ぼっちが仮想世界にログインしてみた(尚ログアウトはできない模様)   作:クズの小説

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ここが、はじまり

 この日をどれだけ待ち望んだことか。

『ソードアート・オンライン』の正式サービス開始日。この日が楽しみすぎて勉強も何も手につかなかった。

普段からプレイしてるFPSゲームも最近覚えてハマってる麻雀もこれに魅了されてしまった俺には

物足りなく感じてしまう。

 

 

 とっくに準備は終わらせている。トイレも済ませた。食事は...まぁ腹がへってないから問題はないだろう。

あとはソードアート・オンラインをプレイするためのハード、『ナーヴギア』を頭にセットしてとある言葉を口にするだけだ。

 

 

「...あぁもうダメだ我慢できねぇ!」

 

 

 眼鏡を外してベットにダイブしナーヴギアを頭にかぶり目を閉じる。

 

 

「よし!...リンクスタート!」

 

 

 思考が加速し、意識が溶けていく。

普通に生きていれば味わうことのない感覚に身をゆだねていく。

 

 

 

 

 

 

≪Welcome to Sword Art Online!≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アバターの設定を完了し青い光に視界が包まれた数秒後...

 

 

 

 

 

 目に飛び込んで来たのは中世の街並みと笑いながら歩く人の群れ。

その瞬間俺はついにソードアート・オンラインの世界に来たのだ、と実感した。

 

 

 

「(...すごい、としか言えない。この感動を表現する言葉が見つからない!ここはまさに第二の現実だ!)」

 

 

 

 おそらく今の俺の顔は例えるなら『ソシャゲで推しの新衣装が出て、引けないだろうなーと思いながらガチャを回したらまさかの単発で来てしまった』ときのうれしさを三倍したような顔だろう。

例えが果てしなく長いな。

 

 

 これだから小学校からの付き合いの女友達に「君って話長いよねー」などと言われるんだ。

これ関係ないな。

 

 

 

「(とりあえず最初は武器屋に行き自分に合う武器を選ぶのがいいとネットで見たし、まずは武器屋だな。)」

 

 

 

そう決断し、歩みを進めようとすると前のほうから

 

 

 

「その迷いない走り、お前さんβテスターだろ!」

 

 

「そ、そうだけど何か用かな?」

 

 

「もしβテスターなら、ちょっとレクチャーを頼みたくてな!」

 

 

「あぁー、うん、いいよ。じゃあまずは武器屋にいこっか」

 

 

 

 という会話が聞こえてきた。

 

 

 

「(そうか、確かにβテスターに教えてもらえればよかったな。けどまぁ、俺にそんなことを頼めるコミュ力はないし、思いついたところで無駄だな。とりあえず武器屋に行くことは間違ってないようだし、さっさと行くか。)」

 

 

 

 ここまでスムーズに誰かに話しかけることを切り捨てれる自分に少し悲しくなったが、本当のことなので仕方がない。

 

 

 

 そして、説明が遅れたが何を隠そうこの俺、ぼっちなのである!

 

 

 

 といっても人としゃべれないわけではないし、一応家族以外にも会話ができる相手はいる。

ならなぜ、俺はぼっちだ、と明かしたのか。別に最近の陽キャに多い「オレ陰キャでぼっちだからよー!話かけてくんなよなー!」みたいなことでは断じてない。

 

 

 

 なら、一人が好きとか、孤独は人を強くする、とかそういうのでもない。

 

 

 

 答えは一つ。メリットが多いからである。

 

 

 

 おそらくこれだけだと「んだよ、お前もどこぞのラノベ主人公みたいな感じじゃねえか!かっこつけてんじゃねえよ、このネット弁慶イキリオタクアバターの見た目長髪のイケメン!」などと言われそうなので、

実際どんなメリット、デメリットがあるのかを説明しようと思う。

 

 

 

 まずメリットだが、第一に人間関係を気にする必要がない、ということがあげられる。

友人や恋人などの関係を維持するためには、金、時間、気遣いなどのものが必要になってくる。

遊びの誘いを一度でも断ればそのまま自分がハブられるリスクが発生するし、陰でいつもいっしょにいる

メンバーが自分の悪口を言っているのを聞いてしまった日には、気まずさで胃に穴が開くこと待ったなしだ。

 

 

 

 第二に、と続けていきたいところだが正直面倒臭くなってきたのでまとめると、

 

 

 

 ぼっちは楽なのである。

 

 

 

 お小遣いは全部自分の趣味に使えるし、休日は好きなだけゲームができるし、たとえ学校で「二人組を作ってー」や、「隣の人と相談してー」などのことがあってもぼっちはコミュ障なわけではないし、その数分を乗り切るぐらいなら致命傷三歩手前ぐらいで済む。

 

 

 

 これだけ言っても「お前はイキリクール気取り一匹ワンちゃんだ!」とのたまう方々は、

学生時代女子に話しかけて後悔しなかったことがあったかを思い出してほしい。

 

 

 

 と、そんなことを考えてる間に武器屋らしき場所に到着したので武器をどれにするか、と考えてると

隣から

 

 

 

「なぁー、キリト。武器って何選べばいいんだ?」

 

 

「そうだなあ、自分のプレイスタイルにあったものがいいかなぁ。アタッカーなら片手直剣や曲刀、短剣とか、タンクなら...両手斧とか?」

 

 

「ほーん、刀とかってのはねぇのか?」

 

 

「あー、現時点ではないけど、たぶん先の層に行けばあるかな。敵側にもカタナつかうやつとか

出てくるし。」

 

 

 

 などの会話が聞こえてきた。...これは盗み聞きなどではないからね、勘違いしないでね。

だが、有益な情報はゲットできた。俺はタンクなんて柄ではない、というかソロでタンクとかネタでしか

ないので、アタッカー一択なのだが。まぁ、片手直剣でいいかな。

 

 

 

 無事に武器を購入後、次はどうしようか、と周りを少し見渡してみると先程の有益な情報提供者の二人が

フィールドに向かっていくのが見えた。

 

 

 

「(もうあの二人、というか黒髪のβテスターについていったほうがいいのではなかろうか。)」

 

 

 

 この行動をもしかしたらストーカーと捕らえて通報する過激派がいるかもしれないが、

これはあくまでウィンウィンの関係なのである。俺は次に行くところが分かってハッピー、

あの人たちは困ってるプレイヤーを助けられてハッピー、お互いに得しかないのだ。

 

 

 

「(それにしてもフィールドに来たはいいけど、リアリティがすごいな。風が気持ちいい。)」

 

 

 

 情報提供者の人たちはどうやらイノシシのようなモンスター相手に戦闘練習しているようだ。

赤髪でひげ面のおっさんはどうやら苦戦しているようだが...、持ってる武器構えてしばらくすると

武器が光り、モンスターにむかって先程とは比べものにならない速度で突撃し、モンスターをポリゴンに

変えた。

 

 

 

「(あれがソードスキルか。...ふむ、なんとなくだが、こうか...)」

 

 

 

 近くにいたモンスター...、どうやらフレンジーボアという名前らしいモンスターにソードスキルを放つ。

 

 

 

「(なるほど。ソードスキルは強力だが使ったあとは硬直があるのか...覚えとこう。)」

 

 

 

 そのあと何体かのフレンジーボアをポリゴンに変えたあと、右手を振ってメニューを開く。

 

 

 

「(むっ、もうこんな時間か。そろそろ夕飯の支度をはじめなきゃいけないし、ログアウト、ログアウト...

が、ない?)」

 

 

 

 念のためメニューを一通り見てみるがログアウトらしきボタンはどこにもない。

 

 

 

「(...まてまて、そんなことあるか?正式サービス開始日にログアウトができない、だなんてこれからのゲーム運営に関わってくるレベルだぞ。)」

 

 

 

 仕方なく、少し先で俺と同様に困惑している情報提供者の二人に話しかけようと足を動かした瞬間に

 

 

 

—―—―—―鐘の音が、響いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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