ぼっちが仮想世界にログインしてみた(尚ログアウトはできない模様) 作:クズの小説
キリトの後ろを必死で走りつづけ、ようやく次の村...ホルンカについた。途中途中で戦闘も起きたが序盤のフィールドということと、βテスターであり、なおかつ主人公属性持ちのキリトがいるということもあり余裕で突破できた。
「ふぅ...、ようやく着いたか。このあとはどうするんだ?」
「えーっと、このあとはアニールブレードっていう一層だと最強の片手剣を取りに行くんだけど...今日は宿取って、明日からにしよっか。」
「...すまん。まさかリアルでの体力がこの世界に反映されるとは思わなくてな。」
「そんなことはないからね?身体能力とかは全部ステータスで決まるからね?」
「さすがにそのくらいは知ってるぞ?」
「じゃあなんで言ったの!?」
「それより、宿を取るんだろう。どこがいいんだ?」
「はぁ...、付いてきて。」
なぜかキリトは疲れている様子。村に着いたときは普通だったのだが、もしかしたら強がっていたのかもしれないな。わかるわかる、俺も人前で転んだときとかめっちゃ痛いの我慢して早急にその場を離脱するし。
一番ひどかったのはあれだな、学校の体育の授業中にリレーをやっていたんだが、他チームと接戦の状態でバトンが回ってきて「よっしゃ、全員抜かしてやるぜ」とか内心思ってたら、走り出す最初の一歩目で転んでしまった時だな。
何が一番辛かったかって、全身を突き刺す視線だ。先生やクラスの優しい女子とかは、心配そうに俺の血が出てる膝を見てるのだが、運動ができるやつ、クラスの陽キャは蔑みの視線に加えて、こちらにギリギリ聞こえる声量で「あいつ使えねー」だの、「死ねやクソ陰キャ」だの
これでもか!というほど俺の心にダメージを与えていくのだ。
いかん、思い出したら目からナイアガラの滝が...。
「なんでいきなり泣いてるの!?も、もしかしてそんなに疲れてた?いったんどっかで休む?」
「いや...、ちょっと昔を思い出していただけだ。気にするな。」
「(っ!ケイもこんなことになってやっぱり辛いんだ。それなら...)」
なんかすっごい優しい目で見られてるんだが、これなんかキリト変な方向に勘違いしてない?
あれだよ?昔思い出すって言っても実際に思い出していたのは黒歴史だからね?涙を流したのも悲しいからじゃなくて、あの頃の惨めな気持ちを思い出しただけだからね?
「着いたよ。ここを拠点にしようと思ってるんだけど...」
「...? そうか、入らないのか?」
「あー、それでね?ここの宿って一部屋100コルなんだけど、少し大きめの、二人ぐらいならいっしょに泊まれる部屋だと170コルなの。」
「...それがどうしたんだ?」
「...その170コルの部屋に泊まらない?」
「...誰が?」
「わたしと、ケイが。」
ふむ...。顔を赤面させながら話すキリトがかわいいということしか理解できなかったが、つまりは...
「...同棲?」
「ちち、違うよ!?わたしはただやっぱりお金は節約できるとこは節約したほうがいいな、と思っただけで!決して、さっきふと見せたケイのさびしそうな顔が心に来たとか、ちょっとかわいかったな、とかそんなことは全然思ってないからね!」
...なんか、あんまり掘り下げたらこちらにもダメージが来そうなことを言ってる気がする。けどまぁ、後半はともかく前半には一理ある。たった30コルとはいえ、節約できるならしたほうがいいのは確かにそうだ。
だがしかし...
「...なぁキリト。このゲームはそんなにお金に気をつかわなきゃいけないのか?」
「...うん。」
「目がスイミーだぞ。」
「目が泳いでるじゃダメだったの?」
「なるほど。キリトは目が泳いでいたのか...。目が泳ぐ主な心理状態のひとつがうそをついてるときなんだが...、なぁ、キリト?」
「...だって!さっきのケイの顔が忘れられないんだもん!」
「言っとくがさっきは自分の黒歴史を思い出してただけだからな?断じて、さびしそうな顔とかしてないからな。」
「強がらなくてもいいんだよ!ケイは黙ってわたしに付いてくればいいの!」
「自分の立場を利用してくるなよ...。第一、若い男女が同じ部屋で泊まるとか、ダメだろ。一般的に考えて。」
「なにその大和撫子視点...。女子なの?」
「女子はお前だ。...ともかく、部屋は別でいいだろ。さっきのお前の反応で金に困ることはそうそうないってのはわかったしな。」
「むぅ...手ごわい。」
「...とりあえず、今日はさっさと休まないか?いろいろ疲れたんだが。」
「そうだね。じゃあ明日はこの宿の一階に集合でいい?揃ったら出発みたいな感じ。」
「それで大丈夫だ。じゃ、解散だな。おやすみ。」
実は、この村についた時点でもう夕方ぐらいだったのだ。それなのに、宿の前であんなくだらない言い争いをしていたおかげで外はすっかり暗くなっている。
部屋に入り、ベットに寝転がると速攻で眠気がやってきた。
「(今日はいろいろありすぎたからな。アイテムの整理とかやらなきゃ、なんだが...、ダメだ、瞼が重い...。)」
次目を開けたら全部夢でした、みたいなことになってたらいいなー、なんてことを思いながら俺は目を閉じた。
【キリトside】
ケイは速攻で部屋に入って行ってしまった。あとちょっとぐらい話してくれても...とは思ったが、わたしも疲労が限界なのに変わりはないので、一通りアイテムの整理を行ってからベットに入る。
「(...なんか、わたし、変だ。ケイに会ってから。)」
「(普段なら、男の人にいっしょの部屋に泊まろう、なんて絶対に言わないのに。いっしょの部屋に泊まろう、なんて...っ!)」
今思えばなんてことを口走っていたのだろう。顔が熱い。ケイは断ってくれたが、もし断られなかったら、今頃は、同じ部屋で...。
「(ケ、ケイが断ってくれてよかった!やっぱり勢いでしゃべるのはよくないね、うん、ほんとに...。)」
でもなんで、あんなことを言ってしまったのだろう。あんな言葉、もし誰かに聞かれでもしたら、絶対に勘違いされちゃうのに。まるで、わたしが、ケイのこと...。
「(い、いやいや!それはないよ!だって、まだ会って一日もたってないのに...。それに、好きになる要素がないもん!そうだよ、別にケイってかっこよくはないし、あっ、顔が悪いとかの意味じゃなくて、むしろ顔はかっこいい...じゃなくて、整ってるとは思うけど。言葉のチョイスは変だし、まず初対面が土下座だし。ないない、わたしが、そんな、ケイのことを...なんて。)」
「...でも、あの時の顔、かわいかったな。」
...はっ!わたしはいまなにを...。
「...だめだめ、早く寝よ。」
これ以上起きてると明日、ケイの顔が見れない気がして、わたしは目を閉じた。