみせた気色悪い胎児のように丸まった悪魔のような石があった。
2人はその石を見たあと周囲を見回すとそこかしこにポーズが違えど似たような石の数々を見つけることができ、思わず顔が引き攣ってしまう。
「……やっぱり増えてるわね、それにどうやらこれらに妖力吸われてマヨヒガは古くなっているようよ」
「それって……まずいのか?」
「まずいわよ。要はこれらは死んでなくて、復活しようとしてるってことになるの。ざっと見た感じだと数十から百数個ほどありそうね」
それら全てがなんの目的をもって幻想郷へと来たのか、一体誰がそのようなことを企んだのか。不明も不明だがそれでも言えることがあるとするならば。
「彼らは私達の流儀に則るつもりは無いってことよねぇ」
「オマケにこれ、外の概念も纏ってる。これが原因で妖怪達の本性が出てるって感じする」
「いつもの勘かしら」
「そうね、術に関してはサッパリだけど、明確な悪意を持って幻想郷に来てることははっきりと分かる」
「このまま放置するとダメってことだな!それより2人とも」
「ん?」
「何かしら」
「屋敷の中からなんか物音するんだけど」
その言葉に耳をすませば確かに屋敷の中から何かが歩く音や、何かを漁っているようなガサゴソとした音がしている。その音に顔を顰めた紫は傘に妖力を集め屋敷へと近づいていく。その様子に2人は同じようにそれぞれの得物、お祓い棒とミニ八卦炉を取り出して警戒しながら紫の後へと続いていった。
屋敷の様子は相変わらずボロボロ、だが確かに変化があった。
「……縁側の襖が空いてるわ、ここから入ったようね」
「ここに転がってる石ころが実体化したってことなのか?」
「違うでしょうね、こいつらからは少なからず魔力を感じとれる。実体化したならばその魔力の残滓があるはず……それがないってことは、また別の何かね」
────んー、ここなんもねぇな。生活感あるから人いるっぽいんだけどなぁ。
屋敷の奥から、声がする。
「男の声……?」
「人、かしら」
「なぁもしかしてだけどさぁ、外来人じゃないか?」
それでも警戒は緩めない。この場の異常性故に、無関係だと考えるだけ油断してしまうから。もしかしたら今回の件の犯人かもしれないのだから。
────蛇も鬼も出ねぇ、拍子抜けだよ。ホラゲなら返品モノだな
「……入るわよ」
「スペカ、用意しときなさいよ魔理沙。」
「分かってるって」
「それと紫、あなたは後ろにいなさい。何かあった時のために退路を確保してもらうから」
「それもそうね、わかったわ」
ここで魔理沙は疑問に思った、何故霊夢は拳を握っているのか。
外から何か物音がした?
「お?」
さっき俺がここに入ってきた場所の方向から物音がした……ってことは誰かが俺がここに入ったことに気づいたのか?いや、単に獣かもしれないな……なんか武器になるものないか……なんもねぇな。
ふと後ろから一際大きい踏み込みらしき音がして、振り返ったら──
なんかこっちを見て拳を振っている女性──いや、少女らしき人物がいた。
「フンッ!」
「がっ!?!?!」
「え、ちょ、霊夢!?」
【topic:マヨヒガ】
迷い家と書く東北地方で伝わる妖怪。無欲な訪れた者へ富を授けると言われ、強欲な者は何も得ることが出来ぬ。
有名な話は「遠野物語」だろう。
【topic:外来人】
幻想郷の外から時稀に訪れてしまう人間のことである。場合によっては自身の意思で幻想郷へ来る人外の事を指す場合もある。
幻想郷縁起には外来人の項目があるようで生き様や妖怪と遭遇した時の生死などを記述しているらしい。中にはサッカーを広めた人物もいたようだ。
【topic:悪魔】
幻想郷には悪魔がいる──まぁ小悪魔だが。
本来の意味としては神に逆らう存在、仏を邪魔する存在などと言われるが、魔法使いからすると違う。使い魔にしたり、知らぬ知識を得るために呼ばれたりする。時と場合によっては彼らは人間にとって最も優しい存在と言えるだろう。
【topic:拳】
1D100を振ってください──相手は気づいていないので自動成功です。
クトゥルフ神話TRPGではよく振られる技能だろう。時として人を殴り倒し、扉を殴り飛ばし、怪物を殴り倒し、百貌を殴り倒し──全知全能の存在も殴り飛ばせるだろう。探索者はその拳に無限の可能性を見いだした、TRUEPOWEEEEEEEER!!!!!!!